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光の宮三度
そ~れ飛んでけ!
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「んじゃあお前は、王国の為だからっつって薬で眠らされてその間にお前が汚いつってた女達みたいな扱いを色んな男達にされても納得出来るってか?」
シアが黙り込んだ。
「キーナは別に王族でも貴族でもねーし、御子にだってなりたくてなってるわけでもねーし、そんな子作りの覚悟なんて出来てるわけねーだろ。まだまだジョーシキが足りてねーな」
シアが小さくなった。
メリンダ心の中で拍手喝采。口調は悪くともさすがはサーガ。見事にシアを黙らせて納得させた。
「光の宮ってのは名前が立派なだけのお前が毛嫌いしてる娼館と同じような場所なんだよ。んなとこに光の御子だろうがなかろうが無理矢理連れてかれたら助けに行くなんて当たり前の事じゃねーか」
「おい、口はいいからとっとと宮へ行け」
「やっとるわやかましい」
サーガはテルディアスを軽く睨み付けると前を見る。
シアはテルディアスに助けて貰ったのかと思い、熱い視線を向ける。
しかしテルディアスはただ進行速度が遅くならないかと心配していただけだったので、シアの視線に背筋が寒くなった。ちょっといらんことをしたかもと後悔した。
太陽が山の端に半分位隠れた頃、森の上に突き出たその白い建物が見え始めて来た。
宮からは少し離れた森の中に無事に着地する。ダンはすでに目を覚ましていた。
テルディアスとサーガはさすがに疲れたようで、ぐったりとしている。
サーガに変わり、ダンが様子を探り始めた。
宮の周りには数々の家が建ち並び、さながら1つの大きな街のようになっている。宮があるおかげかこの辺りは妖魔の影も少なく、人々は安心して暮らしていた。
その街の気配は気にせず、ダンは宮へと意識を伸ばす。街の北に位置する宮は、南から星の宮、月の宮、太陽の宮と建物が並び、一番北に神殿が建てられている。
ダン達がいるのは街の北の森なので、大分近いのは有り難い。
ダンは神殿に人が沢山集まっていることを感じた。祭壇らしき場所に寝かされている人物が1人。キーナだろう。
「どうだ?」
焦りを含んだ声でテルディアスがダンに尋ねる。
「多分、儀式。まだ大丈夫」
「そうか…」
テルディアスがほっとした顔になる。
その目の前に、ダンがずずいっと丸薬を差し出した。
目の前に迫る丸薬と、ダンを見比べるテルディアス。
「だがしかし、時間が…」
「儀式。まだ終わらない(と思う)。休む、大事」
確かに消耗したままで突入してもキーナを救出出来るか分からない。休む事は大事だと分かってはいるが、気が急く。
「儀式終わったら、起こす」
ずいずいとテルディアスの目の前に丸薬を押しつける。
「わ、分かった…」
一応効果はサーガで確認済みだ。テルディアスは素直にそれを飲み込んだ。そして横になり、眠りに就いた。
ダンがサーガを見る。サーガは目を逸らす。
「飲む」
「・・・・・・」
分かっちゃいるが、サーガも出来れば飲みたくない。それに起こすとは、メリンダの口に突っ込んだあの怪しいビンのことを言っているのだろう…。
メリンダは未だに口の中に味が残っているのか、時折渋い顔をしている。どんな味だったのか聞きたいような聞きたくないような…。
「飲む」
ダンがずずずいっと丸薬を目の前に押しだしてくる。
「わ、分かったよ…」
押し負けて、サーガも丸薬を飲んだ。
できるだけ儀式とやらが長引くようにと願いながら。
焚き火の明かりも抑え気味に、一行は森の中で待機する。テルディアスとサーガを本復させなければ動くことは叶わない。2人が目覚め次第動く。その前に儀式が終わるのであれば無理矢理起こす算段だ。
(なんか、力が集まってるのを感じるわね…)
気配を感じるのはあまり得意ではないメリンダだったが、宮の神殿に光の力が集まっていく熱のようなものを感じていた。広がっている熱をただ一点に集中させているように感じる。
