モブモンスターですが何か? ~VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件~

夏見ナイ

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エピソード32:時の狭間、星詠みの竜

エルミナによる転送魔法の光が収まった時、ゼロが立っていたのは、想像を絶するほど奇妙で、不安定な空間だった。そこは、星見の塔の最上階のような宇宙空間ではなく、むしろ無限に砕け散った鏡が浮遊する、混沌とした回廊のようだった。

砕けた鏡の破片――それは物理的な鏡ではなく、時間の断片そのものなのかもしれない――には、様々な時代の風景や、あり得たかもしれない可能性の光景が、目まぐるしく映し出されては消えていく。燃え盛る戦場、平和な村、滅び去った都市、見たこともない異世界の景色。それらが混ざり合い、ゼロの視覚と認識を混乱させようとする。

足元もおぼつかない。空間そのものが不安定に揺らぎ、重力や時間の流れが局所的に歪んでいるのを感じる。真っ直ぐ進もうとしても、気づけば数メートル横にずれていたり、一瞬だけ動きが極端に遅くなったりする。

『ここが、時の観測室……いや、エルミナは『時の狭間』と言っていたか』

時間の法則そのものが壊れ、乱れた空間。アストラル・ドレイクはこの歪んだ空間を彷徨っているという。

ゼロはまず、この異常な環境に適応する必要があった。【コア制御(第二段階)】をフル稼働させ、不安定な時空の流れの中でも自身の時間軸を安定させようと試みる。同時に【魔力感知(中級)】で周囲を探るが、乱れた時間のノイズが多く、正確な探知は困難だった。

回廊を進むと、時間の歪みから生まれたかのような、半透明で揺らめく人型のエネルギー体、クロノ・ファントムが複数体現れた。それらは過去の残留思念か、あるいは未来の可能性の影か。ゼロに向かって、時間を歪ませるような不可視の攻撃を仕掛けてくる。

ゼロは【形態変化戦闘(上級)】で触手を伸ばし、ファントムを捕らえようとするが、実体がないためか、攻撃はすり抜けてしまう。ならば、と【生命力吸収】Lv.2を発動。ファントムを構成する時間エネルギーそのものを吸い上げる!

「……」

ファントムは声もなく霧散し、微弱な時間エネルギーと、断片的な時間の知識がゼロに流れ込んできた。ステータスに変化はないが、この空間への適応力がわずかに増したような感覚があった。

『時間のエネルギー……これも捕食対象か。喰らい続ければ、この空間への耐性や、時間に関するスキルが得られるかもしれん』

ゼロは、出現するクロノ・ファントムを次々と捕食しながら、回廊の奥へと進んでいった。その過程で、ゼロは【時間歪曲耐性(微弱)】と【時間流感知(初級)】という新たなスキルを獲得した。前者はこの空間での活動を安定させ、後者は時間の流れの異常をより敏感に察知する能力だ。

やがて、ゼロは回廊の最も奥、巨大な壊れた時計盤のようなものが浮遊する、ひときわ時間の歪みが激しい広間へとたどり着いた。時計の針は砕け散り、文字盤には亀裂が走っている。そして、その時計盤の上空に、それはいた。

星詠みの竜、アストラル・ドレイク。

体長は数十メートルにも及ぶだろうか。その体は、夜空を切り取って固めたかのように、無数の星々がきらめく星雲で構成されている。頭部には水晶のような角が生え、その瞳は恒星のように眩い光を放っている。翼はないが、重力に逆らって悠然と宙に浮き、その周囲の空間は常に蜃気楼のように揺らめいている。それは、もはや生物というよりも、宇宙的な現象そのものが意志を持ったかのような、神々しくも恐ろしい存在だった。

アストラル・ドレイクは、ゼロの侵入に気づくと、ゆっくりとその巨大な頭部を向けた。その瞳に見つめられた瞬間、ゼロは自身の時間が引き伸ばされるような、あるいは圧縮されるような、奇妙な感覚に襲われた。

