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五章~架かる橋にて~
再会
ガガガガガッ!
何度目かの大きな石を踏みつけて、全員の尻が座席から浮いて、遂に豊が口を開いた。
「本当にこの道であってるんですか!?というか、道ですか、これ!」
後部席の龍がアシストグリップを握りながら返事をする。
「しょうがねぇだろ、鷹が指し示した場所がこの方角なんだからよ。」
「良いじゃない、こんな道通った事ないから面白いじゃん!」
はしゃぐようにネズミが口を開く。
「っていうか、舌噛むからお前ら喋るな!」
鷹が武器を発射した方角をひたすら運転を交代しながら走り、1日が過ぎた。
すると、いつの間にか山道に入り、数時間後にはもはや獣道というには険し過ぎる場所をこうして進んでいる。
「そもそも、この方角に飛ばしてましたけど微妙にズレてるとかないんですか?」
「「ないなぁ…」」
「几帳面だもんね、鷹さん。」
「神経質なんだよ、あいつは。昔から食いもんでも何でも、きっちり分けやがる。」
そんな事を話していると、明らかに今までと違う場所に出てきた。
開けた場所、そして…
木で出来た家、コテージの様な建物が片隅に建っていた。
バタンッ、と車から降り扉を閉める。
「ここ、ですかね?」
建物へ向かおうとする豊を手で制し、龍が先頭を歩く。
扉に手をかけようとした、その瞬間。
先に扉が開き、龍に当たりそうになる。
そのまま後ろに飛び退くが、扉の陰から足が追撃してくる。
龍が左腕でガードするが、右足を更に脇腹を狙ってくる。
まともに喰らい体がくの字に折れ曲がる。
「遂に、前日に襲ってくるとはな!」
扉から、目が隠れる位まで前髪を伸ばした、細身のレザージャケットを着た男が現れた。
「襲ってくる?誰かと勘違いしてないか?俺達は…」豊の言葉を遮って、ネズミが大声をあげる。
「あれ、ウサ兄ぃ!」
「卯か!?お前?」
ファイティングポーズをとりながら、龍とネズミを交互に見て、やっと卯と呼ばれた男が警戒を解いた。
「2人とも、生きてたんだね…」
*
「あんたら、何をどうしたらあんな格好になるんだい!?ちょっと位、身嗜みに気を使いなよ!」
部屋の中、白いYシャツに黒いチューブトップの女性が叫ぶ。
「しょうがねぇじゃねぇか、俺達の街に寄って、闘技場で戦わさせられて、更に寂れた村で標的になったんだからよ。」
椅子に座り、タオルで頭を拭きながら龍が口を尖らせる。
部屋の片隅では洗濯機に入った三人分の衣服が回っていた。
「それにしても、巳ねぇも居たなんて。」
「こいつらはセットみたいなもんだろ?」
卯から借りたジーパンだけを履き、上半身裸で頭をガシガシとタオルで荒く拭くネズミ。
「あぁあぁ、そんなびしょ濡れで出てきちゃ駄目じゃない。」
ネズミのタオルを奪い取り、巳ねぇと呼ばれた女性がそのスラリとした細い腕で優しく撫でるように体を拭いていく。
「止めてよ、巳ねぇ!もう子供じゃないんだから!」恥ずかしそうに、身を捩るネズミ。
「そういうなら、ちゃんと体をちゃんと拭いてから出てきなさい。昔から変わらないわね。」
呆れた様に巳が呟く。
「で、卯。『前日』って言ってたけど、お前の所にも『あいつら』がいるのか?」
龍が椅子に座りながら、横目でネズミと巳のやり取りを見ながら、向かいで珈琲を飲んでた卯に問う。
黙ったまま頷く卯。
「相手は何人なんですか?」卯の隣、キチンと体を拭いたが、合う服がないため、腰にタオルを巻き、緑のタンクトップだけを卯から借りた豊が口を開く。
「三人だよ、狐ヶ崎、蜂谷…そして、獅子神という男がいる。」
話を聞くと、ここから先、更に山を数分歩いた所に橋があり、そこを根城にして10人程の子供達を捕まえているらしい。
「あいつらは【ゲーム】だって言ってた…狐ヶ崎と蜂谷を倒せたら子供達を解放する。ただ、獅子神という男は気紛れで戦いに参加したり、しなかったり。基本は牢屋に入れられた子供達を見張って目を逸らさないように監視してる。」
