その男、凶暴により

文字の大きさ
10 / 32
二章~闘技場にて~

第一試合

「うおっ、めちゃくちゃ種類ある!」

「自前の武器、その他こちらにあるものは好きに使って良いので、準備をしてお待ち下さい。まもなく初戦開幕です。」
おかっぱ頭の幼い容姿の案内役の少女はそう告げ静かにその場を去っていった。

刀剣、大鎌、こん棒、鎖鎌からトンファー、槍まで所狭しと控え室に武器が壁にかけられているのをキラキラした目で見つめるネズミに龍が声をかける。

「痛みはどうだ?」
「だいぶ、治まったよ。龍さん。」
刀を幾らか物色しながら応えるネズミ。

「やはり、初戦なら俺が行きますかね。」そう喋りながら入念にストレッチをする豊。
「そうだな、誰がくるか分からないから相手の出方を見る上でも任せられるか豊?」
「えぇ、もちろ…」

「俺が出るよ。」
1つの刀を選び、鞘から出し、くるくると器用に柄の部分を支点に刀を回すネズミ。
「ネズミさん、まだ休んでた方が…」

カシャンッ、と刀を鞘に戻し2人を見るネズミ。
「龍さん。良いよね?」

いつぞやの強い眼差しを正面に受け、龍が溜め息を一つ吐き出した。
「こうなったら聞かねぇもんな…やっぱりお前は刀の方が似合ってるよ。行ってこい。ちゃんとこいつで見とく。」
壁際に掲げられたモニターに誰も居ない闘技場内の様子が写し出されていた。

「ヤられた分、返してくるよ。」

『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』



「いやぁ、今日も満員だねぇ。まぁ、結果は変わらないんだけど。」
控え室の椅子に座り、足を組んでリラックスする青年。
色が抜けて、金髪を通り越し白髪と言えるほどの後ろに束ね、お気楽に喋っている。
Yシャツ、チノパン、全身を白でコーディネートされた男を見ながら、黒炎が口を開く。

「どうかのぅ、少なくとも龍は儂の動きが見えておったわい。」
「あんたの悪い癖だよ、黒炎。試合前の品定めするなんて。」
「『敵を知り、己を知れば百戦危うからず』と言うじゃろ?まぁ、味方がヤられるのを事前に防ぐ気がなかったのは手の内を見せたくなかったから…思った以上に手強そうじゃな。気を抜くなよ白氷。犬鳴もじゃ。」
相手に手を出したのを知り、やれやれと首を振る白氷。
「悪い癖だよ、本当に。」

我関せず、というように仁王立ちの鎧武者の男が低い声で語りかける。

「行ってくる。」
そう言い残し、闘技場へと足を向けた。

『まもなく時間です。先鋒は闘技場内にお入り下さい。』



円型の闘技場、壁はレンガ造りで3m程の高さがあり、その外側では大興奮の観客が叫び声をあげている。
『犬鳴!今日も瞬殺だ!』
『どうせ今日も三タテだ!』
『あたりめぇよ、今日も全財産ぶっ込んできたぜ!』
様々な怒号が飛び交う中、当然ながらネズミの声援はオッズの通り、極小だった。
『ネズミつったか!?俺はお前に賭けたぜ。勝てば大穴だ!』

闘技者が入ってくる方の入り口の反対側、観客席の後方に一際大きなモニターが写し出され、先鋒戦のオーダーとオッズが張り出されていた。

『犬鳴2.3-鼠11.8』

ぼんやりとモニターを見ながら、屈伸運動をするネズミ。
すると…

「気負っていないようだな、此度の対戦は楽しめそうだ。」
低い声で投げ掛けられた先を見ると鎧武者の男が左手で鍔に手をやり、こちらを見ていた。

「あんたも、変な格好してるな。やっぱりここは『あいつら』の施設か?」
「その質問には答えられん。一つ言えることは、あと少しの命だが、言い残しはあるか?」カシャンカシャンとネズミに近寄る男。
「秘密主義にも程があるぜ、どいつもこいつも。」ネズミも男と距離を縮める。
「黒炎、って奴には今の俺じゃ勝てねぇ…でも、あんたにこの屈辱、返させてもらうぜ。」

お互いの間合いに入り、足を止める。
武器は双方、刀。
犬鳴は右手で柄を握り、居合いの構えをする。
ネズミも呼応するように左手に鞘を掴み、親指は鍔にかけ、右手で柄を握る。

数秒間で観客も静寂になった、その瞬間。

先に抜刀したのは犬鳴。横薙ぎに刀を振るうがネズミはバックステップでかわす。
そのまま、ネズミが距離を詰め、両手をそのままの位置で鞘ごと、逆袈裟斬りを喰らわす。

鞘は胸当てに当たり、犬鳴は反応せず、そのまま返す刀で燕返しを行い、ネズミの首を狙う。

次の瞬間。

凄まじい衝撃が首元にきて思わず膝から崩れ落ちる。
そして、ピクリとも動かなくなった。

《勝者!鼠!》

『な、何が起こった!?』
『っていうか、どっちも早すぎて見えねぇ。』
『確か、ネズミってやつが、胸当てに鞘ごと当ててたよな?』

「胴回し蹴りの要領だな。」龍が呟く。
「鞘を胸当てに当てて、相手が手首を返してネズミさんの首を狙いましたよね。」
「あぁ、その瞬間、鞘から抜刀して体を捻って一回転しながら相手の首に、先に一撃入れたんだ。やっぱりあいつは刀の方が向いてるな。」嬉しそうに龍が笑った。




感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております