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二章~闘技場にて~
最終戦
フラフラと控え室から出て、一階の回廊の壁際に座り込む豊。
(良いところ無しじゃねぇか。)
膝を抱え、落ち込んでいる豊に声をかける男が一人。
「ダメだよ、ここに座りこんじゃ。」
「うるせえ、ほっといてくれ。」
そういう豊の肩を掴み、立ち上がらせたのは他でもない白氷だった。
「ここじゃ目立ち過ぎる。こっちに来い。」
そうして、連れて行かれたのが最初に居た地下の牢屋の様の部屋だった。
部屋の見張りに白氷は幾らか手渡し、ここには2人きりだった。
「今更、何の用だよ?」そういう、豊に近寄り、耳元で小さく告げた。
「もう一段階強くしてやる、って言ったら信用してくれるか?」
「はっ!?」
驚いて大声を出そうとする豊の口を手で塞ぐ白氷。
「反応するな、多分この敷地は全部盗撮されてる。監視カメラがあるんだ。」
「かめら?」
「見られてるんだよ、全部。」
「何のために。」
「その説明は時間がかかる。どうする?信用してくれるか?」
「どうせ、俺にはもう何にもねぇんだ。お前がどういう腹積もりか知らないが乗ってやるよ。」
ニヤリと笑い、白氷が簡単にとある説明をすると、そのまま豊を殴り始めた。
その様子は端から見ると、先ほどヤられた報復の様にも見えた。
*
「大丈夫かな?豊。」
「気にするな、戻ってくるさ。あいつは。」
「何でそう思うのさ。」
「あいつは俺達と目を合わせなかった。負けたのが悔しかったんだろう。悔しくて、顔を見せられない程に凹んだ奴は強くなる。」
ネズミは左耳のイヤーカフを触りながら応える。
「そうだね、うん。その為にも…勝ってね?龍さん。」
「そいつはどうかな?」
「えっ?」
「俺の考えが正しいかどうかは、この戦いが終われば分かる。」
『まもなく時間です。大将は闘技場内にお入り下さい。』
*
「やれやれ…無茶しおって」
「悪かったよ、これ戻せる?」
肘から先がないため、二の腕で白氷の頭を挟み、ボキボキッという音をさせて首を真っ直ぐにする黒炎。
「サンキュー、ちょっと行ってくる。」
「何処にじゃ?」
「分かってるくせに。」
「そうだな…行ってこい。」
「はいよー、それじゃあ後で。」
誰も居なくなった控え室で黒炎の独り言が宙を舞った。
「多分、あいつらがそうなんだろうな…行くか。」
『まもなく時間です。大将は闘技場内にお入り下さい。』
*
『待ちわびたぞ!黒炎!』
『やっぱり、お前が最強だ!』
『あの技、見せてくれよ!?』
最終戦のせいか観客の熱気も最高潮の装いを見せる。
黒炎が闘技場の真ん中に鎮座し、龍がゆっくりと近付く。
「さっきぶりじゃの、龍よ。なかなか強いのぉ、お仲間達。」
「まぁな、あんたの仲間もなかなかじゃねぇか。こりゃあ【負けられない】よな。」
一定の距離をあけ、立ち止まる龍。
「お互いにの。」
「それにしても…何とかなんねぇのか?」
「ん?何がじゃ?」
「その体勢だよ、やりにくいったらありゃしねぇ。」
ヒャッヒャッヒャッ、といつもの高笑いを始める黒炎。
「それが狙いだからの。いつでも来い小僧。」
胡座をかき、闘技場の地面に座り込む黒炎。
一息つき、疾風のごとく黒炎に向かう。
最初は龍の右飛び膝蹴りからのスタートだった。
そのまま、すんでの所で黒炎が寝転って回避、直ぐ様、左足で着地した龍が素早く水面蹴りを繰り出すが、空を切る。
いつの間にか、黒炎が立ち上がり、こちらを見つめていた。
