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二章~闘技場にて~
第一試合
「うおっ、めちゃくちゃ種類ある!」
「自前の武器、その他こちらにあるものは好きに使って良いので、準備をしてお待ち下さい。まもなく初戦開幕です。」
おかっぱ頭の幼い容姿の案内役の少女はそう告げ静かにその場を去っていった。
刀剣、大鎌、こん棒、鎖鎌からトンファー、槍まで所狭しと控え室に武器が壁にかけられているのをキラキラした目で見つめるネズミに龍が声をかける。
「痛みはどうだ?」
「だいぶ、治まったよ。龍さん。」
刀を幾らか物色しながら応えるネズミ。
「やはり、初戦なら俺が行きますかね。」そう喋りながら入念にストレッチをする豊。
「そうだな、誰がくるか分からないから相手の出方を見る上でも任せられるか豊?」
「えぇ、もちろ…」
「俺が出るよ。」
1つの刀を選び、鞘から出し、くるくると器用に柄の部分を支点に刀を回すネズミ。
「ネズミさん、まだ休んでた方が…」
カシャンッ、と刀を鞘に戻し2人を見るネズミ。
「龍さん。良いよね?」
いつぞやの強い眼差しを正面に受け、龍が溜め息を一つ吐き出した。
「こうなったら聞かねぇもんな…やっぱりお前は刀の方が似合ってるよ。行ってこい。ちゃんとこいつで見とく。」
壁際に掲げられたモニターに誰も居ない闘技場内の様子が写し出されていた。
「ヤられた分、返してくるよ。」
『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』
*
「いやぁ、今日も満員だねぇ。まぁ、結果は変わらないんだけど。」
控え室の椅子に座り、足を組んでリラックスする青年。
色が抜けて、金髪を通り越し白髪と言えるほどの後ろに束ね、お気楽に喋っている。
Yシャツ、チノパン、全身を白でコーディネートされた男を見ながら、黒炎が口を開く。
「どうかのぅ、少なくとも龍は儂の動きが見えておったわい。」
「あんたの悪い癖だよ、黒炎。試合前の品定めするなんて。」
「『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』と言うじゃろ?まぁ、味方がヤられるのを事前に防ぐ気がなかったのは手の内を見せたくなかったから…思った以上に手強そうじゃな。気を抜くなよ白氷。犬鳴もじゃ。」
相手に手を出したのを知り、やれやれと首を振る白氷。
「悪い癖だよ、本当に。」
我関せず、というように仁王立ちの鎧武者の男が低い声で語りかける。
「行ってくる。」
そう言い残し、闘技場へと足を向けた。
『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』
*
円型の闘技場、壁はレンガ造りで3m程の高さがあり、その外側では大興奮の観客が叫び声をあげている。
『犬鳴!今日も瞬殺だ!』
『どうせ今日も三タテだ!』
『あたりめぇよ、今日も全財産ぶっ込んできたぜ!』
様々な怒号が飛び交う中、当然ながらネズミの声援はオッズの通り、極小だった。
『ネズミつったか!?俺はお前に賭けたぜ。勝てば大穴だ!』
闘技者が入ってくる方の入り口の反対側、観客席の後方に一際大きなモニターが写し出され、先鋒戦のオーダーとオッズが張り出されていた。
『犬鳴2.3-鼠11.8』
ぼんやりとモニターを見ながら、屈伸運動をするネズミ。
すると…
「気負っていないようだな、此度の対戦は楽しめそうだ。」
低い声で投げ掛けられた先を見ると鎧武者の男が左手で鍔に手をやり、こちらを見ていた。
「あんたも、変な格好してるな。やっぱりここは『あいつら』の施設か?」
「その質問には答えられん。一つ言えることは、あと少しの命だが、言い残しはあるか?」カシャンカシャンとネズミに近寄る男。
「秘密主義にも程があるぜ、どいつもこいつも。」ネズミも男と距離を縮める。
「黒炎、って奴には今の俺じゃ勝てねぇ…でも、あんたにこの屈辱、返させてもらうぜ。」
お互いの間合いに入り、足を止める。
武器は双方、刀。
犬鳴は右手で柄を握り、居合いの構えをする。
ネズミも呼応するように左手に鞘を掴み、親指は鍔にかけ、右手で柄を握る。
数秒間で観客も静寂になった、その瞬間。
先に抜刀したのは犬鳴。横薙ぎに刀を振るうがネズミはバックステップでかわす。
そのまま、ネズミが距離を詰め、両手をそのままの位置で鞘ごと、逆袈裟斬りを喰らわす。
鞘は胸当てに当たり、犬鳴は反応せず、そのまま返す刀で燕返しを行い、ネズミの首を狙う。
次の瞬間。
凄まじい衝撃が首元にきて思わず膝から崩れ落ちる。
そして、ピクリとも動かなくなった。
《勝者!鼠!》
『な、何が起こった!?』
『っていうか、どっちも早すぎて見えねぇ。』
『確か、ネズミってやつが、胸当てに鞘ごと当ててたよな?』
「胴回し蹴りの要領だな。」龍が呟く。
「鞘を胸当てに当てて、相手が手首を返してネズミさんの首を狙いましたよね。」
「あぁ、その瞬間、鞘から抜刀して体を捻って一回転しながら相手の首に、先に一撃入れたんだ。やっぱりあいつは刀の方が向いてるな。」嬉しそうに龍が笑った。
