婚約破棄された悪役令嬢、手切れ金でもらった不毛の領地を【神の恵み(現代農業知識)】で満たしたら、塩対応だった氷の騎士様が離してくれません

夏見ナイ

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第七十一話 未来への投資・交易編

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婚約披露パーティーの熱気が冷めやらぬ中、私の頭はすでに次の段階へと進んでいた。
ラピス領の未来を盤石にするためには、内需と王都への支援だけでは不十分だ。より多角的な収入源を確保し、経済的な自立を確固たるものにする必要がある。

その鍵となるのが、帝国との交易だった。
先日、クラウス子爵に提案した「ラピスの雪」と鉄製品の交換。あれは単なるその場しのぎの外交辞令ではない。私の描く壮大な経済圏構想の、重要な第一歩だった。

私はカイと共に、執務室で北部の地図を広げていた。
「帝国との交易路は、この山脈を越えるルートが最短です。しかし、道は険しく、冬は雪で閉ざされる」
「うむ。古くから、密貿易の者たちが使う獣道があるだけだ。大規模な交易には向かん」
カイが、私の指し示した場所を見て頷く。

「ですから、ここに新しい街道を拓くのです。帝国との、公式な交易路を」
私の言葉に、カイは驚いたように目を見開いた。
「正気か、アリシア。帝国の喉元に、こちらから道を差し出すようなものだぞ。有事の際には、敵の侵攻路となる」

彼の懸念はもっともだった。しかし、私には別の考えがあった。
「逆ですわ、カイ。道は、人や物を運びます。そして、互いの利益が生まれれば、人はその道を閉ざしたくはなくなる。街道は、軍馬の蹄から富を守る、経済的な防壁になるのです」

私は続けた。
「まずは、小規模なキャラバンから始めます。帝国の商人と交渉し、互いの需要を探る。鉄だけでなく、あちらの優れた工芸品や、こちらにはない香辛料なども手に入れたい。そして、徐々に規模を拡大し、この交易路が両国にとってなくてはならない大動脈であることを、帝国自身に認識させるのです」

戦ではなく、経済で帝国を縛る。
それが、私の考えた安全保障だった。
私の壮大な構想に、カイはしばらく黙って考え込んでいた。やがて、彼はふっと息を吐くと、不敵な笑みを浮かべた。

「……面白い。お前の考えることは、いつも俺の想像の斜め上を行くな」
彼は地図の上で、私の指に自分の指を重ねた。
「よかろう。その話、乗った。街道建設の測量と警備は、俺の兵に任せろ。お前は、帝国の商人どもを、その弁舌で丸め込むことに集中しろ」

私たちは、顔を見合わせて笑った。
ラピス領の未来への新たな投資。それは、氷の山脈を越え、強大な帝国へと続く、危険だが大きな可能性を秘めた道作りから始まった。
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