『これが……時間操作能力か』

ゼロは即座に【装甲化】Lv.2を発動し、防御態勢を取る。同時に【時間歪曲耐性(微弱)】スキルが発動し、時間操作の影響をわずかに軽減する。

アストラル・ドレイクは、言葉を発することなく、ただ静かにゼロを見据えている。だが、その視線だけで、ゼロの精神に直接語りかけてくるようだった。『何故ここへ来た、異物よ』と。

ゼロは【精神感応(テレパシー)(初級)】で応じようとしたが、アストラル・ドレイクの精神はあまりにも広大で、古く、ゼロの未熟なテレパシーでは接触することすらできなかった。

次の瞬間、アストラル・ドレイクが大きく口を開いた。そこから放たれたのは、炎でも冷気でもない。無数の流星群のような、眩い光の奔流――星屑のブレスだった!

ブレスは、単なるエネルギー攻撃ではない。着弾した空間の時間を加速させ、対象を瞬時に塵へと還す力を持っている!

ゼロは【飛行】Lv.2スキルで回避しようとするが、ブレスの速度は光速に近く、避けきれない! 咄嗟に【形態変化戦闘】で多重の盾を形成し、さらに【混沌弾】を撃ち出してブレスの威力を相殺しようと試みる!

轟音と共に、盾は瞬時に崩壊し、混沌弾も飲み込まれるように消滅する。ブレスの余波がゼロの体を掠め、その部分の時間が加速! ゲル状の体が急速に劣化し、ボロボロと崩れ落ちていく!

『くっ……! 自己修復が追いつかない!』

【自己修復】Lv.5が必死に再生を試みるが、時間加速による劣化速度の方が速い。ゼロは急いで距離を取り、ブレスの影響範囲から離脱する。

(これが、星詠みの竜の力……! 正面からの戦闘は不可能に近い)

エルミナの言葉が蘇る。『力押しだけでは勝てない』『捕食の本質を理解する必要がある』。

どうすればいい? あの時間操作能力をどう攻略する? 時間そのものを捕食する? だが、どうやって?

ゼロはアストラル・ドレイクの動きを観察しながら、思考を巡らせた。竜の周囲の空間は常に歪んでいる。攻撃だけでなく、防御においても時間操作を利用しているのだろう。未来を予知して回避したり、攻撃が当たる瞬間に時間を巻き戻したりしているのかもしれない。

『時間という概念そのものを理解し、干渉する……?』

それは、今のゼロの能力を遥かに超えているように思えた。だが、エルミナはゼロの『捕食』能力に鍵があると言った。捕食は、対象の存在、記憶、知識、在り方そのものを取り込み、再構築する力。ならば、アストラル・ドレイクの放つ時間エネルギー、あるいは時間操作の影響を受けた空間そのものを捕食し続ければ、その『時間』という概念に対する理解を深め、耐性を獲得し、いずれは干渉する力を得られるのではないか?

危険な賭けだ。時間エネルギーの捕食は、下手をすればゼロ自身の時間軸を崩壊させかねない。だが、他に道はないかもしれない。

ゼロは覚悟を決めた。アストラル・ドレイクの攻撃を避けながら、その攻撃によって歪んだ空間や、残留する時間エネルギーを、積極的に【捕食】し始めたのだ!

「!?」

アストラル・ドレイクは、ゼロの奇妙な行動にわずかに戸惑いを見せたようだった。だが、構わず攻撃を続ける。時間を歪ませる波動、局所的な時間停止、過去や未来の自身の幻影を召喚して攻撃させる技。

ゼロは必死に攻撃を凌ぎながら、喰らい続けた。時間加速で劣化した自身の体の一部すらも再捕食し、エネルギーを循環させる。捕食するたびに、コアに時間の情報が蓄積されていく。理解には程遠いが、それでもゼロの中で何かが変わり始めていた。

【時間歪曲耐性(微弱)】スキルが『低級』へ。
【時間流感知(初級)】スキルが『中級』へ。
そして、新たなスキル【クロノ・イーター(極微)】――時間エネルギーを捕食し、微量ながら自身の力に変換する能力――が芽生え始めていた。

『まだだ……まだ足りない! もっと深く、もっと根源的に!』

ゼロは、アストラル・ドレイク本体に狙いを定めた。あの星雲のような体、きらめく星々。あれこそが、時間の知識と力の源のはずだ。

ゼロは、これまでの戦闘で得た全ての回避能力と、新たに得た時間へのわずかな耐性を頼りに、アストラル・ドレイクへと突貫した! 目指すは、竜の体の一部を直接【捕食】すること!

