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エピソード21:再会の淵にて
忘れられた鉱山地帯の奥深く、静謐な水を湛えた地底湖。ゼロはこの場所を仮初の拠点とし、着実に力を蓄えていた。坑道に潜む鉱石モンスターを狩り、【石材知識】や【ゴーレムコア解析】の練度を高める。水棲モンスターを捕食し、【水中適応】能力をさらに洗練させる。地底湖に差し込む微かな光や、壁面の光る鉱石を利用した【光合成】は、エネルギー効率の良いゼロの体質をさらに強化していた。
時折、坑道の入り口付近まで出て、宝箱に擬態してプレイヤーをからかうこともあった。一度味を占めた悪戯心と、プレイヤーの反応を探る実利を兼ねて。そのたびに、「宝箱の化け物が出た!」という新たな噂がプレイヤーたちの間で囁かれるようになったが、ゼロは意に介さなかった。むしろ、その混乱を楽しんでいる節すらあった。
『プレイヤーイーター、宝箱の化け物……次はどんな二つ名が付くのやら』
そんなある日、ゼロは鉱山地帯の外れ、森との境界に近いエリアまで足を延ばしていた。新たな捕食対象と、あるいはエルミナに繋がる何か新しい情報がないか探索するためだ。周囲の岩に【擬態】し、気配を消して移動していると、不意に緊迫した声と金属音が聞こえてきた。
「くそっ、しつこいんだよ、お前ら!」
「へへっ、観念しな、嬢ちゃん。そのローブと杖、高く売れそうだぜ」
「装備だけじゃねえ、ドロップアイテムも根こそぎ頂いていくからな!」
複数の下卑た声。そして、それに抗うような、しかし明らかに劣勢な少女の声。
(PKerか……またか)
ゼロは眉をひそめた(もし眉があればだが)。このゲーム世界は、無法者が多すぎるのではないか? 興味本位で、音のする方向へと慎重に近づいていく。
岩陰から覗き見ると、そこには予想通りの光景が広がっていた。三人の屈強な装備の男たち(明らかにPKerだ)が、一人の少女プレイヤーを取り囲んでいる。少女は、見覚えのある姿だった。簡素なローブを纏い、栗色の髪を振り乱して必死に杖を振るっている。
『あの時の……沼で助けた(結果的にそうなっただけだが)初心者か』
たしか、PKerのカズたちが追っていた少女だ。ヒーラー系のクラスだろうか、攻撃魔法らしきものは使えず、回復や補助系の魔法で懸命に抵抗しているが、多勢に無勢。HPもかなり削られているようで、動きも鈍い。
「もう終わりか? つまらねえ抵抗しやがって」
「さっさと身ぐるみ剥いで、次のカモを探そうぜ」
「そうだな。じゃあ、嬢ちゃん、おやすみ!」
PKerの一人が、大剣を振り上げる。少女は恐怖に目を見開き、もはや抵抗する力も残っていないようだった。
ゼロは、その光景を冷静に観察していた。少女を助ける義理はない。むしろ、目撃者を増やすのは避けたい。だが、目の前にいる三人のPKer。彼らの装備、動き、スキルレベル。ゼロの【魔力感知(中級)】と進化した解析能力は、彼らがそこそこの実力を持つプレイヤーであり、そして、格好の『餌』であることを示していた。
千貌の守護像を喰らって以降、ゼロはプレイヤーを捕食することへの精神的な抵抗感が薄れていた。【コア制御(第二段階)】が、混沌とした感情の流入を効率的に処理し、純粋なエネルギーと情報へと変換してしまうためかもしれない。あるいは、単に『慣れた』だけなのか。
どちらにせよ、目の前の獲物を見逃す理由はなかった。
PKerが大剣を振り下ろそうとした、まさにその瞬間。ゼロは動いた。
擬態を解除し、虹色に揺らめく不定形の巨体を晒す。そして、即座に【混沌弾】Lv.1を生成! 複数の属性が不安定に混ざり合ったエネルギー弾が、ゼロの体から撃ち出され、大剣の男の背中に直撃した!
ドゴォォン!!
不安定なエネルギーが炸裂し、大剣の男は防御する間もなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。HPが一気に半分以上削れたようだ。
「な、なんだぁっ!?」
「敵襲か!?」
残りの二人のPKerが驚き、警戒態勢を取る。少女も、突然現れた異形の存在と、吹き飛ばされたPKerを見て、呆然としている。
ゼロは構わず、次の行動に移る。【形態変化戦闘(中級)】スキルを発動し、体から複数の鋭い触手を伸ばす。先端には【腐食毒液】Lv.2を纏わせ、吹き飛ばされた大剣の男と、残りのPKer二人に同時に襲いかかった!
