その男、凶暴により

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四章~とある寺の戦い~

失われる希望を抱える午

「そっちは任せたよ、午さん!」
広場からほとんど移動せず、地面にしゃがんで手を動かす未。

「あぁ、任せろ。」林の方へ向かう樺山の前に立ちはだかり、未の言葉に呼応する午。

欠伸を噛み殺しもせずに大きく口を開けて、午の事を気にもせずに歩を進める樺山。「最近、本当に代わり映えしないなぁ…ガキ共は林に逃げてコソコソ隠れて鬼ごっこ、それをお前が遮る。未はあそこから動かず…あんな風に無駄な努力をしてる。」

未は作業を終えると次の場所に移動し、同じように手を動かす。
すると、作業を終えた場所からモクモクと煙が上がってきた。
どうやら、林の中にあった枯れ木を燃やしているらしい。

「最初の内はお前以外は皆逃げて、ガキ共も泣きながら走ってたのに、ここ2年は同じことの繰り返しだ。それで、結局何も変わらない。何か企んでるのか?なぁ?」両手を広げ、次の瞬間。

大きな張り手を受け、午が右側に弾き飛ばされる。
「ぐっっ!」

「狼煙か何かか?前にも言ったけど、この辺りは人っ子一人通らないから意味がないんだよ。」
ボリボリと首を掻きながら林の中に入っていく樺山。

広場の中で蹲る午と作業の手を止めない未。
煙は既に5箇所6箇所と増えている。

(アイツのいう通りだ。)ぶるぶると震えながら、それでも何とか立ち上がろうとする午。
(怖い、逃げ出したい。指の骨だけならまだ良かった…)

息も絶え絶えで、それでも何とか立ち上がっても、樺山を追い掛けて林に入る、その一歩が出ない。
(あばらもやられた…次は?失敗したら?準備に準備を重ねて…今回ダメならもう…)

「午さん!」声変わりが終わっても幼さの残る声が耳に突き刺さる。

「言ってくれたよね?我慢比べだって。」
「あぁ…」
「作戦、間違ってないって。」
「あぁ…」
「ごめんね?無理させて。今回失敗したら、八方塞がりだから次は誰かが助けに来るまで俺が罰を受けるからね?」

ゆっくりとそちらを見ると唇を強く噛んで、涙目の一人の男が煙の中、こちらを見つめていた。

(馬鹿か、俺は!)
ブルブルと首を振り、一目散に林に向かって午が駆けていった。

それを見届けると、未が石段の上、廃寺に顔を向ける。



「おいおい、おかしくねぇか!?」
林の中、立ち尽くし辺りを樺山が見渡した。
「何で誰も居ないんだ?おい、ガキ共!隠れても無駄だぞ!」
林、なのだから外から見える生い茂っている感じとは違い、もちろん中の木々の見通しは良い。

しかし、中をドタドタと走っても影すらも一人たりとも見えなかった。

そこへ。

「ちょっと位、予定と違った位で騒ぐなんてな。」
凄い勢いで走り寄る音が背後から聞こえてくる。
そして、樺山の背中に衝撃が…

「だ~か~ら~、効かないんだよ!」
背中の衝撃の結果は痛みというより、押された、という方が近く、樺山が2、3歩前のめりに歩いただけだった。

「確かにお前は頑丈だ、しかし加速した攻撃にどれだけ耐えられるかな?」
樺山の背中を踏台にして、近くの木に向かい、幹に足の裏をかけ、更に樺山に向かって突進する。
その勢いのまま、樺山の首に回し蹴りを入れる。

「がっ!」
前屈みになった樺山の肩を借り、同じように木を経由してもう一度、今度は膝蹴りで首の後ろを狙う。

「悪いが、子供達には隠れてもらった。この勢いなら、自分で制御が出来ないから、お前が避けた時に他の子に当たる可能性があるからな。そして…」

風の影響で林にも煙が入り込んできた。

「これでどこから攻撃が来るか分からないだろう?」



寺の中、薄暗い木の空間の右奥の方に動く気配があった。
「待たせたね。さぁ、逃げよう!」幾度となく、ゲーム中の樺山の目を盗んで林から抜け出し、この建物の中は確認していた。

右奥の、木の牢屋の鍵は簡素な造りで、手製の道具で開けることが可能な事は何度か確かめていた。

「未、上手いこといってる?」
「あぁ…ばっちり…ねぇ、ヒロト。それなに?」
未が、ヒロトと呼ばれた少年の首筋を指差した。

【あと5m】

首輪の様な形状のソレ・・に文字が書いてある。

「コレ?何か目印って言ってた。」
「…ちょっと歩けるかな?」
「うん…」ただならぬ表情で問う未に戸惑いながらヒロトが2、3歩と進んだ。

すると。

【あと4m】

(まさか…そういう事なのか。)
最悪の事態を考えてると、建物の外から割れるような大声が聞こえた。

「未ぃ!どこにいる!?面白いものを見せてやるぜ!」
ヒロトをその場から動かない様に言い残し、建物の外に出る。



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