ダンもキーナの気配だけに集中していた。キーナが動く、または周りに人が近寄れば、2人を無理矢理にでも起こす為にスタンバイしている。そのキーナの身体に力が集められていることを、ダンも感じていた。
珍しくシアも、なんとなく異様な気配を感じ取っていた。
(キーナさんて、本当に御子様でしたのね…)
そのことにも驚いていた。全く信じていなかったのだ。そして宮の方から感じる何か大きな力のうねり。空気中にももちろんだが若干の水分はある。それらがシアにそのうねりを教えていた。普段ならば感じることはないのだが。
(より良い子を成すは上に立つ者の責務…。でも、確かになんだかこれは、可笑しいですわ…)
眠らせて無理矢理連れて行く事も、本人が納得していない事も。そしてこの不自然な力のうねり。流石のシアも違和感を感じずにはいられなかった。
三人三様異様なものを感じていた為か、誰も何も話さず時は過ぎた。
広がる熱は一点に凝縮され、キーナの身体に力が凝縮された。力のうねりが落ち着いた事を感じた。
「起こしましょう」
メリンダの言葉にダンが頷く。
メリンダがコップを用意し、シアがそこに水を用意する。ダンは小さじで瓶の中の物を掬い、2人の口に突っ込んだ。
すぐに2人の目がかっと開かれ、体を起こす。
「っぐぅ…!!!」
「っどぅ…!!!」
メリンダとシアが差し出したコップを慌てて口に運ぶ2人。
「「もう一杯!」」
シアが急いで水を入れると、またもや口に運ぶ。
もう一杯と言う前に、ダンが2人の目の前に飴のような物を差し出す。
「口直し」
その一言を聞いて、2人は急いでそれを口に含んだ。そしてほっとした顔になる。
「なんなんだ今のは…」
「想像以上のものだった…」
ぼそりと感想を呟く2人。余程の味なのだろう…。
「2人共、体調は? そろそろ行くわよ」
メリンダが2人に尋ねる。
「ああ、大丈夫だ」
「ばっちし」
2人が立ち上がる。
ダンが荷物を木陰に隠し、なにやらいそいそ準備している。
「おい、何やってんだ」
風の結界を張ろうとしていたサーガがダンを呼ぶ。サーガが全員を宮まで運ぶつもりだったのだが…。
少し開けた場所で、木と木の間に縄のような物が張られている。真ん中辺りは少し編まれて編み目が細かくなっている。
ダンがちょいちょいと手招きをする。皆が何だろうと行くと、真ん中辺りに詰められる。
「押す」
と言うと、ダンが背中でそれを押し始めた。縄がピンと張り、さらに伸びていく。
状況を理解した男達が微妙な顔をしたが、魔力を使わないで行けるのも楽かとサーガも背中で押し始める。テルディアスもそれも早いかもしれないと押し始める。
「え? なにこれ?」
若干理解出来ていないメリンダも、よく分からないが押し始める。
「なんですの?」
これまたよく分かっていないが、皆がやっているので一緒に押し始めるシア。
木がしなり、縄、ただの縄ではなくゴム製の縄が限界まで伸びた。
「行く!」
ダンの声と共に男達が地面から足を離した。
「え? え? ええええええええ!!!」
「え? は? いやああああああ!!!」
しなった木が元に戻る力と、伸ばされたゴムが元に戻る力が合わさり、5人の体は空中へともの凄い勢いで放り出された。
もちろんだが、さりげなくメリンダの体をサーガが、シアの体をダンが支えている。
「・・・・・・!!!」
今までに感じたことのない勢いと風圧で、メリンダも悲鳴にならない悲鳴を上げる。
シアは意識を失いかけている。
空中で上手く体勢を整えながら、男達は女性達を補助しながら(テルディアスはしていないが)綺麗な軌道を描き、宮へと迫る。
ダンは普段からその手段に慣れていたのか、平気な顔。
サーガはもちろんだが空中はお手の物。
テルディアスは崖から落ちたりなどでそこそこ慣れがあったのかもしれない。
つまり男達は慣れていたということで。
神殿が近づいて来る。丁度上部にある窓へと突っ込めそうである。ダンの計算は正しかったようだ。
男2人が風を纏う。もちろん着地する為である。と、蹴破ろうとしていた窓に、あっという間に蔓が生えてきて覆ってしまった。
「まさかあれで着地の衝撃を和らげるのか…」
サーガの呟きにダンが頷いた。
一応風を纏ったまま、窓へと突っ込む。
ガシャーン!!
