剣と魔法の世界で冒険はそこそこにして色々なお仕事の女の子達がはちゃめちゃにえっちなことになるお話

アレ

文字の大きさ
497 / 548
20章 えっちな魔導船とたいへんなお頭たちのお話

4. 襲撃


二人の会話は、船の性能、この季節の天候、アストリナの噂話と、当たり障りのないものに終始した。だが、その水面下では、互いの腹を探り合う鋭い視線が交錯していた。
アリーナの右目――賞金稼ぎ時代に受けた呪いによって変質した邪眼が、ニクスの放つオーラの色を読み取ろうと疼いていた。それは単なる悪意や欲望ではない。もっと複雑で、すべてを焼き尽くす業火のような情念と、すべてを諦めた氷のような諦観が入り混じった、矛盾した色をしている。
(この女……ただ者じゃない。一体、何を抱えている?)

二つの月光が、分厚い強化ガラスを通してラウンジに差し込み、深紅の絨毯の上に幾何学的な模様を描き出している。キィィン、という魔導機関の安定した駆動音が、心地よい振動として床から伝わってくる。アリーナの手にしたクリスタルグラスの中で、ルビー色の液体が、大月「ルース・マーレ」と小月「ルース・シアン」の光を孕んで、妖しく揺らめいていた。

アリーナの邪眼と化した右目が、目の前のダークエルフの女を射抜くように見つめる。業火と氷河が同居するような、矛盾した魂の色。それは、ただの商人や盗賊の頭領というだけでは説明がつかない、あまりにも深く、歪んだ情念の輝きであった。

沈黙を破ったのは、ニクスの方であった。彼女は、商人「オニキス」としての完璧な笑みを浮かべ、その血のように赤い瞳でアリーナを真っ直ぐに見据えた。

「――南の群島国家、ソル・マレイ。船長は、あの地にはお詳しいでしょうか?」

その声は、夜霧のようにしっとりと湿り気を帯び、聞く者の鼓膜を甘く撫でるかのようであった。

「……仕事柄、多少はな。アストリナからは最も遠い交易相手の一つだ。ここにはない、三つ目の月が昇る、美しい島々だよ」

アリーナは、かつての賞金稼ぎ『紅玉のリズ』時代、獲物を追ってかの地を訪れた日のことを思い出すように、目を細めた。グラスに残った葡萄酒をゆっくりと喉に流し込む。帝国製の上等なそれは、芳醇な果実の香りと共に、遠い記憶の血の匂いを呼び覚ますようであった。

「あの島々は、独自の文化と生態系を持っている。三つの月がもたらす複雑な潮の満ち引きと魔力の奔流が、大陸とは全く異なる理(ことわり)を生み出しているからな。大陸の常識が通じないことも多い。特に、古代遺跡から発掘される物品は、魔術師ギルドや富裕層が高値で取引する……あんたたちの狙いも、それかな?」

アリーナの探るような視線に対し、ニクスは艶然と微笑み、肩をすくめた。その仕草に合わせて、銀色の長い髪が、魔導ランプの光を受けて絹のように流れる。

「さあ、どうでしょう。我々はしがない商人ですので。ただ、珍しい品には目がなくて」

その完璧なはぐらかしに、アリーナは喉の奥で、クッ、と小さく笑った。その揺れが、彼女の豊かな乳房を挑発的に揺らす。

「まあ、いいさ。我が船の高額な運賃を値切るわけにはいかないが、サービスとして、情報を一つやろう」

アリーナは空になったグラスをマホガニーのテーブルに置くと、身を乗り出した。二人の間の距離が縮まり、アリーナの纏う上質な石鹸の香りと、ニクスの放つどこか野性的な、それでいて甘い肌の匂いが混じり合う。

