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エピソード78:頂点の孤独、混沌の黄昏
世界の枷は破壊された。EFO世界は、創造主の意図からも、システムの厳格な管理からも解放され、真の『フロンティア』――あるいは、予測不能な『混沌』――へと変貌を遂げた。法則は揺らぎ、大地は姿を変え、かつての常識はもはや通用しない。
ゼロは、そんな激変した世界を、漫然と旅していた。超越進化によって得た力は、もはやこの世界のどんな存在をも凌駕していた。望めば星を砕き、時を止め、法則を書き換えることすら可能だろう。だが、ゼロにはそうする明確な理由も、目的もなかった。ただ、この変わり果てた世界が、これからどうなっていくのかを、少し離れた場所から見届けたいという、漠然とした好奇心だけがあった。
ゼロは、多くの場合、かつての人間・神代零に似た青年の姿を取っていた。【原初の不定形】の力を使えば、どんな姿にもなれる。巨大な竜にも、不可視の混沌にも。しかし、あえて人の形に近い姿を選ぶのは、それが一番『楽』だからかもしれないし、あるいは、心の奥底にかすかに残る、人間だった頃の残滓がそうさせるのかもしれなかった。
旅の途中、ゼロは様々な光景を目にした。
システムの束縛から解放され、より自由に、しかしより危険になった世界で、必死に生き残ろうとするプレイヤーたちの姿。レベルやスキルという指標を失い、自らの知恵と力、そして仲間との絆だけを頼りに、新たな脅威に立ち向かう者たち。中には、解放された力を悪用し、無法の限りを尽くす者もいたが、多くは手探りで新しい世界のルールを模索しているようだった。
自我に目覚め、人間のように喜び、悲しみ、怒り、そして愛を語り始めたNPCたちの姿。彼らはもはや、プログラムされた役割を演じるだけの人形ではない。自らの意志で未来を選び取ろうとする、新たな隣人となっていた。
そして、より本能的に、あるいはより狡猾に進化したモンスターたちの姿。彼らはもはや、経験値やドロップアイテムを落とすだけの存在ではない。独自の縄張りを持ち、時には徒党を組み、知恵を使ってプレイヤーや他のモンスターを狩る、手強い競争相手となっていた。ネザーヘイムのような魔境領域も、その境界が曖昧になり、より強力な魔物が各地に出現するようになっていた。
ゼロは、それらの光景を、感情を排した観察者の視点で見つめていた。面白い、とは思う。変化に富み、予測不能。かつて自分が求めていた『非日常』が、皮肉にも世界全体に訪れたのだから。
しかし、その『面白さ』も、どこか他人事のように感じられた。自分は、もはや彼らと同じ舞台には立っていない。あまりにも強くなりすぎた。あまりにも、異質な存在になりすぎた。
ある時、ゼロは巨大な渓谷地帯――かつてテンペスト・ロックと戦った場所に似ているが、法則の変動によって新たに生成された地形だろう――を訪れた。そこでは、空に開いた不安定な次元の裂け目から、純粋な負のエネルギーで構成された、巨大な影のような存在が溢れ出し、周囲一帯を凍てつく絶望で覆い尽くそうとしていた。
それは、もはやモンスターというよりも、『概念存在』に近い何かだった。物理的な攻撃も、通常の魔法もほとんど効果がなく、ただそこに在るだけで、触れたものの精神を蝕み、存在意義を奪い去っていく。近くにいた数パーティのプレイヤーたちは、なすすべなく戦意を喪失し、虚ろな目で立ち尽くしている。
ゼロは、その光景を静かに見つめた。そして、ゆっくりとその影――『絶望の具現』とでも呼ぶべきか――へと近づいた。
影は、ゼロの接近に気づくと、その負のエネルギーを集中させ、ゼロの精神を直接破壊しようと試みた。それは、ゼロがかつてアストラル・センチネルから受けた精神攻撃をも上回る、根源的な虚無への誘いだった。
だが、ゼロの【精神耐性(超越級)】Lv.1と【混沌核】Lv.1の前には、それすらも意味をなさなかった。ゼロは、影が放つ絶望の波動を、まるで心地よい微風のように受け流す。
『……お前の絶望も、俺には届かない』
ゼロは、指先(不定形な体の一部をそう変化させた)を影へと向けた。そして、【存在消去(模倣)】Lv.1スキルを発動。ただし、イレイザーのように存在そのものを消し去るのではない。【法則書き換え(初級)】Lv.1と組み合わせ、その存在を定義する『負』の法則を、『無』へと書き換えたのだ。
瞬間、巨大な影は、何の抵抗も見せることなく、音もなく、光もなく、ただ静かに『無かったこと』になった。後に残されたのは、元の穏やかな(?)渓谷の風景だけだった。
近くでその一部始終を見ていたプレイヤーたちは、何が起こったのか理解できず、ただ呆然と立ち尽くしていた。彼らには、ゼロが何をしたのか、そしてゼロが何者なのか、もはや想像することすらできないだろう。
ゼロは、彼らに一瞥もくれることなく、その場を立ち去った。圧倒的な力。世界の法則すら書き換える力。しかし、それを行使しても、ゼロの心には何の感慨も湧かなかった。ただ、そこにあった問題を『処理』しただけ。それは、道端の石を蹴るのと、何ら変わりない行為に過ぎなかった。
頂点に立ったがゆえの孤独。誰とも共有できない力。誰にも理解されない存在。
それが、ゼロがたどり着いた場所だった。
(……これが、俺が見たかった景色なのか?)
