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第25話 次なる一手
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王としての覚悟を決めた翌朝、俺は玉座の間に全ての軍勢を集めていた。
玉座の前には、四天王筆頭となったリリアナ。その両脇には、オークジェネラルとコボルトリーダーが控えている。そして、広間を埋め尽くすように、オーク、コボルト、ゴブリン、そして新たに創造したガーゴイルの代表たちが整然と並び、俺の言葉を待っていた。
彼らは、俺が創り出した眷属。俺の民。
昨日までの俺は、彼らを復讐のための駒としか見ていなかった。だが、今は違う。彼らの顔を一人ひとり見渡すと、その目に宿る純粋な忠誠心と信頼が、ずしりと重い責任となって俺の肩にのしかかる。
俺は、この者たちの未来を背負わなければならない。
復讐は果たす。だが、それは通過点に過ぎない。俺の最終目的は、彼らが誰にも脅かされることなく、誇りを持って生きられる国を創ることだ。
「レオン様。皆、集まりました」
リリアナが、静かに俺に告げる。
俺は玉座から立ち上がり、ゆっくりと壇上を降りた。そして、臣下たちと同じ目線に立つ。その行動に、魔物たちが僅かにどよめいた。
「我が同胞たちよ。聞け」
俺の声は、魔王のカリスマによって増幅され、広間の隅々にまで響き渡った。
「我々はこれまで、来るべき人間との戦いに備え、力を蓄えてきた。この魔王城を要塞化し、軍備を整えた。その備えは、これからも揺らぐことはない」
俺は一度言葉を切り、彼らの目を見据えた。
「だが、我々の目的は、ただ人間どもに復讐し、この城に引きこもることではない。我らが目指すは、この地に我ら魔族の、我らだけの永遠の王国を築くことだ。そのためには、今の我々の力だけでは足りない」
俺の言葉に、オークジェネラルが低く唸った。力が足りない、という言葉に不満を感じたのかもしれない。
俺は、そのオークジェネラルに視線を向けた。
「お前たちの力は疑っていない。お前たちは、俺が誇る最強の兵士だ。だが、国とは軍事力だけで成り立つものではない。多様な民がいてこそ、国は豊かになり、強くなる」
俺は、リリアナに目配せをした。彼女は心得たとばかりに一歩前に出て、口を開いた。
「レオン様のお言葉通りです。かつて、先代魔王様が率いた魔王軍には、様々な種族がおりました。我ら吸血鬼族、力自慢のオーガ族、狡猾なゴブリン族、そして誇り高き竜人族。彼らが互いに手を取り合うことで、魔王軍は大陸を震撼させるほどの力を持ったのです」
竜人族。
その言葉に、俺は興味を引かれた。
俺は再び玉座に戻ると、リリアナに問いかけた。
「先代が討たれた後、その者たちはどうなったのだ」
「……多くは、人間たちに狩られ、あるいは奴隷とされました。生き残った者たちも、人間たちの勢力圏を避け、痩せた土地や危険な秘境へと追いやられ、細々と暮らしているはずです。もはや、かつてのような組織的な繋がりは失われているでしょう」
リリアナは、悔しそうに唇を噛んだ。
「ならば、俺たちが再び彼らを束ねる」
俺は、断言した。
「追いやられ、虐げられている同胞がいるのなら、魔王たる俺が手を差し伸べるのが道理だ。彼らを解放し、我が旗の下に集わせる」
これが、俺の王としての最初の仕事だ。
「リリアナ。お前の情報網で、この城の周辺に存在する魔族の集落を全て洗い出せ。可能な限り、詳細な情報を」
「はっ、御意」
リリアナが恭しく頭を下げると、彼女の影から無数の使い魔たちが飛び立ち、城の四方八方へと散っていった。
それから半日後。
俺とリリアナは、玉座の間で作戦会議を開いていた。床には、リリアナの魔法によって描かれた巨大な周辺地図が広がり、その上にはいくつかの光点が記されている。それが、使い魔たちが発見した魔族の集落だった。
「報告いたします。最も近いのは、東の湿地帯に暮らすリザードマンの部族。数は百程度。次に、北の山脈地帯にオークの独立した大部族が。そして……」
リリアナは、地図の南西、魔王城からかなり離れた不毛の荒野を指差した。
「ここに、竜人族の生き残りが集落を形成しているとの情報がありました」
「竜人族……。詳しく聞かせろ」
「彼らは、人間と竜の血を引く半竜人。個々の戦闘能力は極めて高く、特にその誇り高さは魔族の中でも随一と言われています。かつては先代魔王軍の中核を担う、最強の戦士団でした。ですが、魔王軍が敗れた後、彼らは人間たちの執拗な『竜狩り』に遭い、その数を大きく減らしました。生き残った者たちは、故郷を追われ、植物も育たぬこの灼熱の荒野で、どうにか命を繋いでいるようです」
