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第三話
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魔族が人間界へと侵攻をしたのは、増えすぎた魔族の新天地としてそこを欲していたからだ。
人間界の繁栄に比例するように、魔界は圧縮を続けていた。
今にも弾けそうなシャボン玉のなかに、ドス黒く歪んだ負のオーラが溜まりきってしまっていた。
そして魔族を増やした原因は、他でもない絶倫大魔王のせいだった――
*****
「う……ん……?」
意識を取り戻したラストの目に、見知らぬ天井が映し出される。
淡い色彩の草花が描かれた壁紙が、隅々にまで張り巡らされている。
窓の外を確認しなくとも、柔らかな灯りでここが魔界でないことは察しがつく。
だって、魔界には光がない。
ゆっくりと身体を起こそうとしたが――できなかった。
「な……っ!?」
ジャラリ、と鈍い音がする。
手首を動かそうとして、何かに強く引っ張られるのを感じた。
頭を浮かせて確認すると、両手首が鎖で拘束されていた。
ご丁寧に、両足も。
――そうか。私は、捕まったのだな……
勇者と対峙し、そして敗れた。
この鎖は魔族の自分をつなぎ止めるためのものだろう。
人間に化けていた姿も、いつの間にか魔族のものに戻っているようだ。
だが、どうして自分の首は、まだ身体と繋がっている……?
浮かせた頭を勢いよく沈ませると、驚くほど柔らかい寝台に軽く弾かれた。
あの場で即刻斬り殺されてもおかしくなかった。
これまで勇者に対決を挑んだ同胞は、例外なくその場で命を散らしていったはずだ。
それに、捕虜だとしても、この寝台はやたらと寝心地がいい。
待遇としては悪くはないが――
「あ、気がついた?」
思案するラストの顔を、金髪碧眼の美少年が覗き込んだ。
「ゆ、勇者……!?」
びくりと身体を揺らしたラストの手足で、鎖がけたたましく音を立てる。
「手荒な真似してごめんね?」
サラサラとした金髪を揺らしながら、碧色の瞳が優しげに細められる。
その微笑みは、まさしく天使そのものだった。
――ああ、なんて可愛いの!
勇者は鎧も剣も身につけてはいなかった。
白いシャツに黒のズボンという軽装で、ラストの横たわる寝台の端に腰を掛け、呆然とする彼女を微笑みながら見下ろしている。
できることなら、自分がこの少年を見下ろしたかった……
「ラストさんって思っていた以上にすばしっこくて、いつも肝心なところで逃げられていたから……。確実に捕まえるためには、ああするしかなかったんだよ」
勇者の手が、ラストの滑らかな肌をひと撫でする。
「でも……ようやく、捕まえた」
その瞬間、碧色の瞳の奥に仄暗いものが見えたような気がした。
ギシリと寝台が沈み込む。
寝台に上がった勇者は、そのままラストの腰に体重を掛けずに跨がった。
困惑するラストに向かって、恐ろしいほどに整った顔がゆっくりと近づいてくる。
得体の知れない気配を感じ取ったラストが思わず目を閉じたとき、なにかが唇を覆った。
「……っ!?」
驚きから閉じた瞳を見開いたラストの前では、目を伏せた勇者の長い睫毛が揺れていた。
「ん……っ」
短く、啄むようにキスが繰り返される。
あたたかくて、柔らかい感触に、首の後ろがぞくぞくする。
――なんだ、これ……気持ち、いい……
ちゅ、ちゅ、と食むように唇で唇を何度も挟まれて、甘い痺れにラストは肩を震わせた。
口移しで媚薬でも飲まされているのだろうか。
やがて力をなくして静かに開いた唇から、舌が割り込んできた。
「……んぅ……、は……ぁ……」
ぬるりと生温かいものに、自らの舌を絡め取られる。
だが、それすらも気持ちがいい。
上顎を舌でなぞられて、ぞくりとした感覚が背筋を走った。
知らず知らずのうちに息が乱れ、頭の芯がぼうっとしてくる。
ようやく唇が離れ、真っ赤な顔で紅い瞳を潤ませいるラストの前で、勇者の指がオフショルダーのドレスの胸元に引っかかる。
そのまま、グッと下に押し下げられた。
「ぎゃあ……!? な、なにをする!?」
ふるりと、ラストの豊かな胸が露わになる。
「綺麗な色。美味しそう……」
白い膨らみの中心に咲いた薄桃色の頂きに、勇者は感嘆の声を漏らした。
「ラストさん、閨事は初めて?」
「……なっ!?」
にっこりと笑いながらとんでもないことを言い出す勇者に、ラストの顔の赤みがもう一段階上がった。
ラストの母は淫魔だ。精力の貪り方は、本能として知っている。
だが、ラスト自身は精力を必要とはしない。
それに、王宮の隅でひっそりと暮らしていた日陰者のラストが、本能として持っている知識を実行に移すこともなかった。
手足を拘束されて半裸にされた自分に覆い被さる男。
つまりこれは、そういうことで――!?
