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第9話 最初の成功
手にした二つの切り札――『極上・熟成サンフルーツ』と『エリクサー(試作品)』。
これらをどうやって金に換えるか。俺は宿の一室で、慎重に計画を練っていた。
アレスたちから得た金貨五千枚は、あくまで非常用の資金だ。これからこの街で生きていくには、自分の力で安定した収入源を確保する必要がある。
いきなりエリクサーのような伝説級アイテムを売りさばくのは危険すぎる。あまりに目立ち、厄介ごとに巻き込まれる可能性がある。まずは、比較的穏当に見える『熟成サンフルーツ』から試すべきだろう。
俺はまず、フロンティアで最も大きな商家だという「ミード商会」の扉を叩いた。応接室に通され、しばらく待っていると、恰幅のいい壮年の男が姿を現した。当主のダグラス・ミードだ。
「それで、旅の方。うちに見せたい品があるとか」
ダグラスは値踏みするような目で俺を一瞥し、尊大に椅子に腰かけた。俺が粗末な外套を着ているのを見て、大した物ではないと高をくくっているのだろう。
俺は無言で、布に包んでいたサンフルーツをテーブルの上に置いた。
途端に、あの甘く芳醇な香りが部屋中に広がる。ダグラスの眉がぴくりと動いた。
「ほう……これは見事な香りだ」
「味見されますか?」
俺が小さなナイフで一切れを差し出すと、ダグラスは躊躇いながらもそれを口に運んだ。
次の瞬間、彼の目が見開かれる。
「なっ……! この味は……! それに、体の疲れがすっと抜けていくような……!?」
驚愕に染まるダグラスの顔を見て、俺は勝利を確信した。
「偶然、森の奥で発見したものです。二つありますが、いかがでしょう?」
「買う! ぜひ買わせてくれ! 一つにつき金貨20枚、二つで40枚出す!」
金貨40枚。Fランク冒険者の依頼報酬の、実に80回分に相当する額だ。俺は満足を隠して頷き、その場で取引を成立させた。ダグラスは「また手に入ったら必ずうちに持ってきてくれ」と興奮気味に俺を見送った。
幸先の良いスタートに気を良くした俺は、次なる一手として冒険者ギルドへ向かった。エリクサーを売るためだ。怪我人が絶えないこの場所こそ、最高の買い手だろう。
ギルドに入ると、運がいいのか悪いのか、ちょうど担架で運び込まれる冒険者の姿があった。
「ひどい怪我だ! グリズリーの一撃をまともに食らったらしい!」
「回復魔法を! だが、ポーションがもう……!」
現場は混乱していた。担架の上の男は血まみれで、呼吸も浅い。
今しかない。
俺は人垣をかき分け、叫んだ。
「俺に薬がある! 試させてくれ!」
誰もが怪訝な顔で俺を見る。だが、あの快活な受付嬢――確か、リナという名前だったか――が、俺の真剣な目を見て何かを感じ取ったらしい。
「……わかったわ! 彼に任せてみて!」
俺は頷くと、懐からエリクサーの小瓶を取り出し、瀕死の冒険者の口に数滴、流し込んだ。
刹那、彼の全身が淡い虹色の光に包まれる。
次の瞬間、ギルドにいた全員が息を呑んだ。
冒険者の体に刻まれていたおびただしい傷が、まるで幻だったかのように綺麗さっぱりと消え去っていたのだ。彼はゆっくりと目を開けると、自分の体を見下ろし、信じられないという顔で身を起こした。
「……う、そだろ……?」
しんと静まり返ったギルドに、誰かの呟きが響く。やがて、その静寂は爆発的な歓声とどよめきに変わった。
その日のうちに、俺はギルドマスターの執務室に呼ばれ、残りのエリクサーを金貨500枚という破格の値段で買い取られた。
ギルドからの帰り道、ずしりと重い金貨の袋を握りしめる。