「ぐあっ!」
「うわっ、なんだこの液体! 鎧が溶ける!」
触手はPKerたちの鎧を容易く溶かし、肉体に食い込む。腐食ダメージと毒、麻痺効果が彼らを蝕む。ゼロはさらに、【電撃操作】Lv.1で追撃の電撃を放ち、動きを完全に封じ込めた。
反撃しようにも、腐食毒液による装備破壊と麻痺、そして電撃による痺れで、PKerたちはまともに動くことすらできない。ゼロの戦闘能力は、もはやこのレベルのプレイヤーが複数でかかっても、一方的に蹂躙できる領域に達していた。
「ひ、ひぃぃ……!」
「た、助け……」
命乞いをする間もなく、ゼロは三人のPKerに覆いかぶさり、【捕食】Lv.4を開始した。それぞれのプレイヤーが持つスキル、ステータス、そして経験や記憶の断片。それらが奔流となってゼロのコアへと流れ込み、力へと変換されていく。
数秒後、PKerたちは光の粒子すら残さずに完全に消滅した。
【能力値】
体力: 55 → 58 (+3)
魔力容量: 40 → 43 (+3)
物理攻撃力: 15 → 16 (+1)
物理防御力: 35 → 36 (+1)
魔法攻撃力: 18 → 19 (+1)
魔法防御力: 30 → 31 (+1)
素早さ: 8
【スキル】
・**戦技:強襲 Lv.1 (New!)** (PKerが所持していたスキル。奇襲時の初撃ダメージ増加)
・**アイテム鑑定(低級) Lv.1 (New!)** (PKerが所持していたスキル。アイテムの詳細情報を判別可能)
(※他、微細なスキル経験値獲得)
ステータスの上昇は微々たるものだったが、新たなスキルを二つ獲得した。【強襲】はゼロの戦闘スタイルに合っている。【アイテム鑑定】は、これまで拾ったアイテム(あるいは捕食対象)の詳細が分からなかったゼロにとっては、地味ながら有用なスキルだ。
捕食を終え、ゼロはふぅ、と息をつくように(もし呼吸をしていればだが)体を揺らめかせた。そこに残っていたのは、呆然と立ち尽くす例の少女だけだった。
少女は、目の前で起こった惨劇(あるいは救済)と、異形の存在であるゼロを交互に見比べ、やがて、おずおずと口を開いた。
「あ、あの……もしかして、また助けてくれた……んですか……?」
その声は震えていたが、敵意は感じられない。むしろ、以前、沼地でゼロを見かけた時と同じような、困惑と、そしてわずかな期待が入り混じったような響きがあった。
(また……? やはり、あの時も俺だと認識していたのか。そして、助けられたと勘違いしている、と)
ゼロは内心でため息をついた。厄介なことになった。だが、この少女からは、プレイヤー側の情報を引き出せるかもしれない。ギルド『ジャッジメント』の動き、街の様子、あるいは『エルミナ』に関する噂など。
ゼロは言葉を発することはできない。ただ、無言で少女を見つめる。虹色に揺らめくコアが、少女の反応を観察している。
少女は、ゼロが答えない(答えられない)ことに気づいたのか、少し戸惑いながらも、ぺこり、と頭を下げた。
「ありがとうございます! えっ……と、なんて呼べばいいか分からないけど……本当に助かりました!」
そして、何か思い出したように続けた。
「そうだ、私、リリアって言います! まだ初心者だけど、ヒーラー目指して頑張ってるんです! あの、もし良かったら、お礼がしたいんだけど……」
リリア、と名乗った少女は、ゼロに近づこうとしてくる。ゼロは、本能的にスッと後退り、距離を取った。プレイヤーとの接触は、依然としてリスクが高い。
「あ……ご、ごめんなさい! 怖がらせちゃったかな……?」
リリアは慌てて足を止める。そのお人好しそうな、少しドジな雰囲気に、ゼロはわずかな苛立ちと、それ以上に奇妙な感覚を覚えていた。敵意も警戒心もなく、ただ純粋な感謝を向けてくる存在。それは、ゼロがこの世界で初めて経験するものだった。
『面倒だが……利用価値はある、か?』
情報を得るため、あるいは、プレイヤー社会との緩衝材として。このリリアという存在は、ゼロにとって予期せぬ『遭遇』であり、新たな可能性をもたらすかもしれない。
ゼロは、これ以上ここに留まるのは危険だと判断した。リリアに一瞥をくれると、スッと体を後退させ、【擬態】を発動。周囲の岩陰に溶け込み、完全に姿を消した。
