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第1章
八月が終わる
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目の前にある勉強机に広がるのは、終わっていなければならないはずの課題の山と、既に終わらせている課題の山。
それらを尻目に手にしたのは、今流行っているゲーム、「メリーゴーランド」だった。
可愛らしいタイトルとは裏腹に、主人公がグロテスクなモンスターと闘う、ノベルゲームを兼ねたアクションゲームで、主人公を自由にキャラメイクできるのが特徴である。
原作は同タイトルの小説で、全巻揃えるほどのお気に入りであり、ゲーム化と聞き発売日を何度もチェックしたくらいだ。
ゲーマーじゃない僕にとってはなんとも言えないのだが、オリジナルストーリーなだけあって結構面白い。
机に目を戻し、ゲームを置く。散らばっている課題の中から手にしたのは、読書感想文の原稿用紙。当然の如く白紙のそれは、僕の気だるさを物語っているかのようだ。
たった5枚の読書感想文を仕上げる為、図書館に行くのが妥当なのか否かについては、家族の判断に任せるとしよう。
部屋の扉を開けると……。
「何?夢夏」
妹が階段をものすごい勢いで上がってきたのである。
「もう二十九日なのに宿題終わってないって、お母さんすごく怒ってた」
「じゃあ読書感想文書いてよ。あと読書感想文だけだから」
「千円頂戴」
「えー無理。図書館行ってきてもいいと思う?」
「知らない」
「何か借りたい本は?」
「うーんとね、お金の……」
「お金にしか興味無いの?行ってくるから母さんに伝えといて」
「仕組み! お金の仕組み!」
「何それ?」
「知らない」
よく通っている図書館は、家から五百メートルも離れてない場所にあって、設備も整っている。
節約だとかなんとか言い、クーラーもつけないような家では、公共施設などが唯一涼めるスポットなのである。
「ちょっと侑久、どこ行くの?」
「あれ、夢夏に聞かなかった? 図書館で読書感想文書いてくるって」
「あっそーなの、ふーん。行ってらっしゃい」
「ふーんって……行ってきます」
そう言って家をあとにした。
******
図書館に着いてまずすることはいつも決まっていて、入ってすぐの新着コーナーにある小説のチェックである。
今週は、分厚い文学小説とライトノベルの2冊だけだった。
文学小説はなかなか好きだ。深読みができない僕には、ライトノベルとの相性が一番なのだろうか。まあでも、小説は全般読む。
数ある本の中から、ライトノベルをとろうと手を伸ばしたした次の瞬間、何かが触れたのだ。
それが誰か手であることに気づいたのと同時に、目を丸くした。
そこには学校一の美少女、藤堂凛がいたのである。
「す、すみません」
「いえ、あの……すみません。」
「あーえと、どうぞ」
「大丈夫です」
「そうですか……じゃあ。」
「クス」
「……?」
何かおかしなことでもしたのだろうか。そうじゃなくても藤堂さんが笑っている。
僕はなるべく早くこの場所から抜け出したくて、この本を借りることにした。読書感想文すら書ける気がしてきた。
「失礼します」
「待って!」
「えっ!」
カウンターに行こうとしたら、いきなり呼び止められた。
「同じ学校の……巫くんですか?」
「か、巫です。」
「いきなりごめんだけど、ちょっとだけいいですか?」
「は、はい。何ですか?」
「ありがとうございます。私、あの……」
「?」
「魔法少女、なんです」
それらを尻目に手にしたのは、今流行っているゲーム、「メリーゴーランド」だった。
可愛らしいタイトルとは裏腹に、主人公がグロテスクなモンスターと闘う、ノベルゲームを兼ねたアクションゲームで、主人公を自由にキャラメイクできるのが特徴である。
原作は同タイトルの小説で、全巻揃えるほどのお気に入りであり、ゲーム化と聞き発売日を何度もチェックしたくらいだ。
ゲーマーじゃない僕にとってはなんとも言えないのだが、オリジナルストーリーなだけあって結構面白い。
机に目を戻し、ゲームを置く。散らばっている課題の中から手にしたのは、読書感想文の原稿用紙。当然の如く白紙のそれは、僕の気だるさを物語っているかのようだ。
たった5枚の読書感想文を仕上げる為、図書館に行くのが妥当なのか否かについては、家族の判断に任せるとしよう。
部屋の扉を開けると……。
「何?夢夏」
妹が階段をものすごい勢いで上がってきたのである。
「もう二十九日なのに宿題終わってないって、お母さんすごく怒ってた」
「じゃあ読書感想文書いてよ。あと読書感想文だけだから」
「千円頂戴」
「えー無理。図書館行ってきてもいいと思う?」
「知らない」
「何か借りたい本は?」
「うーんとね、お金の……」
「お金にしか興味無いの?行ってくるから母さんに伝えといて」
「仕組み! お金の仕組み!」
「何それ?」
「知らない」
よく通っている図書館は、家から五百メートルも離れてない場所にあって、設備も整っている。
節約だとかなんとか言い、クーラーもつけないような家では、公共施設などが唯一涼めるスポットなのである。
「ちょっと侑久、どこ行くの?」
「あれ、夢夏に聞かなかった? 図書館で読書感想文書いてくるって」
「あっそーなの、ふーん。行ってらっしゃい」
「ふーんって……行ってきます」
そう言って家をあとにした。
******
図書館に着いてまずすることはいつも決まっていて、入ってすぐの新着コーナーにある小説のチェックである。
今週は、分厚い文学小説とライトノベルの2冊だけだった。
文学小説はなかなか好きだ。深読みができない僕には、ライトノベルとの相性が一番なのだろうか。まあでも、小説は全般読む。
数ある本の中から、ライトノベルをとろうと手を伸ばしたした次の瞬間、何かが触れたのだ。
それが誰か手であることに気づいたのと同時に、目を丸くした。
そこには学校一の美少女、藤堂凛がいたのである。
「す、すみません」
「いえ、あの……すみません。」
「あーえと、どうぞ」
「大丈夫です」
「そうですか……じゃあ。」
「クス」
「……?」
何かおかしなことでもしたのだろうか。そうじゃなくても藤堂さんが笑っている。
僕はなるべく早くこの場所から抜け出したくて、この本を借りることにした。読書感想文すら書ける気がしてきた。
「失礼します」
「待って!」
「えっ!」
カウンターに行こうとしたら、いきなり呼び止められた。
「同じ学校の……巫くんですか?」
「か、巫です。」
「いきなりごめんだけど、ちょっとだけいいですか?」
「は、はい。何ですか?」
「ありがとうございます。私、あの……」
「?」
「魔法少女、なんです」
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