痩せた土地で、誇りを胸に耐え忍ぶ最強の戦士たち。
その姿が、俺の心を強く揺さぶった。
彼らこそ、俺が最初に手を差し伸べるべき同胞だ。そして、彼らのような誇り高い戦士たちが俺に膝を折れば、それは他の魔族たちへの何よりの示威となるだろう。
「決めた」
俺は、地図上の竜人族の集落を指差した。
「最初の接触相手は、彼らだ」
その決断に、リリアナは僅かに顔を曇らせた。
「……レオン様。賢明なご判断とは言えません。誇り高い彼らが、素性の知れぬ新しい魔王に、そう易々と従うとは思えません。まずは、与しやすいリザードマンあたりから支配下に置き、少しずつ勢力を拡大するべきでは?」
「それでは遅い」
俺は、リリアナの懸念をきっぱりと否定した。
「それに、これはただの勢力拡大ではない。王としての、俺の覚悟を示すための儀式だ。最も困難な道を選び、それを乗り越えてこそ、俺は真の王として認められる」
俺は立ち上がり、リリアナの目を真っ直ぐに見つめた。
「俺は、自ら赴く。この足で、竜人族の集落へと」
「なっ……! なりませぬ、レオン様! 危険すぎます!」
リリアナが、血相を変えて反対する。
「あなた様のお身に万が一のことがあれば……!」
「俺の力は、お前が一番よく知っているだろう。それに、王自らが頭を下げて迎えに行かずして、誰がついてくるというのだ」
俺の瞳に宿る、揺るぎない決意を見て、リリアナはぐっと言葉を詰まらせた。
「……どうしても、と仰るのであれば……」
やがて、彼女は深いため息と共にかぶりを振った。
「せめて、このリリアナも、そして護衛の精鋭もお供させてください。それが、お許しいただく最低条件です」
「分かった。お前の同行は許可しよう。護衛は、オークジェネラルとコボルトリーダー、それに彼らの部下から数名ずつ選抜しろ。大軍で行っては、無用な警戒心を煽るだけだ」
こうして、次なる一手は定まった。
俺の目的は、もはやクラスメイトへの復讐だけに留まらない。魔族を統べ、この地に新たな秩序を打ち立てる。そのための、大きな一歩が今、踏み出されようとしていた。
俺は、窓の外に広がる未知の世界を見据えた。
待っていろ、誇り高き竜人族よ。
新しい魔王が、お前たちを迎えに行く。
復讐劇の裏で、壮大な建国譚が、静かに、しかし確かに動き始めていた。
---
**第一部:魔王覚醒編【完】**
玉座の前には、四天王筆頭となったリリアナ。その両脇には、オークジェネラルとコボルトリーダーが控えている。そして、広間を埋め尽くすように、オーク、コボルト、ゴブリン、そして新たに創造したガーゴイルの代表たちが整然と並び、俺の言葉を待っていた。
彼らは、俺が創り出した眷属。俺の民。
昨日までの俺は、彼らを復讐のための駒としか見ていなかった。だが、今は違う。彼らの顔を一人ひとり見渡すと、その目に宿る純粋な忠誠心と信頼が、ずしりと重い責任となって俺の肩にのしかかる。
俺は、この者たちの未来を背負わなければならない。
復讐は果たす。だが、それは通過点に過ぎない。俺の最終目的は、彼らが誰にも脅かされることなく、誇りを持って生きられる国を創ることだ。
「レオン様。皆、集まりました」
リリアナが、静かに俺に告げる。
俺は玉座から立ち上がり、ゆっくりと壇上を降りた。そして、臣下たちと同じ目線に立つ。その行動に、魔物たちが僅かにどよめいた。
「我が同胞たちよ。聞け」
俺の声は、魔王のカリスマによって増幅され、広間の隅々にまで響き渡った。
「我々はこれまで、来るべき人間との戦いに備え、力を蓄えてきた。この魔王城を要塞化し、軍備を整えた。その備えは、これからも揺らぐことはない」
俺は一度言葉を切り、彼らの目を見据えた。
「だが、我々の目的は、ただ人間どもに復讐し、この城に引きこもることではない。我らが目指すは、この地に我ら魔族の、我らだけの永遠の王国を築くことだ。そのためには、今の我々の力だけでは足りない」
俺の言葉に、オークジェネラルが低く唸った。力が足りない、という言葉に不満を感じたのかもしれない。
俺は、そのオークジェネラルに視線を向けた。
「お前たちの力は疑っていない。お前たちは、俺が誇る最強の兵士だ。だが、国とは軍事力だけで成り立つものではない。多様な民がいてこそ、国は豊かになり、強くなる」
俺は、リリアナに目配せをした。彼女は心得たとばかりに一歩前に出て、口を開いた。
「レオン様のお言葉通りです。かつて、先代魔王様が率いた魔王軍には、様々な種族がおりました。我ら吸血鬼族、力自慢のオーガ族、狡猾なゴブリン族、そして誇り高き竜人族。彼らが互いに手を取り合うことで、魔王軍は大陸を震撼させるほどの力を持ったのです」