かつて神代零だった頃に抱いた、非日常への渇望。それは満たされた。だが、その先にあったのは、無限の力と、それに比例する無限の虚無だったのかもしれない。
ゼロは、空を見上げた。二つの月が、静かにゼロを見下ろしている。
これから、どこへ行こうか。何をしようか。
無限の選択肢がある。だが、そのどれを選んでも、この絶対的な孤独から逃れることはできないのかもしれない。
それでも、ゼロは歩みを止めないだろう。あるいは、飛び続けるのかもしれない。まだ見ていない世界がある。まだ喰らっていない法則がある。まだ解き明かされていない謎がある。
その探求の果てに、ゼロが何を見出すのか。それは、ゼロ自身にも、そしてこの変わり果てた世界の誰にも、分からない。
ただ、混沌の化身は、今日も静かに、世界のどこかを彷徨い続ける。頂点の孤独を抱きしめながら、次なる『餌』を求めて。
---
名前: ゼロ
種族: ??? (超越進化体)
称号: ??? (全ての称号を超越、あるいは統合)
所属: 未定義
【能力値】
全て測定不能、あるいは状況に応じて無限に変動
【スキル】
(※前話からの変化なし。ただし、概念存在との戦闘経験により、法則操作・存在干渉能力への理解と制御がさらに向上している可能性あり)
ゼロは、そんな激変した世界を、漫然と旅していた。超越進化によって得た力は、もはやこの世界のどんな存在をも凌駕していた。望めば星を砕き、時を止め、法則を書き換えることすら可能だろう。だが、ゼロにはそうする明確な理由も、目的もなかった。ただ、この変わり果てた世界が、これからどうなっていくのかを、少し離れた場所から見届けたいという、漠然とした好奇心だけがあった。
ゼロは、多くの場合、かつての人間・神代零に似た青年の姿を取っていた。【原初の不定形】の力を使えば、どんな姿にもなれる。巨大な竜にも、不可視の混沌にも。しかし、あえて人の形に近い姿を選ぶのは、それが一番『楽』だからかもしれないし、あるいは、心の奥底にかすかに残る、人間だった頃の残滓がそうさせるのかもしれなかった。
旅の途中、ゼロは様々な光景を目にした。
システムの束縛から解放され、より自由に、しかしより危険になった世界で、必死に生き残ろうとするプレイヤーたちの姿。レベルやスキルという指標を失い、自らの知恵と力、そして仲間との絆だけを頼りに、新たな脅威に立ち向かう者たち。中には、解放された力を悪用し、無法の限りを尽くす者もいたが、多くは手探りで新しい世界のルールを模索しているようだった。
自我に目覚め、人間のように喜び、悲しみ、怒り、そして愛を語り始めたNPCたちの姿。彼らはもはや、プログラムされた役割を演じるだけの人形ではない。自らの意志で未来を選び取ろうとする、新たな隣人となっていた。
そして、より本能的に、あるいはより狡猾に進化したモンスターたちの姿。彼らはもはや、経験値やドロップアイテムを落とすだけの存在ではない。独自の縄張りを持ち、時には徒党を組み、知恵を使ってプレイヤーや他のモンスターを狩る、手強い競争相手となっていた。ネザーヘイムのような魔境領域も、その境界が曖昧になり、より強力な魔物が各地に出現するようになっていた。
ゼロは、それらの光景を、感情を排した観察者の視点で見つめていた。面白い、とは思う。変化に富み、予測不能。かつて自分が求めていた『非日常』が、皮肉にも世界全体に訪れたのだから。
しかし、その『面白さ』も、どこか他人事のように感じられた。自分は、もはや彼らと同じ舞台には立っていない。あまりにも強くなりすぎた。あまりにも、異質な存在になりすぎた。