「えっ!? き、消えちゃった……!?」
突然姿を消したゼロに、リリアは驚き、周囲を見回すが、もはやゼロの気配を感じることはできない。
「行っちゃった……。でも、絶対また会えるよね……? あの、不思議な……スライムさん?」
リリアは、ゼロが消えた方向を見つめながら、呟いた。そして、助けてもらった恩を返すことを、改めて心に誓うのだった。
一方、ゼロはリリアから十分に距離を取り、仮拠点である地底湖へと戻っていた。リリアという存在。それは、ゼロの孤独な旅路において、初めて現れた予測不能な変数だった。彼女との関わりが、今後ゼロに何をもたらすのか。それはまだ、誰にも分からない。ただ、ゼロの心には、微かな波紋が広がっていた。それは、進化の果てに見るはずの景色に、ほんの少しだけ、違う色を添えるかもしれない、そんな予感だった。
---
名前: ゼロ
種族: 名無し(進化体)
称号: 千貌を喰らう者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 58
魔力容量: 43
物理攻撃力: 16
物理防御力: 36
魔法攻撃力: 19
魔法防御力: 31
素早さ: 8
【スキル】
▼基本・進化スキル
・捕食 Lv.4
・自己修復 Lv.5
・擬態 Lv.4
・不定形進化(第二段階) Lv.1
・コア制御(第二段階) Lv.1
・生命力吸収 Lv.2
▼戦闘・攻撃スキル
・腐食毒液 Lv.2
・形態変化戦闘(中級) Lv.1
・電撃操作 Lv.1
・混沌弾 Lv.1
・感情波(低級) Lv.1
・**戦技:強襲 Lv.1 (New!)**
▼防御・耐性スキル
・装甲化 Lv.2
・毒耐性 Lv.4
・電撃耐性 Lv.2
・水属性耐性 Lv.1
・魔法耐性 Lv.2
・精神耐性(低級) Lv.1
▼移動・補助スキル
・水中適応(中級) Lv.1
・粘性操作 Lv.1
・光合成(低級) Lv.1
・魔力感知(中級) Lv.1
▼知識・解析スキル
・石材知識(上級) Lv.1
・ゴーレムコア解析(中級) Lv.1
・植物知識(初級) Lv.1
・錬金術知識(初級) Lv.1
・魔法工学知識(初級) Lv.1
・**アイテム鑑定(低級) Lv.1 (New!)**
時折、坑道の入り口付近まで出て、宝箱に擬態してプレイヤーをからかうこともあった。一度味を占めた悪戯心と、プレイヤーの反応を探る実利を兼ねて。そのたびに、「宝箱の化け物が出た!」という新たな噂がプレイヤーたちの間で囁かれるようになったが、ゼロは意に介さなかった。むしろ、その混乱を楽しんでいる節すらあった。
『プレイヤーイーター、宝箱の化け物……次はどんな二つ名が付くのやら』
そんなある日、ゼロは鉱山地帯の外れ、森との境界に近いエリアまで足を延ばしていた。新たな捕食対象と、あるいはエルミナに繋がる何か新しい情報がないか探索するためだ。周囲の岩に【擬態】し、気配を消して移動していると、不意に緊迫した声と金属音が聞こえてきた。
「くそっ、しつこいんだよ、お前ら!」
「へへっ、観念しな、嬢ちゃん。そのローブと杖、高く売れそうだぜ」
「装備だけじゃねえ、ドロップアイテムも根こそぎ頂いていくからな!」
複数の下卑た声。そして、それに抗うような、しかし明らかに劣勢な少女の声。
(PKerか……またか)
ゼロは眉をひそめた(もし眉があればだが)。このゲーム世界は、無法者が多すぎるのではないか? 興味本位で、音のする方向へと慎重に近づいていく。
岩陰から覗き見ると、そこには予想通りの光景が広がっていた。三人の屈強な装備の男たち(明らかにPKerだ)が、一人の少女プレイヤーを取り囲んでいる。少女は、見覚えのある姿だった。簡素なローブを纏い、栗色の髪を振り乱して必死に杖を振るっている。
『あの時の……沼で助けた(結果的にそうなっただけだが)初心者か』
たしか、PKerのカズたちが追っていた少女だ。ヒーラー系のクラスだろうか、攻撃魔法らしきものは使えず、回復や補助系の魔法で懸命に抵抗しているが、多勢に無勢。HPもかなり削られているようで、動きも鈍い。
「もう終わりか? つまらねえ抵抗しやがって」
「さっさと身ぐるみ剥いで、次のカモを探そうぜ」
「そうだな。じゃあ、嬢ちゃん、おやすみ!」