アストラル・ドレイクは、ゼロの意図を察知したのか、その巨大な体をうねらせ、時空の歪みを利用した予測不能な突進を仕掛けてきた!

ゼロもまた、【形態変化戦闘(上級)】で体を鋭い槍状に変え、正面から迎え撃つ!

時間と混沌、星詠みの竜と名を失いし者。二つの異質な存在が、時の狭間で激突しようとした、その刹那――。

アストラル・ドレイクの動きが、ぴたりと止まった。

いや、止まったのではない。ゼロの周囲の空間だけが、完全に『凍結』したのだ。時間の流れが、完全に停止した。

ゼロは身動き一つ取れない。思考すらも、極限まで遅延させられている。アストラル・ドレイクの巨大な頭部が、ゆっくりとゼロの眼前に迫ってくる。その恒星のような瞳が、ゼロのコアの奥底を覗き込むように輝いている。

(これが……絶対的な時間停止……!?)

絶体絶命。為す術がない。ゼロの意識が、永遠にも思える静止した時間の中で、遠のいていく――。

---

名前: ゼロ
種族: 名無し(進化体)
称号: 千貌を喰らう者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 70
魔力容量: 53
物理攻撃力: 20
物理防御力: 40
魔法攻撃力: 26
魔法防御力: 38
素早さ: 11

【スキル】
▼基本・進化スキル
・捕食 Lv.4
・自己修復 Lv.5
・擬態 Lv.4
・不定形進化(第二段階) Lv.1
・コア制御(第二段階) Lv.1
・生命力吸収 Lv.2

▼戦闘・攻撃スキル
・腐食毒液 Lv.2
・形態変化戦闘(上級) Lv.1
・電撃操作 Lv.1
・混沌弾 Lv.1
・感情波(中級) Lv.1
・戦技:強襲 Lv.1
・剣技:亡者の剣 Lv.1
・闇属性操作(初級) Lv.1
・死霊魔法(初級) Lv.1
・鋭利な爪 Lv.1
・風属性操作(初級) Lv.1
・光操作(微弱) Lv.1
・念動力(サイコキネシス)(微弱) Lv.1

▼防御・耐性スキル
・装甲化 Lv.2
・毒耐性 Lv.4
・電撃耐性 Lv.2
・水属性耐性 Lv.1
・魔法耐性 Lv.2
・精神耐性(極級) Lv.1
・魔力抵抗(低級) Lv.1
・冷気耐性 Lv.1
・呪詛耐性 Lv.1
・光属性耐性(低級) Lv.1
・**時間歪曲耐性(低級) Lv.1 (New & Level Up!)**

▼移動・補助スキル
・水中適応(中級) Lv.1
・粘性操作 Lv.1
・光合成(中級) Lv.1
・魔力感知(中級) Lv.1
・地中潜行(低級) Lv.1
・振動感知(低級) Lv.1
・飛行 Lv.2
・飛行戦闘(中級) Lv.1
・精神感応(テレパシー)(初級) Lv.1

▼知識・解析スキル
・石材知識(上級) Lv.1
・ゴーレムコア解析(上級) Lv.1
・植物知識(中級) Lv.1
・錬金術知識(初級) Lv.1
・魔法工学知識(初級) Lv.1
・アイテム鑑定(低級) Lv.1
・機械知識(初級) Lv.1
・金属操作(微弱) Lv.1
・アンデッド知識(上級) Lv.1
・骨操作(微弱) Lv.1
・高度魔術知識(初級) Lv.1
・地脈同調(微弱) Lv.1
・**時間流感知(中級) Lv.1 (New & Level Up!)**
・**クロノ・イーター(極微) Lv.1 (New!)**
感想 4

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