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第八十五話 偽りの断罪
謁見の間を支配する、重苦しい沈黙。
それは、エルミール王国使節団の、完全な敗北を物語っていた。
だが、このままでは終われない。
バーンズ子爵は、震える身体を、必死で奮い立たせた。ここで何も言わずに帰れば、待っているのは、王太子アルフォンスによる、容赦のない処罰だけだ。
どちらにしても、地獄。
ならば、せめて、主君の命令だけは、果たさなければ。
彼は、最後の意地と、そして恐怖心から、ついに、あの傲慢な要求を、口にした。
「……エリアーナ様!」
その声は、裏返っていた。
「あなた様は、我が国を欺き、王家を裏切った、大罪人である! その罪は、万死に値する!」
彼は、アルフォンスから渡された台本を、ただ棒読みするかのように、叫んだ。
「しかし、我らが王太子アルフォンス殿下は、寛大にも、あなた様に、悔い改める機会をお与えくださった! その慈悲に感謝し、即刻、我らと共に、エルミールへ帰国していただく!」
その、あまりにも現実が見えていない、滑稽な断罪の言葉。
それを聞いた、帝国の貴族たちは、もはや失笑さえも浮かべなかった。
ただ、憐れな道化を見るかのような、冷たい視線を、彼らに向けるだけだった。
エリアーナの表情も、変わらない。
彼女は、まるで、遠い国の、自分とは関係のない物語を聞いているかのように、静かに、そして無感動に、その言葉を受け流していた。
もはや、彼らの言葉は、彼女の心に、何の傷もつけることはできない。
その、エリアーナの揺るぎない態度が、バーンズ子爵を、さらに苛立たせた。
彼は、半ばヤケクソになって、言葉を続ける。
「あなた様が、このまま帰国を拒否されるというのなら、それは、我がエルミール王国に対する、明確な敵対行為と見なす! 帝国との、全面戦争も、辞さない覚悟であると、そう心得ていただきたい!」
全面戦争。
その、愚かしいほどの、脅し文句。
それを聞いた瞬間、今まで黙って玉座に座っていた、カインの纏う空気が、一変した。
謁見の間の温度が、数度、下がったかのように感じられた。
カインは、ゆっくりと、立ち上がった。
その動きは、どこまでも優雅だったが、その瞳の奥には、絶対零度の、氷のような怒りが燃え盛っていた。
彼は、哀れな子爵を、虫けらでも見るかのような、冷たい目で見下ろした。
そして、その口から放たれた言葉は、使節団の、最後の希望さえも、完全に打ち砕くものだった。
それは、エルミール王国使節団の、完全な敗北を物語っていた。
だが、このままでは終われない。
バーンズ子爵は、震える身体を、必死で奮い立たせた。ここで何も言わずに帰れば、待っているのは、王太子アルフォンスによる、容赦のない処罰だけだ。
どちらにしても、地獄。
ならば、せめて、主君の命令だけは、果たさなければ。
彼は、最後の意地と、そして恐怖心から、ついに、あの傲慢な要求を、口にした。
「……エリアーナ様!」
その声は、裏返っていた。
「あなた様は、我が国を欺き、王家を裏切った、大罪人である! その罪は、万死に値する!」
彼は、アルフォンスから渡された台本を、ただ棒読みするかのように、叫んだ。
「しかし、我らが王太子アルフォンス殿下は、寛大にも、あなた様に、悔い改める機会をお与えくださった! その慈悲に感謝し、即刻、我らと共に、エルミールへ帰国していただく!」
その、あまりにも現実が見えていない、滑稽な断罪の言葉。
それを聞いた、帝国の貴族たちは、もはや失笑さえも浮かべなかった。
ただ、憐れな道化を見るかのような、冷たい視線を、彼らに向けるだけだった。
エリアーナの表情も、変わらない。
彼女は、まるで、遠い国の、自分とは関係のない物語を聞いているかのように、静かに、そして無感動に、その言葉を受け流していた。
もはや、彼らの言葉は、彼女の心に、何の傷もつけることはできない。
その、エリアーナの揺るぎない態度が、バーンズ子爵を、さらに苛立たせた。
彼は、半ばヤケクソになって、言葉を続ける。
「あなた様が、このまま帰国を拒否されるというのなら、それは、我がエルミール王国に対する、明確な敵対行為と見なす! 帝国との、全面戦争も、辞さない覚悟であると、そう心得ていただきたい!」
全面戦争。
その、愚かしいほどの、脅し文句。
それを聞いた瞬間、今まで黙って玉座に座っていた、カインの纏う空気が、一変した。
謁見の間の温度が、数度、下がったかのように感じられた。
カインは、ゆっくりと、立ち上がった。
その動きは、どこまでも優雅だったが、その瞳の奥には、絶対零度の、氷のような怒りが燃え盛っていた。
彼は、哀れな子爵を、虫けらでも見るかのような、冷たい目で見下ろした。
そして、その口から放たれた言葉は、使節団の、最後の希望さえも、完全に打ち砕くものだった。
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