その男、凶暴により

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五章~架かる橋にて~

終幕

「そうか、確か【お前達】は元々、復讐の為に始めたんだっけか?」

まるで、他人事のように言う獅子神。

異様な空気の中、獅子神の言葉だけが辺りに響く。

「じゃあ、悪いけどもう一つ残念なお知らせがあるぜ。俺を倒しても、俺自体がボスな訳じゃない。つまり、終わらな~い。んで、お前達は…闘技場を終わらせたで、樺山の方は終わったから…なんだ、次がラストゲームじゃないか!」

「闘技場?じゃあ、黒炎さんは?白金さんは?」
橋の方から豊と蜂谷がゆっくりと歩きながら、三人の近くまできて、蜂谷が口を開く。

「あれ?てっきり首を絞めてたから死んだと思ってたけど、生きてたのか?蜂谷。」
「あいにく、俺達は殺さない事を信条にしてるんでな。」

獅子神から目を逸らさず、蜂谷の質問に応える龍。
「黒炎と白氷は一緒に逃げようとしたけど、追い掛けてきたやつを食い止める為にあの場所に残った。」

「あぁ、そうそう…そうだったなぁ。まさか、あいつらが裏切るとはな…だから、『朱龍』と『緑龍』に行ってもらった。」

「ま、まさか…」
信じられない、というふうに目を見開き獅子神を見やる蜂谷。
「あぁ、『紅木』と『緑水』と言った方が分かりやすいか?なぁ、蜂谷。いや、『黄土』よ。」

「あの二人の仲間なのか…」驚いて声が出た豊。

「俺がここで、お前達の仲間として戦えば、皆を殺さないで助けてくれるって!また5人でいられるって!」
無表情だったはずが、堰を切ったように感情を爆発させて叫ぶ蜂谷。

「うんうん。分かる分かるぞ~。でもさ、お前負けたじゃん?まぁ、ちょ~っと、順番前後したけども、しょうがないよね?」

「うわぁぁぁぁぁ!」
膝から崩れ落ち、子供のように泣きじゃくる蜂谷。

パァンッ!
「あら?怒ってるのかい?」

音は、龍が獅子神の左膝へローキックを繰り出した所から発生していた。

「もう、お前は喋るな。良く分かった。お前は…いや、お前達はそうやって、誰かを傷付けても、何も感じず笑って、悲しんでる人の気持ちを踏みにじっても、何も思わず、ただ遊んでるだけなんだな。」

「そう、そしてお前達もここで終わるんだよ。虫ケラのように、そこの弱者みたいに蹲って、無力さに臍を噛んでな。」

20cmほどの身長差のせいか、振り下ろし気味の右ストレートが龍に襲いかかる。

左に避け、肝臓へ三日月蹴りを食い込ませる。

「だから、効かねぇの。分からないのかね?」
そのまま、左フックを龍のこめかみへ狙いを定める。

しかし。
ガクッと、獅子神の左脚が下がる。
「あらっ?」
「そんなに俺の関節蹴りは甘くねぇよ。」

【五爪】

人中

心臓
鳩尾
金的

急所に力強く撃ち込んだ。
その衝撃で少しよろめき、崖の方へ後退する獅子神。

「おっとっと…あぶねぇ。もう少しだったな。そしたら、崖の下に落とせたのにな。」
崖のギリギリ、5cmまで後退した獅子神。

「構わねぇ、一緒に落ちてやるよ!」
そのまま、龍が走り出した。

「「龍さん!」」

「お前は、お前だけは許さない!」

風のように駆け出し、獅子神と崖の下に落ちていく独りの男。



「どういう事なんだ…」崖の下、全員が集まり砂利だらけの地面に横たわったそれ・・を見ていた中で、卯が口を開いた。

「狐ヶ崎!あんた知ってたのかい!?」
「知らねえよ…なんだよ、これ。」
全員が敵の中にいるせいか、戦意喪失している狐ヶ崎が弱々しく答える。

ゆっくりと、獅子神だった【モノ】の近くに横たわる男に近付き、そっと抱き抱えるネズミ。

「ネズミさん…」
「状況が変われば、俺がこの人みたいになってたかもしれないから…上手く言えないけど、ちゃんと弔ってあげたい。」

離れたネズミを追うように、1人、2人と無言のままその場を離れる。

最後まで残った2人が、ポツポツと会話をする。
「どう思う、卯。」
「分からないけど、行くしかないんだろうね。」
「そうだな…」

『まさか、この俺に勝てるとはな…おめでとう!しかし、地獄はまだまだ続く。お前らの街に帰ってみな?絶望が待っている…はっはっはっ!』

その音を背にし、卯もその場を離れる。

『まさか、この俺に勝てるとはな…おめでとう!しかし、地獄はまだまだ続く。お前らの街に帰ってみな?絶望が待っている…はっはっはっ!』

胴体から頭が取れ、血や骨ではなく、管の様なものが何本も、取れた首筋から覗いていた。

その状態でも、あの死んだ魚の目のまま、口をパクパクさせて音を発していた。

「龍さん!」
「…今行くよ。」

そうして、この場に人は一人も居なくなった。



「あらら…負けちゃった。やっぱり、臨場感は凄いけど、操作の方は改良ありかな?すぐにキャラに反映しないからさ~」手に持っていたコントローラーを離す。

「いえいえ、今のは不可抗力というものでしょう?蜂谷が一緒に落ちなければ、獅子神が勝てたと思われます。見事な動きでしたよ?」

「そう?まぁ、楽しかったから良いんだけどね~。それにしても…良いね、主人公側のキャラ!魅力的なキャラクターばっかりでさ。午は死んじゃって残念だけど、ラストゲームも楽しみだね!」
「それは良うございました。」

椅子に座り、先程の橋の上の戦いを見た2人が話していた。

その時、地面から声が聞こえてくる。

「お、お前達は何者なんだ…」
実際には蹲り、四肢が千切れかけた壮年の男性が最後の力を振り絞り、声を出していた。

「あれ?まだ生きてた?しぶといね~。」
「彼が戌だからでしょう?」
「あぁ、そうか…コレが戌かぁ。名は体を表すってこういう時に使うんだっけ?」
「上手いこと言われますね。」

たちの悪い冗談でクスクス笑う二人。

ゆっくりと立ち上がり、戌を見下ろすコントローラーを持っていた男。
その顔には、赤く、口を大きく開いた、額に二本の角が飛び出している、鬼の面を被っていた。

「じゃあ、そろそろ準備しようか?盛大におもてなししないとね♪」

そして、静寂ーーー




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