「自前の武器、その他こちらにあるものは好きに使って良いので、準備をしてお待ち下さい。まもなく初戦開幕です。」
おかっぱ頭の幼い容姿の案内役の少女はそう告げ静かにその場を去っていった。
刀剣、大鎌、こん棒、鎖鎌からトンファー、槍まで所狭しと控え室に武器が壁にかけられているのをキラキラした目で見つめるネズミに龍が声をかける。
「痛みはどうだ?」
「だいぶ、治まったよ。龍さん。」
刀を幾らか物色しながら応えるネズミ。
「やはり、初戦なら俺が行きますかね。」そう喋りながら入念にストレッチをする豊。
「そうだな、誰がくるか分からないから相手の出方を見る上でも任せられるか豊?」
「えぇ、もちろ…」
「俺が出るよ。」
1つの刀を選び、鞘から出し、くるくると器用に柄の部分を支点に刀を回すネズミ。
「ネズミさん、まだ休んでた方が…」
カシャンッ、と刀を鞘に戻し2人を見るネズミ。
「龍さん。良いよね?」
いつぞやの強い眼差しを正面に受け、龍が溜め息を一つ吐き出した。
「こうなったら聞かねぇもんな…やっぱりお前は刀の方が似合ってるよ。行ってこい。ちゃんとこいつで見とく。」
壁際に掲げられたモニターに誰も居ない闘技場内の様子が写し出されていた。
「ヤられた分、返してくるよ。」
『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』
*
「いやぁ、今日も満員だねぇ。まぁ、結果は変わらないんだけど。」
控え室の椅子に座り、足を組んでリラックスする青年。
色が抜けて、金髪を通り越し白髪と言えるほどの後ろに束ね、お気楽に喋っている。
Yシャツ、チノパン、全身を白でコーディネートされた男を見ながら、黒炎が口を開く。
「どうかのぅ、少なくとも龍は儂の動きが見えておったわい。」
「あんたの悪い癖だよ、黒炎。試合前の品定めするなんて。」
「『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』と言うじゃろ?まぁ、味方がヤられるのを事前に防ぐ気がなかったのは手の内を見せたくなかったから…思った以上に手強そうじゃな。気を抜くなよ白氷。犬鳴もじゃ。」
相手に手を出したのを知り、やれやれと首を振る白氷。
「悪い癖だよ、本当に。」
我関せず、というように仁王立ちの鎧武者の男が低い声で語りかける。
「行ってくる。」
そう言い残し、闘技場へと足を向けた。
『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』
*
円型の闘技場、壁はレンガ造りで3m程の高さがあり、その外側では大興奮の観客が叫び声をあげている。
『犬鳴!今日も瞬殺だ!』
『どうせ今日も三タテだ!』
『あたりめぇよ、今日も全財産ぶっ込んできたぜ!』
様々な怒号が飛び交う中、当然ながらネズミの声援はオッズの通り、極小だった。
『ネズミつったか!?俺はお前に賭けたぜ。勝てば大穴だ!』
闘技者が入ってくる方の入り口の反対側、観客席の後方に一際大きなモニターが写し出され、先鋒戦のオーダーとオッズが張り出されていた。
『犬鳴2.3-鼠11.8』
ぼんやりとモニターを見ながら、屈伸運動をするネズミ。
すると…
「気負っていないようだな、此度の対戦は楽しめそうだ。」
低い声で投げ掛けられた先を見ると鎧武者の男が左手で鍔に手をやり、こちらを見ていた。
「あんたも、変な格好してるな。やっぱりここは『あいつら』の施設か?」
「その質問には答えられん。一つ言えることは、あと少しの命だが、言い残しはあるか?」カシャンカシャンとネズミに近寄る男。
「秘密主義にも程があるぜ、どいつもこいつも。」ネズミも男と距離を縮める。
「黒炎、って奴には今の俺じゃ勝てねぇ…でも、あんたにこの屈辱、返させてもらうぜ。」
お互いの間合いに入り、足を止める。
武器は双方、刀。
犬鳴は右手で柄を握り、居合いの構えをする。
ネズミも呼応するように左手に鞘を掴み、親指は鍔にかけ、右手で柄を握る。
数秒間で観客も静寂になった、その瞬間。
先に抜刀したのは犬鳴。横薙ぎに刀を振るうがネズミはバックステップでかわす。
そのまま、ネズミが距離を詰め、両手をそのままの位置で鞘ごと、逆袈裟斬りを喰らわす。
鞘は胸当てに当たり、犬鳴は反応せず、そのまま返す刀で燕返しを行い、ネズミの首を狙う。
次の瞬間。
凄まじい衝撃が首元にきて思わず膝から崩れ落ちる。
そして、ピクリとも動かなくなった。
《勝者!鼠!》
『な、何が起こった!?』
『っていうか、どっちも早すぎて見えねぇ。』
『確か、ネズミってやつが、胸当てに鞘ごと当ててたよな?』
「胴回し蹴りの要領だな。」龍が呟く。
「鞘を胸当てに当てて、相手が手首を返してネズミさんの首を狙いましたよね。」
「あぁ、その瞬間、鞘から抜刀して体を捻って一回転しながら相手の首に、先に一撃入れたんだ。やっぱりあいつは刀の方が向いてるな。」嬉しそうに龍が笑った。
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