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第12章
外套
しおりを挟む<シャリエルン視点>
「今回はエリシティア様が最優先だ。それだけは忘れないように」
「……」
「ティアルダ、それにあなたたち、団長の考えは理解してるわよね」
「もちろん」
「分かってますよぉ」
迷いなく頷くドロテアとラルス。
一方、ティアルダは。
「けどよぉ、姫様の痕跡があればやるしかねえよなぁ?」
「それは……とにかく軽挙は避けなさい」
「分かってるって。ってことで、もっと近づこうぜ」
その後も距離を詰め続け。
結局、アイスタージウス軍に邪魔されることなく、あと数歩という地点まで到着してしまった。
「……」
もちろん、この距離だ。
我々に気づいている者もいる。
それでも、こちらに手を出す兵は皆無。
さて、どうしたものかな?
「「「団長?」」」
「私が行きましょうか? それとも様子見を?」
「ふむ……」
「戦闘状態の兵士に尋ねてもしょうがねえって。力づくで聞いた方が早いぞ」
「ティアルダ、軽挙は禁止と言ったでしょ」
「でもよぉ」
「いいから、あなたは黙ってなさい」
「ちぇっ」
ティアルダのように力に頼る必要はないが、かといって、しばらく様子を見るというのも……ん? あれは!?
「えっ、あの紋章にあの色合い?」
「まさか、エリシティア様の?」
「姫様の外套?」
間違いない。
エリシティア様の外套が宙に舞っている!!
*************************
キン、キン、ギン!
シュッ、ザシュッ!
激しい剣戟音が平原に響き渡る中、先程から絶えることなく続く微妙な戦い。
「……」
どうにも納得できないというか、腑に落ちないというか。
とにかく、分からないことが多すぎる。
エリシティア様やギリオンたちの衣類や防具は存在するのに、当の本人たちは見当たらない。気配も感じられない。さらには、アイスタージウス軍の連中も行方を知らないようなのだ。
いったい何が起こっているのか?
エリシティア様やギリオンはどこに消えたのか?
そもそも、アイスタージウス軍と敵対していいものなのか?
なんて、今さらだな。
既に戦っているのだから。
とはいえ、迷いながら振るう剣はどうしても鈍ってしまう。
はあぁぁ……。
シュン、シュン!
そんな俺とは対照的に、相変わらずの剣の冴えを見せてくれる剣姫。
魔剣ドゥエリンガーは舞い踊り、巻き起こった剣風が草をなぎ払う。剣身が冷たい光を放ちながら敵を斬り裂いていく。
シュン、シュン!
ザン、ザシュッ!
攻防一体のその動きは俊敏苛烈で、対する敵をことごとく地に沈めている。
なのに剣の美しさは失われず、敵対する者をも惚けさせてしまうほど。
「「うぅ」」
「「ああぁ」」
どんな状況であれ変わることのない剣姫の腕。
迷いなど微塵も見えない。
ほんと、俺とは大違いだよ。
「今回はエリシティア様が最優先だ。それだけは忘れないように」
「……」
「ティアルダ、それにあなたたち、団長の考えは理解してるわよね」
「もちろん」
「分かってますよぉ」
迷いなく頷くドロテアとラルス。
一方、ティアルダは。
「けどよぉ、姫様の痕跡があればやるしかねえよなぁ?」
「それは……とにかく軽挙は避けなさい」
「分かってるって。ってことで、もっと近づこうぜ」
その後も距離を詰め続け。
結局、アイスタージウス軍に邪魔されることなく、あと数歩という地点まで到着してしまった。
「……」
もちろん、この距離だ。
我々に気づいている者もいる。
それでも、こちらに手を出す兵は皆無。
さて、どうしたものかな?
「「「団長?」」」
「私が行きましょうか? それとも様子見を?」
「ふむ……」
「戦闘状態の兵士に尋ねてもしょうがねえって。力づくで聞いた方が早いぞ」
「ティアルダ、軽挙は禁止と言ったでしょ」
「でもよぉ」
「いいから、あなたは黙ってなさい」
「ちぇっ」
ティアルダのように力に頼る必要はないが、かといって、しばらく様子を見るというのも……ん? あれは!?
「えっ、あの紋章にあの色合い?」
「まさか、エリシティア様の?」
「姫様の外套?」
間違いない。
エリシティア様の外套が宙に舞っている!!
*************************
キン、キン、ギン!
シュッ、ザシュッ!
激しい剣戟音が平原に響き渡る中、先程から絶えることなく続く微妙な戦い。
「……」
どうにも納得できないというか、腑に落ちないというか。
とにかく、分からないことが多すぎる。
エリシティア様やギリオンたちの衣類や防具は存在するのに、当の本人たちは見当たらない。気配も感じられない。さらには、アイスタージウス軍の連中も行方を知らないようなのだ。
いったい何が起こっているのか?
エリシティア様やギリオンはどこに消えたのか?
そもそも、アイスタージウス軍と敵対していいものなのか?
なんて、今さらだな。
既に戦っているのだから。
とはいえ、迷いながら振るう剣はどうしても鈍ってしまう。
はあぁぁ……。
シュン、シュン!
そんな俺とは対照的に、相変わらずの剣の冴えを見せてくれる剣姫。
魔剣ドゥエリンガーは舞い踊り、巻き起こった剣風が草をなぎ払う。剣身が冷たい光を放ちながら敵を斬り裂いていく。
シュン、シュン!
ザン、ザシュッ!
攻防一体のその動きは俊敏苛烈で、対する敵をことごとく地に沈めている。
なのに剣の美しさは失われず、敵対する者をも惚けさせてしまうほど。
「「うぅ」」
「「ああぁ」」
どんな状況であれ変わることのない剣姫の腕。
迷いなど微塵も見えない。
ほんと、俺とは大違いだよ。
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