「逸らさないように?」
「うん、俺達がやられてもちゃんと見とくように。って。」
「悪趣味な…」
酒を催促して、「あるわけないでしょ。」と窘められた龍が頬杖をつきながら「二対二でお前らが後れを取るとは思えないけどな。」と口にした。
「それは…」
その時。
ギィと、洗濯機と逆にある扉が開き、小さな子供が顔を出す。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。誰か来てるの?」
その子を見てから一斉に三人が巳と卯を見比べる。
「おっ、お前達…やっぱり。」
「何勘違いしてんのよ、馬鹿!年齢が合わないでしょうが!ユウキよ、その子。」
寅が命をかけて助けた子供が満面の笑みで龍に駆け寄ってくる。
「そうか、良かった…」
*
「龍、大丈夫かい!?」巳がボロボロの状態で『何か』を抱えながら、こちらへ向かってくる龍に気付く。
「頼む、この子も一緒に…」
「当たり前だよ、さぁ、龍さんも一緒に!」卯の言葉に首を横に振る龍。
「まだ、助けを待ってるヤツがいるかもしれねぇから…」そう言って、何処かでやられたのであろう右足を引き摺りながら地獄に戻ろうとする龍に、2人は何の言葉もかけられなかった。
*
「あの時は悪かったね。」ユウキの頭を撫でながら優しく微笑んでる巳。
「いや、あのまま脱出してくれたから、この子達、それに皆が死なずに済んだんだ。」巳とユウキのやり取りを眺め、思わず口が綻ぶ龍。
「龍さんはやっぱり凄いや…あの後もちゃんと生き抜いて、そして立ち上がって…俺は…」
「ウサ兄?」
怪訝な顔で心配そうに尋ねるネズミの声を聞いても、卯は顔を上げなかった。
「さぁ、とりあえず寝ましょうか?あんた達も疲れたでしょう?」
立ち上がり、手を2度叩いて、お開きの合図を巳がした。
その夜深く、皆が寝静まった頃に衣擦れの音と共に独りがベッドから起き上がった。
何度目かの大きな石を踏みつけて、全員の尻が座席から浮いて、遂に豊が口を開いた。
「本当にこの道であってるんですか!?というか、道ですか、これ!」
後部席の龍がアシストグリップを握りながら返事をする。
「しょうがねぇだろ、鷹が指し示した場所がこの方角なんだからよ。」
「良いじゃない、こんな道通った事ないから面白いじゃん!」
はしゃぐようにネズミが口を開く。
「っていうか、舌噛むからお前ら喋るな!」
鷹が武器を発射した方角をひたすら運転を交代しながら走り、1日が過ぎた。
すると、いつの間にか山道に入り、数時間後にはもはや獣道というには険し過ぎる場所をこうして進んでいる。
「そもそも、この方角に飛ばしてましたけど微妙にズレてるとかないんですか?」
「「ないなぁ…」」
「几帳面だもんね、鷹さん。」
「神経質なんだよ、あいつは。昔から食いもんでも何でも、きっちり分けやがる。」
そんな事を話していると、明らかに今までと違う場所に出てきた。
開けた場所、そして…
木で出来た家、コテージの様な建物が片隅に建っていた。
バタンッ、と車から降り扉を閉める。
「ここ、ですかね?」
建物へ向かおうとする豊を手で制し、龍が先頭を歩く。
扉に手をかけようとした、その瞬間。
先に扉が開き、龍に当たりそうになる。
そのまま後ろに飛び退くが、扉の陰から足が追撃してくる。
龍が左腕でガードするが、右足を更に脇腹を狙ってくる。
まともに喰らい体がくの字に折れ曲がる。
「遂に、前日に襲ってくるとはな!」
扉から、目が隠れる位まで前髪を伸ばした、細身のレザージャケットを着た男が現れた。
「襲ってくる?誰かと勘違いしてないか?俺達は…」豊の言葉を遮って、ネズミが大声をあげる。
「あれ、ウサ兄ぃ!」
「卯か!?お前?」
ファイティングポーズをとりながら、龍とネズミを交互に見て、やっと卯と呼ばれた男が警戒を解いた。
