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エピソード37:蒼き疾風との邂逅
竜の力をその身に宿し、ゼロは次なる目的地、古代図書館へと向かった。かつてエルミナから得た情報と、竜種捕食によってさらに向上した【魔力感知(上級)】スキルを頼りに、東方の険しい山脈を目指す。
【飛行(竜翼)】スキルによって空を駆ける速度は以前とは比較にならず、広大な大地を眼下に収めながら、ゼロは短時間で目的の山脈上空へと到達した。そこは、雪を頂く峻険な峰々が連なり、谷間には常に強い風が吹き荒れる厳しい環境だった。
『ここか……古代図書館』
上空から山脈全体を俯瞰し、特に魔力の流れが強い場所、あるいは人工的な構造物の気配がある場所を探る。やがて、ゼロは山脈の中腹、巨大な氷河によって削り取られたかのような垂直な崖の中ほどに、不自然なほど巨大で、精巧な彫刻が施された石造りの扉を発見した。扉の周囲には強力な魔法的結界が張られており、そこが古代図書館の入り口であることを示唆していた。
しかし、同時に、図書館周辺には多数のプレイヤーの気配があった。崖の下にはベースキャンプのようなものが設営され、いくつかのパーティが扉へのアプローチを試みているのか、あるいは周辺の強力なモンスターと戦闘を繰り広げている。そして、その中には、銀と白の装備に身を包んだジャッジメントのメンバーの姿も複数確認できた。
『やはり、厳重に監視されているな。正面から近づくのは愚策だ』
ゼロは高高度で旋回しながら、図書館への別の侵入経路がないか探った。崖の上から回り込むルート、あるいは地下から繋がる隠し通路など。しかし、図書館は天然の要害とも言える場所に位置しており、正面の扉以外からのアクセスは極めて困難に見えた。
『ならば、夜陰に乗じて奇襲するか……? いや、ジャッジメントの探知能力を考えると、それも危険か』
ゼロが最適なアプローチを模索していると、不意に、一つの小さな影が猛スピードで崖を駆け上がり、図書館の扉へと接近していくのが見えた。その影は、他のプレイヤーたちとは明らかに違う動きをしていた。単独でありながら、驚異的な速度と機動力で崖の突起を飛び移り、重力など意に介さないかのように垂直な壁面を疾走している。
『なんだ……? あの動きは……』
ゼロは興味を惹かれ、その影の動きを追った。影は、他のプレイヤーたちの注意を引くことなく、あっという間に図書館の扉の前に到達した。そして、扉の結界に触れると、何か特殊なスキルかアイテムを使ったのか、結界の一部を一時的に無力化し、するりと扉の向こうへと姿を消してしまった。
(単独で、あの結界を突破した……!?)
あれほどの芸当ができるプレイヤーは、そう多くはないはずだ。ゼロは、そのプレイヤーが消えた扉の前を注視した。何か手がかりが残っていないか。
しばらくすると、扉が再び開き、先ほどのプレイヤーが姿を現した。どうやら、内部の様子を探るための斥候行動だったらしい。月明かり(この世界の月は二つある)に照らされ、その姿が明らかになる。
青い髪を風になびかせ、軽量な革鎧に身を包んだ青年。腰には二本の短剣を差している。その佇まいからは、研ぎ澄まされた刃物のような、鋭い気配が放たれていた。そして何より、その全身から溢れ出るオーラは、ゼロがこれまで遭遇したどのプレイヤーとも比較にならないほど強力で、純粋な『速度』を感じさせた。
『こいつは……!』
エルミナから得た知識の中に、該当するプレイヤーがいた。
"蒼き疾風" アルト。
ランキング上位に名を連ねる、最速のソロアタッカー。その神速の動きと、二刀流による苛烈な攻撃で知られるトップランカーの一人だ。彼もまた、古代図書館に眠る知識や力を求めて、単独で潜入を試みていたのだろう。
アルトは、周囲に他のプレイヤーがいないことを確認すると、再び崖を駆け下り始めた。その時、ふと、アルトの視線が上空――ゼロがいる方向――に向けられた。
『……!? 気づかれたか!?』
ゼロは擬態していたわけではないが、高高度を飛行していたため、通常のプレイヤーなら気づくはずがない。だが、アルトの視線は、確かにゼロを捉えているようだった。ランカープレイヤーの感知能力は、ゼロの想像を超えているのかもしれない。
アルトは、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべると、崖を蹴って跳躍! まるで重力を無視するかのように、凄まじい速度でゼロに向かって飛翔してきた!