その刹那、上半身を後ろに反らしながら足の裏を突き出し、膝立ちの龍の頭を狙う。
左腕でガードしながら、後退りしながら立ち上がる龍。
すると。
左右前後に揺れるようにステップを踏み始めた。
ダンスを踊るような動き。
そこから、いきなり横を向き右足を回すように蹴ってくる。
「うおっ!」思わず更に2、3歩下がる龍。
「『ケイシャーダ』というんじゃが、知らんようじゃな。」
「なんだ?その技。」
先ほどのステップに戻り、近付きながら、次は後ろ回し蹴りを当てる。
「『アルマーダ』」
そして、龍に背を向け地面に肘を付き、左足を軸にして右足の踵で弧をかくように龍の頭を狙った。
「これが『ハボジアハイア』じゃ。さぁ、どんどんいくぞ!」
見知らぬステップ、ダンスのような動き、黒炎の猛攻を避けながら、それでも少しずつ被弾していく。
(卯の蹴り技に似てるが、出所が読めねぇのが問題だな。なら…)
黒炎の蹴りに合わせて、蹴りを繰り出す。
鈍い音が辺りに響く。
相打ちを何度か続け、『ハボジアハイア』の打ち終わりの瞬間。
アッパーを繰り出し、顔面に喰らった黒炎の上半身が仰け反ったのを好機とみて顎に右フックを当てる。
倒れそうになった黒炎の頭に蹴りをするため、左足を振りかぶった、その時。
肘と頭を地面に突き、そのまま背中と肩で体全体を回し、足を広げる。
竜巻の様に回り続け、風の様に早い動きに、何発か喰らってしまう。
『出た!黒炎の必殺技!』
『よっしゃ!これで勝ち確定だぜ!』
蹴りの動きを合わせても、回転力が上がって弾き飛ばされそうな威力にまでなったコレには効きそうもない。
ならば、と龍が竜巻の中、円の中心部に向かってジャンプしながら飛び込んでいく。
(中心部は回転が少ない、そこを狙えば。)
凄まじい衝撃を二人が襲う。
そして…
《あっ…ふ、2人とも起き上がれそうにありません。気を失ってるようです…引き分け!》
(良いところ無しじゃねぇか。)
膝を抱え、落ち込んでいる豊に声をかける男が一人。
「ダメだよ、ここに座りこんじゃ。」
「うるせえ、ほっといてくれ。」
そういう豊の肩を掴み、立ち上がらせたのは他でもない白氷だった。
「ここじゃ目立ち過ぎる。こっちに来い。」
そうして、連れて行かれたのが最初に居た地下の牢屋の様の部屋だった。
部屋の見張りに白氷は幾らか手渡し、ここには2人きりだった。
「今更、何の用だよ?」そういう、豊に近寄り、耳元で小さく告げた。
「もう一段階強くしてやる、って言ったら信用してくれるか?」
「はっ!?」
驚いて大声を出そうとする豊の口を手で塞ぐ白氷。
「反応するな、多分この敷地は全部盗撮されてる。監視カメラがあるんだ。」
「かめら?」
「見られてるんだよ、全部。」
「何のために。」
「その説明は時間がかかる。どうする?信用してくれるか?」
「どうせ、俺にはもう何にもねぇんだ。お前がどういう腹積もりか知らないが乗ってやるよ。」
ニヤリと笑い、白氷が簡単にとある説明をすると、そのまま豊を殴り始めた。
その様子は端から見ると、先ほどヤられた報復の様にも見えた。
*
「大丈夫かな?豊。」
「気にするな、戻ってくるさ。あいつは。」
「何でそう思うのさ。」
「あいつは俺達と目を合わせなかった。負けたのが悔しかったんだろう。悔しくて、顔を見せられない程に凹んだ奴は強くなる。」
ネズミは左耳のイヤーカフを触りながら応える。
「そうだね、うん。その為にも…勝ってね?龍さん。」
「そいつはどうかな?」
「えっ?」
「俺の考えが正しいかどうかは、この戦いが終われば分かる。」
