「荷物持ちは黙ってろ!」と追い出された俺のスキルは【収納(ストレージ)】。――パーティの全財産と装備、俺のストレージの中に入れたままだったっ

夏見ナイ

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第11話 路地裏の出会い

 未来への計画を立てた翌日、俺はまず自分の身なりを整えることから始めた。
 金貨数枚を使い、動きやすい丈夫な革鎧と、編み上げのブーツ、そして新しい外套を購入する。これだけでも、王都から逃げてきた時の薄汚れた姿とは見違えるようだった。

 次に目指すは、自分の身を守るための武器だ。
 フロンティアには大小さまざまな武具店が軒を連ねている。俺は何軒かを巡り、ショーウィンドウに飾られた剣や槍を眺めて回った。しかし、どれもピンとこない。Sランクパーティにいた頃、アレスたちが使っていた一級品を見慣れてしまったせいか、店の品物はどれもなまくらに見えてしまう。

(まあ、いい。どうせ【収納】で強化するんだ。今は一番安いやつで十分か……)

 そんなことを考えながら、大通りから一本外れた、少し寂れた通りを歩いていた時だった。
 不意に、建物の隙間から伸びる薄暗い路地裏から、怒声とくぐもった呻き声が聞こえてきた。

「おい、いつまでそうやって俯いてるんだ! 商品に傷がついたらどうすんだ、あぁ?」

 ドスの利いた、不快な声。
 関わるべきではない。この街では、他人のいざこざに首を突っ込むのは愚か者のやることだ。そう頭では分かっていたのに、なぜか俺の足は止まっていた。
 聞こえてきた呻き声が、あまりにもか細く、悲痛に満ちていたからだ。

 俺は息を殺し、建物の影からそっと路地裏を覗き込んだ。
 そこにいたのは、脂ぎった顔つきの、いかにも悪人といった風体の大男だった。身なりからして、奴隷商人だろうか。
 そして、その男の前には――一人の少女が、力なくうずくまっていた。

 長く尖った耳。銀糸のように美しい髪は汚れ、ところどころがもつれている。着ているものはボロ布同然で、そこから覗く手足は枝のように細い。エルフの少女だった。
 彼女の首には、奴隷であることを示す、錆びついた鉄の首輪が無慈悲にはめられている。

 男は少女の髪を乱暴に掴み、無理やり顔を上げさせた。
「いいか、お前は高く売れるんだ。だが、そんな死んだ魚みたいな目をしてちゃ客もつかねぇ。少しは笑ったらどうだ!」
 少女は何も答えない。その薄翠の瞳は、まるで光を失ったガラス玉のように虚ろで、何の感情も映していなかった。ただ、唇を固く結び、耐えている。

 その姿を見た瞬間、俺の胸に激しい動悸が走った。
 既視感があった。
 理不尽な暴力と罵声に晒されながら、ただ黙って耐えることしかできない姿。それは、アレスに「荷物持ちは黙ってろ!」と罵倒されていた、かつての自分自身の姿と、あまりにもよく似ていた。

 男は苛立ちを隠しもせず、少女を突き飛ばした。少女の華奢な体は、為す術もなく石畳に打ちつけられる。
 それでも、彼女は悲鳴一つ上げなかった。ただ、その虚ろな瞳から、一筋だけ、涙が静かにこぼれ落ちた。

 それを見た時、俺の中で何かが決まった。
 見過ごすことなんて、できるはずがなかった。
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