その男、凶暴により

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最終章~真実の世界~

目の前にいるモノは

部屋を出て、また穴ぐらの中を進む3人。
しかし、今度は遠くの方に明かりが見えていた。

ネズミが走りながら、独り言のように呟いた。
「それにしても…何で、アレであんなこと・・・・・になるんだろう?」
「確かに…ひょっとしたら、俺達は何か凄い大事なモノを見落としているのかもしれないな。」

2人の話を聞いていた鷹が、ずっと感じてた違和感を話そうか考えている間に、次の部屋に到着した。

先程と同じ大きさの、白を基調とした部屋だった。
そして、中央にいる人間に驚く3人。

「おっ、お前…」
「生きてたんだね!?」
「やっぱり【お前】だったのか…」

三者三様の驚き方を見ながら、髪が立つほどの短髪で金髪の男がニヤリと笑った。
「久しぶりだなぁ、お前達。元気にしてたか?」

『第二の部屋、【青龍】』

長い棒を肩と両手首を支点に、天秤棒のように担ぐ男。

かつて【申】と呼ばれていた彼が目の前に立っていた。

「さてと、積もる話もあるが…とりあえず、これは言っておくか。『通りたければ、この俺を倒す事だ!』」

「どうして、申さん!?」

「ネズミは驚いてるみたいだが…そっちの2人は薄々気付いていたみたいだな?」

鷹が一歩前に出る。
「あぁ、街に襲撃した時に。どう考えても、手引きした奴がいる。お前だとは思わなかったがな。」

「俺は十分驚いてるぜ。ただ、お前がそちら側である事に心底残念なだけだよ。…一度だけ聞く。他の奴みたいに何か理由があったのか?」

薄ら笑いで応える青龍。

「理由?理由なんてないさ。ただ、皆が皆、お前達の様な、人を想って生きていける奴ばかりじゃないって事さ!俺は自分が強いと思ってる。なら、その強さを確かめたい!最強でありたい!その場を用意してくれるのが、【こっち】だっただけさ?さぁ、御託は沢山だ!そろそろ殺し合おうぜ!」
長い棒を器用に振り回し、臨戦態勢に入る。

「嘘でしょ?ねぇ、申さん。あの時、助けてくれたじゃない?」
ふらふらと前に出て、申に近付くネズミ。

「おやおや、まだ現実を見れてない奴がいるなぁ…痛い目にあわないと分からないみたいだな!」
棒を真っ直ぐ突きだし、ネズミの肩を狙う。

肩口に当たる瞬間、横蹴りで軌道を逸らす龍。
そのまま、棒を踏みつけ、折ろうとする。

「良い反射神経だ。だが、無理無理。チタン製の特注だぜ?おっと、それと楽しみすぎて忘れてたぜ。龍よ、お前は通って良いぜ?【キリュウ】が早く逢いたいんだってよ。」
棒を引き抜き、軽く回しながら、青龍が龍に声をかける。

