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二章
生意気な後輩
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「どうも、エイド・ユナカテリです」
気取った少年エイドはポケットに手を入れながらそうつけだ。
「おいらはノスって言うす。エイド君の教育係に任命されたっす。よろしくお願いしますっす」
エイドはよろしくっすと、右手を差し出したノスの手をパシーンとはじく。
そしてきつくノスを睨みつけると、
「ドワーフが気軽に触らないでください。それとドワーフに教わることなんて何もないから」
「わかったす! じゃあまずはテイカーの使い方を教えるっす」
「話聞こえてんのかよ」
ちっと舌打ちするエイド。
聞こえているかいないか定かではないが、エイドの態度を気にも止めずマイペースなノス。
「大丈夫かね、あれ」
厨房から2人の様子を見てる遠山はぽそりとつぶやく。
「うーん、まあおもしろそうな化学反応が起きそうなのは間違いなさそうだな」
仕込みをしながらゲスな笑いをこぼす長崎であった。
「とりあえずテイカーをトレーニングモードにしといたっすから、練習してみるっす」
「指図すんなし」
「とりあえず薄め牛丼大盛をお願いしますっす」
ピピピと素早くテイカーをタッチし、注文を確定させるエイド。
正直言って初めてにしてはだいぶうまいほうだ。
「おっ、なかなかやるっすね。僕なんて最初は全然出来なくて、よくしかられたものっす」
感慨に浸るノス。
そして聞いてねえよとイラついた様子のエイド。
「そんなことより厨房の作業を教えてくれよ。こんな前のつまらないやつよりさ」
「厨房の作業は前の作業が完璧になってからっす」
「俺の手さばき見たろ? もう前は完璧だって。ここによく来て、観察してたからな。もう何だってできるさ。なあ厨房の作業やらせてくれよ」
うーん、とあごに手を当てて考えるノス。
とりあえずノスは長崎に意見をあおる事にしたが、長崎は首を縦には振らなかった。
「なんかダメらしいっす」
「どうして。俺はもう前の仕事は完璧。次は厨房っしょ!?」
「そう言われてもっすねー」
「もういい。俺が直接行ってくる」
困り顔のノスを押しのけ、厨房に足を踏み込むエイド。
そして思わずツルッと滑りそうになったが、なんとか踏みとどまる。
「厨房はすべりやすいからな気をつけろ」
エイドの方をチラリとも見ようともせずに淡々と長崎が告げる。
「はい。気を付けます」
と恥ずかしそうに言った後、
「もう前のことは何でもできます。だから俺に厨房のことを教えてください」
「実際にお客さんを目の前にしてやってみたか?」
「それはまだですけど、俺ならできます。なんせ俺はあんなに早くテイカーも打てますし」
「とんだ検討違いだ」
やれやれといった様子の長崎。
そんな長崎に少しエイドは怒り気味に、
「それってどういうことですか。俺はこんなにも仕事ができるのに」
「そもそも牛食において早さは重要ではあるが、そもそもそれは正確性が伴ってこそだ」
「わかってますよそんなこと。俺は正確だし早い」
「そう、練習だとな」
「くっ、じゃあ実際にお客さんを目の前にして、完璧に対応できたら厨房の作業教えてもらえますか?」
「ああいいぜ、ちょうどよばれた。行ってきな」
何も言わず、ただテイカーを構えエイドが客席に向かう。
楽勝だ、こんなの。どうして人がいるだけで出来ないことがあるもんか。
「ご注文をおうかがいします」
腰を落とし、エイドがにっこりと微笑む。
「ええっとじゃあ牛丼大盛2つに、薄めの牛丼並盛。後特製唐揚げにああやっぱり並盛は普通にして、大盛二つを薄めに。それで全部つゆだくにしてもらおうかしら」
「えっと………………………………」
完全に手が止まるエイド。
クソッつゆだく、それにどれがうすめだよ。ああっ、それを削除じゃねえよ。
もう1度注文を繰り返すように頼むエイド。
しかし当然テイカーに打ち込むことはできない。
なんでだよ! なんで。
とエイドのテイカーを持つ手が大きく揺れ始めてきた。
そしてお客さんも少し不機嫌そうになってきたころ
「すいません、大変申し訳ないっす。最後に1度だけご注文をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
注文を聞き、素早くテイカーに打ち込むノス。
「すぐにお作りしますので少々お待ちくださいっす」
その場を立ち去るノスにすっと付いていくエイド。
「ほら落ちこんでる暇ないっすよ。提供の準備っす。おぼんを出してのせて、全部揃ったら伝票のせて」
はわわと慌てて出来上がった商品をエイドは運ぶ。
そして戻ってきてまた商品を運ぶ。
「どうだ? やっぱり人前だと違うものだろ?」
戻ってきてぜえぜえ吐息をこぼすエイドに長崎が声をかける。
「どうして……………………練習ではあんなに完璧だったのに」
「お客さんは綺麗な注文なんてしてくれない。遠山さんみたいにな。どんな注文にも対応出来るようにするためには、何回も何回も注文をとるしかねえ。それは他の仕事にもいえることだ」
長崎はしっかりとエイドの顔を見て、
「頑張れエイド。お前ならやれる。お前は仕事もテキパキこなせるし、才能もある。だから近道したくなる。だけど時には足踏みもしなくちゃならねえ。そうやって足踏みしたやつは本当に強いんだよ」
「俺頑張ります。長崎さんみたいになりたいです」
