その男、凶暴により

文字の大きさ
3 / 32
一章~久方ぶりの土地~

噛みつくナイフ

「何故、寝ている?状況を説明しろ、豊。」
豊と呼ばれた大男が胡座をかいた男の後ろに目をやる。
「ネ、ネズミさん…」
「ほぉ、後ろにいるのがネズミなんだな?」親指を後ろに向けて豊に話し掛ける男。
「誰だ、こいつは?」
「龍だよ。」

豊と呼ばれた男が目を見開く。
「あなたが…」
「良い、どうせ『いつも』のだろ?おっさん、好き勝手やってくれたな?しかも『あの人』の名前を騙りやがって…此処では俺がルールなんだ。今日があんたの命日になる。」
ネズミが喋りながら龍に向けて右手を振り下ろす。

シュッ!

凄まじい風切り音が聞こえてきた瞬間、龍は胡座をかいたまま両手を地面につけそのまま右足で水面蹴りを繰り出した。
それに気付いたネズミが一歩下がったのを追随するように龍が地面を右手で支え、左足がネズミの側頭部に襲いかかるが右手でガードされる。

そのまま立ち上がり、首を回しながら龍がネズミを睨み付ける。
「特訓はサボってなかったみたいだな、ネズミ。ただ…こいつらは何だ?俺達はこの街の自警団じゃなかったのか?人のものを奪い、あまつさえ命を盗ろうとすることなんて教えたか?」

「『あの人』と同じような事を言いやがる。モノマネも大概にしろよ、てめぇ…」左耳にある、金色のイヤーカフを撫でながら吐き捨てる。

茶髪がかった長い髪をだらりと伸ばし、白いTシャツに黒のYシャツを羽織り袖から出ている右手にはシースナイフを逆手に持ち、ダメージジーンズの先にある左足は苛立ちを隠せないように小刻みにゆらしていた。

「もう、龍さんはいない!あの人は『あの時』死んだんだから!だから…だから俺がこの街を守るため、この街に来たヤツの金品を奪い取ってこの街の恐ろしさを広めていく。お前みたいなヤツが来たら…あの人を騙る奴が来たら…殺す」

ネズミが龍に向かい地面を這うようなアッパーを繰り出す。
もちろん、ナイフを持った右手で。
「昔から大振りすんな、って言ってんのに変わらねぇな。」
左に一歩動き、ナイフをかわした龍がネズミの右脇腹めがけてボディブローを食らわせようとしたけれど、左足を踏み出した瞬間、両手を地面につき飛び込み前転の要領で身を投げ出した。

そのまま龍がボディブローをしていたら首筋があったであろう場所に振り上げたナイフをネズミが右に振り下ろしていた。

「モノマネ野郎にしては反射神経良いじゃねえか。まぁ、龍さんなら俺のナイフより先に脇腹抉られてたけどな。」

立ち上がり、少し笑いかけながら龍がネズミに話しかける「美化しすぎだよ、昔の俺ならそのナイフの餌食になってたぜ。強くなったな。」

少し呆けた顔をした後で、長い髪をかきむしるネズミ「…ち、違う。違う!龍さんは死んだんだ!もういないんだ!そんな顔で俺を見るな!」

ようやく、立ち上がれる程に回復した豊が2人のやり取りを見て口を開いた。
「ネズミさん。多分、本物の龍さんです…柔道も知ってたし、何より見てください。」

最初にやられた3人もいつの間にか豊の後ろにおり、固唾を呑んで見守っていた。
「誰も致命傷をおってません。」

空中で蹴りを繰り出した男が口を出す。
「俺は頭から叩き付けられたはずなんですけど…多分、足を頭と地面の間に入れて防いでくれました、その人。」

「余計な事を言わなくて良いんだよ…なぁ、ネズミ。やっと戻って来れたぜ、お前の力がいる。襲ってきたあいつらをぶちのめしに行かないか?」

かきむしっていた手を止めて、全員の顔を見て…一瞬の逡巡。
その後、力強くナイフを握り締めファイティングポーズをとった。
「どいつもこいつもうるせえよ…本当に龍さんなら、俺が憧れたあの人なら…俺を止めてみろ。」

「しょうがねぇ…目を覚まさしてやる。」
同じようにファイティングポーズを取る龍。

感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております