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エピソード71:星の災厄、再臨の刻
GM部隊との法則レベルの死闘を終え、ゼロはEFO世界の辺境、時間の流れすら曖昧な古代の砂漠地帯にいた。【万象擬態】で砂丘そのものと同化し、存在を希薄化させながら、先の戦いで得た膨大な情報と、新たなる権能――【システム権限(超越)】、【法則書き換え(模倣)】、【存在消去(模倣)】――の解析と制御に努めていた。
システムへの干渉能力は、もはやGMアバターに匹敵、あるいは凌駕するレベルに達していた。ゼロの意思一つで、限定的ながら天候を操作し、地形を変え、他のプレイヤーのスキル効果を減衰させることすら可能だ。存在消去の力は、まだ完全に制御するには至っていないものの、対象の存在情報を不安定化させるだけでも、戦闘において絶大なアドバンテージとなるだろう。
(システムは、俺を消去しようとして失敗した。次に来るのは、より上位の介入……あるいは、世界そのものを巻き込むような、強硬手段か)
ゼロは冷静に分析する。自らがシステムにとって最大の脅威となった今、運営が取りうる選択肢は限られている。
その予感は、想像よりも早く現実のものとなった。
突如、EFO世界全体を揺るがすような、巨大な『異変』が発生したのだ。
空が、不吉な深紅色に染まる。大地が断続的に激しく震え、各地で次元の亀裂が発生し、そこから未知のエネルギーや、異形の存在の影が漏れ出し始める。プレイヤーたちのステータスウィンドウにはエラーメッセージが頻発し、一部のスキルは使用不能になったり、効果が暴走したりする現象が多発。システムメッセージが、全てのプレイヤーに向けて、かつてないレベルの緊急警報を発した。
《警告:全ワールド同時・緊急事態発生》
《原因不明の大規模次元震により、世界法則に深刻な不安定化が発生しています》
《各地にて次元の裂け目が拡大中。異次元からの高エネルギー体、及び敵性存在の侵入を確認》
《システムによる法則安定化プロトコルを実行しますが、正常化には時間を要する見込みです》
《全プレイヤーは、自身の安全を最優先に行動してください。ワールドイベント『終焉の刻:星の災厄、再臨』を開始します》
『星の災厄、再臨……!』
ゼロの【混沌核】が、古代の記憶――原初の種族が体験した、あの絶望的な破壊と混沌の奔流――と共鳴し、警鐘を鳴らす! これは、単なるゲームイベントではない。かつてこの世界を、あるいはそれ以上の規模で襲った『本物の災厄』が、再び始まろうとしているのだ!
空を見上げると、深紅の空に巨大な亀裂が走り、そこから夜空よりも暗い『深淵』が覗いている。そして、その深淵から、粘性の闇のようなものが溢れ出し、地上へと降り注ぎ始めた。それは、EFO世界の法則とは全く異なる、異次元の法則を持つ『何か』だった。それに触れた大地は腐敗し、モンスターは狂乱し、プレイヤーの装備やスキルは意味をなさなくなっていく。
さらに、亀裂からは具体的な『形』を持つ存在も現れ始めた。それは、幾何学的な形状をした機械生命体のようでもあり、触手と無数の目を持つ不定形の肉塊のようでもあり、あるいは純粋な負の感情エネルギーが凝縮した存在のようでもあった。それらは一様に、この世界の全てを『侵食』し、『同化』しようという、絶対的な敵意を放っている。
(これが、星の災厄……創造主たちが恐れ、この箱舟世界を創る原因となったものか)
ゼロは、その圧倒的な脅威を前にしても、不思議と恐怖は感じなかった。むしろ、【混沌核】が、その異質なエネルギーと法則に対して、強い『興味』と『食欲』を示しているのを感じる。
そして、ゼロは気づいた。世界の法則が不安定化している影響で、通常のプレイヤーは様々なペナルティを受けているようだが、ゼロ自身には、ほとんど影響がないのだ。いや、むしろ逆だった。
法則が揺らぎ、秩序が乱れたこの状況は、法則の外側を生きるゼロにとって、ある意味で『動きやすい』環境となっていた。不安定化した魔力や時空間の歪みを、【混沌核】と関連スキルで吸収・利用することさえ可能だった。
《……ゼロ……聞こえますか……》
その時、エルミナからのテレパシーが、ノイズ混じりに届いた。システムの監視や妨害を掻い潜って、必死に接触を試みてきているようだ。
『エルミナか。この状況、お前は予期していたのか?』
《……はい……。星の巡りは、この刻が近づいていることを示していました……。星の災厄……それは、あらゆる世界を飲み込み、均質化しようとする、高次元からの『侵食現象』……。創造主たちは、それを防ぐため、このEFO世界を創り、対抗手段を準備していたのです……》
『対抗手段……俺のような「虚ろなる器」も、その一つか』
《……ええ。しかし、器は制御不能な劇薬でもあった……。故に、彼らは別の対抗策も用意していました。世界の法則そのものを強化し、安定させるための巨大なシステム……そして、そのシステムを守護し、時には能動的に災厄に対抗するための『英雄』を選別・育成する仕組み……》
それが、レベルやスキル、クエストといった、この世界の根幹システムだったというわけか。
《ですが……システムは、災厄の侵食に対して、もはや限界に来ています……。法則が書き換えられ、安定性が失われつつある……。このままでは、世界は……EFOは、侵食され、消滅するでしょう……》
エルミナの声には、焦りと悲痛な響きが混じっていた。
『それで、俺に何をしろと? 世界を救えとでも言うのか? システムに敵視されている、この俺に?』
《……あなたの力が必要です、ゼロ……。あなたの持つ混沌……原初の不定形としての力だけが、異次元の法則による侵食に対抗し、あるいはそれを『喰らう』ことができるかもしれないのです……。システムや運営も……今は、あなたを利用せざるを得ない状況にあるはず……》
『利用……ね』
ゼロは鼻を鳴らす(比喩)。都合の良い話だ。散々排除しようとしてきた相手に、今度は助けを求めると。
《……分かっています……。ですが、このままでは、あなた自身も……この世界と共に消滅する可能性が高い……。お願いです、ゼロ……。これは、世界の……いいえ、あなたの生存のための戦いでもあるのです……!》
エルミナの必死の訴え。その言葉は、ゼロのコアに届いた。確かに、この世界が消滅すれば、ゼロの存在基盤も失われる。それに、あの『星の災厄』という未知の脅威。それを喰らえば、ゼロはさらなる高みへと至れるかもしれない。
(……選択か。エルミナの言っていた)
世界を救うか、見捨てるか、利用するか。
ゼロは、深紅に染まった空と、そこから溢れ出す異形の侵略者たちを見上げた。そして、地上で混乱し、絶望し、それでも戦おうとしているプレイヤーたちの姿を遠くに感じ取った。その中には、アルトや、リリアたちの気配もある。
『……面白い。乗ってやろう、エルミナ。ただし、俺は誰かのために戦うわけじゃない。俺自身の進化のために、そして、この世界の全てを喰らうために戦うだけだ』
ゼロは決断した。この世界規模の災厄を、自らの進化の糧とする。そして、その過程で、邪魔になるものは全て排除する。プレイヤーも、侵略者も、そしてシステムすらも。
《……それで、構いません……。あなたの力が、未来を切り開くことを……信じています……》
エルミナのテレパシーが途切れる。
ゼロは、自身の体を再び変貌させた。それは、あらゆる法則とエネルギーを内包し、無限の可能性を秘めた、究極の戦闘形態。
『さあ、始めようか。最後の晩餐を』
原初の不定形は、世界の終焉が始まろうとしている戦場へと、静かに降下を開始した。その目的は、救済ではない。支配でもない。ただ、喰らい尽くすこと。
星の災厄、システムの思惑、プレイヤーたちの抵抗。全てが混沌の渦へと飲み込まれていく。EFO世界の、そしてゼロ自身の運命を決める、最終試練が、今、始まった。
---
名前: ゼロ
種族: ??? (最終進化体)
称号: ??? (全ての称号を超越、あるいは統合)
所属: 未定義
【能力値】
全て測定不能、あるいは状況に応じて無限に変動
【スキル】
(※前話からの変化なし、ただし世界規模イベントの発生とエルミナとの対話により、状況認識と目的意識が変化)
システムへの干渉能力は、もはやGMアバターに匹敵、あるいは凌駕するレベルに達していた。ゼロの意思一つで、限定的ながら天候を操作し、地形を変え、他のプレイヤーのスキル効果を減衰させることすら可能だ。存在消去の力は、まだ完全に制御するには至っていないものの、対象の存在情報を不安定化させるだけでも、戦闘において絶大なアドバンテージとなるだろう。
(システムは、俺を消去しようとして失敗した。次に来るのは、より上位の介入……あるいは、世界そのものを巻き込むような、強硬手段か)
ゼロは冷静に分析する。自らがシステムにとって最大の脅威となった今、運営が取りうる選択肢は限られている。
その予感は、想像よりも早く現実のものとなった。
突如、EFO世界全体を揺るがすような、巨大な『異変』が発生したのだ。
空が、不吉な深紅色に染まる。大地が断続的に激しく震え、各地で次元の亀裂が発生し、そこから未知のエネルギーや、異形の存在の影が漏れ出し始める。プレイヤーたちのステータスウィンドウにはエラーメッセージが頻発し、一部のスキルは使用不能になったり、効果が暴走したりする現象が多発。システムメッセージが、全てのプレイヤーに向けて、かつてないレベルの緊急警報を発した。
《警告:全ワールド同時・緊急事態発生》
《原因不明の大規模次元震により、世界法則に深刻な不安定化が発生しています》
《各地にて次元の裂け目が拡大中。異次元からの高エネルギー体、及び敵性存在の侵入を確認》
《システムによる法則安定化プロトコルを実行しますが、正常化には時間を要する見込みです》
《全プレイヤーは、自身の安全を最優先に行動してください。ワールドイベント『終焉の刻:星の災厄、再臨』を開始します》
『星の災厄、再臨……!』
ゼロの【混沌核】が、古代の記憶――原初の種族が体験した、あの絶望的な破壊と混沌の奔流――と共鳴し、警鐘を鳴らす! これは、単なるゲームイベントではない。かつてこの世界を、あるいはそれ以上の規模で襲った『本物の災厄』が、再び始まろうとしているのだ!
空を見上げると、深紅の空に巨大な亀裂が走り、そこから夜空よりも暗い『深淵』が覗いている。そして、その深淵から、粘性の闇のようなものが溢れ出し、地上へと降り注ぎ始めた。それは、EFO世界の法則とは全く異なる、異次元の法則を持つ『何か』だった。それに触れた大地は腐敗し、モンスターは狂乱し、プレイヤーの装備やスキルは意味をなさなくなっていく。
さらに、亀裂からは具体的な『形』を持つ存在も現れ始めた。それは、幾何学的な形状をした機械生命体のようでもあり、触手と無数の目を持つ不定形の肉塊のようでもあり、あるいは純粋な負の感情エネルギーが凝縮した存在のようでもあった。それらは一様に、この世界の全てを『侵食』し、『同化』しようという、絶対的な敵意を放っている。
(これが、星の災厄……創造主たちが恐れ、この箱舟世界を創る原因となったものか)
ゼロは、その圧倒的な脅威を前にしても、不思議と恐怖は感じなかった。むしろ、【混沌核】が、その異質なエネルギーと法則に対して、強い『興味』と『食欲』を示しているのを感じる。
そして、ゼロは気づいた。世界の法則が不安定化している影響で、通常のプレイヤーは様々なペナルティを受けているようだが、ゼロ自身には、ほとんど影響がないのだ。いや、むしろ逆だった。
法則が揺らぎ、秩序が乱れたこの状況は、法則の外側を生きるゼロにとって、ある意味で『動きやすい』環境となっていた。不安定化した魔力や時空間の歪みを、【混沌核】と関連スキルで吸収・利用することさえ可能だった。
