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第9話 国王、最初の仕事
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「えーっと……とりあえず、その、顔を上げてくれないかな、フィーネさん」
美しいエルフに跪かれたままでは、どうにも落ち着かない。俺は慌ててそう促した。
フィーネは「はっ」と短く応えると、滑らかな動作で立ち上がる。改めて間近で見ると、その整った顔立ちには思わず見惚れてしまうほどだ。
「それで、我が王。まずは最初の勅命を」
「ちょ、勅命なんて大げさな! っていうか、そもそも俺は王様なんて柄じゃ……」
俺がスローライフを夢見るただの元サラリーマンであることを説明しようとしたが、フィーネは真剣な眼差しで俺の言葉を遮った。
「ご謙遜を。貴方様がこの国を創り、私をここに召喚された。それだけで、貴方様が王たる資格を持つ、偉大なお方であることの証明にございます」
その瞳には、一点の曇りもない絶対的な信頼と忠誠が宿っている。
どうやら、ガチャで召喚された彼女には、俺が「王」であることが絶対の真理としてインプットされているらしい。何を言っても無駄そうだ。
「……わかった。もう王でいいよ」
俺は早々にあきらめて、大きくため息をついた。
こうなったら仕方がない。まずは現状を共有し、この有能そうな部下に助けてもらうのが一番の近道だろう。
「じゃあ、勅命……というか、お願いになるんだけど。この国の現状を把握して、何が必要か教えてほしい。見ての通り、城と壁しかないんだ。国民も、今ここにいる俺と、君だけ」
俺はフィーネを伴って、城の中を歩き回った。玉座の間、空っぽの居住区画、そして城の外に出て、だだっ広い城壁の内側を見渡す。
その間、俺は自分が異世界から来たこと、スキルが【毎日無料10連ガチャ】であること、そして昨日のガチャで意図せずこの国を建国してしまったことを、包み隠さず話した。
俺の突拍子もない話を聞いても、フィーネは驚くそぶりも見せず、ただ静かに頷いていた。
そして、全ての場所を見て回り、俺の話を聞き終えると、彼女はきっぱりとした口調で言った。
「承知いたしました。ガチャという未知の力、実に興味深いものです。どのような経緯であれ、貴方様が我が王であることに変わりはありません」
彼女の揺るぎない忠誠心に、少しだけ救われたような気がした。
「王よ。現状を拝見した上で、建築家として進言いたします。最優先で取り組むべき課題は二つ」
フィーネは、すっと指を二本立てた。
「一つは、王の生活基盤の確立。城はありますが、家具も寝具もない。これでは王の尊厳に関わります。まずは執務室と寝室の整備を」
「ああ、それは確かに……」
昨日まで使っていた魔法のテントが、やけに恋しくなった。
「そして、より喫緊の課題がもう一つ。生命の源である、水源の確保です。この城、そして城壁内に、井戸一つございません。飲み水がなければ、国は一日たりとも成り立ちませぬ」
言われてみれば、その通りだった。これまでガチャで出た水で生活していたから、全く意識していなかった。
俺はゴクリと喉を鳴らす。
「フィーネ。君の言う通りだ。まずはその二つから始めよう」
「はっ。では早速、水源を探すための測量に取り掛かりましょう。ご案内いたします、我が王」
俺はフィーネに導かれ、国王としての最初の仕事に取り掛かるため、誰もいない城下町(予定地)へと足を踏み出した。
スローライフとは程遠い、けれど確かな一歩だった。
美しいエルフに跪かれたままでは、どうにも落ち着かない。俺は慌ててそう促した。
フィーネは「はっ」と短く応えると、滑らかな動作で立ち上がる。改めて間近で見ると、その整った顔立ちには思わず見惚れてしまうほどだ。
「それで、我が王。まずは最初の勅命を」
「ちょ、勅命なんて大げさな! っていうか、そもそも俺は王様なんて柄じゃ……」
俺がスローライフを夢見るただの元サラリーマンであることを説明しようとしたが、フィーネは真剣な眼差しで俺の言葉を遮った。
「ご謙遜を。貴方様がこの国を創り、私をここに召喚された。それだけで、貴方様が王たる資格を持つ、偉大なお方であることの証明にございます」
その瞳には、一点の曇りもない絶対的な信頼と忠誠が宿っている。
どうやら、ガチャで召喚された彼女には、俺が「王」であることが絶対の真理としてインプットされているらしい。何を言っても無駄そうだ。
「……わかった。もう王でいいよ」
俺は早々にあきらめて、大きくため息をついた。
こうなったら仕方がない。まずは現状を共有し、この有能そうな部下に助けてもらうのが一番の近道だろう。
「じゃあ、勅命……というか、お願いになるんだけど。この国の現状を把握して、何が必要か教えてほしい。見ての通り、城と壁しかないんだ。国民も、今ここにいる俺と、君だけ」
俺はフィーネを伴って、城の中を歩き回った。玉座の間、空っぽの居住区画、そして城の外に出て、だだっ広い城壁の内側を見渡す。
その間、俺は自分が異世界から来たこと、スキルが【毎日無料10連ガチャ】であること、そして昨日のガチャで意図せずこの国を建国してしまったことを、包み隠さず話した。
俺の突拍子もない話を聞いても、フィーネは驚くそぶりも見せず、ただ静かに頷いていた。
そして、全ての場所を見て回り、俺の話を聞き終えると、彼女はきっぱりとした口調で言った。
「承知いたしました。ガチャという未知の力、実に興味深いものです。どのような経緯であれ、貴方様が我が王であることに変わりはありません」
彼女の揺るぎない忠誠心に、少しだけ救われたような気がした。
「王よ。現状を拝見した上で、建築家として進言いたします。最優先で取り組むべき課題は二つ」
フィーネは、すっと指を二本立てた。
「一つは、王の生活基盤の確立。城はありますが、家具も寝具もない。これでは王の尊厳に関わります。まずは執務室と寝室の整備を」
「ああ、それは確かに……」
昨日まで使っていた魔法のテントが、やけに恋しくなった。
「そして、より喫緊の課題がもう一つ。生命の源である、水源の確保です。この城、そして城壁内に、井戸一つございません。飲み水がなければ、国は一日たりとも成り立ちませぬ」
言われてみれば、その通りだった。これまでガチャで出た水で生活していたから、全く意識していなかった。
俺はゴクリと喉を鳴らす。
「フィーネ。君の言う通りだ。まずはその二つから始めよう」
「はっ。では早速、水源を探すための測量に取り掛かりましょう。ご案内いたします、我が王」
俺はフィーネに導かれ、国王としての最初の仕事に取り掛かるため、誰もいない城下町(予定地)へと足を踏み出した。
スローライフとは程遠い、けれど確かな一歩だった。
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