「3対1じゃ不利だもんな?良いよ、お前をすぐに倒して3人で進む。」龍が腕捲りして、ファイティングポーズを取る。

すると。

「良いよ、龍さん。行って。」
申から目をそらさず呟くネズミ。
「ネズミ…」

「良いよ、行ってこい。俺達もこいつを倒して直ぐに向かう。」
鷹が武器を取り出し、いつでも発射出来る様に青龍に狙いを定める。

「ですってよ?」肩をすくめる青龍。

「…分かった。頼んだ。」



「さてと…じゃあ、やるか?」
3人になった空間で、青龍が改めて構える。

「もう、あんたを申さんだと思わない。」腰にセットされたシースナイフを逆手で持つネズミ。

「良いのか?それでも、2対1だ。お前には不利な気がするが…」変わらず照準を青龍に合わせて鷹が問う。

ふん、と棒を横に立てて、青龍が口を開く。

「威勢の言い事を言ってくれるが、絶望を知ったら、お前はどんな顔をするのかな?」

「…どういう意味だ?」

「いやぁ…使うつもりはなかったんだがな?確かに2体1は不利な気がしてきたから、その気持ちをお裾分けしてやろうと思ってな。」手を口にやる青龍。

理解していない顔の2人に、噛んで含めるように喋る青龍。
「実はな、とある言葉を使うと、俺の言うことを聞くように洗脳してる男が、この場にいるんだよ。」


「3年近く逢ってもないのに、そんな事が出来る訳がないだろう?」

そんな相手の言葉に、抑えた手から笑いが漏れる。

「それが出来るんだよ!『遠隔操作』って言ってな、とある物を通して、ずっと洗脳してたんだよ。」

「まさか…」

「はははははっ!遊びは終わりだ。【十二支】!さぁ、名前を付けてやる。『黒龍』よ!敵を殲滅するぞ!」

「くそぉぉぉぉぉ!」叫ぶ鷹。
「ちくしょぉぉぉ!まさか、鷹さんまで手掛けるなんて!」声高にネズミが言う。

「ふははははっ!…はっ?」

「ん?」
「えっ?」

一瞬の静寂。

「おい、ネズミ。何ともないのか?」
「えっ、俺?」
「話の流れ的にお前だろう?その耳の奴がそうなんだろう?」
「えっ、これ?」イヤーカフをいつもの癖で撫でる。



「ねぇ、豊さん。なんで、こんな辺鄙な所に来たんすか?」
「本当ですよ、他にも栄えてる所あるじゃないですか?」
「とりあえず、酒でも飲みません?ほら、あそこに酒場がありますよ!」

3人を引き連れ、この場所に来た豊が後ろを振り返り、睨み付ける。
「うるさいぞ、お前達。ここはな、『龍』という男が仕切ってたらしい。だが、何者かの襲撃を受けて、この街は壊滅状態だ。だから、俺が『龍』のふりをして出戻り、支配すれば丸々、その手柄や武勇伝を頂ける。って訳さ。」

「流石、豊さん!」
「すげえよ!俺達もこれでその日暮らしからおさらばっすね。」
「そうと決まれば、あっ!ちょうどあそこにガキがいますよ?ああいうやつを痛め付けて、脅しましょうよ!」
見ると、ふらふらと歩いてる13、4歳くらいの子供がいた。

「弱いもの虐めは良くないが…確かに、子供を懐柔すれば、後々やり易くなるな。」

そう言うと、豊が少年に駆け寄った。
「よぉ、少年。俺が戻ってきたぞ?この『龍』がな?」

【良いか、ネズミ。まずは二度と負けないように強くならなくちゃいけない。】
「うん、そうだね。申さん。」
【その為にはこの街に来た『知らない人』は撃退しなくちゃいけない。皆が戻ってきた時に、誰かに乗っ取られたら嫌だろう?】

襲撃から数ヶ月経ち、やっと戻ってきた頃から幾度となく繰り返し耳元で囁く言葉に、少しずつネズミは洗脳されていた。

「知らない…人、は倒す。」
【お前の為に、いつものナイフを新しくしたからな?それで敵を倒すんだぞ?】
「知らない…敵を倒す。」
【勇気が出る言葉を教えてやるから良く聞けよ?それを聞いたらお前は最強の男になるからな?[十二支・・・]】

それが、ネズミと豊の初めての対面だった。

「おい、少年?聞こえてるのか?俺だよ、俺。龍だよ。」
チラリと豊の方を見やり、見知らぬ男と認識したネズミがフラフラと豊に近付いていった。

そして。

腰に備えたナイフを逆手で持ち、ノーモーションで跳ね上げて、豊の顎を狙う。

バックステップでかわし、振り終わり、タックルでネズミの下半身を掬おうとするが、それより先にネズミがナイフを振り下ろそうとする。

「「「豊さん!」」」

すんでの所で、踏みとどまり、ナイフが空振ったのを見て、すぐさま距離を縮め、大外刈りを食らわせる。

受け身を取れなかったネズミは体勢が悪く、横向きで、地面と衝突した。

【ガガッ、ピッ…ピー…】

「危ねぇ…手加減出来なかった。おい、まだ立てるだろう?もう、子供だと思って容赦はしないぞ?」

のっそり起き上がり、辺りを見回すネズミ。
「ねぇ、お兄さん。龍さん、知らない?」

先ほどとは180度変わった雰囲気の子供が、縋るように豊に声を掛ける。
「俺のせいで、皆を守れなかったんだ…申さんも、龍さんも、皆居なくなったんだ…」

泣きべそをかきながら、そう呟く少年に、豊の振り上げた拳がダラリと下がった。



「クソが、精密機械は本当に役に立たねぇなぁ…」しゃがみこみ、頭を掻く青龍。

その隙を見逃さず、武器を発射する鷹。

しかし。

カシャン、と音がして素早い棒の動きで防がれる。
「流石だな、その状態でも、この銃弾をはたき落とせるとはな。」

その言葉に、素早く顔を上げる青龍。

「そうか…まだ、気付いてなかったのか。お前のそれが弓矢●●だってことに。」
















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