PKerの一人が、大剣を振り上げる。少女は恐怖に目を見開き、もはや抵抗する力も残っていないようだった。
ゼロは、その光景を冷静に観察していた。少女を助ける義理はない。むしろ、目撃者を増やすのは避けたい。だが、目の前にいる三人のPKer。彼らの装備、動き、スキルレベル。ゼロの【魔力感知(中級)】と進化した解析能力は、彼らがそこそこの実力を持つプレイヤーであり、そして、格好の『餌』であることを示していた。
千貌の守護像を喰らって以降、ゼロはプレイヤーを捕食することへの精神的な抵抗感が薄れていた。【コア制御(第二段階)】が、混沌とした感情の流入を効率的に処理し、純粋なエネルギーと情報へと変換してしまうためかもしれない。あるいは、単に『慣れた』だけなのか。
どちらにせよ、目の前の獲物を見逃す理由はなかった。
PKerが大剣を振り下ろそうとした、まさにその瞬間。ゼロは動いた。
擬態を解除し、虹色に揺らめく不定形の巨体を晒す。そして、即座に【混沌弾】Lv.1を生成! 複数の属性が不安定に混ざり合ったエネルギー弾が、ゼロの体から撃ち出され、大剣の男の背中に直撃した!
ドゴォォン!!
不安定なエネルギーが炸裂し、大剣の男は防御する間もなく吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。HPが一気に半分以上削れたようだ。
「な、なんだぁっ!?」
「敵襲か!?」
残りの二人のPKerが驚き、警戒態勢を取る。少女も、突然現れた異形の存在と、吹き飛ばされたPKerを見て、呆然としている。
ゼロは構わず、次の行動に移る。【形態変化戦闘(中級)】スキルを発動し、体から複数の鋭い触手を伸ばす。先端には【腐食毒液】Lv.2を纏わせ、吹き飛ばされた大剣の男と、残りのPKer二人に同時に襲いかかった!
「ぐあっ!」
「うわっ、なんだこの液体! 鎧が溶ける!」
触手はPKerたちの鎧を容易く溶かし、肉体に食い込む。腐食ダメージと毒、麻痺効果が彼らを蝕む。ゼロはさらに、【電撃操作】Lv.1で追撃の電撃を放ち、動きを完全に封じ込めた。
反撃しようにも、腐食毒液による装備破壊と麻痺、そして電撃による痺れで、PKerたちはまともに動くことすらできない。ゼロの戦闘能力は、もはやこのレベルのプレイヤーが複数でかかっても、一方的に蹂躙できる領域に達していた。
「ひ、ひぃぃ……!」
「た、助け……」
命乞いをする間もなく、ゼロは三人のPKerに覆いかぶさり、【捕食】Lv.4を開始した。それぞれのプレイヤーが持つスキル、ステータス、そして経験や記憶の断片。それらが奔流となってゼロのコアへと流れ込み、力へと変換されていく。
数秒後、PKerたちは光の粒子すら残さずに完全に消滅した。
【能力値】
体力: 55 → 58 (+3)
魔力容量: 40 → 43 (+3)
物理攻撃力: 15 → 16 (+1)
物理防御力: 35 → 36 (+1)
魔法攻撃力: 18 → 19 (+1)
魔法防御力: 30 → 31 (+1)
素早さ: 8
【スキル】
・**戦技:強襲 Lv.1 (New!)** (PKerが所持していたスキル。奇襲時の初撃ダメージ増加)
・**アイテム鑑定(低級) Lv.1 (New!)** (PKerが所持していたスキル。アイテムの詳細情報を判別可能)
(※他、微細なスキル経験値獲得)
ステータスの上昇は微々たるものだったが、新たなスキルを二つ獲得した。【強襲】はゼロの戦闘スタイルに合っている。【アイテム鑑定】は、これまで拾ったアイテム(あるいは捕食対象)の詳細が分からなかったゼロにとっては、地味ながら有用なスキルだ。
捕食を終え、ゼロはふぅ、と息をつくように(もし呼吸をしていればだが)体を揺らめかせた。そこに残っていたのは、呆然と立ち尽くす例の少女だけだった。
少女は、目の前で起こった惨劇(あるいは救済)と、異形の存在であるゼロを交互に見比べ、やがて、おずおずと口を開いた。
「あ、あの……もしかして、また助けてくれた……んですか……?」
その声は震えていたが、敵意は感じられない。むしろ、以前、沼地でゼロを見かけた時と同じような、困惑と、そしてわずかな期待が入り混じったような響きがあった。