『来るか!』
ゼロもまた、この遭遇は避けられないと判断した。竜化進化後の力を試すには、格好の相手だ。ゼロは【飛行(竜翼)】スキルで速度を上げ、アルトを迎え撃つ体勢を取る。
「へぇ……あんたが噂の『プレイヤーイーター』か? それとも、また別の化け物か?」
アルトの声が、風を切ってゼロに届く。その声には、警戒と同時に、強い好奇心と闘争心が滲んでいた。
「どっちでもいいや。面白そうだ。少し、遊んでやろうぜ!」
アルトは空中で体勢を制御すると、腰の二本の短剣を抜き放った。短剣には青白いオーラが纏わりつき、風を切るたびに鋭い音を発する。
そして、アルトの姿が掻き消えたかと思うほどの超高速で、ゼロに接近! 神速の二刀流が、ゼロ目掛けて繰り出される!
ゼロは【形態変化戦闘(竜技)】で全身を硬質な鱗で覆い、【装甲化(竜鱗)】を発動。同時に、【時間操作(断片)】スキルで自身の時間をわずかに加速させ、アルトの動きに対応しようとする!
キィィィン! ギャギャギャッ!
アルトの短剣が、ゼロの竜鱗装甲と激しく衝突し、火花を散らす! 一撃一撃は、ゼロの防御力を完全に貫通するには至らない。だが、その速度と手数があまりにも凄まじい! ゼロの装甲が、連続攻撃によって徐々に削られていく!
『速すぎる……! これが、ランカーの実力か!』
ゼロは反撃として【竜爪】や【マグマブレス】を放とうとするが、アルトはその全てを最小限の動きで回避、あるいは短剣で弾き飛ばしてしまう。ゼロの攻撃が、全く追いつかない。
「どうした、どうした! それだけか? 噂ほどのことはないな!」
アルトは挑発するように笑いながら、さらに攻撃の速度を上げてくる。
ゼロは冷静に状況を分析した。純粋なスピードと攻撃力では、明らかにアルトに分がある。ならば、搦め手で対抗するしかない。
ゼロは、【感情波(中級)】を発動! 混乱と恐怖の感情波をアルトにぶつける!
「!?」
アルトの動きが一瞬だけ鈍る。その隙を突き、ゼロは【粘性操作】Lv.1で粘着性の高いゲルをアルトの周囲に散布し、動きを封じようとする!
「ちっ、面倒な!」
アルトは舌打ちすると、短剣を高速で回転させ、風の刃を発生させてゲルを切り裂く! さらに、自身の周囲に風の障壁を展開し、感情波の影響をも軽減させているようだ。
『精神攻撃も、粘性による拘束も、対策済みか……!』
ならば、とゼロは奥の手の一つを使うことにした。【混沌弾】Lv.1。予測不能な軌道と属性を持つこの攻撃なら、あるいは。
ゼロは、複数の混沌弾を生成し、アルト目掛けて連射する! 炎、氷、雷、闇……様々な属性が入り混じったエネルギー弾が、不規則な動きでアルトに迫る!
「ほう、これは面白い!」
アルトは驚きながらも、その超反応で混沌弾を次々とかわしていく。だが、一発だけ回避しきれず、肩を掠めた!
ジュッ!
混沌エネルギーがアルトの革鎧を溶かし、わずかなダメージを与える。アルトは顔をしかめるが、すぐに体勢を立て直す。
「なるほどな……。あんた、かなり『厄介』なタイプだ」
アルトは初めて、ゼロを侮れない相手として認識したようだった。その表情から、先程までの余裕が消えている。
「だが、そろそろ本気を出させてもらうぜ!」
アルトの全身から、青白いオーラがさらに強く噴き出した。そのオーラは風のように渦を巻き、アルトの速度をさらに引き上げる。おそらく、彼固有のスキルか、あるいは装備の効果だろう。
次の瞬間、アルトの姿が完全に視界から消えた!
(どこだ!?)
ゼロが【魔力感知(上級)】で探知するよりも速く、背後から強烈な衝撃! アルトの渾身の一撃が、ゼロのコア付近に叩き込まれたのだ!
ゴッ!!!
【装甲化(竜鱗)】が砕け散り、内部のコアにまで響くようなダメージ! HPが一気に半分近くまで削られる!
