この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~

夏見ナイ

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第37話 騎士と賢者の村づくり

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リゼットの呪いが解け、ノエルが村の正式な一員となってから、ミストラル村の日常は、まるで新しい歯車が噛み合ったかのように、より一層活気に満ちて回り始めた。

俺の『奇跡の泥水亭』は、相変わらず村の中心だった。朝になれば、どこからともなく人々が集まってくる。

「おはよう、ルーク。今日の分を頼む」

店の扉を開けて入ってきたリゼットが、少しだけ憂鬱そうな顔でカウンターの前に立つ。俺が差し出した創生水の杯を、彼女は覚悟を決めたように一気に呷り、そして約束されたように顔を歪めて悶絶した。

「……っ!何度飲んでも、この味は慣れんな……!」
「ふむふむ。今日の眉間の皺の角度は75度。昨日より5度浅いね。もしかして、少しずつ耐性がついてきてるのかな?」

その横では、ノエルが真剣な顔で手元のノートに何やら書き込んでいる。彼女はリゼットの反応を、新薬の臨床データのように毎日記録していた。

「これは耐性などではない!騎士としての精神力だ!」

リゼットが必死に反論するが、その声は少し震えている。そんな二人のやり取りを見て、カウンターの隅で朝食のパンを頬張っていたエリアナが、けらけらと楽しそうに笑った。

それが、俺たちのいつもの朝だった。穏やかで、少し騒がしくて、そして何より温かい。俺はこの日常が、心の底から好きだった。

だが、仲間が増えたことで、村には新しい視点がもたらされることになった。

その日の午後、村の周辺の警備から戻ってきたリゼットが、店のカウンターで険しい顔をしていた。

「どうしたんですか、リゼットさん。何かありましたか」
「……いや、何もなかった。何もなかったからこそ、問題なのだ」

彼女は、俺と、薬草の選別をしていたノエルに向き直った。

「この村は、あまりにも無防備すぎる」

その言葉は、平和な空気に慣れ始めていた俺の心に、冷や水を浴びせるような響きを持っていた。

「大ネズミの件は、ルークの奇策があったからこそ、無血で解決できた。だが、もし次に来るのが、知恵を持つ盗賊団だったら?あるいは、もっと強力な魔物だったら?今のこの村では、抵抗らしい抵抗もでき
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