「なれるさ。それに抜ける。きっと。そのためにもノスにしっかりと教われよ!」
「はい!」
こうして新たな戦力が増えたのであった。
気取った少年エイドはポケットに手を入れながらそうつけだ。
「おいらはノスって言うす。エイド君の教育係に任命されたっす。よろしくお願いしますっす」
エイドはよろしくっすと、右手を差し出したノスの手をパシーンとはじく。
そしてきつくノスを睨みつけると、
「ドワーフが気軽に触らないでください。それとドワーフに教わることなんて何もないから」
「わかったす! じゃあまずはテイカーの使い方を教えるっす」
「話聞こえてんのかよ」
ちっと舌打ちするエイド。
聞こえているかいないか定かではないが、エイドの態度を気にも止めずマイペースなノス。
「大丈夫かね、あれ」
厨房から2人の様子を見てる遠山はぽそりとつぶやく。
「うーん、まあおもしろそうな化学反応が起きそうなのは間違いなさそうだな」
仕込みをしながらゲスな笑いをこぼす長崎であった。
「とりあえずテイカーをトレーニングモードにしといたっすから、練習してみるっす」
「指図すんなし」
「とりあえず薄め牛丼大盛をお願いしますっす」
ピピピと素早くテイカーをタッチし、注文を確定させるエイド。
正直言って初めてにしてはだいぶうまいほうだ。
「おっ、なかなかやるっすね。僕なんて最初は全然出来なくて、よくしかられたものっす」
感慨に浸るノス。
そして聞いてねえよとイラついた様子のエイド。
「そんなことより厨房の作業を教えてくれよ。こんな前のつまらないやつよりさ」
「厨房の作業は前の作業が完璧になってからっす」
「俺の手さばき見たろ? もう前は完璧だって。ここによく来て、観察してたからな。もう何だってできるさ。なあ厨房の作業やらせてくれよ」
うーん、とあごに手を当てて考えるノス。
とりあえずノスは長崎に意見をあおる事にしたが、長崎は首を縦には振らなかった。
「なんかダメらしいっす」
「どうして。俺はもう前の仕事は完璧。次は厨房っしょ!?」
「そう言われてもっすねー」
「もういい。俺が直接行ってくる」
困り顔のノスを押しのけ、厨房に足を踏み込むエイド。
そして思わずツルッと滑りそうになったが、なんとか踏みとどまる。
「厨房はすべりやすいからな気をつけろ」
エイドの方をチラリとも見ようともせずに淡々と長崎が告げる。
「はい。気を付けます」
と恥ずかしそうに言った後、
「もう前のことは何でもできます。だから俺に厨房のことを教えてください」
「実際にお客さんを目の前にしてやってみたか?」
「それはまだですけど、俺ならできます。なんせ俺はあんなに早くテイカーも打てますし」
「とんだ検討違いだ」
やれやれといった様子の長崎。
そんな長崎に少しエイドは怒り気味に、
「それってどういうことですか。俺はこんなにも仕事ができるのに」
「そもそも牛食において早さは重要ではあるが、そもそもそれは正確性が伴ってこそだ」
「わかってますよそんなこと。俺は正確だし早い」
「そう、練習だとな」
「くっ、じゃあ実際にお客さんを目の前にして、完璧に対応できたら厨房の作業教えてもらえますか?」
「ああいいぜ、ちょうどよばれた。行ってきな」
何も言わず、ただテイカーを構えエイドが客席に向かう。
楽勝だ、こんなの。どうして人がいるだけで出来ないことがあるもんか。
「ご注文をおうかがいします」
腰を落とし、エイドがにっこりと微笑む。
「ええっとじゃあ牛丼大盛2つに、薄めの牛丼並盛。後特製唐揚げにああやっぱり並盛は普通にして、大盛二つを薄めに。それで全部つゆだくにしてもらおうかしら」
「えっと………………………………」
完全に手が止まるエイド。
クソッつゆだく、それにどれがうすめだよ。ああっ、それを削除じゃねえよ。
もう1度注文を繰り返すように頼むエイド。
しかし当然テイカーに打ち込むことはできない。
なんでだよ! なんで。
とエイドのテイカーを持つ手が大きく揺れ始めてきた。
そしてお客さんも少し不機嫌そうになってきたころ
「すいません、大変申し訳ないっす。最後に1度だけご注文をおうかがいしてもよろしいでしょうか?」
注文を聞き、素早くテイカーに打ち込むノス。
「すぐにお作りしますので少々お待ちくださいっす」
その場を立ち去るノスにすっと付いていくエイド。
「ほら落ちこんでる暇ないっすよ。提供の準備っす。おぼんを出してのせて、全部揃ったら伝票のせて」
はわわと慌てて出来上がった商品をエイドは運ぶ。
そして戻ってきてまた商品を運ぶ。
「どうだ? やっぱり人前だと違うものだろ?」
戻ってきてぜえぜえ吐息をこぼすエイドに長崎が声をかける。
「どうして……………………練習ではあんなに完璧だったのに」
「お客さんは綺麗な注文なんてしてくれない。遠山さんみたいにな。どんな注文にも対応出来るようにするためには、何回も何回も注文をとるしかねえ。それは他の仕事にもいえることだ」
長崎はしっかりとエイドの顔を見て、
「頑張れエイド。お前ならやれる。お前は仕事もテキパキこなせるし、才能もある。だから近道したくなる。だけど時には足踏みもしなくちゃならねえ。そうやって足踏みしたやつは本当に強いんだよ」
「俺頑張ります。長崎さんみたいになりたいです」
「なれるさ。それに抜ける。きっと。そのためにもノスにしっかりと教われよ!」
「はい!」
こうして新たな戦力が増えたのであった。
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