ラストの様子に、勇者はさらに嬉しそうに笑みを増す。
「良かったぁ! 僕も初めて。でも心配しないで? ちゃんと教育は受けているから」
ドレスから外れた指が柔らかな膨らみをなぞる。
「ここを刺激すると、気持ちがいいんだよね?」
「あっ」
先端をちょん、と軽くつつかれて、身体が軽く跳ねた。
勇者の指が乳輪を辿ってくるくると弧を描く。
感じたくもないのに、触れるか触れないかの絶妙な力加減に思わず吐息が漏れそうになる。
先ほど僅かにだけ触れられた頂きは熱を持ったかのようにジンジンとして、まるで続きを強請っているようだ。
「ああ、ほら。乳首起ってきた」
ぷっくりと硬くなった乳首を、いきなり摘まみ上げられた。
「あんっ、いやあ……!」
二本の指で擦るように転がされて、背中が仰け反る。
自分の声の甘さにも驚いて、ラストはキッと勇者を睨みつけた。
「はなせ……、この、クソガキ……!」
「平気平気、僕これでも十七歳。立派な大人だよ?」
「私は百飛んで二十五歳だぁぁぁ!」
「わあ、すごい年の差だね」
――圧縮された魔界の空間では、時間の流れも早いのだ。
「でも大丈夫。ラストさん、年の割には若く見えるから、僕は気にしないよ?」
「私は気にする!」
魔族年齢で百と八歳差。
大魔王の末の娘で淫魔の血を引く自分が、人間の子供に身体を弄ばれるとはなんたる屈辱か。
それに普通は、清純そうで可憐な美少年が鎖で繋がれて、それを美女が弄ぶんでしょうが!?
なのに、どうして逆なのよ――!?
身体を捻らせて必死に抵抗を試みるも、ジャラジャラという鎖の音が空しく響くだけで、勇者の手からは逃れることができない。
それに、寝台の上で淫らに身体をくねらせる様は、男の目には逆に煽っているようにさえ見えた。
目の前で揺れる乳房の誘惑に耐えかねたのか、勇者の手がそれを包み込んだ。
「わあ……、柔らかい」
細く繊細な指先とは違って剣を握り込んで硬くなった手が、強弱をつけやわやわと揉む。
尖った乳首が手のひらで擦れて、甘い痺れが広がっていく。
武骨な手は敵であるはずのラストにも優しくて、触れられる感覚は決して不愉快なだけではなかった。
「ん、あ、……やめ、ろ……」
抗う声がどんどん小さくなっていった。
快感を受け入れてはいけないとわかっていても、淫魔の血か、心と身体は異なる反応を見せる。
「やめないよ。そのために、捕まえたんだからね」
勇者は正義の味方らしからぬ笑みを浮かべたまま、ラストの胸の頂きにゆっくりと口づけした。
乳首が、温かな口内に吸い込まれる。
「ああっ!」
今までに感じたことのない感覚に、身体が戦慄いた。
軽く吸い上げられただけで、背中や腰に痺れが走る。
甘噛みされ、小刻みに動かした舌に舐め転がされ、下腹部にじわじわと熱が篭もる。
「ん、あ……、や……っ、は、あ……」
拒絶の言葉は、次第に甘い吐息へと変わる。
片方は舌で、もう片方は二本の指で摘ままながらもう一本の指で引っ掻くように刺激されて、左右の乳首を襲う異なる感覚に目眩さえ覚えた。
「初めてラストさんを見たときから、ずっと手に入れたかったんだ」
ぴちゃぴちゃと音がしそうなほどに舐めしゃぶりながら、勇者は器用にも話を始めた。
「なん……だと……?」
ラストの誘惑は、実は稀代の勇者にもしっかり届いていたらしい。
ただ、思っていたのとは少し違う。
この勇者は、夢中になったはずのラストにもためらうことなく剣を振るっていたではないか。
「ラストさんが最初に放った誘惑は、僕の反射のスキルでそのままはじき返されたはずだよ」
跳ね返された誘惑は、そのまま自分にかかった……?
