チート願望者は異世界召還の夢を見るか?

扶桑かつみ

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第四部

319「友の合流(2)」

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 少し先に飛び降りたハルカさんは、まずは飛び降りる時に半透明の幽霊を切り裂くと、その場で魔法を構築。マジックミサイルが周辺のアンデッドを砕いていく。
 骨だけでもマジックミサイルが有効なのは、普通の矢との大きな違いだ。
 そして次の一撃は、半透明のおっかないビジュアルのアンデッドに集中して投射し、魔法の矢で串刺しにしていた。

 別の一角では、ヴァイスが地表すれすれで飛んで、アンデッドをおもちゃの兵隊を倒すように次々に砕いている。
 たまに半透明のやつもいるが、魔力がこもった巨大な爪はおかまい無しに切裂く。こうした芸当ができるのも、疾風の騎士が神殿に属する事が多い理由の一つだ。

 それはともかく、オレ達の救出すべき『お姫様』だけど、ふと目をやると呆然と立ち尽くしていた。
 救出に間に合ったオレ達に感謝感激してくれとまでは思わないが、もうちょっと感動などして欲しいところだ。

 しかしオレと目が合うと気を取り直したように表情を引き締め、ややぎこちなく左手を掲げてサムズアップして来た。
 こっちも軽くサムズアップで返したが、多少の距離とアンデッドの壁があるので、まずはその排除が先決だ。

 タクミも同じ考えらしく、槍を構えると魔法陣が1つそして2つ浮かび、槍の周りに風が巻き起こっていく。
 そして「シュツルム!」と叫ぶと同時に、槍から突風が巻き起こり一線上のアンデッド数体を吹き飛ばしていく。

 それを確認しつつ、その空いた穴に飛び込んで、周辺の群れをなぎ倒して血路を開く。
 それにハルカさんもすぐに気づき、マジックミサイルの槍衾(やりぶすま)が周辺に降り注ぐ。
 それで、タクミの居る方のアンデッドはかなり減って、合流するには十分な空間が作られた。

 オレとハルカさんはアンデッドの集団の真ん中に飛び降りたせいで、なんだかオレ達の方がアンデッドに囲まれたような状態になっていた。
 これではタクミに助けられたように見えなくも無い。

 アンデッドはますますノロノロと集まって来るが、その中を駆けてタクミの側に合流。
 オレがかざした右拳を見て、タクミを拳をかざしてまずはグータッチ。そして物語のようにニヤリと笑いかけると、タクミも応える。
 そして互いに破顔してしまう。

「こういう事してみたかったんだ」

「第一声がそれか? こっちは死にそうだったってのに」

 苦笑しているが、確かに顔が青い。まあ、初戦闘がアンデッドじゃ仕方ないだろう。

「まあ、無事で何よりだ」

「そっちも来てくれてサンキュ。マジ、地獄に仏、いや天使かな? あの人が噂の神官戦士か」

「ああ。凄いだろ」

「全くだ。色々聞いてたのに、夢でも見てるみたいだ」

「ま、『夢』の向こう側だけどな。何にせよ、ようこそ『アナザー・スカイ』へ!」

「おっ、お決まり台詞きたな」

 そうして再び笑い合うも、周囲はまだ阿鼻叫喚一歩手前だ。
 話している間にも不揃いな骨格標本な皆さんが、ひしひしと近寄って来ている。
 それをハルカさんとボクっ娘が十把一絡げに倒しているが、数が多すぎて間に合っていない。

「ちょっと待っててくれ。片付けてくる」

「やっぱ、ボクは足手まといか?」

 タクミにしては、遠慮気味の声だ。
 そしてここは、多少キツくても正しい事を伝えておくべきだろう。

「あれ相手に、初見で接近戦は無理ゲーだぞ。絶対ヘタれるって」

「接近戦をしなきゃ、なんとか出来るぞ」

「無理するなよ。今日はタクミがお姫様だ。オレ達に助けられてろ」

 オレのジョークにタクミが苦笑する。

「……りょーかい。なんだか惚れてしまいそうだよ」

「うわっ、キモっ!」

 笑いながら、スケルトンの群れへと再び戻っていった。

 その後しばらくはタクミにアンデッドを近づかせない様に3人で戦っていたが、7割ほど倒した頃に蒼いドラゴンが急ぎ飛来した。
 合流時間に落ち合えなかったので、慌ててやって来たらしい。

 そしてライトニング・ブレスと炎の魔法でスケルトンの群れの一角を一掃した後は、一方的展開となった。
 亡者もしくはアンデッドのいただけない点は、知性を持つ高位のアンデッドでない限り、後退や撤退を知らない事だ。
 おかげで、全滅させるまで戦い続ける事になった。しかもそのせいで、終わったのは夕陽も没しつつある時間だ。


