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その身体は、契約に捧げられたものだ
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白い朝靄が立ち込める修道院の中庭に、鐘の音が低く響いた。
ソフィアは祈りを終えると、ゆっくりと目を開けた。まだ朝日も昇らない静かな時間、空気は肌を刺すほど冷たいというのに、額からは一筋の汗が伝っていた。
その朝、夢を見た。
漆黒の塔。仮面をつけた男。縛られた両手。抱き締められ、何度も絶頂に導かれる己の姿。
まだ一度も男に触れられたことなどないはずなのに、あまりに鮮明で、感じた熱が下腹に残っている。
――あの夢、何だったの……?
戸惑いを胸にしまいながらも、ソフィアは冷水で顔を洗い、いつものように掃除と花の水やりを済ませ、午前の奉仕に備えて礼拝堂へと向かう。
だが、修道院の中には奇妙な緊張が漂っていた。
院長のアンリエットが、滅多に使わぬ黒い礼服を纏って立っていたのだ。そしてその横には、豪奢な紫のローブを着た二人の男。騎士ではない、魔術師のような佇まいだった。
「ソフィア……こちらへおいでなさい」
いつも厳格ながらも慈しみに満ちた声が、今はどこか苦々しげに響いていた。
嫌な予感がした。足がすくみ、歩みを止めたい衝動を押し殺して近づく。
「……何が、あったんですか?」
アンリエットはそっと視線を逸らす。そして代わりに、男たちの片方が口を開いた。
「名をソフィア・クロウェル。十八歳、修道院にて純潔を保ち、神に仕えている。──契約の条件に適合する者と認め、塔の主より花嫁として正式に召喚された」
「……は?」
理解できなかった。けれど、直後に男が放った魔術の光によって、世界がぐにゃりと歪む。
次に目を開けたとき、彼女の身体は、すでに異界の塔に運ばれていた。
***
石造りの部屋。高い天井には魔法の燭台が灯り、妖しく揺れている。
ソフィアは絹の寝衣に着替えさせられていた。胸元が大きく開き、足先まで露出するほどの透ける布。冷たい石床の上で、羞恥と恐怖に身を震わせていた。
「目覚めたか」
重く、甘く、低い声が部屋に響く。
彼女の前に立つのは、夢で見たそのままの男だった。
漆黒のローブ。顔を覆う仮面。その下から覗く口元は、血を吸うように赤く湿っている。だが目を逸らすことができなかった。
「あなたは……誰……?」
「私は〈塔の主〉、この契約塔の支配者。名をアゼル・カイン。千年ごとに現れる“器”を迎え入れ、塔の魔力を維持する務めを担う者だ」
器。花嫁。召喚。魔力の維持。
ひとつひとつが意味を結ばず、ソフィアは言葉を失う。
男は歩み寄り、絹の寝衣の肩紐に指を掛けた。
「待ってっ……!触らないで……っ!」
だがその言葉に反応したのは、魔力だった。部屋の空気がびりびりと震え、見えない鎖がソフィアの手足を床に縫いとめた。
拒絶は、契約違反――そう囁かれているかのようだった。
「我が塔に来たということは、もう逃れられぬ。“契約の巫女”となった以上、お前は毎夜、私に抱かれることで塔を満たす役目を果たす」
アゼルが仮面を外す。
その顔は人間とは思えぬほど整っていて、美しいというより“異様”だった。
琥珀のような瞳。白磁の肌。血のように赤い唇。その美しさは、まるで呪い。
「……やめて……お願い……っ」
「恐れることはない。最初の夜は、優しくしてやる。だが明日からは、期待するな」
そのまま彼は、ソフィアの太ももを撫でながら、唇を耳元に寄せて囁いた。
「お前の中で私の魔力を解き放つとき、塔は歌い、世界が震える。だから、しっかり啼け」
そして、彼の手が寝衣の裾をめくると、柔らかな太腿が露わになった。
ソフィアは震えながら、ただ歯を食いしばった。
「……神様、どうか……」
「神など、ここにはいない。いるのは――私だけだ」
その瞬間、アゼルの指先が、処女の花園をなぞった。ぬるり、と淫らな音を立て、彼女は声を押し殺すように呻いた。
──物語は、始まってしまった。快楽と恐怖、愛と支配の、果てなき千夜の契りが。
ソフィアは祈りを終えると、ゆっくりと目を開けた。まだ朝日も昇らない静かな時間、空気は肌を刺すほど冷たいというのに、額からは一筋の汗が伝っていた。
その朝、夢を見た。
漆黒の塔。仮面をつけた男。縛られた両手。抱き締められ、何度も絶頂に導かれる己の姿。
まだ一度も男に触れられたことなどないはずなのに、あまりに鮮明で、感じた熱が下腹に残っている。
――あの夢、何だったの……?