だから勇者を見た時、あれほど興奮したというの?
でも、それもおかしい。
鏡で自分の顔を見たからといって、自分で自分に惚れたりはしない。
だから、たとえ跳ね返されたとしても、ラストが勇者に夢中になるはずはないのだ。
だとすれば、勇者を一目見たときのあの高揚感はどこから来たものなのか。
――まさか、本能……?
実は、もともと魔族というのは繁殖能力は高くない。
淫魔がわざわざ人間を襲うのは、精力の他にも子種を得るという目的のためでもある。
大魔王の絶倫ぶりは、低い繁殖能力を補って余りあるものだった。
だからこそ、人間界との行き来が困難になったラストの母は、大魔王を誘惑した。
絶滅の危機に瀕したとき、雌は本能で強い雄を感じ取る。
種族を、残すために。
人間界にただひとり取り残されたラストは、本能で選び取ったのだ。
自らの番として――勇者を。
人間界の繁栄に比例するように、魔界は圧縮を続けていた。
今にも弾けそうなシャボン玉のなかに、ドス黒く歪んだ負のオーラが溜まりきってしまっていた。
そして魔族を増やした原因は、他でもない絶倫大魔王のせいだった――
*****
「う……ん……?」
意識を取り戻したラストの目に、見知らぬ天井が映し出される。
淡い色彩の草花が描かれた壁紙が、隅々にまで張り巡らされている。
窓の外を確認しなくとも、柔らかな灯りでここが魔界でないことは察しがつく。
だって、魔界には光がない。
ゆっくりと身体を起こそうとしたが――できなかった。
「な……っ!?」
ジャラリ、と鈍い音がする。
手首を動かそうとして、何かに強く引っ張られるのを感じた。
頭を浮かせて確認すると、両手首が鎖で拘束されていた。
ご丁寧に、両足も。
――そうか。私は、捕まったのだな……
勇者と対峙し、そして敗れた。
この鎖は魔族の自分をつなぎ止めるためのものだろう。
人間に化けていた姿も、いつの間にか魔族のものに戻っているようだ。
だが、どうして自分の首は、まだ身体と繋がっている……?
浮かせた頭を勢いよく沈ませると、驚くほど柔らかい寝台に軽く弾かれた。
あの場で即刻斬り殺されてもおかしくなかった。
これまで勇者に対決を挑んだ同胞は、例外なくその場で命を散らしていったはずだ。
それに、捕虜だとしても、この寝台はやたらと寝心地がいい。
待遇としては悪くはないが――
「あ、気がついた?」
思案するラストの顔を、金髪碧眼の美少年が覗き込んだ。
「ゆ、勇者……!?」
びくりと身体を揺らしたラストの手足で、鎖がけたたましく音を立てる。
「手荒な真似してごめんね?」
サラサラとした金髪を揺らしながら、碧色の瞳が優しげに細められる。
その微笑みは、まさしく天使そのものだった。
――ああ、なんて可愛いの!
