「荷物持ちは黙ってろ!」と追い出された俺のスキルは【収納(ストレージ)】。――パーティの全財産と装備、俺のストレージの中に入れたままだったっ

夏見ナイ

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第74話 共同戦線

 狼族の援軍という、心強い約束を取り付けた俺たちは、再び王都の城門の前に立っていた。
 門を固める衛兵たちの顔には、疲労と緊張の色が濃く浮かんでいる。俺たちが事情を説明しようとすると、「今は非常時だ! 怪しい者は通せん!」と、剣の柄に手をかけられた。
 俺は、懐からゲオルグ副団長に渡されていた、騎士団の紋章が刻まれた指輪を取り出して見せた。
「国王陛下に、緊急の報告があります。これを見れば、分かるはずだ」
 指輪を見た衛兵の顔色が変わった。彼は慌てて敬礼すると、部下に命じて俺たちを王城へと直通させるための軍馬を用意させた。

 王城に到着すると、そこは既に臨戦態勢に入りつつあった。鎧姿の騎士たちが慌ただしく走り回り、城壁には巨大なバリスタが次々と設置されていく。国王たちは、俺たちが戻る前から、何らかの異変を察知していたのだ。
 俺たちは、先日通された部屋よりもさらに奥にある、巨大な作戦地図が広げられた作戦司令室へと通された。
 部屋には、国王陛下、シルヴァン騎士団長、そしてバルドロイギルドマスターが、重い表情で地図を睨みつけていた。俺たちの姿を認めると、三人は一斉に顔を上げる。

「戻ったか、クレセントの者たちよ! して、何か掴めたか!」
 国王の切迫した声に、俺は頷いた。
「はい。最悪の、報告になります」

 俺は、息つく間もなく、遺跡で得た情報の全てを叩きつけた。
 魔王教の真の目的が、魔王復活の儀式であること。
 その儀式が、数日後の月蝕の日に、この王都の中央広場で行われる計画であること。
 儀式の核となる生贄が、古代エルフの最後の末裔であるルナであること。
 そして――。

「……元Sランクパーティ『竜の咆哮』が、魔王教に与し、敵の手先となっていることも、確認しました」

 その最後の報告に、部屋の空気が凍りついた。
「な……なんだと……!?」
 バルドロイが、信じられないという顔で絶句する。
「勇者アレスたちが……裏切ったというのか……!」
 シルヴァンも、苦々しく顔を歪めた。かつて魔王を討伐した英雄が、今度は魔王を復活させる側に回る。これ以上の皮肉はない。

 だが、国王の判断は早かった。
「……もはや、一刻の猶予もない」
 彼は玉座から立ち上がると、部屋にいる全ての騎士と伝令に向け、雷鳴のような声で命じた。
「王国全軍に通達! これより、王都は最高レベルの警戒態勢に入る! 騎士団は全兵力を王都防衛に集中させよ! ギルドは、動ける全ての冒険者を招集し、遊撃部隊を編成せよ!」
 国王の号令一下、部屋にいた者たちが一斉に動き出す。

 シルヴァン騎士団長が、巨大な地図の上に駒を置きながら、作戦の骨子を組み立てていく。
「騎士団は、中央広場を取り囲むように防衛ラインを構築、市民の避難を最優先とする! ギルドの遊撃部隊は、儀式の影響で召喚されるであろう魔物の掃討を担当!」
 彼はそこで、俺たち三人に視線を向けた。
「そして、儀式の中心地への突入と、首謀者の打倒は……君たち『クレセント』に託したい。この作戦の成否は、君たちの双肩にかかっている!」

 その重い言葉に、俺は静かに頷いた。
「承知いたしました。それと、一つご報告が。我々と共に戦う、強力な援軍が間もなく到着します。狼族の精鋭戦士、三十名です」
「狼族だと!?」
 俺の言葉に、三人は再び驚愕の表情を浮かべた。
「……リアム殿。君は、一体どれだけ我々を驚かせれば気が済むのだ」
 シルヴァンは、呆れたように、だが心底頼もしそうに微笑んだ。

 王城の鐘が、けたたましく鳴り響き始めた。決戦の時が近いことを、王都の全ての人々に告げ知らせる、警鐘の音。
 王国全土を巻き込んだ、魔王教との共同戦線が、今、ここに結成された。
 俺たちは、その巨大な戦いの、まさに刃の先端に立っていた。
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