モブモンスターですが何か? ~VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件~

夏見ナイ

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エピソード17:千貌の守護像

深淵へと続くかのような巨大な扉。ゼロは、その圧倒的な存在感と、扉から放たれる冷たく重い『意思』に、しばし立ち尽くしていた。これは、単なる物理的な障害ではない。この先に進む資格があるか否かを問うているような、精神的な圧迫感さえあった。

『どうやって開ける……?』

鍵穴はない。物理的に破壊するのは、この扉の材質と魔力的な防御力を考えると現実的ではないだろう。【石材知識(上級)】スキルは、この扉が単一の巨大な魔力石、あるいはそれに近い物質から削り出されていることを示唆していた。

ゼロは【魔力感知(低級)】スキルを最大まで高め、扉の魔力の流れを探った。扉全体が複雑な魔力回路で覆われているが、特に扉に彫り込まれた複数の怪物の顔のレリーフ部分に、魔力が集中しているようだった。それぞれの顔が、異なる属性の魔力をわずかに帯びている。怒りの顔は火、悲しみの顔は水、苦悶の顔は土、そして虚無の顔は風……といった具合に。

(この顔に、対応する何かをぶつければいいのか?)

単純な属性攻撃か? いや、それだけでは足りない気がする。もっと根源的な何か……。

ゼロは、自分が持つスキルの中に、これらの属性に対応するものがないか考えた。火属性はない。水属性耐性は得たが、攻撃手段はない。土属性は【装甲化】に含まれる耐性と、【粘性操作】がある。風属性はない。

だが、ゼロは気づいた。自分が持つスキルの中には、特定の『概念』や『状態』を操るものがある。【腐食毒液】は溶解と毒と麻痺。【生命力吸収】は生命力の略奪。【放電(弱)】は電気。

(もしかして、属性そのものではなく、これらの顔が象徴する『概念』に対応するスキルをぶつけるとか……?)

あるいは、扉の魔力を吸収した時のように、【捕食】で顔の魔力を喰らう?

試してみるしかない。ゼロはまず、怒りの顔(火属性)に狙いを定めた。火を打ち消すもの……水? いや、もっと直接的に、その『怒り』という感情を鎮めるような……。

ゼロは【生命力吸収】スキルを応用し、怒りの顔のレリーフに触手を伸ばした。相手のエネルギーを奪うこのスキルなら、その感情の源となっている魔力を弱められるかもしれない。

触手が触れた瞬間、怒りの顔がカッと目を見開き、ゼロに向かって灼熱の息を吐きかけてきた!

『やはり罠か!』

ゼロは即座に【装甲化】で防御し、熱波を防ぐ。だが、扉の他の顔も次々と活性化し始め、冷気、石つぶて、真空波などを放ってくる! まるで、扉全体が一個の攻撃的な存在としてゼロを排除しようとしているかのようだ。

『単純な対応ではダメか! なら……!』

ゼロは攻撃を避けながら、別の仮説を試した。それは、顔の属性魔力そのものを【捕食】すること。一番近い位置にあった悲しみの顔(水属性)に【捕食】Lv.3を発動!

ゲル状の体が顔のレリーフに吸い付き、その魔力を吸い上げ始める。悲しみの顔は、まるで嗚咽するかのように震え、抵抗するように冷気を放つが、ゼロの捕食力はそれを上回る。

魔力を吸い尽くされた悲しみの顔は、その表情を失い、ただの石の凹凸へと変わった。そして、扉全体を覆っていた魔力回路の一部がプツリと途切れ、扉から放たれる圧力がわずかに弱まった!

(これだ!)

他の顔も同様に、その核となっている魔力を【捕食】すれば、扉を開けられる! ゼロは、他の顔からの攻撃を【装甲化】と回避で凌ぎながら、次々と顔のレリーフに吸い付き、その魔力を捕食していった。

苦悶の顔(土属性)を捕食。虚無の顔(風属性)を捕食。そして、最後に残った、中央にある最も大きな、無表情の顔(おそらく複合属性か、あるいは魔力そのもの)の魔力を捕食し尽くした時。

ゴゴゴゴゴゴ……!!!

地響きと共に、巨大な石の扉がゆっくりと、荘厳に内側へと開いていった。扉が開くにつれて、内部からさらに濃密な、そしてどこか神聖さすら感じさせる魔力の奔流が溢れ出してくる。

ゼロは、消耗した魔力を【光合成(微弱)】と周囲の魔力吸収で回復させつつ、開かれた扉の先へと進んだ。

そこは、想像を絶するほど広大な空間だった。ドーム状の高い天井には、星空のような無数の光点が明滅し、幻想的な光景を作り出している。床には鏡のように磨かれた黒曜石が敷き詰められ、ゼロの不定形の姿を映し出している。壁には、人類史、あるいはそれ以前の、見たこともない種族の歴史や神話を描いたような、壮大なレリーフが延々と刻まれていた。