戸惑いを胸にしまいながらも、ソフィアは冷水で顔を洗い、いつものように掃除と花の水やりを済ませ、午前の奉仕に備えて礼拝堂へと向かう。
だが、修道院の中には奇妙な緊張が漂っていた。
院長のアンリエットが、滅多に使わぬ黒い礼服を纏って立っていたのだ。そしてその横には、豪奢な紫のローブを着た二人の男。騎士ではない、魔術師のような佇まいだった。
「ソフィア……こちらへおいでなさい」
いつも厳格ながらも慈しみに満ちた声が、今はどこか苦々しげに響いていた。
嫌な予感がした。足がすくみ、歩みを止めたい衝動を押し殺して近づく。
「……何が、あったんですか?」
アンリエットはそっと視線を逸らす。そして代わりに、男たちの片方が口を開いた。
「名をソフィア・クロウェル。十八歳、修道院にて純潔を保ち、神に仕えている。──契約の条件に適合する者と認め、塔の主より花嫁として正式に召喚された」
「……は?」
理解できなかった。けれど、直後に男が放った魔術の光によって、世界がぐにゃりと歪む。
次に目を開けたとき、彼女の身体は、すでに異界の塔に運ばれていた。
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石造りの部屋。高い天井には魔法の燭台が灯り、妖しく揺れている。
ソフィアは絹の寝衣に着替えさせられていた。胸元が大きく開き、足先まで露出するほどの透ける布。冷たい石床の上で、羞恥と恐怖に身を震わせていた。
「目覚めたか」
重く、甘く、低い声が部屋に響く。
彼女の前に立つのは、夢で見たそのままの男だった。
漆黒のローブ。顔を覆う仮面。その下から覗く口元は、血を吸うように赤く湿っている。だが目を逸らすことができなかった。
「あなたは……誰……?」
「私は〈塔の主〉、この契約塔の支配者。名をアゼル・カイン。千年ごとに現れる“器”を迎え入れ、塔の魔力を維持する務めを担う者だ」
器。花嫁。召喚。魔力の維持。
ひとつひとつが意味を結ばず、ソフィアは言葉を失う。
男は歩み寄り、絹の寝衣の肩紐に指を掛けた。
「待ってっ……!触らないで……っ!」
だがその言葉に反応したのは、魔力だった。部屋の空気がびりびりと震え、見えない鎖がソフィアの手足を床に縫いとめた。
拒絶は、契約違反――そう囁かれているかのようだった。
「我が塔に来たということは、もう逃れられぬ。“契約の巫女”となった以上、お前は毎夜、私に抱かれることで塔を満たす役目を果たす」
アゼルが仮面を外す。
その顔は人間とは思えぬほど整っていて、美しいというより“異様”だった。
琥珀のような瞳。白磁の肌。血のように赤い唇。その美しさは、まるで呪い。
「……やめて……お願い……っ」
「恐れることはない。最初の夜は、優しくしてやる。だが明日からは、期待するな」
そのまま彼は、ソフィアの太ももを撫でながら、唇を耳元に寄せて囁いた。
「お前の中で私の魔力を解き放つとき、塔は歌い、世界が震える。だから、しっかり啼け」
そして、彼の手が寝衣の裾をめくると、柔らかな太腿が露わになった。
ソフィアは震えながら、ただ歯を食いしばった。
「……神様、どうか……」
「神など、ここにはいない。いるのは――私だけだ」
その瞬間、アゼルの指先が、処女の花園をなぞった。ぬるり、と淫らな音を立て、彼女は声を押し殺すように呻いた。
──物語は、始まってしまった。快楽と恐怖、愛と支配の、果てなき千夜の契りが。
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