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第43話 失墜する賢者
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「……でっち上げだ……!」
長い沈黙の後、鈴木が絞り出したのは、そのあまりにも見苦しい一言だった。彼は、震える指先で俺を指差した。
「そ、そうだ! 全て、魔王であるこいつが仕組んだ罠だ! 映像も、書類も、全て奴の魔法による幻覚に過ぎない! 皆、騙されるな!」
必死の叫び。だが、その声は空しく大広間に響くだけだった。もはや、彼の言葉を信じようとする者は、誰もいない。スクリーンに映し出された証拠は、あまりにも鮮明で、あまりにも決定的すぎた。そして何より、今の彼の狼狽しきった姿が、その証拠が真実であることを何よりも雄弁に物語っていた。
「……鈴木智也」
冷たく、厳かな声が響いた。声の主は、玉座からゆっくりと立ち上がったエルトリア国王だった。その顔には、信頼していた者に裏切られた深い悲しみと、王としての冷徹な怒りが浮かんでいた。
「そなたに、何か申し開きはあるか」
「陛下! ですから、これは罠だと……!」
「黙らぬか!」
国王の一喝が、鈴木の言葉を遮った。
「朕は、そなたを信じた。そなたの知識が、この国を豊かにすると信じ、王家最高顧問という、破格の地位まで与えようとした。だが、そなたはその信頼を裏切り、国を、民を、己が欲望のために喰い物にした。その罪、万死に値する!」
国王の断罪の言葉に、鈴木はがくりと膝をついた。
もはや、彼に味方する者は、この場に一人もいなかった。彼と結託していた貴族たちは、我先にと彼から距離を取り、「我々は騙されていたのです!」と見苦しい言い訳を始めている。
「……賢者、鈴木智也よ」
国王は、静かに、だが重い声で判決を下した。
「そなたの全ての地位と財産を剥奪し、平民へと降格させる。そして、その身柄を拘束し、国家への背信行為の罪で、法の裁きにかけるものとする! 衛兵! こやつを捕らえよ!」
「はっ!」
これまで俺たちを囲んでいた騎士たちが、矛先を変え、一斉に鈴木へと殺到した。
「よ、よせ! 離せ! 僕は賢者だぞ! この僕に触れるな!」
鈴木は、無様に抵抗し、魔法を使おうとした。だが、その瞬間、俺の隣に控えていたヴェスパーが、杖を軽く床に打ち付けた。
「アンチ・マジックフィールド」
詠唱すらもない、一言。それだけで、鈴木の周囲の魔力の流れが完全に停止した。彼は、力の源泉である魔法を封じられ、ただの人となった。
「な……魔法が……使えない……!?」
絶望する鈴木の両腕は、騎士たちによって力ずくで背中に回され、魔力を封じる枷を嵌められた。
かつて、国の頂点に立っていた男が、罪人として無様に引きずられていく。
その姿を、クラスメイトたちは、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
赤城ですら、そのあまりにも鮮やかな失脚劇に、言葉を失っている。
俺は、その光景に満足し、踵を返そうとした。俺の目的は、もう果たされた。
だが、その時だった。
「……待て」
引きずられていく鈴木が、俺を振り返り、憎悪に満ちた目で睨みつけた。
「待てよ、影山……!」
彼の口調は、もはや賢者のものではなく、かつての教室で俺を見下していた、傲慢な生徒会長のものに戻っていた。
「……お前……お前さえいなければ……! 俺は、この世界の王になれたんだ! なのに、お前ごときが……! 俺の計画を……!」
その声は、もはや負け犬の遠吠えに過ぎなかった。
俺は、足を止め、ゆっくりと彼を振り返った。
「勘違いするな、鈴木」
俺は、冷たく言い放った。
「お前は、王になどなれない。最初から、その器ではなかった。お前は、ただ自分の欲望のために力を使い、他者を踏み台にしただけだ。そんな奴は、王ではなく、ただの簒奪者、あるいはただの泥棒だ」
俺の言葉が、彼の最後のプライドを打ち砕いた。
「う……うわああああああ!」
鈴木は、意味のない絶叫を上げながら、広間の外へと連れ出されていった。
彼の失脚劇を見届けた俺は、改めて国王へと向き直った。
「さて、陛下。邪魔者は消えた。だが、この国の腐敗の根は、まだ残っているようだな」
俺の視線は、顔面蒼白で震えている、他の貴族たちに向けられていた。
国王は、俺の意図を察し、苦々しげに顔を歪めた。
「……魔王よ。そなたの目的は、一体何だ。我が国を、滅ぼしに来たのか」
「滅ぼしはしない。ただ、掃除をしに来ただけだ」