(また……? やはり、あの時も俺だと認識していたのか。そして、助けられたと勘違いしている、と)
ゼロは内心でため息をついた。厄介なことになった。だが、この少女からは、プレイヤー側の情報を引き出せるかもしれない。ギルド『ジャッジメント』の動き、街の様子、あるいは『エルミナ』に関する噂など。
ゼロは言葉を発することはできない。ただ、無言で少女を見つめる。虹色に揺らめくコアが、少女の反応を観察している。
少女は、ゼロが答えない(答えられない)ことに気づいたのか、少し戸惑いながらも、ぺこり、と頭を下げた。
「ありがとうございます! えっ……と、なんて呼べばいいか分からないけど……本当に助かりました!」
そして、何か思い出したように続けた。
「そうだ、私、リリアって言います! まだ初心者だけど、ヒーラー目指して頑張ってるんです! あの、もし良かったら、お礼がしたいんだけど……」
リリア、と名乗った少女は、ゼロに近づこうとしてくる。ゼロは、本能的にスッと後退り、距離を取った。プレイヤーとの接触は、依然としてリスクが高い。
「あ……ご、ごめんなさい! 怖がらせちゃったかな……?」
リリアは慌てて足を止める。そのお人好しそうな、少しドジな雰囲気に、ゼロはわずかな苛立ちと、それ以上に奇妙な感覚を覚えていた。敵意も警戒心もなく、ただ純粋な感謝を向けてくる存在。それは、ゼロがこの世界で初めて経験するものだった。
『面倒だが……利用価値はある、か?』
情報を得るため、あるいは、プレイヤー社会との緩衝材として。このリリアという存在は、ゼロにとって予期せぬ『遭遇』であり、新たな可能性をもたらすかもしれない。
ゼロは、これ以上ここに留まるのは危険だと判断した。リリアに一瞥をくれると、スッと体を後退させ、【擬態】を発動。周囲の岩陰に溶け込み、完全に姿を消した。
「えっ!? き、消えちゃった……!?」
突然姿を消したゼロに、リリアは驚き、周囲を見回すが、もはやゼロの気配を感じることはできない。
「行っちゃった……。でも、絶対また会えるよね……? あの、不思議な……スライムさん?」
リリアは、ゼロが消えた方向を見つめながら、呟いた。そして、助けてもらった恩を返すことを、改めて心に誓うのだった。
一方、ゼロはリリアから十分に距離を取り、仮拠点である地底湖へと戻っていた。リリアという存在。それは、ゼロの孤独な旅路において、初めて現れた予測不能な変数だった。彼女との関わりが、今後ゼロに何をもたらすのか。それはまだ、誰にも分からない。ただ、ゼロの心には、微かな波紋が広がっていた。それは、進化の果てに見るはずの景色に、ほんの少しだけ、違う色を添えるかもしれない、そんな予感だった。
---
名前: ゼロ
種族: 名無し(進化体)
称号: 千貌を喰らう者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 58
魔力容量: 43
物理攻撃力: 16
物理防御力: 36
魔法攻撃力: 19
魔法防御力: 31
素早さ: 8
【スキル】
▼基本・進化スキル
・捕食 Lv.4
・自己修復 Lv.5
・擬態 Lv.4
・不定形進化(第二段階) Lv.1
・コア制御(第二段階) Lv.1
・生命力吸収 Lv.2
▼戦闘・攻撃スキル
・腐食毒液 Lv.2
・形態変化戦闘(中級) Lv.1
・電撃操作 Lv.1
・混沌弾 Lv.1
・感情波(低級) Lv.1
・**戦技:強襲 Lv.1 (New!)**
▼防御・耐性スキル
・装甲化 Lv.2
・毒耐性 Lv.4
・電撃耐性 Lv.2
・水属性耐性 Lv.1
・魔法耐性 Lv.2
・精神耐性(低級) Lv.1
▼移動・補助スキル
・水中適応(中級) Lv.1
・粘性操作 Lv.1
・光合成(低級) Lv.1
・魔力感知(中級) Lv.1
▼知識・解析スキル
・石材知識(上級) Lv.1
・ゴーレムコア解析(中級) Lv.1
・植物知識(初級) Lv.1
・錬金術知識(初級) Lv.1
・魔法工学知識(初級) Lv.1
・**アイテム鑑定(低級) Lv.1 (New!)**
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