Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

文字の大きさ
27 / 98

第27話 利害の一致

しおりを挟む
カイが森の闇に消えた後、戦いの興奮が冷めやらぬ森には、アレンとソフィア、そして十数人の暗殺者の死体だけが残された。血の匂いが鼻をつき、気味の悪い静けさが二人を包む。

「……さて、どうする」
ソフィアが、忌々しげに死体を蹴飛ばしながら言った。
「こいつらをこのままにしておくわけにもいかない。ギルドに報告するか?」

「いや、それは得策じゃない」
アレンは即座に否定した。
「ギルドに報告すれば、あんたが『蛇の手』に狙われていることが公になる。そうなれば、街中であんたを狙う賞金稼ぎや、バルドルに恩を売りたい連中が現れないとも限らない」

「……それもそうか。面倒なことになるのはごめんだ」
ソフィアは腕を組み、唸った。
「だが、このまま放置すれば、死体遺棄の罪に問われる可能性もあるぞ」

「だから、情報を得る」
アレンはそう言うと、屈み込んで暗殺者の一人の懐を探り始めた。ソフィアも、アレンの意図を察して、別の死体を調べ始める。

「何かアジトに繋がるものがあれば、俺たちで直接叩く。そうすれば、これは正当防衛として処理できる」

「無茶を言う。アジトの場所が、そう簡単に見つかるものか」
ソフィアはぼやきながらも、手際よく死体の装備を剥いでいく。騎士団にいた頃の経験が、こういう場面で役立っていた。

しばらく調べてみたが、暗殺者たちはほとんど私物を持っていなかった。武器と、数種類の毒薬、そしてわずかな金貨。組織に関する書類や手紙の類は一切ない。用意周到な連中だった。

「だめだ、何もない」
ソフィアが諦めかけた、その時だった。
「……これは」
アレンが、一人の暗殺者が腰につけていた小さな革袋を手に取り、その中身を手のひらに広げた。中に入っていたのは、奇妙な色をした錠剤だった。

「回復薬か?いや、色が違うな」
ソフィアが覗き込む。
「おそらく、任務中に体力を維持するための特殊な強壮剤だ。だが、問題はそこじゃない」

アレンは錠剤を指で砕き、その匂いを嗅いだ。
「この匂い……微かに、鉄と硫黄の匂いが混じっている。これは、特定の鉱山地帯でしか採れない薬草を混ぜている証拠だ。それも、もう何年も前に閉鎖されたはずの鉱山の……」

ヒーラーとしての豊富な薬草知識が、思わぬ手がかりを掴ませた。

「それに、こいつらのブーツを見てくれ」
アレンは暗殺者の足元を指さした。
「靴底に、赤黒い泥が付着している。この辺りの森の土じゃない。鉄分を多く含んだ、鉱山特有の土だ」

「……なるほどな」
ソフィアも感心したように頷いた。
「薬草と土。アジトは、この近くの廃坑のどこか、ということか。だが、この辺りには廃坑がいくつもある。どこか一つに絞り込むのは……」

その時、二人の背後にある木の影から、静かな声がした。
「……黒鉄廃坑だ」

「!?」
ソフィアは驚いて振り返り、剣に手をかけた。そこに立っていたのは、去ったはずのカイだった。彼は、まるで最初からそこにいたかのように、音もなく姿を現した。

「あんた、まだいたのか」
ソフィアが、警戒を解かずに睨みつける。
カイは彼女の敵意を意にも介さず、アレンが示した赤黒い土を一瞥した。

「その土は、黒鉄廃坑の奥でしか採れない。あそこは昔、迷宮のように入り組んだ構造から『蟻の巣』と呼ばれていた。隠れ家にするには、うってつけの場所だ」

彼は、物陰からずっと二人の様子を窺っていたのだ。アレンの洞察力と、ソフィアの冷静な判断力。それらを値踏みするように。

「なぜ、戻ってきた?」
アレンが静かに尋ねた。
カイは少しの間黙り込んだ後、視線を逸らしながら、ぽつりと答えた。

「……一人でアジトに乗り込んでも、返り討ちに遭うだけだ。それは、分かっている」

彼の声には、先程までの頑なさはなく、わずかながら葛藤が滲んでいた。アレンの最後の言葉が、彼の心を揺さぶり続けていたのだ。

「あんたの言う通り、利害は一致している。……アジトを潰すまでだ。一時的に、手を組んでやる」

それは、彼のプライドが許す、最大限の歩み寄りだった。

ソフィアはまだ不満そうだったが、アレンは穏やかに頷いた。
「ああ、助かる。よろしく頼む、カイ」

「馴れ合うな」
カイはそう吐き捨てると、すぐに背を向けた。
「行くぞ。奴らが仲間が戻らないことに気づく前に、奇襲をかける」

三人の間に、奇妙な共闘関係が成立した。
カイの先導で、彼らは黒鉄廃坑へと向かった。カイの斥候としての能力は、驚異的だった。彼は獣のような鋭い五感で周囲の気配を探り、森に仕掛けられた見張りの罠をいとも簡単に見破っていく。

「……すごいな、あんた」
道中、ソフィアが思わず感嘆の声を漏らした。
「騎士団の斥候兵でも、ここまで優れた奴はそうはいない」

「……当然だ」
カイは短く答えるだけだったが、その横顔は少しだけ誇らしげに見えた。

アレンは、二人の後ろを歩きながら、静かに微笑んでいた。
誇りを失った女騎士。
復讐に生きる獣人。
そして、禁忌の力を秘めた元無能ヒーラー。
いびつで、不格好で、それぞれが深い傷を負っている。だが、不思議と悪い気はしなかった。

(これが、俺のパーティの始まりか)

それは、かつて所属していた栄光のSランクパーティとは似ても似つかない、影の中から生まれたようなパーティだった。
だが、そこには偽りのない目的と、互いの実力を認め合う、確かな信頼関係の兆しがあった。
三人の影が、月明かりに照らされた森の中を、一つの目的に向かって進んでいく。
彼らの戦いは、まだ始まったばかりだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...