「2人とも、生きてたんだね…」
*
「あんたら、何をどうしたらあんな格好になるんだい!?ちょっと位、身嗜みに気を使いなよ!」
部屋の中、白いYシャツに黒いチューブトップの女性が叫ぶ。
「しょうがねぇじゃねぇか、俺達の街に寄って、闘技場で戦わさせられて、更に寂れた村で標的になったんだからよ。」
椅子に座り、タオルで頭を拭きながら龍が口を尖らせる。
部屋の片隅では洗濯機に入った三人分の衣服が回っていた。
「それにしても、巳ねぇも居たなんて。」
「こいつらはセットみたいなもんだろ?」
卯から借りたジーパンだけを履き、上半身裸で頭をガシガシとタオルで荒く拭くネズミ。
「あぁあぁ、そんなびしょ濡れで出てきちゃ駄目じゃない。」
ネズミのタオルを奪い取り、巳ねぇと呼ばれた女性がそのスラリとした細い腕で優しく撫でるように体を拭いていく。
「止めてよ、巳ねぇ!もう子供じゃないんだから!」恥ずかしそうに、身を捩るネズミ。
「そういうなら、ちゃんと体をちゃんと拭いてから出てきなさい。昔から変わらないわね。」
呆れた様に巳が呟く。
「で、卯。『前日』って言ってたけど、お前の所にも『あいつら』がいるのか?」
龍が椅子に座りながら、横目でネズミと巳のやり取りを見ながら、向かいで珈琲を飲んでた卯に問う。
黙ったまま頷く卯。
「相手は何人なんですか?」卯の隣、キチンと体を拭いたが、合う服がないため、腰にタオルを巻き、緑のタンクトップだけを卯から借りた豊が口を開く。
「三人だよ、狐ヶ崎、蜂谷…そして、獅子神という男がいる。」
話を聞くと、ここから先、更に山を数分歩いた所に橋があり、そこを根城にして10人程の子供達を捕まえているらしい。
「あいつらは【ゲーム】だって言ってた…狐ヶ崎と蜂谷を倒せたら子供達を解放する。ただ、獅子神という男は気紛れで戦いに参加したり、しなかったり。基本は牢屋に入れられた子供達を見張って目を逸らさないように監視してる。」
「逸らさないように?」
「うん、俺達がやられてもちゃんと見とくように。って。」
「悪趣味な…」
酒を催促して、「あるわけないでしょ。」と窘められた龍が頬杖をつきながら「二対二でお前らが後れを取るとは思えないけどな。」と口にした。
「それは…」
その時。
ギィと、洗濯機と逆にある扉が開き、小さな子供が顔を出す。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。誰か来てるの?」
その子を見てから一斉に三人が巳と卯を見比べる。
「おっ、お前達…やっぱり。」
「何勘違いしてんのよ、馬鹿!年齢が合わないでしょうが!ユウキよ、その子。」
寅が命をかけて助けた子供が満面の笑みで龍に駆け寄ってくる。
「そうか、良かった…」
*
「龍、大丈夫かい!?」巳がボロボロの状態で『何か』を抱えながら、こちらへ向かってくる龍に気付く。
「頼む、この子も一緒に…」
「当たり前だよ、さぁ、龍さんも一緒に!」卯の言葉に首を横に振る龍。
「まだ、助けを待ってるヤツがいるかもしれねぇから…」そう言って、何処かでやられたのであろう右足を引き摺りながら地獄に戻ろうとする龍に、2人は何の言葉もかけられなかった。
*
「あの時は悪かったね。」ユウキの頭を撫でながら優しく微笑んでる巳。
「いや、あのまま脱出してくれたから、この子達、それに皆が死なずに済んだんだ。」巳とユウキのやり取りを眺め、思わず口が綻ぶ龍。
「龍さんはやっぱり凄いや…あの後もちゃんと生き抜いて、そして立ち上がって…俺は…」
「ウサ兄?」
怪訝な顔で心配そうに尋ねるネズミの声を聞いても、卯は顔を上げなかった。
「さぁ、とりあえず寝ましょうか?あんた達も疲れたでしょう?」
立ち上がり、手を2度叩いて、お開きの合図を巳がした。
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