俺は、ヴェスパーが作成した報告書の写しを、魔法で国王の足元に転移させた。
「そこに、鈴木と結託していた者たちのリストと、その証拠が全て記されている。どう処分するかは、陛下、あなた次第だ。だが、もしあなたが彼らを庇い、この国の腐敗を放置するというのなら……」
俺は、そこで言葉を区切った。
そして、魔王としての威圧感を、最大限に解放する。
大広間の空気が凍りつき、シャンデリアの灯りが揺らめいた。貴族たちは、その場にひれ伏し、国王ですら息を呑んだ。
「その時は、俺がこの国ごと、浄化することになる」
その言葉は、脅しではなかった。
俺の、揺るぎない意思表示だった。
国王は、しばらく俺を睨みつけていたが、やがて深いため息をつくと、ゆっくりと頭を下げた。
「……分かった。約束しよう。この国の膿は、朕が責任を持って、全て出し切る、と」
「賢明な判断だ」
俺は、威圧感を収めた。
「用は済んだ。我々は帰らせてもらう」
俺が背を向けると、慌てたように赤城が前に出た。
「待て、影山! 俺と勝負しろ!」
その顔には、焦りと、ライバルと認めていた鈴木が失脚したことへの動揺が浮かんでいた。
俺は、彼を一瞥しただけで、答えた。
「お前は、まだその舞台に立つ資格がない」
「なっ……!」
「お前が、勇者として、そして一人の人間として、本当に背負うべきものを見つけた時。その時が来れば、相手をしてやる」
俺は、それだけを言い残し、リリアナたちと共に、悠然と大広間を後にした。
騎士たちは、俺たちを止めることができない。
クラスメイトたちも、ただ道を開けるだけだった。
白石紬だけが、何か言いたげに俺を見ていたが、その声が発せられることはなかった。
その日の夜、エルトリア王国の王都では、歴史に残る大粛清が始まった。
鈴木に連座する形で、数十人もの貴族や役人が捕らえられ、その財産は没収された。
そして、全てを失った鈴木智也は、地下牢に投獄された後、民衆の前に引きずり出された。
かつて彼を賢者と崇めた民衆は、今や手のひらを返し、彼に向かって罵声を浴びせ、石や汚物を投げつけた。
地位も、名誉も、財産も、そして魔法さえも失い、ただの無力な人間として、かつて自分が見下していた民衆から石を投げつけられる。
彼に与えられたのは、社会的な死。
そして、生きながらにして味わう、終わることのない屈辱という名の地獄だった。
俺の、第二の復讐は、こうして完璧な形で完了した。
長い沈黙の後、鈴木が絞り出したのは、そのあまりにも見苦しい一言だった。彼は、震える指先で俺を指差した。
「そ、そうだ! 全て、魔王であるこいつが仕組んだ罠だ! 映像も、書類も、全て奴の魔法による幻覚に過ぎない! 皆、騙されるな!」
必死の叫び。だが、その声は空しく大広間に響くだけだった。もはや、彼の言葉を信じようとする者は、誰もいない。スクリーンに映し出された証拠は、あまりにも鮮明で、あまりにも決定的すぎた。そして何より、今の彼の狼狽しきった姿が、その証拠が真実であることを何よりも雄弁に物語っていた。
「……鈴木智也」
冷たく、厳かな声が響いた。声の主は、玉座からゆっくりと立ち上がったエルトリア国王だった。その顔には、信頼していた者に裏切られた深い悲しみと、王としての冷徹な怒りが浮かんでいた。
「そなたに、何か申し開きはあるか」
「陛下! ですから、これは罠だと……!」
「黙らぬか!」
国王の一喝が、鈴木の言葉を遮った。
「朕は、そなたを信じた。そなたの知識が、この国を豊かにすると信じ、王家最高顧問という、破格の地位まで与えようとした。だが、そなたはその信頼を裏切り、国を、民を、己が欲望のために喰い物にした。その罪、万死に値する!」
国王の断罪の言葉に、鈴木はがくりと膝をついた。
もはや、彼に味方する者は、この場に一人もいなかった。彼と結託していた貴族たちは、我先にと彼から距離を取り、「我々は騙されていたのです!」と見苦しい言い訳を始めている。
「……賢者、鈴木智也よ」
国王は、静かに、だが重い声で判決を下した。
「そなたの全ての地位と財産を剥奪し、平民へと降格させる。そして、その身柄を拘束し、国家への背信行為の罪で、法の裁きにかけるものとする! 衛兵! こやつを捕らえよ!」
「はっ!」
これまで俺たちを囲んでいた騎士たちが、矛先を変え、一斉に鈴木へと殺到した。
「よ、よせ! 離せ! 僕は賢者だぞ! この僕に触れるな!」
鈴木は、無様に抵抗し、魔法を使おうとした。だが、その瞬間、俺の隣に控えていたヴェスパーが、杖を軽く床に打ち付けた。
「アンチ・マジックフィールド」