勇者は鎧も剣も身につけてはいなかった。
白いシャツに黒のズボンという軽装で、ラストの横たわる寝台の端に腰を掛け、呆然とする彼女を微笑みながら見下ろしている。
できることなら、自分がこの少年を見下ろしたかった……
「ラストさんって思っていた以上にすばしっこくて、いつも肝心なところで逃げられていたから……。確実に捕まえるためには、ああするしかなかったんだよ」
勇者の手が、ラストの滑らかな肌をひと撫でする。
「でも……ようやく、捕まえた」
その瞬間、碧色の瞳の奥に仄暗いものが見えたような気がした。
ギシリと寝台が沈み込む。
寝台に上がった勇者は、そのままラストの腰に体重を掛けずに跨がった。
困惑するラストに向かって、恐ろしいほどに整った顔がゆっくりと近づいてくる。
得体の知れない気配を感じ取ったラストが思わず目を閉じたとき、なにかが唇を覆った。
「……っ!?」
驚きから閉じた瞳を見開いたラストの前では、目を伏せた勇者の長い睫毛が揺れていた。
「ん……っ」
短く、啄むようにキスが繰り返される。
あたたかくて、柔らかい感触に、首の後ろがぞくぞくする。
――なんだ、これ……気持ち、いい……
ちゅ、ちゅ、と食むように唇で唇を何度も挟まれて、甘い痺れにラストは肩を震わせた。
口移しで媚薬でも飲まされているのだろうか。
やがて力をなくして静かに開いた唇から、舌が割り込んできた。
「……んぅ……、は……ぁ……」
ぬるりと生温かいものに、自らの舌を絡め取られる。
だが、それすらも気持ちがいい。
上顎を舌でなぞられて、ぞくりとした感覚が背筋を走った。
知らず知らずのうちに息が乱れ、頭の芯がぼうっとしてくる。
ようやく唇が離れ、真っ赤な顔で紅い瞳を潤ませいるラストの前で、勇者の指がオフショルダーのドレスの胸元に引っかかる。
そのまま、グッと下に押し下げられた。
「ぎゃあ……!? な、なにをする!?」
ふるりと、ラストの豊かな胸が露わになる。
「綺麗な色。美味しそう……」
白い膨らみの中心に咲いた薄桃色の頂きに、勇者は感嘆の声を漏らした。
「ラストさん、閨事は初めて?」
「……なっ!?」
にっこりと笑いながらとんでもないことを言い出す勇者に、ラストの顔の赤みがもう一段階上がった。
ラストの母は淫魔だ。精力の貪り方は、本能として知っている。
だが、ラスト自身は精力を必要とはしない。
それに、王宮の隅でひっそりと暮らしていた日陰者のラストが、本能として持っている知識を実行に移すこともなかった。
手足を拘束されて半裸にされた自分に覆い被さる男。
つまりこれは、そういうことで――!?
ラストの様子に、勇者はさらに嬉しそうに笑みを増す。
「良かったぁ! 僕も初めて。でも心配しないで? ちゃんと教育は受けているから」
ドレスから外れた指が柔らかな膨らみをなぞる。
「ここを刺激すると、気持ちがいいんだよね?」
「あっ」
先端をちょん、と軽くつつかれて、身体が軽く跳ねた。
勇者の指が乳輪を辿ってくるくると弧を描く。
感じたくもないのに、触れるか触れないかの絶妙な力加減に思わず吐息が漏れそうになる。
先ほど僅かにだけ触れられた頂きは熱を持ったかのようにジンジンとして、まるで続きを強請っているようだ。
「ああ、ほら。乳首起ってきた」
ぷっくりと硬くなった乳首を、いきなり摘まみ上げられた。
「あんっ、いやあ……!」
二本の指で擦るように転がされて、背中が仰け反る。
自分の声の甘さにも驚いて、ラストはキッと勇者を睨みつけた。
「はなせ……、この、クソガキ……!」
「平気平気、僕これでも十七歳。立派な大人だよ?」
「私は百飛んで二十五歳だぁぁぁ!」
「わあ、すごい年の差だね」
――圧縮された魔界の空間では、時間の流れも早いのだ。
「でも大丈夫。ラストさん、年の割には若く見えるから、僕は気にしないよ?」
「私は気にする!」
魔族年齢で百と八歳差。
大魔王の末の娘で淫魔の血を引く自分が、人間の子供に身体を弄ばれるとはなんたる屈辱か。
それに普通は、清純そうで可憐な美少年が鎖で繋がれて、それを美女が弄ぶんでしょうが!?
