モブモンスターですが何か? ~VRMMOで魔物ロールプレイを満喫していたら、いつの間にか災害級になっていた件~

夏見ナイ

文字の大きさ
68 / 89

閑話休題1:ある観測者のログファイル

しおりを挟む
【ログ記録開始:ウロボロス事変 第75日目】

観測対象名:ウロボロス(コードネーム:ゼロ)
観測者ID:734(自律観測ドローン "シーカー")
所属:EFO運営 非公式情報収集部門

【状況概要】
対象「ウロボロス」による「ジャスティス・フォートレス」完全破壊、及びギルド「ジャッジメント」指導者「セラフィナ」のロストを確認。これに伴い、対ウロボロス連合軍は事実上の瓦解。プレイヤーコミュニティにおける対象への恐怖と混乱は極限に達し、EFO世界の秩序維持は極めて困難な状況。

【プレイヤー動向分析レポート抜粋】

「もうダメだ……ウロボロスは、俺たちプレイヤーがどうこうできる相手じゃない」
(フォーラムID:名無しの剣士A / 書き込み日時:フォートレス陥落後 03:15)

「ジャッジメントですら勝てなかったんだぞ? あのセラフィナ様が……。PKKギルドのトップがやられたってことは、もう誰もアイツを止められないってことだろ」
(フォーラムID:白魔道士リリィ / 書き込み日時:フォートレス陥落後 05:22)

「運営は何やってんだ! GM出てこいよ! これはもうゲームバランス崩壊とかそういうレベルじゃねえぞ!」
(フォーラムID:怒りのタンク / 書き込み日時:フォートレス陥落後 08:40)

「ていうか、ウロボロスって本当にモンスターなのか? なんかもう、世界の法則そのものを書き換えてるみたいに見えるんだけど……。この前、俺のギルドがウロボロスに遭遇した時、メンバーの一人が『時間の流れがおかしくなった』って言ってた。攻撃が当たる直前に、ウロボロスが未来を読んで回避したみたいに」
(フォーラムID:噂好きの斥候 / 書き込み日時:フォートレス陥落後 11:03)

「最近、フィールドボスやレイドボスが異常な行動を取ることが増えてないか? なんか、ウロボロスの影響で世界のプログラム自体がおかしくなってきてるんじゃないかって噂もあるぞ」
(フォーラムID:陰謀論学者 / 書き込み日時:フォートレス陥落後 14:56)

「ネザーヘイムから帰ってきた奴の話だと、あっちもヤバいらしい。ウロボロス級とは言わないまでも、とんでもない魔物がうじゃうじゃいるとか。しかも、ウロボロスがネザーヘイムで何かやらかしたって話もある。あの『知識の番人』が消滅したとか……まさかな」
(フォーラムID:情報屋K / 書き込み日時:フォートレス陥落後 17:21)

【"蒼き疾風"アルト に関する特記事項】
対象「アルト」は、ジャスティス・フォートレス陥落後、一時的に消息を絶っていたが、数日前より再び活動を活発化。目撃情報によれば、以前にも増して鬼気迫る様子で単独行動を続けており、何らかの手段で「ウロボロス」の痕跡を追っている可能性が高い。彼の目的は依然として不明だが、その戦闘能力はプレイヤーの中でも群を抜いており、今後の動向は注視する必要がある。彼は「ウロボロス」に対し、恐怖ではなく、ある種の執着にも似た感情を抱いているように見受けられる。

【初心者プレイヤー "リリア" に関する特記事項】
対象「リリア」は、フォートレス陥落の報を受け、強いショックを受けている様子が確認された。彼女は過去に「ウロボロス」と数度接触し、結果的に助けられた経験を持つ稀有なプレイヤーである。その為、他のプレイヤーとは異なる複雑な感情を「ウロボロス」に対して抱いている可能性が高い。最近は、かつて「ウロボロス」と遭遇した場所や、関連する古代遺跡などを一人で巡っている姿が目撃されている。彼女の行動が「ウロボロス」の今後の行動に何らかの影響を与える可能性は低いと推測されるが、記録として残す。

【システム応答記録抜粋:ウロボロス最終進化検知後の内部アラート】

《警告:存在カテゴリΩ(オメガ)イレギュラー、最終進化フェーズ完了》
《コード:ゼロの存在レベル、予測値を大幅に超過。全パラメータ測定限界突破》
《世界の恒常性維持プロトコル、フェーズ・デルタへ移行》
《緊急指令:全稼働GMユニットは指定座標へ集結。対存在兵器「システム・ジャッジメント」の起動シーケンスを開始。対象の完全排除、または初期化を最優先事項とする》
《警告:対象によるシステムへの直接干渉を確認。情報汚染、法則改竄の兆候あり。これ以上の侵食を許容した場合、EFO世界の基幹システム崩壊の危険性:78.5%》
《優先処理:対象の行動予測アルゴリズムの再構築。対象の「混沌」属性による予測不可能性増大。予測精度低下中》

【観測者734による所感】
対象「ウロボロス」の進化速度と影響範囲は、我々の当初の予測を遥かに超えている。もはや、プレイヤーによる排除は不可能であり、GMユニットによる直接介入、及び「システム・ジャッジメント」の行使が唯一の対抗手段となり得るだろう。しかし、対象が既にシステムへの干渉能力を獲得し始めていることを考慮すると、それすらも決定的な解決策とはならない可能性がある。

対象の行動原理は「捕食と進化」という単純なものに見えるが、その根底には、この世界の真理を探求しようとする、ある種の知的な渇望が存在するように感じられる。そして、その渇望が、対象を世界の法則そのものを喰らう存在へと変貌させた。

我々「観測者」の役割は、情報を収集し、記録すること。だが、この未曾有の事態において、我々にできることは本当にそれだけなのだろうか。対象「ウロボロス」は、このEFO世界にとって、単なる破壊者なのか、それとも……。

ログファイルの最後に、私の個人的な疑問を記録することを許してほしい。
もし、創造主が本当に「新たな神」あるいは「世界の法則」そのものを生み出そうとしていたのだとしたら、対象「ウロボロス」こそが、その最も歪で、しかし最も純粋な『完成形』に近い存在なのではないだろうか?

【ログ記録終了】

---
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

処理中です...