ある時、ゼロは巨大な渓谷地帯――かつてテンペスト・ロックと戦った場所に似ているが、法則の変動によって新たに生成された地形だろう――を訪れた。そこでは、空に開いた不安定な次元の裂け目から、純粋な負のエネルギーで構成された、巨大な影のような存在が溢れ出し、周囲一帯を凍てつく絶望で覆い尽くそうとしていた。
それは、もはやモンスターというよりも、『概念存在』に近い何かだった。物理的な攻撃も、通常の魔法もほとんど効果がなく、ただそこに在るだけで、触れたものの精神を蝕み、存在意義を奪い去っていく。近くにいた数パーティのプレイヤーたちは、なすすべなく戦意を喪失し、虚ろな目で立ち尽くしている。
ゼロは、その光景を静かに見つめた。そして、ゆっくりとその影――『絶望の具現』とでも呼ぶべきか――へと近づいた。
影は、ゼロの接近に気づくと、その負のエネルギーを集中させ、ゼロの精神を直接破壊しようと試みた。それは、ゼロがかつてアストラル・センチネルから受けた精神攻撃をも上回る、根源的な虚無への誘いだった。
だが、ゼロの【精神耐性(超越級)】Lv.1と【混沌核】Lv.1の前には、それすらも意味をなさなかった。ゼロは、影が放つ絶望の波動を、まるで心地よい微風のように受け流す。
『……お前の絶望も、俺には届かない』
ゼロは、指先(不定形な体の一部をそう変化させた)を影へと向けた。そして、【存在消去(模倣)】Lv.1スキルを発動。ただし、イレイザーのように存在そのものを消し去るのではない。【法則書き換え(初級)】Lv.1と組み合わせ、その存在を定義する『負』の法則を、『無』へと書き換えたのだ。
瞬間、巨大な影は、何の抵抗も見せることなく、音もなく、光もなく、ただ静かに『無かったこと』になった。後に残されたのは、元の穏やかな(?)渓谷の風景だけだった。
近くでその一部始終を見ていたプレイヤーたちは、何が起こったのか理解できず、ただ呆然と立ち尽くしていた。彼らには、ゼロが何をしたのか、そしてゼロが何者なのか、もはや想像することすらできないだろう。
ゼロは、彼らに一瞥もくれることなく、その場を立ち去った。圧倒的な力。世界の法則すら書き換える力。しかし、それを行使しても、ゼロの心には何の感慨も湧かなかった。ただ、そこにあった問題を『処理』しただけ。それは、道端の石を蹴るのと、何ら変わりない行為に過ぎなかった。
頂点に立ったがゆえの孤独。誰とも共有できない力。誰にも理解されない存在。
それが、ゼロがたどり着いた場所だった。
(……これが、俺が見たかった景色なのか?)
かつて神代零だった頃に抱いた、非日常への渇望。それは満たされた。だが、その先にあったのは、無限の力と、それに比例する無限の虚無だったのかもしれない。
ゼロは、空を見上げた。二つの月が、静かにゼロを見下ろしている。
これから、どこへ行こうか。何をしようか。
無限の選択肢がある。だが、そのどれを選んでも、この絶対的な孤独から逃れることはできないのかもしれない。
それでも、ゼロは歩みを止めないだろう。あるいは、飛び続けるのかもしれない。まだ見ていない世界がある。まだ喰らっていない法則がある。まだ解き明かされていない謎がある。
その探求の果てに、ゼロが何を見出すのか。それは、ゼロ自身にも、そしてこの変わり果てた世界の誰にも、分からない。
ただ、混沌の化身は、今日も静かに、世界のどこかを彷徨い続ける。頂点の孤独を抱きしめながら、次なる『餌』を求めて。
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名前: ゼロ
種族: ??? (超越進化体)
称号: ??? (全ての称号を超越、あるいは統合)
所属: 未定義
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