明らかに、ここはただの遺跡ではない。神殿、あるいはそれ以上の、何か特別な場所だ。

ゼロは、その荘厳さに圧倒されながらも、警戒を怠らなかった。【魔力感知】を最大限に広げ、周囲の気配を探る。

そして、広間の最奥、巨大な祭壇のような場所に、それを見つけた。

一体の巨大な石像。高さは10メートル以上あるだろうか。人型を基本としているが、その体には無数の腕が生え、そして何よりも異様なのは、その頭部だ。一つの首の上に、様々な表情――怒り、喜び、悲しみ、慈愛、憎悪、無関心――を浮かべた顔が、まるで万華鏡のようにいくつも重なり合い、蠢いている。

千貌の守護像。

それが、この存在にふさわしい名だと、ゼロは直感した。その体からは、先ほどの扉とは比較にならないほどの、強大で、複雑で、そしてどこか狂気を孕んだ魔力が放出されている。

ゼロが広間に足を踏み入れたことを感知したのか、千貌の守護像の無数の顔が一斉にゼロに向けられた。それぞれの顔が持つ感情が、混ざり合い、混沌としたプレッシャーとなってゼロに襲いかかる。

ゴゴゴゴ……

守護像が、ゆっくりと動き始めた。石と石が擦れる重々しい音と共に、その無数の腕が蠢き、構えを取る。

『こいつが……この神殿のボスか』

中級程度、というプロットの情報はもはや当てにならないかもしれない。これは、明らかに格上の存在だ。今のゼロの実力で、果たして勝てるのか?

だが、恐怖と同時に、ゼロのコアは歓喜に打ち震えていた。これほどの存在を捕食すれば、どれほどの進化が待っているのだろうか? 不定形進化は、次の段階へと進むことができるのか?

ゴオォォォッ!

千貌の守護像が咆哮した。いや、それは咆哮というよりも、いくつもの感情が混ざり合った、不協和音のような叫びだった。そして、その複数の顔から、それぞれ異なる属性のブレスが同時に放たれた! 灼熱の炎、凍てつく冷気、腐食性の酸、そして目に見えない衝撃波。それらが混合され、広範囲にわたってゼロに襲いかかる!

ゼロは即座に【装甲化】を発動し、盾状に変形させた体の一部でブレスを受け止める。同時に、足元の床を【粘性操作】で隆起させ、即席のバリケードを作り出す。

激しい着弾音と爆発音。盾は溶解し、砕け散り、バリケードも一瞬で吹き飛ばされる。複合属性攻撃の威力は凄まじい。

だが、ゼロはその一瞬の隙に、守護像の足元へと高速で移動していた。素早さ『6』とゲル状の体は、重厚な守護像の動きを掻い潜るのに有利だ。

『まずは、接近して攻撃パターンを探る!』

ゼロは【形態変化戦闘(初級)】スキルで体の一部を鋭い槍状に変化させ、守護像の足首、比較的装甲が薄そうな部分を狙って突き出した!

ガキンッ!

硬い感触と共に、火花が散る。槍はわずかに食い込んだが、致命傷には程遠い。守護像は意に介した様子もなく、その無数の腕の一つを、薙ぎ払うようにゼロに向かって振り下ろしてきた!

ゼロは咄嗟に回避行動を取るが、腕の動きは予想以上に速く、そしてトリッキーだった。複数の腕が連携し、ゼロの退路を塞ぐように動く。

(まずい!)

避けきれない! ゼロは、迫りくる石の拳を前に、覚悟を決めた。これは、これまでのどの戦闘とも違う、真の死闘になるだろう。進化したばかりの力が、この神殿の守護者にどこまで通用するのか。その答えは、この戦いの果てにしかない。

守護像の拳が、ゼロの不定形の体を捉えようとした、その瞬間だった。

---

名前: ゼロ
種族: 名無し
称号: なし
所属: 未定義

【能力値】
体力: 34
魔力容量: 22
物理攻撃力: 7
物理防御力: 23
魔法攻撃力: 7
魔法防御力: 17
素早さ: 6

【スキル】
・捕食 Lv.3
・自己修復 Lv.4
・擬態 Lv.3
・微光 Lv.2
・腐食毒液 Lv.1
・装甲化 Lv.1
・粘性操作 Lv.1
・生命力吸収 Lv.1
・形態変化戦闘(初級) Lv.1
・コア制御(第一段階) Lv.1
・水中適応(中級) Lv.1
・毒耐性 Lv.3
・植物知識(初級) Lv.1
・光合成(微弱) Lv.1
・電撃耐性 Lv.1
・放電(弱) Lv.1
・不定形進化(第一段階) Lv.1
・石材知識(上級) Lv.1
・ゴーレムコア解析(中級) Lv.1
・魔法耐性 Lv.1
・錬金術知識(初級) Lv.1
・魔法工学知識(初級) Lv.1
・水属性耐性 Lv.1
・魔力感知(低級) Lv.1
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