その男、凶暴により

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最終章~真実の世界~

全てが終わったその後に

最後の部屋に入って龍の目線は、今までの部屋と、作りはほぼ同じなのに、明らかに違う所に導かれる。

部屋の奥には今までなかった階段があり、その3、4段ほどの段差の頂上には椅子があった。

その椅子は背もたれが嫌に高く、肘掛けと背もたれの回りは金色、背もたれと座面は赤色で、まるで玉座の間に来たようだった。

そしてそこには、全身に黒いローブを着て、顔は、赤く、口を大きく開いた、額に二本の角が飛び出している、鬼の面を被った何者かが座っていた。

「ようこそ、龍君。君達の長い旅もそろそろ終わりに近付いてきたようだ。何はともあれ、労おうではないか。」
その男が座ったまま、パチパチとゆっくり手を叩き、他人事のように宣った。

「お前が、黄龍か?」
軽く、ステップを踏みながら龍が問う。

「あぁ…いやいや。勘違いさせてしまったようだね。私は、君の相手の黄龍ではないんだよ。そうだなぁ…【鬼龍】とでも、呼んでもらおうかね。」
おおよそ、この場に似つかわしくない喋り方で、右掌をこちらに向け否定の意を表し、ゆったりと言葉を繋いでいく鬼龍。

椅子の後ろの壁には、先ほどまでの部屋の様にタイル張りではなく、赤い布が垂らされており、そこから、一人、また一人と階段を降りてくる。

「こ、こいつらはっ…」

ガシャンガシャンと金属音を鳴らして、中世の騎士のような銀色の鎧をきた者達が龍の前に並んでいく。
各々の手には、ソードや斧、槍にモーニングスター、ハンマー等、様々な武器を携えている。

「おっ、流石に覚えているかね?そうだよ、あの日、君達の街を襲ったのが主要メンバーとして何人か紛れているのだよ。」
鬼龍が話してる間にも、布から金属音が奏でてくる。

「なるほど、つまり【黄龍】っていうのは…」
部屋の半分程が埋め尽くされ、等間隔に並んだ騎士達を見て、龍が口を開く。

「ご明察!ざっと100人の彼等、一人一人が『黄龍』なのだよ。絶望したかね?それとも、リベンジ出来る事に嬉しいかね。」
ふふふ、と笑いが鬼の面から漏れる。

ファイティングポーズを崩さない龍を見て、鬼龍が素早く右手を上げる。
「さぁ、敵は数々の修羅場を潜り抜けた猛者の『龍』である!すみやかに駆除したまえ!突撃!」

けたたましい金属音が地鳴りの様に鳴り響き、前進する。
すると、龍も呼応するように走り出し、騎士の足と足の間をスライディングしながらすり抜け、密集地帯の中を主戦場とした。

飛び上がる様に立ち上がりながら、肘を振り上げ、槍を持っている騎士の顎を打ち抜く。

そのまま、右隣のソード持ちの騎士の右鎖骨に振り上げた肘を垂直に振り下ろす。
そして、首に沿うように腕を巻き付け、ゴキッ、という音と共に強引に向きを変える。

更に巻き付けてる間に左隣の斧持ちの膝に強く横蹴りをいれ、足をくの字に曲げる。

その上で、後ろからハンマーの男の振りかぶりの動きを見透かした様に、顎を打ち抜いた騎士に突進して避けていく。

「これだよ!この動き、立ち振舞い。まさに『主人公』に相応しくないか!なぁ、爺よ?」
いつの間にか、玉座の横に立っていた黒いローブで全身を覆った老年の男に語りかける鬼龍。

「嬉しそうで何よりでございます。確かに、体のバネ、判断能力、当て勘。すべての値が高いですね。更に、あの鎧の弱点を的確に突ける状況把握が素晴らしい。」
直立不動で、爺と呼ばれた男が目の前の戦いを見ながら応える。

「そうなんだよ!あの鎧は生半可な攻撃じゃダメージを与えられない位に防御力は高いんだけど、可動域的な問題で関節を狙われると弱いんだよなぁ…気付かれないと思ったんだけど。これは、本当に【全クリ】しちゃうかもね。」

「そういえば、他の部屋もご覧になられますか?仮面の内に映し出す事も出来ますが。」爺が他の部屋の様子が映し出されたタブレットを差し出した。

「おっ、見る見る。こっちの方が自分で切り替えられるしね。」
タブレットを受け取り、画面を凝視する。



巳が緑龍の左腕に鞭を絡ませた瞬間、3人が走り出す。
卯は伸びきった鞭を使い、更なる高さまで飛び上がり、緑龍の頭上へ蹴りを繰り出す。

その邪魔をさせないように、豊と未が朱龍に向かって、未は足へ向かって全身を使いタックルを、豊は武器を持つ手を蹴りで狙う。



「なるほどね、武器を封じて主戦力が攻撃を仕掛けて、もう一方は動きを封じる訳か。」

「えぇ、良い作戦だと思います。ですが…」

「そうだね。鞭を切れない●●●●●●のを前提に戦ってるから…その内、決着がつくな。さて、次は…」



ネズミが青龍の懐に入り、左手でシースナイフを逆手で振り上げるが、容易く棒で防がれる。
鍔迫り合いの最中、鷹がこまめに移動しながら矢を射抜こうとするが、その度に青龍がポジショニングを変え、ネズミの背中を盾にする。