『まずい……! これ以上は……!』
ゼロは、初めて明確な『敗北』の可能性を感じた。アルトの本気は、ゼロの想像を遥かに超えていた。
だが、その時、アルトは追撃の手を止め、ゼロから距離を取った。そして、少し残念そうな、しかしどこか満足したような表情で言った。
「……今日はここまでにしておいてやるよ。思った以上に楽しめた」
アルトは短剣を鞘に納める。
「あんた、名前は? まあ、名乗れねえか。じゃあ、俺が勝手に『ウロボロス』って呼んでやる。その掴みどころのない、厄介な感じが、輪廻の蛇みてえだからな」
ウロボロス。それが、アルトがゼロに付けた呼び名だった。
「また会おうぜ、ウロボロス。次に会う時は、もっと楽しませてくれよ」
アルトはそう言い残すと、再び崖を駆け下り、あっという間に闇の中へと消えていった。
後に残されたゼロは、受けたダメージを【自己修復】Lv.6で回復させながら、アルトの言葉を反芻していた。
ウロボロス……。
そして、アルトの圧倒的な強さ。ランカープレイヤーの実力。今の自分では、まだ彼らには及ばない。しかし、同時に、アルトを一時的とはいえ翻弄できたことも事実だ。ゼロの持つ多様なスキルとトリッキーな戦術は、格上の相手にも通用する可能性を示していた。
『もっと強くならなければ……。捕食し、進化し、あの蒼き疾風をも喰らうほどに!』
アルトとの邂逅は、ゼロに新たな目標と、闘争心への火を点けた。
古代図書館への侵入は、アルトという予期せぬ遭遇と、ジャッジメントの存在により、一旦見送ることにした。まずは、この山脈のどこか安全な場所で、アルトとの戦闘で得た経験を糧とし、さらなる力を蓄える必要がある。
ゼロは、夜空に二つの月が輝く中、静かに翼を羽ばたかせ、山脈の奥深くへと姿を消した。蒼き疾風との再会を、そして次なる進化を期して。孤独な捕食者の探求は、新たなライバルの出現によって、さらに激しさを増していく。
---
名前: ゼロ
種族: 名無し(竜化進化体)
称号: 千貌を喰らう者、星屑を宿す者、竜を喰らう者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 100
魔力容量: 80
物理攻撃力: 35
物理防御力: 60
魔法攻撃力: 40
魔法防御力: 55
素早さ: 15
【スキル】
(※前話からの変化なし。ただし対ランカー戦の経験を得て、戦闘スキルの練度が向上した可能性あり)
【飛行(竜翼)】スキルによって空を駆ける速度は以前とは比較にならず、広大な大地を眼下に収めながら、ゼロは短時間で目的の山脈上空へと到達した。そこは、雪を頂く峻険な峰々が連なり、谷間には常に強い風が吹き荒れる厳しい環境だった。
『ここか……古代図書館』
上空から山脈全体を俯瞰し、特に魔力の流れが強い場所、あるいは人工的な構造物の気配がある場所を探る。やがて、ゼロは山脈の中腹、巨大な氷河によって削り取られたかのような垂直な崖の中ほどに、不自然なほど巨大で、精巧な彫刻が施された石造りの扉を発見した。扉の周囲には強力な魔法的結界が張られており、そこが古代図書館の入り口であることを示唆していた。
しかし、同時に、図書館周辺には多数のプレイヤーの気配があった。崖の下にはベースキャンプのようなものが設営され、いくつかのパーティが扉へのアプローチを試みているのか、あるいは周辺の強力なモンスターと戦闘を繰り広げている。そして、その中には、銀と白の装備に身を包んだジャッジメントのメンバーの姿も複数確認できた。
『やはり、厳重に監視されているな。正面から近づくのは愚策だ』
ゼロは高高度で旋回しながら、図書館への別の侵入経路がないか探った。崖の上から回り込むルート、あるいは地下から繋がる隠し通路など。しかし、図書館は天然の要害とも言える場所に位置しており、正面の扉以外からのアクセスは極めて困難に見えた。
『ならば、夜陰に乗じて奇襲するか……? いや、ジャッジメントの探知能力を考えると、それも危険か』
ゼロが最適なアプローチを模索していると、不意に、一つの小さな影が猛スピードで崖を駆け上がり、図書館の扉へと接近していくのが見えた。その影は、他のプレイヤーたちとは明らかに違う動きをしていた。単独でありながら、驚異的な速度と機動力で崖の突起を飛び移り、重力など意に介さないかのように垂直な壁面を疾走している。
『なんだ……? あの動きは……』
ゼロは興味を惹かれ、その影の動きを追った。影は、他のプレイヤーたちの注意を引くことなく、あっという間に図書館の扉の前に到達した。そして、扉の結界に触れると、何か特殊なスキルかアイテムを使ったのか、結界の一部を一時的に無力化し、するりと扉の向こうへと姿を消してしまった。
(単独で、あの結界を突破した……!?)
