モブモンスターですが何か? ~VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件~

夏見ナイ

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エピソード61:断罪の聖域、女神との対峙

純白の光を放つ巨大な扉。それはジャスティス・フォートレスの中枢、そしておそらくはセラフィナ自身を守る最後の結界だった。複雑な聖印が刻まれ、触れるもの全てを浄化し、拒絶するかのごとき圧倒的な聖属性エネルギーが満ちている。

ゼロは、その扉の前に立ち、静かに自身の【混沌核】Lv.1と共鳴させた。【法則解析(初級)】スキルで結界の構造を読み解き、【捕食】Lv.5でそのエネルギーを直接喰らい、弱体化させることを試みる。

聖属性エネルギーがゼロの体内に流れ込むが、【聖属性耐性(上級)】Lv.1と【混沌核】の力によって、それはもはや脅威ではなく、むしろ力へと変換される。結界を構成する術式が乱れ、扉の聖なる光が不安定に明滅し始める。

「……無駄です」

突如、扉の向こう側から、凛とした女性の声が直接ゼロの精神に響いた。それはテレパシーでありながら、有無を言わせぬ強い意志と、絶対的な自信に満ちている。

「この扉は、私の意思そのもの。力でこじ開けることも、穢れた力で蝕むこともできません」

声の主は、言うまでもなくセラフィナだ。彼女は、ゼロの行動を完全に把握している。

『ならば、どうすると言う? ここで永遠に睨み合っていても仕方あるまい』
ゼロもテレパシーで返す。

「ええ、その通りです。……入りなさい、異物よ。私が、直々にあなたを断罪します」

セラフィナの言葉と共に、純白の扉が、まるで彼女の意思に応えるかのように、ゆっくりと、音もなく内側へと開いた。

扉の先は、想像を絶するほど広大で、荘厳な空間だった。巨大なステンドグラスからは七色の光が降り注ぎ、天井は遥か高く、無数の純白の柱がそれを支えている。空気は清浄な聖属性エネルギーで満たされ、ゼロのような混沌とした存在にとっては、息苦しさすら感じるほどだ。まるで、神々の住まう神殿、あるいは断罪の法廷。

そして、その広間の最奥、巨大な玉座のような椅子に、セラフィナは座っていた。

銀色の長い髪は光を反射して輝き、純白のローブは彼女の神々しさを際立たせている。手にした白銀の杖は、星見の塔のエルミナが持っていたものとはまた違う、秩序と裁きを象徴するかのような荘厳な輝きを放つ。その顔立ちは完璧なまでに美しく、しかし、その瞳には一切の慈悲も、迷いもない。ただ、ゼロという『悪』を滅ぼさんとする、絶対的な『正義』の光だけが宿っている。

彼女の周囲には、目に見えないほどの強力な聖域が展開されており、ゼロの【竜の威圧(上級)】すらも弾き返している。

「……ようやく辿り着きましたね、ウロボロス。あるいは、ゼロ、と呼ぶべきでしょうか?」
セラフィナは玉座からゆっくりと立ち上がり、静かにゼロを見据える。その声は、先程のテレパシーとは異なり、実際の音声として広間に響き渡った。
「あなたの存在は、この世界の調和を乱す、許されざる歪み。多くの罪なき魂を喰らい、法則を捻じ曲げる混沌の化身。その罪、万死に値します」

『罪、か。俺はただ、生き延び、進化してきただけだ。喰われる側が喰らう側に回った、それだけの話だろう』
ゼロは、巨大な竜化進化体の姿のまま、セラフィナと対峙する。

「弱者の戯言ですね。力なき者が淘汰されるのは自然の摂理。しかし、あなたは違う。システムのバグから生まれ、他者を糧として際限なく力を増すその在り方は、自然の理にも、神の意志にも反する、絶対的な『悪』です」
セラフィナの瞳に、激しい憎悪の炎が灯る。彼女の背後で、巨大な光の翼のようなオーラが広がり始めた。
「私の名はセラフィナ。ジャッジメントを率い、神と世界の秩序を守る者。この聖域において、あなたに『断罪』を宣告します!」

セラフィナが杖を掲げた瞬間、広間全体に満ちていた聖属性エネルギーが、彼女の元へと急速に収束していく! その魔力密度は、ゼロがこれまで経験したどの存在よりも高く、濃密だ!

『面白い……! その正義、根こそぎ喰ってやる!』
ゼロもまた【混沌核】を最大まで駆動させ、虹色と暗黒のオーラを同時に立ち昇らせる!

究極の『正義』と、究極の『混沌』。二つの相容れぬ存在が、ついに直接対決の時を迎えた。

最初に動いたのは、セラフィナだった。彼女は杖を振りかざし、詠唱を開始する。それは、ゼロが持つ【古代言語解読(中級)】スキルでも完全には理解できない、極めて古い神聖言語による呪文。

広間に満ちる聖なる光が、一つの形を取り始める。それは、無数の光の剣となり、ゼロ目掛けて降り注いだ!

【セラフィック・ブレイド】!

一本一本が、並のプレイヤーならば即死級の威力を持つ聖剣の雨!

ゼロは【飛行(竜翼)】で回避しつつ、【形態変化戦闘(竜技)】で形成した竜鱗の盾と【装甲化(竜鱗)】で攻撃を受け止める! 聖属性の刃が装甲を削り、火花を散らす! 【聖属性耐性(上級)】によってダメージは軽減されているが、その物量は凄まじい!