《……ゼロ……聞こえますか……》
その時、エルミナからのテレパシーが、ノイズ混じりに届いた。システムの監視や妨害を掻い潜って、必死に接触を試みてきているようだ。
『エルミナか。この状況、お前は予期していたのか?』
《……はい……。星の巡りは、この刻が近づいていることを示していました……。星の災厄……それは、あらゆる世界を飲み込み、均質化しようとする、高次元からの『侵食現象』……。創造主たちは、それを防ぐため、このEFO世界を創り、対抗手段を準備していたのです……》
『対抗手段……俺のような「虚ろなる器」も、その一つか』
《……ええ。しかし、器は制御不能な劇薬でもあった……。故に、彼らは別の対抗策も用意していました。世界の法則そのものを強化し、安定させるための巨大なシステム……そして、そのシステムを守護し、時には能動的に災厄に対抗するための『英雄』を選別・育成する仕組み……》
それが、レベルやスキル、クエストといった、この世界の根幹システムだったというわけか。
《ですが……システムは、災厄の侵食に対して、もはや限界に来ています……。法則が書き換えられ、安定性が失われつつある……。このままでは、世界は……EFOは、侵食され、消滅するでしょう……》
エルミナの声には、焦りと悲痛な響きが混じっていた。
『それで、俺に何をしろと? 世界を救えとでも言うのか? システムに敵視されている、この俺に?』
《……あなたの力が必要です、ゼロ……。あなたの持つ混沌……原初の不定形としての力だけが、異次元の法則による侵食に対抗し、あるいはそれを『喰らう』ことができるかもしれないのです……。システムや運営も……今は、あなたを利用せざるを得ない状況にあるはず……》
『利用……ね』
ゼロは鼻を鳴らす(比喩)。都合の良い話だ。散々排除しようとしてきた相手に、今度は助けを求めると。
《……分かっています……。ですが、このままでは、あなた自身も……この世界と共に消滅する可能性が高い……。お願いです、ゼロ……。これは、世界の……いいえ、あなたの生存のための戦いでもあるのです……!》
エルミナの必死の訴え。その言葉は、ゼロのコアに届いた。確かに、この世界が消滅すれば、ゼロの存在基盤も失われる。それに、あの『星の災厄』という未知の脅威。それを喰らえば、ゼロはさらなる高みへと至れるかもしれない。
(……選択か。エルミナの言っていた)
世界を救うか、見捨てるか、利用するか。
ゼロは、深紅に染まった空と、そこから溢れ出す異形の侵略者たちを見上げた。そして、地上で混乱し、絶望し、それでも戦おうとしているプレイヤーたちの姿を遠くに感じ取った。その中には、アルトや、リリアたちの気配もある。
『……面白い。乗ってやろう、エルミナ。ただし、俺は誰かのために戦うわけじゃない。俺自身の進化のために、そして、この世界の全てを喰らうために戦うだけだ』
ゼロは決断した。この世界規模の災厄を、自らの進化の糧とする。そして、その過程で、邪魔になるものは全て排除する。プレイヤーも、侵略者も、そしてシステムすらも。
《……それで、構いません……。あなたの力が、未来を切り開くことを……信じています……》
エルミナのテレパシーが途切れる。
ゼロは、自身の体を再び変貌させた。それは、あらゆる法則とエネルギーを内包し、無限の可能性を秘めた、究極の戦闘形態。
『さあ、始めようか。最後の晩餐を』
原初の不定形は、世界の終焉が始まろうとしている戦場へと、静かに降下を開始した。その目的は、救済ではない。支配でもない。ただ、喰らい尽くすこと。
星の災厄、システムの思惑、プレイヤーたちの抵抗。全てが混沌の渦へと飲み込まれていく。EFO世界の、そしてゼロ自身の運命を決める、最終試練が、今、始まった。
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