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しおりを挟む「妹が! 妹がぁ!!」
「……」
「……」
「……」
「……」
「っ!」
動けなかった……。
一歩も……。
ふたりの関係が断ち切られようとしているその時に、何もできなかった。
恐怖で身がすくんでしまった。
私はエージェントなのに!
捜査官なのに!
……。
……。
はは……。
呆れてしまう。
こんな私がおとり捜査官だなんて。
「ああぁ、中の妹が……」
「ナナ様……」
呆然と立ち尽くす私の目の前には、泣き崩れるナナ嬢。
そんなナナ嬢にメローネ嬢が寄り添っている。
「ナナ様、ナナ様!」
「ううぅ……」
「大丈夫、大丈夫です」
優しい娘だな。
「下の妹だけじゃなく、中の妹まで……」
「……」
「ああぁぁ」
「ナナ様……」
「ぁぁぁぁ」
メローネ嬢が自失状態のナナ嬢を胸に抱き、優しく背中を撫でている。
彼女自身も不安だろうに。
「大丈夫です、他の部屋に移されただけですから」
「……メローネ様?」
「お二人とも、きっと無事ですよ」
「本当に?」
「ええ! 大丈夫です!」
確信など持ってるはずがない。
それでも、迷いを微塵も見せず肯定するメローネ嬢。
名家の令嬢が先の見えない極限状況で、こんな振る舞いができるなんて……。
ただ優しいだけじゃなく、心まで強い令嬢なんだろう。
「……」
傍観しているだけの私とは大違いだな。
これじゃ、どちらがエージェントか分からない。
「大丈夫……?」
若干落ち着きを取り戻したナナ嬢。
メローネ嬢の胸の中で救いを求めるように彼女の顔を見上げている
「ご令妹もナナ様も大丈夫。必ず助けが来ますから、ね」
「信じていいの? メローネ様?」
「はい!」
「……」
メローネ嬢の言葉をナナ嬢が信じているかどうかは私には分からない。
ただ、仮にそれが嘘だと分かっていても、今のナナ嬢はそれにすがるしかないはず。
私がここに来る前に下の妹が連れ去られ、今またもうひとりの妹を連れ去られた彼女の精神は崩壊寸前なのだから。
メローネ嬢もそれが分かっているからこそ、かけた言葉なのだろう。
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