「鎮魂の儀式は準備もしてないし、まずはここを離れましょう」

「でもこの時間だと、もうハーケンに戻るのは無理だよ」

「ライムも無理。それで、この辺りの宿の有る場所って近い?」

 二人がそう言いつつ空を見る。確かに空はもう夜が迫りつつある。

「明るいうちに行くのは無理だね」

「では野営か」

「アースガルズ寄りの、少し離れた廃村に行きましょう。確か近くにあったわ」

 ハルカさんが、その村のある方向に視線を向ける。

「ヴァイスが頑張れるのは、せいぜい2、30分だね」

「じゃあナビするわ。悠里ちゃん達は付いて来て」

「あのー、ボクは?」

 ポンポンと話を進めて行くみんなに対して、半ばポツンと置かれていたタクミが、申し訳なさそうに小さく手を上げている。
 忘れていたわけじゃないので、側にいたオレが肩をポンポンと叩く。

「オレの隣に乗れば良いよ。ま、その前に、ヴァイスに挨拶して気に入ってもらえよ」

「お、おう」

 そうして二人してヴァイスの首元に近づく。
 その上には、ボクっ娘が乗ったままで、こちらに体ごと腰を折って顔を向ける。

「どうしたの?」

「タクミがヴァイスにご挨拶」

「……ホントに天沢さんソックリだ」

 タクミの言葉を受けて、ボクっ娘がニカっとボクっ娘らしい人好きのする笑みを浮かべる。

「まあ、ボクはもう一人の天沢さんだからね。それより、挨拶とかは落ちついてからでいいよね。急いで移動しないと、完全に日が暮れちゃうよ」

「だとさ。さ、挨拶しろしろ」

「あ、ああ。えーっと、どうすればいいんだ?」

「そうだなあ。ヴァイス、こいつを背に乗せてやっていいか?」

 話しかけると、ヴァイスが首をこっちに向けてくる。
 でかいだけに迫力満点で、タクミは一歩後ずさりするので、それ以上下がらないように背中の後ろに触れない程度に手を回す。

「よ、よろしく。ショウの友達のタクミです」

 タクミが頭まで下げると、ヴァイスが小さく鳴く。
 機嫌がいいというわけじゃないが、よろしくと言っているのだろう。
 全部頭の上から見ていたボクっ娘が、「ま、よろしく。だってさ」と通訳もしてくれた。


 そしてそこからは、急いでアンデッドのいなさそうな方角を目指して20分ほど移動して、戦ったのとは別の無人の廃村へと降り立つ。
 もう2、30分飛べばアースガルズの新たな支配領域に入るらしいけど、鳥目ではこれ以上飛ぶのが限界だった。
 着陸の時も少しおぼつかない程だったし、夜が飛行職の唯一の弱点と言われるのも納得だ。

 しかしその廃村は、側に小川が流れているし無事な建物もそれなりにあるので、一夜の宿を求めるのに問題はなさそうだった。
 それでも用心して、屋根の一部が残っていた神殿を今夜の宿と決める。
 そこなら村の広場の前なので、ヴァイスとライムが側で休む事もできる。

 そしてシズさんがアイを連れ、野営する一帯を囲むように警戒の魔法をかけていく。
 悠里とボクっ娘は、しばらくはそれぞれの相棒の世話だ。ハルカさんと人化させたクロが、夕食の準備と野営の準備を進める。
 そして残ったオレは、廃屋などを訪ねて薪になる木材と水の調達に行く。他にする事も無いので、タクミも同行させる。

 横で一緒に薪集めをしているタクミは、アンデッドに襲われていた時は青い顔をしていたが、ヴァイスで空を飛んだ時点で一気にテンションが上がり、今もそのテンションが維持されているようだ。

「どうだ?」

 色々な気持ちを込めて問いかけてみた。いきなりアンデッドは、流石にキツかっただろうと。
 一見大丈夫に見えるタクミがこっちに居続けられるかは、事が心の問題なので聞いても仕方ないのかもしれないけど、やはり聞かずにはいられなかった。

「どうって言われても、まだ夢を見てるみたいだ」

「また、ようこそって言おうか?」

「アハハ、それはもういいよ。でも、マジなんだな」

 タクミは脱力したような笑いの後、真剣な表情をオレに向ける。

「うん、マジだ。実際こっちに来ないとマジとは思えないけどな」

「だな。聞くと見るでは大違いだ。最初はあんまりな情景に結構ガックリきたし、今日の夕方にスケルトンの群れが襲って来たときは絶望しそうになった」

「で、オレ達が助けに来たときは?」

「ショウの言う通り白い鷲が見えた時は、泣きそうになったよ」

 冗談めかして答えを返して来たが、表情は真面目そのものだ。あんまり男と見つめ合いたくはないが、今は素直に嬉しい気がする。

「じゃあ今は?」

「ショウと話してるだけだと、学校やバイトと変わらないな」

「うん。そういう事だと思う」

「ん? どういう事なんだよ?」

 分かって言っているのかと思ったが、そのまんまの感想を口にしただけらしい。
 ならばオレには言うべき事がある。

「ここも現実って事だよ。これは絶対に忘れるなよ。でないと、簡単にドロップアウトするぞ」

「そっか。肝に銘じる」

 タクミが真面目くさった表情で頷く。
 けどそれは、お腹の音で台無しだ。

「まずは腹ごしらえだな。それに、ちゃんと紹介し合わないとな」

「ああ、両方頼むな。それに、色々聞きたい事と、聞かないといけない事もあるみたいだしな」

 意味深なタクミの表情は、事前に少し話した事もあってオレ達の人間関係に気づいているのだろう。
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