詠唱すらもない、一言。それだけで、鈴木の周囲の魔力の流れが完全に停止した。彼は、力の源泉である魔法を封じられ、ただの人となった。
「な……魔法が……使えない……!?」
絶望する鈴木の両腕は、騎士たちによって力ずくで背中に回され、魔力を封じる枷を嵌められた。
かつて、国の頂点に立っていた男が、罪人として無様に引きずられていく。
その姿を、クラスメイトたちは、ただ呆然と見つめることしかできなかった。
赤城ですら、そのあまりにも鮮やかな失脚劇に、言葉を失っている。
俺は、その光景に満足し、踵を返そうとした。俺の目的は、もう果たされた。
だが、その時だった。
「……待て」
引きずられていく鈴木が、俺を振り返り、憎悪に満ちた目で睨みつけた。
「待てよ、影山……!」
彼の口調は、もはや賢者のものではなく、かつての教室で俺を見下していた、傲慢な生徒会長のものに戻っていた。
「……お前……お前さえいなければ……! 俺は、この世界の王になれたんだ! なのに、お前ごときが……! 俺の計画を……!」
その声は、もはや負け犬の遠吠えに過ぎなかった。
俺は、足を止め、ゆっくりと彼を振り返った。
「勘違いするな、鈴木」
俺は、冷たく言い放った。
「お前は、王になどなれない。最初から、その器ではなかった。お前は、ただ自分の欲望のために力を使い、他者を踏み台にしただけだ。そんな奴は、王ではなく、ただの簒奪者、あるいはただの泥棒だ」
俺の言葉が、彼の最後のプライドを打ち砕いた。
「う……うわああああああ!」
鈴木は、意味のない絶叫を上げながら、広間の外へと連れ出されていった。
彼の失脚劇を見届けた俺は、改めて国王へと向き直った。
「さて、陛下。邪魔者は消えた。だが、この国の腐敗の根は、まだ残っているようだな」
俺の視線は、顔面蒼白で震えている、他の貴族たちに向けられていた。
国王は、俺の意図を察し、苦々しげに顔を歪めた。
「……魔王よ。そなたの目的は、一体何だ。我が国を、滅ぼしに来たのか」
「滅ぼしはしない。ただ、掃除をしに来ただけだ」
俺は、ヴェスパーが作成した報告書の写しを、魔法で国王の足元に転移させた。
「そこに、鈴木と結託していた者たちのリストと、その証拠が全て記されている。どう処分するかは、陛下、あなた次第だ。だが、もしあなたが彼らを庇い、この国の腐敗を放置するというのなら……」
俺は、そこで言葉を区切った。
そして、魔王としての威圧感を、最大限に解放する。
大広間の空気が凍りつき、シャンデリアの灯りが揺らめいた。貴族たちは、その場にひれ伏し、国王ですら息を呑んだ。
「その時は、俺がこの国ごと、浄化することになる」
その言葉は、脅しではなかった。
俺の、揺るぎない意思表示だった。
国王は、しばらく俺を睨みつけていたが、やがて深いため息をつくと、ゆっくりと頭を下げた。
「……分かった。約束しよう。この国の膿は、朕が責任を持って、全て出し切る、と」
「賢明な判断だ」
俺は、威圧感を収めた。
「用は済んだ。我々は帰らせてもらう」
俺が背を向けると、慌てたように赤城が前に出た。
「待て、影山! 俺と勝負しろ!」
その顔には、焦りと、ライバルと認めていた鈴木が失脚したことへの動揺が浮かんでいた。
俺は、彼を一瞥しただけで、答えた。
「お前は、まだその舞台に立つ資格がない」
「なっ……!」
「お前が、勇者として、そして一人の人間として、本当に背負うべきものを見つけた時。その時が来れば、相手をしてやる」
俺は、それだけを言い残し、リリアナたちと共に、悠然と大広間を後にした。
騎士たちは、俺たちを止めることができない。
クラスメイトたちも、ただ道を開けるだけだった。
白石紬だけが、何か言いたげに俺を見ていたが、その声が発せられることはなかった。
その日の夜、エルトリア王国の王都では、歴史に残る大粛清が始まった。
鈴木に連座する形で、数十人もの貴族や役人が捕らえられ、その財産は没収された。
そして、全てを失った鈴木智也は、地下牢に投獄された後、民衆の前に引きずり出された。
かつて彼を賢者と崇めた民衆は、今や手のひらを返し、彼に向かって罵声を浴びせ、石や汚物を投げつけた。
地位も、名誉も、財産も、そして魔法さえも失い、ただの無力な人間として、かつて自分が見下していた民衆から石を投げつけられる。
彼に与えられたのは、社会的な死。
そして、生きながらにして味わう、終わることのない屈辱という名の地獄だった。
俺の、第二の復讐は、こうして完璧な形で完了した。
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