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第72話 パーティの終焉
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灼熱の爆風が通路を駆け抜けた後、そこには焦げ付いた肉の匂いと焼け落ちた岩石だけが残された。ティナ・ハミルトン。Sランクパーティ【熾天の剣】の誇り高き魔法使いは、その身を犠牲にして仲間を裏切った男への復讐を遂げた。彼女の体は、自らが放った炎によって塵一つ残さず消滅していた。
彼女の脳裏に、走馬灯のように過去の記憶が駆け巡る。
魔法学院を首席で卒業し、将来を有望視されていた日々。
ガリウスの圧倒的な剣技に惹かれ、【熾天の剣】に加入した時の胸の高鳴り。
仲間たちと共に数々の強敵を打ち破り、Sランクへと上り詰めた栄光の瞬間。
あの頃は、確かに輝いていた。
パーティの誰もが互いを信頼し、同じ目標に向かって突き進んでいた。
アレンという、少し頼りないが心優しいヒーラーがいた。
リリアという、誰にでも分け隔てなく微笑む聖女がいた。
ジェイクという、口は悪いがいざという時には頼りになる斥候がいた。
そして、ガリウスという、傲慢だが絶対的な力で皆を引っ張っていくリーダーがいた。
いつから歯車は狂ってしまったのだろう。
アレンを追放した、あの日からか。
いや、もっと前からガリウスの増長を自分たちが止められなかった時からか。
あるいは、アレンの成功を妬み、自分たちの非を認めようとしなかった自分自身の弱さのせいか。
(……ごめんなさい、リリア)
薄れゆく意識の中で、ティナは心の中で呟いた。
最後の最後にリリアの回復の光に救われながら、自分はその光を仲間を殺すために使ってしまった。
自分もまた、ジェイクと同じ醜い裏切り者だったのかもしれない。
(アレン……もし、あなたがあの時パーティにいてくれたなら……)
こんな結末にはならなかったのだろうか。
だが、その問いへの答えはもう誰にも分からない。
彼女の意識は、後悔とわずかな安らぎの中で永遠の闇へと沈んでいった。
彼女の自爆は、ジェイクの命を奪っただけでなく、ダンジョンの構造にも大きな影響を与えた。脆弱になっていた岩盤が連鎖的に崩落し、いくつかの通路は完全に塞がれてしまった。
それは皮肉にも、リリアが地上へと戻るための道をわずかながら切り開く結果となった。
―――数時間が経過しただろうか。
爆風で意識を失っていたリリアが、うめき声と共にゆっくりと目を覚ました。
全身が殴られたように痛む。頭が割れるように痛い。
彼女は、朦朧とする意識の中で周囲を見回した。
そこは、地獄だった。
通路は半ば崩落し、焼け焦げた岩が散乱している。そして、その中には黒焦げになった、人だったものの一部が無残に転がっていた。
それがジェイクのなれの果てであることに、リリアはすぐに気づいた。
「……あ……ああ……」
声にならない悲鳴が彼女の喉から漏れた。
ティナもいない。彼女がどうなったのかは分からないが、この惨状を見れば無事でないことは明らかだった。
仲間が全員死んだ。
その、あまりにも残酷な現実がリリアの心を完全に打ち砕いた。
彼女は、なぜ自分だけが生き残ってしまったのか分からなかった。
ただ這うようにして、その場から離れた。
どこへ向かうという目的もない。ただ、この地獄から一刻も早く逃げ出したかった。
彼女はボロボロの体を引きずり、ひたすらに光のある方へと進んだ。
飢えも渇きも痛みも、もはや感じなかった。
彼女の心は、完全に壊れてしまっていたからだ。
どれくらいの時間、彷徨っただろうか。
やがて彼女の目に、微かな外の光が見えてきた。
ダンジョンの出口。
彼女は最後の力を振り絞り、その光に向かって手を伸ばした。
そして、転がり込むようにしてダンジョンの外へと生還を果たした。
久しぶりに浴びる太陽の光が、ひどく目に染みた。
彼女はダンジョンの入り口で倒れ込んだ。
空を見上げる。
青い空。白い雲。
数日前、仲間たちと共にこのダンジョンへと入ってきた時と、何も変わらない平和な空。
だが、もう隣に仲間はいない。
自分は、たった一人になってしまった。
「……う……あ……あああああ……!」
彼女の口からようやく、声らしい声が迸った。
それは悲しみでも、苦しみでもない。
ただ全てを失った者の、空っぽの咆哮だった。
彼女は泣き続けた。
涙が枯れ果て、声も出なくなり、そしてついに意識が途切れるまで。
