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第四十一話 束の間の平穏、忍び寄る影
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ギルベルト軍を退けてからの一ヶ月。
ガルダ公国には、建国以来、最も穏やかな日々が流れていた。
ソレイユ王国は、聖騎士団長の死と、軍の壊滅という甚大な被害を受け、沈黙を保っている。その間隙を縫うように、リゼットは内政に力を注ぎ、国力は着実に回復しつつあった。
民衆の口にのぼるのは、もっぱら「鉄の救世主」の伝説だ。空を飛び、重力を操り、たった一人で王国の大軍を退けた鋼鉄の英雄。その物語は、吟遊詩人によって脚色され、子供たちの間で流行する英雄譚となっていた。
だが、その英雄本人であるカケルは、民衆の前から完全に姿を消し、工房での自己の研鑽に没頭していた。
「――すごい! 本当に、鳥になったみたい!」
アストリア城の上空、数百メートル。
ティリアは、生まれて初めて体験する、本当の意味での「飛行」に、子供のようにはしゃいでいた。カケルが作り出した重力制御フィールドに包まれ、彼女の体は、何の支えもなく、ただ宙に浮かんでいる。
「うるさい。集中できん」
カケルのぶっきらぼうな声が飛ぶが、その声色に、以前のような刺々しさはない。
彼は、目を閉じ、意識を集中させていた。彼の周囲に、工房から持ち出したハンマーやレンチ、鉄塊といった数十の物体が、まるで惑星のように、彼を中心とした軌道を描いて、静かに公転している。
重力制御の精密操作訓練。
複数の物体に、それぞれ異なる重力ベクトルを与え、衝突させることなく、完璧にコントロールする。それは、彼の脳がスパコン並の演算能力を持っているからこそ可能な、神業のような訓練だった。
「マスターの学習速度は、私の予測を常に上回ります」
三人の中心で、同じく宙に浮かぶナナが、平坦な声で分析結果を述べた。
「現在のマスターは、半径約50メートル以内の空間において、重力加速度を、最大でプラスマイナス50Gの範囲で、任意に操作可能。これは、理論上、戦艦クラスの質量を持つ物体ですら、指一本で持ち上げられることを意味します」
「つまり、もうカケルに敵はいないってことね!」
ティリアが、嬉しそうに言う。
だが、カケルは、静かに首を横に振った。
「……いや、まだだ」
彼は、目を開けた。その蒼い瞳は、どこまでも冷静に、自分自身の力を見つめている。
「この力は、確かに強力だ。だが、万能じゃない。エネルギーの消費が、まだ大きすぎる。精密な操作を長時間続ければ、俺のグラビティ・コア……心臓が、もたない」
彼の体は、まだ、浮遊石(レリック)という、神の力を、完全には受け入れきれていない。無理をすれば、ギルベルトとの戦いの二の舞になるだろう。
「それに……」
カケルは、地上を見下ろした。
「この力は、あまりに強力すぎる。使い方を誤れば、この街一つ、簡単に吹き飛ばせる。俺は、この力を、完全に『制御』しなくちゃならない。自分の手足のように、完璧にだ」
彼の言葉に、ティリアとナナは、黙り込んだ。
彼は、手に入れた絶大な力に、溺れることなく、その危険性を、誰よりも深く、理解していたのだ。
訓練を終え、三人は工房へと戻った。
リゼットが、淹れたての紅茶と共に、彼らを待っていた。
「お疲れ様です、皆さん。訓練の成果は、いかがでしたか?」
「ああ、上々だ。だが、課題も多い」
カケルは、椅子に腰を下ろしながら答えた。
リゼットは、空を自在に飛び回るカケルの姿を、執務室の窓から、毎日、見ていた。その姿は、頼もしく、そして、どこか寂しげにも見えた。彼は、もう、人間の手の届かない、遥か高みへと、行ってしまったのではないか。そんな、一抹の不安が、彼女の胸をよぎる。
「……あまり、無理はなさらないでくださいね」
「分かっている」
四人の間に、穏やかな、しかし、どこか緊張感をはらんだ、静かな時間が流れる。
この平穏が、いつまでも続けばいい。
誰もが、心のどこかで、そう願っていた。
だが、彼らは、まだ知らない。
その平穏を、根底から覆そうとする、新たな影が、すぐそこまで、忍び寄っていることを。
同時刻。アストリアの城下町、その一角にある、薄汚れた安酒場。
昼間だというのに、店内は薄暗く、ならず者たちの、下卑た笑い声と、酒の匂いが満ちていた。
その店の、最も奥まったテーブル席。
一人の男が、エールグラスを傾けながら、窓の外、遥か上空に浮かぶ、カケルの姿を、値踏みするような目で見つめていた。
男の名は、ジャッカル。
どこの国にも属さず、金と、そして『お宝』のためだけに生きる、遺産猟兵(レリックハンター)の、リーダー格の男だった。日に焼けた肌、無精髭、そして、その鋭い目つきは、幾多の修羅場を潜り抜けてきたことを物語っている。