あれほどの芸当ができるプレイヤーは、そう多くはないはずだ。ゼロは、そのプレイヤーが消えた扉の前を注視した。何か手がかりが残っていないか。
しばらくすると、扉が再び開き、先ほどのプレイヤーが姿を現した。どうやら、内部の様子を探るための斥候行動だったらしい。月明かり(この世界の月は二つある)に照らされ、その姿が明らかになる。
青い髪を風になびかせ、軽量な革鎧に身を包んだ青年。腰には二本の短剣を差している。その佇まいからは、研ぎ澄まされた刃物のような、鋭い気配が放たれていた。そして何より、その全身から溢れ出るオーラは、ゼロがこれまで遭遇したどのプレイヤーとも比較にならないほど強力で、純粋な『速度』を感じさせた。
『こいつは……!』
エルミナから得た知識の中に、該当するプレイヤーがいた。
"蒼き疾風" アルト。
ランキング上位に名を連ねる、最速のソロアタッカー。その神速の動きと、二刀流による苛烈な攻撃で知られるトップランカーの一人だ。彼もまた、古代図書館に眠る知識や力を求めて、単独で潜入を試みていたのだろう。
アルトは、周囲に他のプレイヤーがいないことを確認すると、再び崖を駆け下り始めた。その時、ふと、アルトの視線が上空――ゼロがいる方向――に向けられた。
『……!? 気づかれたか!?』
ゼロは擬態していたわけではないが、高高度を飛行していたため、通常のプレイヤーなら気づくはずがない。だが、アルトの視線は、確かにゼロを捉えているようだった。ランカープレイヤーの感知能力は、ゼロの想像を超えているのかもしれない。
アルトは、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべると、崖を蹴って跳躍! まるで重力を無視するかのように、凄まじい速度でゼロに向かって飛翔してきた!
『来るか!』
ゼロもまた、この遭遇は避けられないと判断した。竜化進化後の力を試すには、格好の相手だ。ゼロは【飛行(竜翼)】スキルで速度を上げ、アルトを迎え撃つ体勢を取る。
「へぇ……あんたが噂の『プレイヤーイーター』か? それとも、また別の化け物か?」
アルトの声が、風を切ってゼロに届く。その声には、警戒と同時に、強い好奇心と闘争心が滲んでいた。
「どっちでもいいや。面白そうだ。少し、遊んでやろうぜ!」
アルトは空中で体勢を制御すると、腰の二本の短剣を抜き放った。短剣には青白いオーラが纏わりつき、風を切るたびに鋭い音を発する。
そして、アルトの姿が掻き消えたかと思うほどの超高速で、ゼロに接近! 神速の二刀流が、ゼロ目掛けて繰り出される!
ゼロは【形態変化戦闘(竜技)】で全身を硬質な鱗で覆い、【装甲化(竜鱗)】を発動。同時に、【時間操作(断片)】スキルで自身の時間をわずかに加速させ、アルトの動きに対応しようとする!
キィィィン! ギャギャギャッ!
アルトの短剣が、ゼロの竜鱗装甲と激しく衝突し、火花を散らす! 一撃一撃は、ゼロの防御力を完全に貫通するには至らない。だが、その速度と手数があまりにも凄まじい! ゼロの装甲が、連続攻撃によって徐々に削られていく!
『速すぎる……! これが、ランカーの実力か!』
ゼロは反撃として【竜爪】や【マグマブレス】を放とうとするが、アルトはその全てを最小限の動きで回避、あるいは短剣で弾き飛ばしてしまう。ゼロの攻撃が、全く追いつかない。
「どうした、どうした! それだけか? 噂ほどのことはないな!」
アルトは挑発するように笑いながら、さらに攻撃の速度を上げてくる。
ゼロは冷静に状況を分析した。純粋なスピードと攻撃力では、明らかにアルトに分がある。ならば、搦め手で対抗するしかない。
ゼロは、【感情波(中級)】を発動! 混乱と恐怖の感情波をアルトにぶつける!
「!?」
アルトの動きが一瞬だけ鈍る。その隙を突き、ゼロは【粘性操作】Lv.1で粘着性の高いゲルをアルトの周囲に散布し、動きを封じようとする!
