その男、凶暴により

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二章~闘技場にて~

第二試合

「あらら、犬鳴さん。負けちゃった。」
「油断はしとらんかったようじゃがな。」
手を額に当て。モニターを見ながら白氷が言う。
「まぁ、あと残りを俺達が勝てば問題ないさ。」
「勝てれば…じゃがのう。」

白氷が黒炎に近寄り、肩を叩く。
「なに、弱気な事を言ってんだよ!勝つよ、俺達は。」
そして、耳元でボソリ。
「勝って、何としても生き残るんだよ。俺はまだ諦めてねぇかんな?」

そういうと、手をヒラヒラさせて闘技場に白氷が向かった。

「そうだな、どんなに惨めになっても生き残らなきゃ…またあいつらに逢いたいもんな。なぁ、『白金』」
小さな呟きが独りしかいない空間に漂った。

『まもなく時間です。中堅は闘技場内にお入り下さい。』



「次は俺ですね。」先程の試合前にネズミがしたように屈伸運動をする豊。
「あぁ、任せた。」

「豊、ついてきてくれてありがとう。」試合後、刀の馴染みが良かったのかそのまま装着したネズミがいう。
「何ですか、今更。俺は貴方の強さに惚れたんですよ。戌さんに言われたけど、ついて行きたいからついてきたんです。勝ちますよ。」

二人のやり取りを見ていた龍が豊の肩に手を置く。「そうだな、それじゃあ一つだけアドバイスだ。俺との時に技をかける前、様子見程度に打撃を繰り返してただろ?あれを本当に打撃で倒すつもりで打つんだ。」

「本気で…」
頷く龍。「あぁ、本気だから相手も投げ技がくるかも。と思わない。少なくとも俺は打撃の軽さで柔道じゃないかと疑ったんだ。」

「分かりました、行ってきます。」

「勝てよ!豊!」

『まもなく時間です。中堅は闘技場内にお入りください。』



観客席は先程の歓声一辺倒とは違い、所々にざわめきが混じっていた。
『まじかよ!犬鳴が負けるなんて…』
『は、破産だ…』
『まぁ、いっても勝率7割の犬鳴だしな!儲けたわ!』
『白氷様~、今日も勝ってね~』
『白氷と黒炎は負けなしだからな~、結局チャンピオンは残りの2人が勝てれば良いんだよ!』
『白氷様!今日もカッコいい!』

「余裕そうだな。」
「ん?」観客に手を振りファンサービスに応える全身白ずくめで整った顔の白氷が対戦相手に向く。

「あぁ、ごめんごめん。犬鳴はあの通り無口で無愛想だし、黒炎は人を喰った性格だから俺だけでも愛想良くしとかないとね~、気を悪くしたらごめんね?」
「構わない、結局戦いというモノはどれだけ自分が普段通りに動けるかだからな。」
「耳の痛いお言葉。」

ピョンピョンと軽く飛びながら、豊が白氷を中心に大きく周り始める。
その動きを見ながら、その場で回りながら豊から目を逸らさない白氷。

次の瞬間。

鋭い前蹴りが豊の腹部を襲う。
「がっ!」
「ありゃ、捕まっちゃった。」白氷の右足を左手で掴み、そのまま右肘で膝を狙う。

「何の、まだまだ。」
白氷が左肘で豊のコメカミを狙う。
振り下ろそうとした右腕を止め、相手の攻撃を受け止める。
息つく暇もなく、白氷が右のショートアッパーを繰り出すが、豊が即座に左足を離し
左ボディブローが脇腹に突き刺さる。
「オッ!」

そして、離れる両者。

「強いね~…豊君だっけ?」
「余裕だな。こっちは一撃でグロッキーなのに。」
「いやいや、とてもそんな風には見えないよ。」

観客のざわめきが再び歓声に変わる。
『すげぇ!今度の挑戦者もちゃんと強いじゃねぇか!』
『大穴来るぞ、これ!』
『白氷!てめぇまで負けんじゃねぇぞ!』
『白氷様~、負けちゃやだ!』

「こっちも背負ってるものがあるんでね、負けられないんだよ。悪いけど。」
「それはこっちも同じだ。」

豊が走りだし、右のローキックを当てる。
すぐさま左の肘が白氷の側頭部に狙いを定めるがすんでのところでスウェーバックして避けられる。

しかし。

『白氷様!血が!』
目蓋の上から刃物で切れた様にポックリと開く。

そこから血が流れ、右目を思わず閉じる。
好機と見た豊が猛攻を繰り出す。



「おかしい…」
龍の呟きに敏感に反応するネズミ。
「何が?超優勢じゃない?」
「だからだよ、少なくとも最初の攻防、それに反応速度。お前とやった犬鳴よりは間違いなく強い。」
「それの何が変なの?」
「あの蹴りが出せるなら掴まれてもすぐに左足で豊の頭を狙えば良い。それで終いだ。」
「手を抜いてる。って事?」
「いや、何か狙いがあるのかも…」



豊の猛攻は続き、白氷は防御で手一杯のなっていく。
そして、白氷の右ストレートを交わし、もう一度左のボディブローが同じ場所に刺さり、くの字に折れ曲がったのを見て背負い投げを繰り出した。

落とす時に豊も飛び上がり全体重を乗せていく。

グシャッ、ボキッという音が辺りに響き渡る。
豊が離れ、膝立ちのまま数秒、白氷を見下ろす。

すると、気の緩んだ豊を待ってたかの様に直ぐ様起き上がりフロントチョークを決めた。
「待ってたよ、この時を。」

数十秒後、今度は気絶した豊を白氷が見下ろしていた。

《勝者!白氷!》

「本当に強かったよ、だからいつもみたいに華麗に勝つのは諦めた。【丈夫な人間】らしいんだ、俺って。」
首が曲がったままの白氷が聞こえてないのを知りながら豊に話しかけていた。
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