「……間違いない。あれが、噂の『鉄の救世主』か」
ジャッカルの隣で、フードを目深に被った、痩せた男が、囁くように言った。
「斥候からの報告通りだ。翼もなしに、空を自在に飛び回っている。あれは、ただの魔法じゃない。奴が、古代遺跡から持ち出した、『神々の遺産(ゴッズ・レガシー)』の力だ」
「ふん。ギルベルトの坊やを倒したって聞いた時は、どんな化け物かと思ったが……」
ジャッカルは、鼻で笑った。
「……案外、ちょろいかもしれねえな」
「リーダー、本気でやるのか? 相手は、あの聖騎士団長を……」
「だから、やるのさ」
ジャッカルは、エールを一気に飲み干すと、グラスをテーブルに、ドン、と叩きつけた。
「ギルベルトは、騎士様の『正義』なんぞに縛られていたから、負けたんだ。正面から、馬鹿正直に、力比べなんかしやがった。俺たちは、違う」
彼の口元に、残忍な笑みが浮かぶ。
「俺たちは、『猟師』だ。獲物を狩るのに、ルールも、誇りも、必要ねえ。罠を張り、毒を盛り、不意を討つ。確実に、そして、効率的に、息の根を止める。それが、俺たちのやり方だ」
彼は、懐から、一枚の羊皮紙を取り出した。それは、部下が数週間かけて調べ上げた、カケルに関する、詳細な報告書だった。
彼の能力、行動パターン、そして、彼が守ろうとしている、大切な「仲間」たちの情報まで。
「……なるほどな。こいつには、守るべき『弱点』があるらしい」
ジャッカルは、報告書に書かれた、リゼットとティリアの名を、指でなぞった。
「獲物が、デカければデカいほど、狩りの計画は、慎重に、そして、念入りにやらなくちゃならねえ」
彼は、立ち上がった。
「お前ら、準備はいいな? 最高の『お宝』を、頂きに行くぜ」
彼の言葉に、テーブルを囲んでいた、他のレリックハンターたちが、一斉に、獰猛な笑みを浮かべた。
彼らの背後には、この世界の物とは思えない、奇妙な形状の武器や、魔道具が、いくつも転がっていた。それらもまた、彼らが、これまでに、数々の遺跡から盗掘してきた、「レリック」の一部なのだろう。
カケルは、まだ知らない。
ソレイユ王国という、国家レベルの脅威とは、全く質の異なる、新たな敵。
ルール無用、手段を選ばぬ、ハイエナのような男たちが、自分という「最高の獲物」を狩るために、静かに、そして着実に、その牙を研いでいることを。
束の間の平穏は、終わりを告げようとしていた。
鉄の救世主を、混沌の渦へと引きずり込む、新たな戦いの幕が、今、静かに、上がろうとしていた。
ガルダ公国には、建国以来、最も穏やかな日々が流れていた。
ソレイユ王国は、聖騎士団長の死と、軍の壊滅という甚大な被害を受け、沈黙を保っている。その間隙を縫うように、リゼットは内政に力を注ぎ、国力は着実に回復しつつあった。
民衆の口にのぼるのは、もっぱら「鉄の救世主」の伝説だ。空を飛び、重力を操り、たった一人で王国の大軍を退けた鋼鉄の英雄。その物語は、吟遊詩人によって脚色され、子供たちの間で流行する英雄譚となっていた。
だが、その英雄本人であるカケルは、民衆の前から完全に姿を消し、工房での自己の研鑽に没頭していた。
「――すごい! 本当に、鳥になったみたい!」
アストリア城の上空、数百メートル。
ティリアは、生まれて初めて体験する、本当の意味での「飛行」に、子供のようにはしゃいでいた。カケルが作り出した重力制御フィールドに包まれ、彼女の体は、何の支えもなく、ただ宙に浮かんでいる。
「うるさい。集中できん」
カケルのぶっきらぼうな声が飛ぶが、その声色に、以前のような刺々しさはない。
彼は、目を閉じ、意識を集中させていた。彼の周囲に、工房から持ち出したハンマーやレンチ、鉄塊といった数十の物体が、まるで惑星のように、彼を中心とした軌道を描いて、静かに公転している。
重力制御の精密操作訓練。
複数の物体に、それぞれ異なる重力ベクトルを与え、衝突させることなく、完璧にコントロールする。それは、彼の脳がスパコン並の演算能力を持っているからこそ可能な、神業のような訓練だった。
「マスターの学習速度は、私の予測を常に上回ります」
三人の中心で、同じく宙に浮かぶナナが、平坦な声で分析結果を述べた。
「現在のマスターは、半径約50メートル以内の空間において、重力加速度を、最大でプラスマイナス50Gの範囲で、任意に操作可能。これは、理論上、戦艦クラスの質量を持つ物体ですら、指一本で持ち上げられることを意味します」
「つまり、もうカケルに敵はいないってことね!」
ティリアが、嬉しそうに言う。
だが、カケルは、静かに首を横に振った。
「……いや、まだだ」
彼は、目を開けた。その蒼い瞳は、どこまでも冷静に、自分自身の力を見つめている。
「この力は、確かに強力だ。だが、万能じゃない。エネルギーの消費が、まだ大きすぎる。精密な操作を長時間続ければ、俺のグラビティ・コア……心臓が、もたない」
彼の体は、まだ、浮遊石(レリック)という、神の力を、完全には受け入れきれていない。無理をすれば、ギルベルトとの戦いの二の舞になるだろう。
「それに……」
カケルは、地上を見下ろした。
「この力は、あまりに強力すぎる。使い方を誤れば、この街一つ、簡単に吹き飛ばせる。俺は、この力を、完全に『制御』しなくちゃならない。自分の手足のように、完璧にだ」
彼の言葉に、ティリアとナナは、黙り込んだ。
彼は、手に入れた絶大な力に、溺れることなく、その危険性を、誰よりも深く、理解していたのだ。
訓練を終え、三人は工房へと戻った。
リゼットが、淹れたての紅茶と共に、彼らを待っていた。
「お疲れ様です、皆さん。訓練の成果は、いかがでしたか?」
「ああ、上々だ。だが、課題も多い」
カケルは、椅子に腰を下ろしながら答えた。
リゼットは、空を自在に飛び回るカケルの姿を、執務室の窓から、毎日、見ていた。その姿は、頼もしく、そして、どこか寂しげにも見えた。彼は、もう、人間の手の届かない、遥か高みへと、行ってしまったのではないか。そんな、一抹の不安が、彼女の胸をよぎる。
「……あまり、無理はなさらないでくださいね」
「分かっている」
四人の間に、穏やかな、しかし、どこか緊張感をはらんだ、静かな時間が流れる。
この平穏が、いつまでも続けばいい。
誰もが、心のどこかで、そう願っていた。
だが、彼らは、まだ知らない。
その平穏を、根底から覆そうとする、新たな影が、すぐそこまで、忍び寄っていることを。
同時刻。アストリアの城下町、その一角にある、薄汚れた安酒場。
昼間だというのに、店内は薄暗く、ならず者たちの、下卑た笑い声と、酒の匂いが満ちていた。
その店の、最も奥まったテーブル席。
一人の男が、エールグラスを傾けながら、窓の外、遥か上空に浮かぶ、カケルの姿を、値踏みするような目で見つめていた。
男の名は、ジャッカル。
どこの国にも属さず、金と、そして『お宝』のためだけに生きる、遺産猟兵(レリックハンター)の、リーダー格の男だった。日に焼けた肌、無精髭、そして、その鋭い目つきは、幾多の修羅場を潜り抜けてきたことを物語っている。
「……間違いない。あれが、噂の『鉄の救世主』か」
ジャッカルの隣で、フードを目深に被った、痩せた男が、囁くように言った。
「斥候からの報告通りだ。翼もなしに、空を自在に飛び回っている。あれは、ただの魔法じゃない。奴が、古代遺跡から持ち出した、『神々の遺産(ゴッズ・レガシー)』の力だ」
「ふん。ギルベルトの坊やを倒したって聞いた時は、どんな化け物かと思ったが……」
ジャッカルは、鼻で笑った。
「……案外、ちょろいかもしれねえな」
「リーダー、本気でやるのか? 相手は、あの聖騎士団長を……」
「だから、やるのさ」
ジャッカルは、エールを一気に飲み干すと、グラスをテーブルに、ドン、と叩きつけた。
「ギルベルトは、騎士様の『正義』なんぞに縛られていたから、負けたんだ。正面から、馬鹿正直に、力比べなんかしやがった。俺たちは、違う」
彼の口元に、残忍な笑みが浮かぶ。
「俺たちは、『猟師』だ。獲物を狩るのに、ルールも、誇りも、必要ねえ。罠を張り、毒を盛り、不意を討つ。確実に、そして、効率的に、息の根を止める。それが、俺たちのやり方だ」
彼は、懐から、一枚の羊皮紙を取り出した。それは、部下が数週間かけて調べ上げた、カケルに関する、詳細な報告書だった。
彼の能力、行動パターン、そして、彼が守ろうとしている、大切な「仲間」たちの情報まで。
「……なるほどな。こいつには、守るべき『弱点』があるらしい」
ジャッカルは、報告書に書かれた、リゼットとティリアの名を、指でなぞった。
「獲物が、デカければデカいほど、狩りの計画は、慎重に、そして、念入りにやらなくちゃならねえ」
彼は、立ち上がった。
「お前ら、準備はいいな? 最高の『お宝』を、頂きに行くぜ」
彼の言葉に、テーブルを囲んでいた、他のレリックハンターたちが、一斉に、獰猛な笑みを浮かべた。
彼らの背後には、この世界の物とは思えない、奇妙な形状の武器や、魔道具が、いくつも転がっていた。それらもまた、彼らが、これまでに、数々の遺跡から盗掘してきた、「レリック」の一部なのだろう。
カケルは、まだ知らない。
ソレイユ王国という、国家レベルの脅威とは、全く質の異なる、新たな敵。
ルール無用、手段を選ばぬ、ハイエナのような男たちが、自分という「最高の獲物」を狩るために、静かに、そして着実に、その牙を研いでいることを。
束の間の平穏は、終わりを告げようとしていた。
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