「マレイ・ヌイ島の港町『三日月港』の裏通りに、『黒珊瑚の亭』という名の料理屋がある。表向きはしがない船乗り相手の飯屋だが、その実、島々のあらゆる裏情報が集まる場所だ」
「……ほう」
「主人の名は『水無瀬』。齢は五百年を超えるはずだ。どんな魔法を使っているかは知らんが、見た目はまだあどけなさの残る少年の姿をしている、風変わりな竜人族さ。大陸の人間をからかうのが何よりの趣味だが、無類の酒好き、そしてそれ以上に女好きでな」

アリーナは、ニクスの黒革の鎧がはち切れんばかりに主張する胸の膨らみと、引き締まったくびれへと視線を這わせ、わざとらしくニヤリと笑った。

「大陸の珍しい酒、特にドワーフが造った無骨なエールではない、人間の醸造した上等なブランデーあたりを持っていけば、口も緩むだろうさ。……まあ、酒で緩まないなら、あんたくらいの女がその身を呈して色仕掛けでもすれば、金では買えない最新の裏情報にありつけるかもしれんがね」

そのあからさまな挑発とも取れる言葉に、ニクスの赤い瞳が、一瞬、鋭い光を宿した。だが、それも束の間、彼女はすぐに妖艶な笑みを深める。

「……それは、いいことを聞きました。ですが船長、あなたも随分と、お詳しいようですね?水無瀬どの交渉の経験が?」

今度はニクスが探る番だった。その視線は、アリーナの深紅の船長コートの下、白いシャツ越しに浮かび上がる完璧な肉体の曲線を、品定めするように舐め回す。その挑発に、アリーナは答えなかった。ただ、夜の海に浮かぶ二つの月を映した血の色の瞳でニクスを見返し、その唇の端を、愉しげに吊り上げた。

「さあな。船乗りは、使えるものは何でも使うのさ。……それが、自分の身体であっても、な」

その言葉が意味するものを、遊郭で頂点を極めたニクスが理解できないはずがなかった。二人の女傑の間に、男たちには窺い知れない、濃密で背徳的な共感と、同時に激しいライバル意識が火花を散らす。

「船長は、この船旅が終われば、またアストリナへ?」
不意の質問に、アリーナの肩が微かに震えた。
「……ああ。私には、夫がいる。アストリナの港湾管理事務所で働く、真面目だけが取り柄の男だ」
夫グレゴリーの顔を思い浮かべ、その声には一瞬、船長ではなく「妻」としての柔らかさが滲む。
「奇遇ですね。あたいにも……私にも、アストリナの森の奥で暮らす、大切な旦那様がいますので。この仕事が終わればアストリナに戻るつもりです」
ニクスもまた、フィニアスの顔を思い浮かべ、その口調から「オニキス」の仮面が一瞬剥がれ落ちる。

互いに、愛する夫を持ちながら、その夫には決して明かせない「裏の顔」を持つ女。一瞬、二人の間に、言葉にはできない奇妙な共感と、同類であるが故の鋭い緊張が走った。

その空気を破ったのは、歓談スペースの扉をノックする無骨な音だった。
「お頭。そろそろ、打ち合わせの時間です」
立っていたのは、ニクスの腹心であるガイオンだった。その筋骨隆々の巨体は、狭い船室では異様な圧迫感を放つ。その視線は、アリーナを一瞥すると、すぐにニクスへと注がれる。その瞳の奥に、忠誠心とは異なる、粘つくような欲望の色が浮かんでいることに、アリーナの邪眼は気づいていた。
「……ああ、もうそんな時間か」
ニクスは、我に返ったように立ち上がった。
「アリーナ船長、今夜はありがとう。おかげで、良い夜になりました。……また、明日、お話しできると嬉しい」
そう言って微笑むニクスの顔は、再び商人「オニキス」のものに戻っていた。
ガイオンに促され、歓談スペースを後にするニクスは、すれ違いざま、ガイオンの脇腹を肘で小さく小突いた。
「……大事な話の邪魔をするな、馬鹿者」
「へい。ですが、仕事は仕事ですので、お頭」
ガイオンは、その軽い叱責を、柳に風と受け流す。
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。