なのに、どうして逆なのよ――!?
身体を捻らせて必死に抵抗を試みるも、ジャラジャラという鎖の音が空しく響くだけで、勇者の手からは逃れることができない。
それに、寝台の上で淫らに身体をくねらせる様は、男の目には逆に煽っているようにさえ見えた。
目の前で揺れる乳房の誘惑に耐えかねたのか、勇者の手がそれを包み込んだ。
「わあ……、柔らかい」
細く繊細な指先とは違って剣を握り込んで硬くなった手が、強弱をつけやわやわと揉む。
尖った乳首が手のひらで擦れて、甘い痺れが広がっていく。
武骨な手は敵であるはずのラストにも優しくて、触れられる感覚は決して不愉快なだけではなかった。
「ん、あ、……やめ、ろ……」
抗う声がどんどん小さくなっていった。
快感を受け入れてはいけないとわかっていても、淫魔の血か、心と身体は異なる反応を見せる。
「やめないよ。そのために、捕まえたんだからね」
勇者は正義の味方らしからぬ笑みを浮かべたまま、ラストの胸の頂きにゆっくりと口づけした。
乳首が、温かな口内に吸い込まれる。
「ああっ!」
今までに感じたことのない感覚に、身体が戦慄いた。
軽く吸い上げられただけで、背中や腰に痺れが走る。
甘噛みされ、小刻みに動かした舌に舐め転がされ、下腹部にじわじわと熱が篭もる。
「ん、あ……、や……っ、は、あ……」
拒絶の言葉は、次第に甘い吐息へと変わる。
片方は舌で、もう片方は二本の指で摘ままながらもう一本の指で引っ掻くように刺激されて、左右の乳首を襲う異なる感覚に目眩さえ覚えた。
「初めてラストさんを見たときから、ずっと手に入れたかったんだ」
ぴちゃぴちゃと音がしそうなほどに舐めしゃぶりながら、勇者は器用にも話を始めた。
「なん……だと……?」
ラストの誘惑は、実は稀代の勇者にもしっかり届いていたらしい。
ただ、思っていたのとは少し違う。
この勇者は、夢中になったはずのラストにもためらうことなく剣を振るっていたではないか。
「ラストさんが最初に放った誘惑は、僕の反射のスキルでそのままはじき返されたはずだよ」
跳ね返された誘惑は、そのまま自分にかかった……?
だから勇者を見た時、あれほど興奮したというの?
でも、それもおかしい。
鏡で自分の顔を見たからといって、自分で自分に惚れたりはしない。
だから、たとえ跳ね返されたとしても、ラストが勇者に夢中になるはずはないのだ。
だとすれば、勇者を一目見たときのあの高揚感はどこから来たものなのか。
――まさか、本能……?
実は、もともと魔族というのは繁殖能力は高くない。
淫魔がわざわざ人間を襲うのは、精力の他にも子種を得るという目的のためでもある。
大魔王の絶倫ぶりは、低い繁殖能力を補って余りあるものだった。
だからこそ、人間界との行き来が困難になったラストの母は、大魔王を誘惑した。
絶滅の危機に瀕したとき、雌は本能で強い雄を感じ取る。
種族を、残すために。
人間界にただひとり取り残されたラストは、本能で選び取ったのだ。
自らの番として――勇者を。
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