追放されたあの日、地面に散らばった数枚の銅貨がまるで遠い昔の出来事のようだった。自分の力が、正当に評価され、莫大な価値を生んだ。その事実に、俺の胸は熱くなった。
これらをどうやって金に換えるか。俺は宿の一室で、慎重に計画を練っていた。
アレスたちから得た金貨五千枚は、あくまで非常用の資金だ。これからこの街で生きていくには、自分の力で安定した収入源を確保する必要がある。
いきなりエリクサーのような伝説級アイテムを売りさばくのは危険すぎる。あまりに目立ち、厄介ごとに巻き込まれる可能性がある。まずは、比較的穏当に見える『熟成サンフルーツ』から試すべきだろう。
俺はまず、フロンティアで最も大きな商家だという「ミード商会」の扉を叩いた。応接室に通され、しばらく待っていると、恰幅のいい壮年の男が姿を現した。当主のダグラス・ミードだ。
「それで、旅の方。うちに見せたい品があるとか」
ダグラスは値踏みするような目で俺を一瞥し、尊大に椅子に腰かけた。俺が粗末な外套を着ているのを見て、大した物ではないと高をくくっているのだろう。
俺は無言で、布に包んでいたサンフルーツをテーブルの上に置いた。
途端に、あの甘く芳醇な香りが部屋中に広がる。ダグラスの眉がぴくりと動いた。
「ほう……これは見事な香りだ」
「味見されますか?」
俺が小さなナイフで一切れを差し出すと、ダグラスは躊躇いながらもそれを口に運んだ。
次の瞬間、彼の目が見開かれる。
「なっ……! この味は……! それに、体の疲れがすっと抜けていくような……!?」
驚愕に染まるダグラスの顔を見て、俺は勝利を確信した。
「偶然、森の奥で発見したものです。二つありますが、いかがでしょう?」
「買う! ぜひ買わせてくれ! 一つにつき金貨20枚、二つで40枚出す!」
金貨40枚。Fランク冒険者の依頼報酬の、実に80回分に相当する額だ。俺は満足を隠して頷き、その場で取引を成立させた。ダグラスは「また手に入ったら必ずうちに持ってきてくれ」と興奮気味に俺を見送った。
幸先の良いスタートに気を良くした俺は、次なる一手として冒険者ギルドへ向かった。エリクサーを売るためだ。怪我人が絶えないこの場所こそ、最高の買い手だろう。
ギルドに入ると、運がいいのか悪いのか、ちょうど担架で運び込まれる冒険者の姿があった。
「ひどい怪我だ! グリズリーの一撃をまともに食らったらしい!」
「回復魔法を! だが、ポーションがもう……!」
現場は混乱していた。担架の上の男は血まみれで、呼吸も浅い。
今しかない。
俺は人垣をかき分け、叫んだ。
「俺に薬がある! 試させてくれ!」
誰もが怪訝な顔で俺を見る。だが、あの快活な受付嬢――確か、リナという名前だったか――が、俺の真剣な目を見て何かを感じ取ったらしい。
「……わかったわ! 彼に任せてみて!」
俺は頷くと、懐からエリクサーの小瓶を取り出し、瀕死の冒険者の口に数滴、流し込んだ。
刹那、彼の全身が淡い虹色の光に包まれる。
次の瞬間、ギルドにいた全員が息を呑んだ。
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「……う、そだろ……?」
しんと静まり返ったギルドに、誰かの呟きが響く。やがて、その静寂は爆発的な歓声とどよめきに変わった。
その日のうちに、俺はギルドマスターの執務室に呼ばれ、残りのエリクサーを金貨500枚という破格の値段で買い取られた。
ギルドからの帰り道、ずしりと重い金貨の袋を握りしめる。
追放されたあの日、地面に散らばった数枚の銅貨がまるで遠い昔の出来事のようだった。自分の力が、正当に評価され、莫大な価値を生んだ。その事実に、俺の胸は熱くなった。
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