Sランクパーティ【熾天の剣】の最後の生き残りは、因縁のダンジョンの入り口で、まるで打ち捨てられた人形のように静かに気を失った。
彼女の長く、そして苦しい贖罪の旅路は、まだ始まったばかりだった。
(第三章:墜ちた英雄 了)
彼女の脳裏に、走馬灯のように過去の記憶が駆け巡る。
魔法学院を首席で卒業し、将来を有望視されていた日々。
ガリウスの圧倒的な剣技に惹かれ、【熾天の剣】に加入した時の胸の高鳴り。
仲間たちと共に数々の強敵を打ち破り、Sランクへと上り詰めた栄光の瞬間。
あの頃は、確かに輝いていた。
パーティの誰もが互いを信頼し、同じ目標に向かって突き進んでいた。
アレンという、少し頼りないが心優しいヒーラーがいた。
リリアという、誰にでも分け隔てなく微笑む聖女がいた。
ジェイクという、口は悪いがいざという時には頼りになる斥候がいた。
そして、ガリウスという、傲慢だが絶対的な力で皆を引っ張っていくリーダーがいた。
いつから歯車は狂ってしまったのだろう。
アレンを追放した、あの日からか。
いや、もっと前からガリウスの増長を自分たちが止められなかった時からか。
あるいは、アレンの成功を妬み、自分たちの非を認めようとしなかった自分自身の弱さのせいか。
(……ごめんなさい、リリア)
薄れゆく意識の中で、ティナは心の中で呟いた。
最後の最後にリリアの回復の光に救われながら、自分はその光を仲間を殺すために使ってしまった。
自分もまた、ジェイクと同じ醜い裏切り者だったのかもしれない。
(アレン……もし、あなたがあの時パーティにいてくれたなら……)
こんな結末にはならなかったのだろうか。
だが、その問いへの答えはもう誰にも分からない。
彼女の意識は、後悔とわずかな安らぎの中で永遠の闇へと沈んでいった。
彼女の自爆は、ジェイクの命を奪っただけでなく、ダンジョンの構造にも大きな影響を与えた。脆弱になっていた岩盤が連鎖的に崩落し、いくつかの通路は完全に塞がれてしまった。
それは皮肉にも、リリアが地上へと戻るための道をわずかながら切り開く結果となった。
―――数時間が経過しただろうか。
爆風で意識を失っていたリリアが、うめき声と共にゆっくりと目を覚ました。
全身が殴られたように痛む。頭が割れるように痛い。
彼女は、朦朧とする意識の中で周囲を見回した。
そこは、地獄だった。
通路は半ば崩落し、焼け焦げた岩が散乱している。そして、その中には黒焦げになった、人だったものの一部が無残に転がっていた。
それがジェイクのなれの果てであることに、リリアはすぐに気づいた。
「……あ……ああ……」
声にならない悲鳴が彼女の喉から漏れた。
ティナもいない。彼女がどうなったのかは分からないが、この惨状を見れば無事でないことは明らかだった。
仲間が全員死んだ。
その、あまりにも残酷な現実がリリアの心を完全に打ち砕いた。
彼女は、なぜ自分だけが生き残ってしまったのか分からなかった。
ただ這うようにして、その場から離れた。
どこへ向かうという目的もない。ただ、この地獄から一刻も早く逃げ出したかった。
彼女はボロボロの体を引きずり、ひたすらに光のある方へと進んだ。
飢えも渇きも痛みも、もはや感じなかった。
彼女の心は、完全に壊れてしまっていたからだ。
どれくらいの時間、彷徨っただろうか。
やがて彼女の目に、微かな外の光が見えてきた。
ダンジョンの出口。
彼女は最後の力を振り絞り、その光に向かって手を伸ばした。
そして、転がり込むようにしてダンジョンの外へと生還を果たした。
久しぶりに浴びる太陽の光が、ひどく目に染みた。
彼女はダンジョンの入り口で倒れ込んだ。
空を見上げる。
青い空。白い雲。
数日前、仲間たちと共にこのダンジョンへと入ってきた時と、何も変わらない平和な空。
だが、もう隣に仲間はいない。
自分は、たった一人になってしまった。
「……う……あ……あああああ……!」
彼女の口からようやく、声らしい声が迸った。
それは悲しみでも、苦しみでもない。
ただ全てを失った者の、空っぽの咆哮だった。
彼女は泣き続けた。
涙が枯れ果て、声も出なくなり、そしてついに意識が途切れるまで。
Sランクパーティ【熾天の剣】の最後の生き残りは、因縁のダンジョンの入り口で、まるで打ち捨てられた人形のように静かに気を失った。
彼女の長く、そして苦しい贖罪の旅路は、まだ始まったばかりだった。
(第三章:墜ちた英雄 了)
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