モブモンスターですが何か？ ～VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件～

エピソード81：星屑の旅路、終わりなき渇望

ゼロがEFO世界から姿を消した後、その世界は静かに、しかし確実に変化を続けていた。

法則の枷が外れた大地では、プレイヤーたちが新たな現実と向き合っていた。レベルもスキルウィンドウもない世界。経験と知恵、そして仲間との連携だけが頼りとなる、真のサバイバルが始まっていた。ある者はかつてのMMORPGとしての感覚を忘れられずに戸惑い、ある者はこの自由すぎる世界に新たな冒険の可能性を見出し、目を輝かせた。混乱の中で新たなコミュニティが生まれ、失われた街の跡には小さな集落が築かれ、人々は手探りで新しい秩序を模索し始めていた。

忘れられた王国跡の片隅で、アルトは空を見上げていた。ゼロ――ウロボロスが消えた空を。ステータスもスキルも見えない。だが、彼の体はゼロとの激闘を記憶し、その経験は血肉となっていた。システムの補助がなくとも、彼の速度は衰えず、むしろ枷が外れたことで、さらに鋭さを増しているようにさえ感じられた。
「……行っちまったか。だが、これで終わりじゃねえ。俺も、もっと強くならねえと……。いつか、必ず追いついてやるぜ、ウロボロス」
蒼き疾風は、新たな目標を見据え、再び駆け出した。混沌とした世界は、彼のような強者にとっては、無限の修練場でもあるのだ。

復興が進む街では、リリアが仲間たちと共に負傷者の治療にあたっていた。彼女の癒やしの力は、世界の法則が変わったことで、より純粋な祈りと共感の力として発現し、多くの人々を救っていた。システム的な回復魔法ではない、心に直接働きかけるような温かい光。
「ゼロさん……今、どこにいるんだろう……」
彼女は時折空を見上げ、あの異形で、しかしどこか寂しげだった存在のことを思う。彼が何者で、何を成したのか、まだ理解はできない。だが、彼がこの世界の『何か』を変えたこと、そして自分を助けてくれたことは、紛れもない事実だった。いつかまた会えるだろうか。その時、自分は彼に何を伝えられるだろうか。彼女は、小さな決意を胸に、再び目の前の人々に手を差し伸べた。

星見の塔。エルミナは、静かに星々の運行を観測していた。ゼロが世界の枷を破壊し、旅立っていったことを、彼女は知っていた。それは、創造主の計画からも、システムの管理からも逸脱した、全く新しい未来の始まりだった。
「……混沌の風が吹き始めた……。この世界が、そして彼が、どのような物語を紡いでいくのか……。私の観測は、まだ終わりそうにありませんね」
彼女は、遠い未来を見据えるように、静かに微笑んだ。

一方、ゼロは、EFO世界とは異なる次元、あるいは宇宙の片隅にいた。そこは、物理法則も、時間の流れも、エネルギーの形態も、全てが既知のものとは異なる、全く新しい『フロンティア』だった。

周囲には、結晶化した思考で構成された生命体や、音そのものが形を持ったような存在、あるいは負の質量を持つエネルギーの流れなど、ゼロの理解と好奇心を刺激するものが無限に広がっている。

超越進化を遂げたゼロにとって、もはや生存の危機というものはほとんど存在しないだろう。その気になれば、この新たな世界ですら、容易く支配下に置くことができるかもしれない。

だが、ゼロはそうしなかった。彼は、ただ観察した。未知の法則、未知の生命、未知のエネルギー。それらを【法則解析(神域)】Lv.1で読み解き、【情報吸収(上級)】Lv.1で知識として蓄積していく。

そして、興味を惹かれた存在があれば、近づき、対話し（【精神感応(テレパシー)(上級)】Lv.1を使って）、時には衝突し、そして――喰らった。

【捕食】Lv.5。それは、ゼロという存在の根幹であり、彼の探求そのものだった。新たな法則を喰らい、未知のエネルギーを喰らい、異質な存在を喰らう。そのたびに、ゼロの【混沌核】Lv.1はさらに複雑化し、【原初の不定形】Lv.2の能力は新たな形態を獲得していく。

ゼロの進化に、もはや終わりはない。世界の頂点に立ったとしても、そこは新たな始まりに過ぎなかった。さらにその先、次元を超え、法則を超え、概念すらも喰らい尽くすまで、彼の渇望が満たされることはないのかもしれない。

孤独か？ そうかもしれない。だが、それはゼロが選んだ道だ。無限の知識と、無限の進化。その探求こそが、ゼロにとっての存在意義であり、至上の喜びとなっていた。

ある時、ゼロは巨大なエネルギー生命体――この次元の『主』のような存在――と遭遇した。それは、ゼロの存在を認識すると、警告を発してきた。
《……混沌……侵食者……この次元から……去れ……》

ゼロは、かつて神代零だった頃には想像もできなかったような、神々しいほどのオーラを放つその存在を前にして、ただ静かに、そして不敵に、思考を返した。

『断る。お前もまた、俺の『餌』となる可能性がある』

ゼロの体から、混沌と虚無、光と闇、そして無限の可能性を秘めたオーラが溢れ出す。新たな世界での、新たな捕食が始まろうとしていた。

ゼロの旅は続く。次元から次元へ、世界から世界へ。終わりなき探求と、進化の物語。彼がどこへ行き、何を成し、最終的にどのような存在へと至るのか。それは、おそらくゼロ自身にすら分からない。

ただ、確かなことは一つだけ。
原初の混沌は、常に飢えている。そして、その飢えが満たされる日は、永遠に来ないのかもしれない。

混沌の黄昏は、新たな夜明けへの序章。星屑の旅路は、まだ始まったばかりだ。

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名前: ゼロ
種族: ？？？ (超越進化体)
称号: ？？？ (全ての称号を超越、あるいは統合)
所属: 未定義

【能力値】
全て測定不能、あるいは状況に応じて無限に変動

【スキル】
（※これまでの経験と進化により、スキルはさらに変質・統合・超越されている。もはやリスト化は不可能）