盛大に窓が割れる音。そして蔓のブチブチ切れる音。
「やっぱ、全部受けきれねーじゃん」
男2人は風を纏ったままブレーキをかける。ダンの体はそのまま通り過ぎて行く。
しかしいつの間に生やしていたのか、神殿の中に不自然に生えた木がダンの体を受け止めた。
「なるほど…」
テルディアスとメリンダを抱いたサーガが着地。ダンもシアを抱え、木からするすると伸びてきた枝を滑り台のようにして降りてくる。
「なんだ?!」
神殿の中はもちろん騒然となっていた。突如窓を割って現われた不審人物達。おまけに突然床から木が生えたのだ。
だがしかし、何故かほとんどの者が床に伏せったまま動けないようだった。
なんとか動ける数人が、テルディアス達を取り囲む。
「曲者!」
光の者達が力を使おうとするが、
「?! なんだ?!」
「何故だ?! 何故応えない?!」
何か慌てている。
「キーナはあっちだ!」
風で探っていたのか、サーガが祭殿より奥にある壁を指さす。そこには地下へと続く階段のような物が見えた。
走り出そうとしたテルディアスが足を止める。
バチイッ!!
その目の前を光の力が迸った。
「く、四大精霊の力は使えなくとも…」
「我らには光の力がある!」
その手に光の力を収束させているようだ。
「通さない」
ダンが呟き、結界を張る。その顔には珍しく怒りの感情が見える。
「しゃーねえ。援護してやるからお前行け」
サーガも剣を抜き放った。
「キーナちゃんを無事に取り戻さないと酷いわよ」
メリンダも力を集め出す。
「私はご一緒に…」
「お前もこっち」
サーガに襟首を掴まれたシアが、渋々ダンの横に並ぶ。
テルディアスの走りにシアがついていけるわけがないのである。
「任せろ」
テルディアスが床を蹴る。
光の力が迸る。
「させません!」
テルディアスの前に現われた水の壁がその力を散らした。
4人に迫る力もダンの強固な結界の前に阻まれる。
「灰におなり!」
メリンダの特大火球が神殿内に降り注ぐ。
慌てて光の力でそれを散らし始める光の者達。
そこへ、風を纏って素早く近づいたサーガが昏倒させていく。
その間にテルディアスは素早く階段へと身を潜らせた。
シアが黙り込んだ。
「キーナは別に王族でも貴族でもねーし、御子にだってなりたくてなってるわけでもねーし、そんな子作りの覚悟なんて出来てるわけねーだろ。まだまだジョーシキが足りてねーな」
シアが小さくなった。
メリンダ心の中で拍手喝采。口調は悪くともさすがはサーガ。見事にシアを黙らせて納得させた。
「光の宮ってのは名前が立派なだけのお前が毛嫌いしてる娼館と同じような場所なんだよ。んなとこに光の御子だろうがなかろうが無理矢理連れてかれたら助けに行くなんて当たり前の事じゃねーか」
「おい、口はいいからとっとと宮へ行け」
「やっとるわやかましい」
サーガはテルディアスを軽く睨み付けると前を見る。
シアはテルディアスに助けて貰ったのかと思い、熱い視線を向ける。
しかしテルディアスはただ進行速度が遅くならないかと心配していただけだったので、シアの視線に背筋が寒くなった。ちょっといらんことをしたかもと後悔した。
太陽が山の端に半分位隠れた頃、森の上に突き出たその白い建物が見え始めて来た。
宮からは少し離れた森の中に無事に着地する。ダンはすでに目を覚ましていた。