「うーん…膠着状態かな。」
「そのようですね…いや、見て下さい。ネズミが動くようですよ?」

画面の中で、ネズミが鷹の位置まで下がり、鷹に耳打ちをする。
その瞬間、シースナイフと鷹の矢が時間差で青龍に向かって一直線に伸びていく。
と、同時に2人が駆け出す。

「決めにいったな。で、龍は…おっ!いつの間に!?」

鬼龍が目線を上げると、龍が1人の黄龍から武器のソードを奪い、突き出された槍を反転しながら避け、そのまま回転しながら、膝の裏へ斬りつけた。
そして、ソードを敵の密集してる方向に投げ、今し方、自身へ攻撃された槍を奪い、前方の敵の首、膝、肩の節へ三段突きを繰り出した。

辺りを見ると、半分以上の騎士達が、体の何処かしらが異常な方向に曲がって倒れ込んでいた。

「あと、30体もいないかな?」
「えぇ、いよいよですな。しかし段々と…やはり、100人を相手にするには厳しそうですな。」

少しずつ、疲れのせいか龍の動きが鈍くなり、正面から、横殴りのハンマーをスウェーでかわした所を、右から槍が突き出される。
何とか、右手で軌道を変えたが、逆方向からのソードの袈裟斬りを左肩が被弾する。
叫び声一つ上げずに、龍は左足を右に大きく踏み込み、槍持ちの首に、右の肘を叩き込んだ。

「息も絶え絶え…線香花火の様にか細い煌めき。…こうなると、寂しいものがあるね。」
「その割には、声が弾んでおりますが?」

「あら、バレた?…おっ、一人加勢にきたね。勝てたんだな。」
2人が龍の入ってきた扉を見ると、茶髪がかった長い髪の男が龍を見て、直ぐ様、走り出した。

「龍さん!」
叫びながら、目の前のモーニングスターを振り回す騎士に向かって、ローキックをお見舞いする。

「ネズミ!こいつらは関節を狙え、じゃないと倒れないぞ!」少しずつ傷だらけになっている龍が叫ぶ。

その言葉を聞いて、モーニングスターを振り下ろした騎士の一撃を下がって避け、跳躍しながら相手の右側の首に、左の回し蹴りを叩き込んだ。

その後も、2人は時に相手の武器を奪い、時に自身の体で相手を打ち倒していった。

そして。

遂に。

パチパチパチパチ。

鬼龍の拍手が静まり返った部屋にこだまする。

「いやぁ、凄かった!まさか、最後までイケるとは!おめでとう!これで君達の復讐は達成された!」

『ゲームクリア!世界に平和が戻った。ゲームクリア!世界に平和が戻った。』

「ふざけるなよ…」足を引き摺り、右手で肩を押さえながら、玉座に向かって歩き出す龍。

「あら?納得がいかない?」
いつの間にか、くだけた口調に変わった鬼龍が口を開く。

「いくわけがねぇだろうが…!俺達はただ、平和に、幸せに暮らしたかっただけなのに。普通に生きて、毎日過ごして、たまには戌のおっさんの店でくだを巻いて、なのに…」

それなのに!

「もう、虎にも、丑にも、亥にも、午にも、戌のおっさんにも逢えない!申とも、もう全部なかった事にして、顔を合わせて、笑いあうことも出来ない!なのに、これで…こんな状態で全部終わって帰れる訳がねぇ!そんな所で高みの見物をして、何の説明もせずに済むと思うなよ!」

最後の力を振り絞り、龍が走り出す。

「あぁ、またしても勘違いさせてしまったようだね。」

パンッ!パンッ!乾いた音が部屋を覆い尽くす。
ドサッ、と龍が階段に倒れ込んだ。

「龍さん!?」

「帰る場所?そんなものはね、君達には最初からありはしないんだよ。」
鬼龍が玉座に座ったまま、右手を上げ、隣の老年の男性が右手に構えた拳銃をおろす。

「なんだ?その武器は…」

鉄砲●●だよ、正真正銘のね。」
「嘘をつくな!鉄砲っていうのは、鷹さんが持ってるああいうのを言うんだろ?弾丸を装填して、手で引いて発射させる…」

「そう、ネズミ君。良い質問だ。」
嬉しそうに微笑みながら、玉座に深く座り直し、頬杖をつきながら鬼龍が口を開く。

「君達はね、僕が造り出したゲームの世界の住人なんだよ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。」
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