Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ

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第65話 連携の崩壊

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ミノタウロスの群れが、地響きを立てながら突進してくる。その光景は、まるで黒い津波のようだった。絶望的な数の暴力が、【熾天の剣】に襲いかかる。

「ひるむな! 一匹ずつ、確実に仕留めるぞ!」
ガリウスは自らを鼓舞するように叫び、先頭の一体に斬りかかった。彼の剣は、確かにミノタウロスの分厚い皮膚を切り裂く。だが、深手を負わせるには至らない。そして、その一撃の隙を、別の二体が左右から狙ってきた。

「ティナ! 援護しろ!」
「無茶を言わないでくださいまし! 数が多すぎますわ!」

ティナは、迫りくる別のミノタウロスを牽制するために、防御魔法と攻撃魔法を乱発せざるを得ず、ガリウスを援護する余裕などなかった。彼女の魔力は、見る見るうちに消耗していく。

「ジェイク! 攪乱しろ!」
「できるかよ! 死角がねえんだよ!」

ジェイクもまた、自分の身を守ることで精一杯だった。彼は物陰に隠れ、短剣を投擲して注意を引こうとするが、ミノタウロスの群れはそんな小細工など意にも介さず、ただ前衛のガリウスへと殺到していく。

連携は、戦闘開始と同時に完全に崩壊した。
それは、もはやパーティとしての戦いではなかった。三人の冒険者が、それぞれバラバラに、自分の生存のためだけに戦っている、ただの乱戦だった。

ガリウスは、四方八方から繰り出される戦斧の嵐の中で、孤立無援の戦いを強いられていた。
「ぐっ……おおっ!」
彼の鎧は次々とへこみ、裂けていく。肩を砕かれ、脚を打たれ、全身が傷だらけになっていく。その度に、彼はポーションを呷り、無理やり傷を塞いで戦い続けた。

だが、ポーションによる回復はアレンのヒールとは根本的に違う。
アレンのヒールは、生命力そのものを回復させ、疲労さえも取り除いた。
しかし、ポーションはただ傷口を塞ぐだけだ。失われた体力も、蓄積していく疲労も回復はしない。

ガリウスの動きは、徐々に、しかし確実に鈍くなっていった。
剣を振るう腕は鉛のように重く、敵の攻撃を避ける足も思うように動かない。呼吸は荒く、視界が霞み始める。

(なぜだ……なぜ、俺の剣が……通じない……!)

彼は、自分の衰えを認められなかった。
プライドが、それを許さない。彼は自分こそが最強だと信じていた。その幻想が、今、目の前の圧倒的な現実によって、無慈悲に打ち砕かれようとしていた。

ティナも、限界に近づいていた。
「はぁ……はぁ……魔力が……!」
彼女の額からは脂汗が流れ落ちる。もはや強力な攻撃魔法を撃つ魔力は残っていなかった。彼女はかろうじて自身の周囲に防御結界を張り、ミノタウロスの攻撃が自分に向かわないことを、ただ祈るだけだった。

ジェイクは、すでに戦意を喪失していた。
彼は広間の入り口近くまで後退し、いつでも逃げ出せるように退路を確保していた。彼の頭の中には、もはや仲間を助けるという選択肢はない。ガリウスとティナが少しでも長く時間を稼いでくれれば、その隙に自分だけでも逃げられる。
そう、算段を立てていた。

ガリウスの背中に、巨大な戦斧が叩き込まれた。
ゴシャッ、という鈍い音と共に、彼の背骨が嫌な音を立てる。
「がはっ……!」
口から血反吐を吐き、彼は前のめりに崩れ落ちた。もはや立ち上がる力は残っていなかった。

ミノタウロスたちが、倒れた獲物にとどめを刺そうと、一斉に群がる。
(……ここまで、か)
ガリウスの脳裏に、死の二文字が浮かんだ。
その時だった。

「――《ホーリー・フィールド》!」

か細く、しかし凛とした声が広間に響き渡った。
ガリウスが担いでいた麻袋の中から柔らかな聖なる光が溢れ出し、ミノタウロスたちを怯ませる。
リリア。
彼女が、土壇場で意識を取り戻したのだ。

「リリア!?」
ティナが、驚きの声を上げた。
「ガリウス様! 今です! 下がってください!」

リリアは麻袋の中から、朦朧とする意識の中で必死に補助魔法を放った。
その光に助けられ、ガリウスは最後の力を振り絞って後方へ転がり、なんとかミノタウロスの包囲から脱出した。

だが、リリアの魔力もすでに限界だった。
一度魔法を使っただけで、彼女の意識は再び闇の中へと沈んでいく。麻袋から漏れていた光は、儚く消え失せた。

「ちっ、気絶しやがったか。だが、助かったぜ」
ジェイクが安堵の息を漏らす。
三人は広間の入り口まで後退し、かろうじて命拾いをした。
だが、彼らの体はボロボロで、前進することはもはや不可能だった。
そして、彼らの心をさらに深い絶望へと突き落とす事実が、そこにはあった。
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