竜人族。
その言葉に、俺は興味を引かれた。
俺は再び玉座に戻ると、リリアナに問いかけた。
「先代が討たれた後、その者たちはどうなったのだ」
「……多くは、人間たちに狩られ、あるいは奴隷とされました。生き残った者たちも、人間たちの勢力圏を避け、痩せた土地や危険な秘境へと追いやられ、細々と暮らしているはずです。もはや、かつてのような組織的な繋がりは失われているでしょう」
リリアナは、悔しそうに唇を噛んだ。
「ならば、俺たちが再び彼らを束ねる」
俺は、断言した。
「追いやられ、虐げられている同胞がいるのなら、魔王たる俺が手を差し伸べるのが道理だ。彼らを解放し、我が旗の下に集わせる」
これが、俺の王としての最初の仕事だ。
「リリアナ。お前の情報網で、この城の周辺に存在する魔族の集落を全て洗い出せ。可能な限り、詳細な情報を」
「はっ、御意」
リリアナが恭しく頭を下げると、彼女の影から無数の使い魔たちが飛び立ち、城の四方八方へと散っていった。
それから半日後。
俺とリリアナは、玉座の間で作戦会議を開いていた。床には、リリアナの魔法によって描かれた巨大な周辺地図が広がり、その上にはいくつかの光点が記されている。それが、使い魔たちが発見した魔族の集落だった。
「報告いたします。最も近いのは、東の湿地帯に暮らすリザードマンの部族。数は百程度。次に、北の山脈地帯にオークの独立した大部族が。そして……」
リリアナは、地図の南西、魔王城からかなり離れた不毛の荒野を指差した。
「ここに、竜人族の生き残りが集落を形成しているとの情報がありました」
「竜人族……。詳しく聞かせろ」
「彼らは、人間と竜の血を引く半竜人。個々の戦闘能力は極めて高く、特にその誇り高さは魔族の中でも随一と言われています。かつては先代魔王軍の中核を担う、最強の戦士団でした。ですが、魔王軍が敗れた後、彼らは人間たちの執拗な『竜狩り』に遭い、その数を大きく減らしました。生き残った者たちは、故郷を追われ、植物も育たぬこの灼熱の荒野で、どうにか命を繋いでいるようです」
痩せた土地で、誇りを胸に耐え忍ぶ最強の戦士たち。
その姿が、俺の心を強く揺さぶった。
彼らこそ、俺が最初に手を差し伸べるべき同胞だ。そして、彼らのような誇り高い戦士たちが俺に膝を折れば、それは他の魔族たちへの何よりの示威となるだろう。
「決めた」
俺は、地図上の竜人族の集落を指差した。
「最初の接触相手は、彼らだ」
その決断に、リリアナは僅かに顔を曇らせた。
「……レオン様。賢明なご判断とは言えません。誇り高い彼らが、素性の知れぬ新しい魔王に、そう易々と従うとは思えません。まずは、与しやすいリザードマンあたりから支配下に置き、少しずつ勢力を拡大するべきでは?」
「それでは遅い」
俺は、リリアナの懸念をきっぱりと否定した。
「それに、これはただの勢力拡大ではない。王としての、俺の覚悟を示すための儀式だ。最も困難な道を選び、それを乗り越えてこそ、俺は真の王として認められる」
俺は立ち上がり、リリアナの目を真っ直ぐに見つめた。
「俺は、自ら赴く。この足で、竜人族の集落へと」
「なっ……! なりませぬ、レオン様! 危険すぎます!」
リリアナが、血相を変えて反対する。
「あなた様のお身に万が一のことがあれば……!」
「俺の力は、お前が一番よく知っているだろう。それに、王自らが頭を下げて迎えに行かずして、誰がついてくるというのだ」
俺の瞳に宿る、揺るぎない決意を見て、リリアナはぐっと言葉を詰まらせた。
「……どうしても、と仰るのであれば……」
やがて、彼女は深いため息と共にかぶりを振った。
「せめて、このリリアナも、そして護衛の精鋭もお供させてください。それが、お許しいただく最低条件です」
「分かった。お前の同行は許可しよう。護衛は、オークジェネラルとコボルトリーダー、それに彼らの部下から数名ずつ選抜しろ。大軍で行っては、無用な警戒心を煽るだけだ」
こうして、次なる一手は定まった。
俺の目的は、もはやクラスメイトへの復讐だけに留まらない。魔族を統べ、この地に新たな秩序を打ち立てる。そのための、大きな一歩が今、踏み出されようとしていた。
俺は、窓の外に広がる未知の世界を見据えた。
待っていろ、誇り高き竜人族よ。
新しい魔王が、お前たちを迎えに行く。
復讐劇の裏で、壮大な建国譚が、静かに、しかし確かに動き始めていた。
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**第一部:魔王覚醒編【完】**
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