『まもなく時間です。大将は闘技場内にお入り下さい。』
*
「やれやれ…無茶しおって」
「悪かったよ、これ戻せる?」
肘から先がないため、二の腕で白氷の頭を挟み、ボキボキッという音をさせて首を真っ直ぐにする黒炎。
「サンキュー、ちょっと行ってくる。」
「何処にじゃ?」
「分かってるくせに。」
「そうだな…行ってこい。」
「はいよー、それじゃあ後で。」
誰も居なくなった控え室で黒炎の独り言が宙を舞った。
「多分、あいつらがそうなんだろうな…行くか。」
『まもなく時間です。大将は闘技場内にお入り下さい。』
*
『待ちわびたぞ!黒炎!』
『やっぱり、お前が最強だ!』
『あの技、見せてくれよ!?』
最終戦のせいか観客の熱気も最高潮の装いを見せる。
黒炎が闘技場の真ん中に鎮座し、龍がゆっくりと近付く。
「さっきぶりじゃの、龍よ。なかなか強いのぉ、お仲間達。」
「まぁな、あんたの仲間もなかなかじゃねぇか。こりゃあ【負けられない】よな。」
一定の距離をあけ、立ち止まる龍。
「お互いにの。」
「それにしても…何とかなんねぇのか?」
「ん?何がじゃ?」
「その体勢だよ、やりにくいったらありゃしねぇ。」
ヒャッヒャッヒャッ、といつもの高笑いを始める黒炎。
「それが狙いだからの。いつでも来い小僧。」
胡座をかき、闘技場の地面に座り込む黒炎。
一息つき、疾風のごとく黒炎に向かう。
最初は龍の右飛び膝蹴りからのスタートだった。
そのまま、すんでの所で黒炎が寝転って回避、直ぐ様、左足で着地した龍が素早く水面蹴りを繰り出すが、空を切る。
いつの間にか、黒炎が立ち上がり、こちらを見つめていた。
その刹那、上半身を後ろに反らしながら足の裏を突き出し、膝立ちの龍の頭を狙う。
左腕でガードしながら、後退りしながら立ち上がる龍。
すると。
左右前後に揺れるようにステップを踏み始めた。
ダンスを踊るような動き。
そこから、いきなり横を向き右足を回すように蹴ってくる。
「うおっ!」思わず更に2、3歩下がる龍。
「『ケイシャーダ』というんじゃが、知らんようじゃな。」
「なんだ?その技。」
先ほどのステップに戻り、近付きながら、次は後ろ回し蹴りを当てる。
「『アルマーダ』」
そして、龍に背を向け地面に肘を付き、左足を軸にして右足の踵で弧をかくように龍の頭を狙った。
「これが『ハボジアハイア』じゃ。さぁ、どんどんいくぞ!」
見知らぬステップ、ダンスのような動き、黒炎の猛攻を避けながら、それでも少しずつ被弾していく。
(卯の蹴り技に似てるが、出所が読めねぇのが問題だな。なら…)
黒炎の蹴りに合わせて、蹴りを繰り出す。
鈍い音が辺りに響く。
相打ちを何度か続け、『ハボジアハイア』の打ち終わりの瞬間。
アッパーを繰り出し、顔面に喰らった黒炎の上半身が仰け反ったのを好機とみて顎に右フックを当てる。
倒れそうになった黒炎の頭に蹴りをするため、左足を振りかぶった、その時。
肘と頭を地面に突き、そのまま背中と肩で体全体を回し、足を広げる。
竜巻の様に回り続け、風の様に早い動きに、何発か喰らってしまう。
『出た!黒炎の必殺技!』
『よっしゃ!これで勝ち確定だぜ!』
蹴りの動きを合わせても、回転力が上がって弾き飛ばされそうな威力にまでなったコレには効きそうもない。
ならば、と龍が竜巻の中、円の中心部に向かってジャンプしながら飛び込んでいく。
(中心部は回転が少ない、そこを狙えば。)
凄まじい衝撃を二人が襲う。
そして…
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