『手数が多い!』
ゼロは反撃として【混沌弾】Lv.2を連射する! 予測不能なエネルギー弾が光の剣と衝突し、激しい爆発を起こす!

だが、セラフィナは動じない。光の剣の雨を降らせながら、次の詠唱を開始している。今度は、ゼロの足元、そして周囲の空間そのものに、巨大な聖印がいくつも浮かび上がった!

【ホーリー・プリズン】!

聖印から放たれた光の鎖が、ゼロの巨体を縛り上げようと襲いかかる! 同時に、空間全体に聖なる圧力がかかり、ゼロの動きを鈍らせ、魔力を抑制しようとしてくる!

『拘束と弱体化か!』
ゼロは【時間操作(初歩)】で自身の時間を加速させ、鎖の拘束を振りほどこうとする! さらに【闇属性操作(初級)】で闇のオーラを放出し、聖なる圧力を中和しようと試みる!

「無駄なあがきです!」
セラフィナは杖を高く掲げ、さらに強力な魔法を発動する!
【グランド・クロス】!

広間全体を十字に切り裂くかのように、巨大な聖なる十字架が出現し、圧倒的な浄化のエネルギーを放ちながらゼロに迫る! これは、並の防御では防ぎきれない、広範囲殲滅魔法!

ゼロは咄嗟に【次元跳躍(断片)】スキルを発動! 完全ではないが、わずかな時間だけ異空間へと退避し、グランド・クロスの直撃を回避する! だが、その余波だけで【装甲化(竜鱗)】が大きく損傷し、HPが削られる!

『……強い! さすがはジャッジメントのリーダー!』

セラフィナの繰り出す魔法は、一つ一つが必殺級の威力と効果範囲を持つ。しかも、詠唱速度が異常に速く、複数の魔法を連携させてくる。生半可な反撃は通用しない。

だが、ゼロもただやられているだけではない。【並列思考】と【高速学習】スキルによって、セラフィナの魔法パターン、詠唱の癖、魔力の流れを高速で分析していく。

(彼女の力の源は、あの杖か? それとも、彼女自身の信仰心、あるいは……何か別の存在からの加護か?)

ゼロは、反撃の糸口を探るため、あえてセラフィナに接近することを決意した。遠距離での魔法戦では、いずれジリ貧になる。

ゼロは【マグマブレス】と【氷結ブレス】を同時に放ち、セラフィナの視界と動きを牽制する! 熱と冷気がぶつかり合い、激しい水蒸気爆発を起こす!

その爆煙を突き抜け、ゼロはセラフィナの懐へと飛び込んだ! 【形態変化戦闘(竜技)】で形成した【竜爪】Lv.1に、【腐食毒液】Lv.2と【亡者の剣】Lv.1のエネルギーを纏わせ、セラフィナの聖域を切り裂かんと迫る!

セラフィナは、ゼロの接近に驚く様子もなく、冷静に杖を構えた。そして、ゼロの爪が届く寸前、彼女の体が眩いばかりの光に包まれた!

【セイクリッド・フィールド】!

絶対的な防御結界。ゼロの渾身の一撃は、その光の壁に阻まれ、弾き返される!

「私の聖域に、穢れた爪は届きません」
セラフィナは冷たく言い放つと、杖の先端をゼロに向けた。そこには、極限まで圧縮された聖属性エネルギーが、小さな太陽のように輝いていた。

【ジャッジメント・レイ】!

セラフィナの代名詞とも言える、最大級の単体攻撃魔法。それは、全てを浄化し、消滅させる、絶対的な断罪の光。

ゼロの【混沌核】が、最大の危機を告げる警鐘を鳴らす! 回避は不可能! 防御も間に合わない!

絶体絶命。断罪の光が、ゼロを飲み込もうとした、その瞬間――。

ゼロは、最後の賭けに出た。それは、自身の存在そのものを変質させる、究極の【捕食】。

『喰らう……! あの光ごと、お前の正義ごと!!』

ゼロは、迫りくるジャッジメント・レイに向かって、大きく口を開いた(あるいは、それに相当するエネルギー吸収器官を形成した)。そして、【混沌核】の全機能を開放し、聖なる光の奔流を、飲み込み始めたのだ!

凄まじいエネルギーがゼロの体内に流れ込み、コアが悲鳴を上げる! 存在そのものが浄化され、消滅しかけるほどの激痛!

だが、ゼロは喰らうことをやめない。混沌は、秩序を喰らい、聖性を喰らい、そして、新たな力へと変える!

セラフィナの瞳に、初めて信じられないものを見るかのような、動揺の色が浮かんだ。

「馬鹿な……私のジャッジメント・レイを……喰らっている……!?」

聖域の中心で、混沌と聖性が激突し、空間そのものが軋みを上げる。勝つのは、絶対的な正義か、それとも全てを喰らう混沌か。二つの究極存在の戦いは、予測不能な結末へと向かおうとしていた。

---

名前: ゼロ
種族: 名無し(原初の不定形)
称号: 千貌を喰らう者、星屑を宿す者、竜を喰らう者、嵐を喰らう者、法則を喰らう者、世界を揺るがす災害
所属: 未定義

【能力値】
(※前話から変化なし、ただしセラフィナとの戦闘によりHP・MPは消耗している)

【スキル】
(※前話からの変化なし、ただしセラフィナとの戦闘経験により、対聖属性戦闘、対魔法戦闘への習熟度が大幅に向上)
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