「ちっ、面倒な!」
アルトは舌打ちすると、短剣を高速で回転させ、風の刃を発生させてゲルを切り裂く! さらに、自身の周囲に風の障壁を展開し、感情波の影響をも軽減させているようだ。
『精神攻撃も、粘性による拘束も、対策済みか……!』
ならば、とゼロは奥の手の一つを使うことにした。【混沌弾】Lv.1。予測不能な軌道と属性を持つこの攻撃なら、あるいは。
ゼロは、複数の混沌弾を生成し、アルト目掛けて連射する! 炎、氷、雷、闇……様々な属性が入り混じったエネルギー弾が、不規則な動きでアルトに迫る!
「ほう、これは面白い!」
アルトは驚きながらも、その超反応で混沌弾を次々とかわしていく。だが、一発だけ回避しきれず、肩を掠めた!
ジュッ!
混沌エネルギーがアルトの革鎧を溶かし、わずかなダメージを与える。アルトは顔をしかめるが、すぐに体勢を立て直す。
「なるほどな……。あんた、かなり『厄介』なタイプだ」
アルトは初めて、ゼロを侮れない相手として認識したようだった。その表情から、先程までの余裕が消えている。
「だが、そろそろ本気を出させてもらうぜ!」
アルトの全身から、青白いオーラがさらに強く噴き出した。そのオーラは風のように渦を巻き、アルトの速度をさらに引き上げる。おそらく、彼固有のスキルか、あるいは装備の効果だろう。
次の瞬間、アルトの姿が完全に視界から消えた!
(どこだ!?)
ゼロが【魔力感知(上級)】で探知するよりも速く、背後から強烈な衝撃! アルトの渾身の一撃が、ゼロのコア付近に叩き込まれたのだ!
ゴッ!!!
【装甲化(竜鱗)】が砕け散り、内部のコアにまで響くようなダメージ! HPが一気に半分近くまで削られる!
『まずい……! これ以上は……!』
ゼロは、初めて明確な『敗北』の可能性を感じた。アルトの本気は、ゼロの想像を遥かに超えていた。
だが、その時、アルトは追撃の手を止め、ゼロから距離を取った。そして、少し残念そうな、しかしどこか満足したような表情で言った。
「……今日はここまでにしておいてやるよ。思った以上に楽しめた」
アルトは短剣を鞘に納める。
「あんた、名前は? まあ、名乗れねえか。じゃあ、俺が勝手に『ウロボロス』って呼んでやる。その掴みどころのない、厄介な感じが、輪廻の蛇みてえだからな」
ウロボロス。それが、アルトがゼロに付けた呼び名だった。
「また会おうぜ、ウロボロス。次に会う時は、もっと楽しませてくれよ」
アルトはそう言い残すと、再び崖を駆け下り、あっという間に闇の中へと消えていった。
後に残されたゼロは、受けたダメージを【自己修復】Lv.6で回復させながら、アルトの言葉を反芻していた。
ウロボロス……。
そして、アルトの圧倒的な強さ。ランカープレイヤーの実力。今の自分では、まだ彼らには及ばない。しかし、同時に、アルトを一時的とはいえ翻弄できたことも事実だ。ゼロの持つ多様なスキルとトリッキーな戦術は、格上の相手にも通用する可能性を示していた。
『もっと強くならなければ……。捕食し、進化し、あの蒼き疾風をも喰らうほどに!』
アルトとの邂逅は、ゼロに新たな目標と、闘争心への火を点けた。
古代図書館への侵入は、アルトという予期せぬ遭遇と、ジャッジメントの存在により、一旦見送ることにした。まずは、この山脈のどこか安全な場所で、アルトとの戦闘で得た経験を糧とし、さらなる力を蓄える必要がある。
ゼロは、夜空に二つの月が輝く中、静かに翼を羽ばたかせ、山脈の奥深くへと姿を消した。蒼き疾風との再会を、そして次なる進化を期して。孤独な捕食者の探求は、新たなライバルの出現によって、さらに激しさを増していく。
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名前: ゼロ
種族: 名無し(竜化進化体)
称号: 千貌を喰らう者、星屑を宿す者、竜を喰らう者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 100
魔力容量: 80
物理攻撃力: 35
物理防御力: 60
魔法攻撃力: 40
魔法防御力: 55
素早さ: 15
【スキル】
(※前話からの変化なし。ただし対ランカー戦の経験を得て、戦闘スキルの練度が向上した可能性あり)
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