テルディアスとサーガはさすがに疲れたようで、ぐったりとしている。
サーガに変わり、ダンが様子を探り始めた。
宮の周りには数々の家が建ち並び、さながら1つの大きな街のようになっている。宮があるおかげかこの辺りは妖魔の影も少なく、人々は安心して暮らしていた。
その街の気配は気にせず、ダンは宮へと意識を伸ばす。街の北に位置する宮は、南から星の宮、月の宮、太陽の宮と建物が並び、一番北に神殿が建てられている。
ダン達がいるのは街の北の森なので、大分近いのは有り難い。
ダンは神殿に人が沢山集まっていることを感じた。祭壇らしき場所に寝かされている人物が1人。キーナだろう。
「どうだ?」
焦りを含んだ声でテルディアスがダンに尋ねる。
「多分、儀式。まだ大丈夫」
「そうか…」
テルディアスがほっとした顔になる。
その目の前に、ダンがずずいっと丸薬を差し出した。
目の前に迫る丸薬と、ダンを見比べるテルディアス。
「だがしかし、時間が…」
「儀式。まだ終わらない(と思う)。休む、大事」
確かに消耗したままで突入してもキーナを救出出来るか分からない。休む事は大事だと分かってはいるが、気が急く。
「儀式終わったら、起こす」
ずいずいとテルディアスの目の前に丸薬を押しつける。
「わ、分かった…」
一応効果はサーガで確認済みだ。テルディアスは素直にそれを飲み込んだ。そして横になり、眠りに就いた。
ダンがサーガを見る。サーガは目を逸らす。
「飲む」
「・・・・・・」
分かっちゃいるが、サーガも出来れば飲みたくない。それに起こすとは、メリンダの口に突っ込んだあの怪しいビンのことを言っているのだろう…。
メリンダは未だに口の中に味が残っているのか、時折渋い顔をしている。どんな味だったのか聞きたいような聞きたくないような…。
「飲む」
ダンがずずずいっと丸薬を目の前に押しだしてくる。
「わ、分かったよ…」
押し負けて、サーガも丸薬を飲んだ。
できるだけ儀式とやらが長引くようにと願いながら。
焚き火の明かりも抑え気味に、一行は森の中で待機する。テルディアスとサーガを本復させなければ動くことは叶わない。2人が目覚め次第動く。その前に儀式が終わるのであれば無理矢理起こす算段だ。
(なんか、力が集まってるのを感じるわね…)
気配を感じるのはあまり得意ではないメリンダだったが、宮の神殿に光の力が集まっていく熱のようなものを感じていた。広がっている熱をただ一点に集中させているように感じる。
ダンもキーナの気配だけに集中していた。キーナが動く、または周りに人が近寄れば、2人を無理矢理にでも起こす為にスタンバイしている。そのキーナの身体に力が集められていることを、ダンも感じていた。
珍しくシアも、なんとなく異様な気配を感じ取っていた。
(キーナさんて、本当に御子様でしたのね…)
そのことにも驚いていた。全く信じていなかったのだ。そして宮の方から感じる何か大きな力のうねり。空気中にももちろんだが若干の水分はある。それらがシアにそのうねりを教えていた。普段ならば感じることはないのだが。
(より良い子を成すは上に立つ者の責務…。でも、確かになんだかこれは、可笑しいですわ…)
眠らせて無理矢理連れて行く事も、本人が納得していない事も。そしてこの不自然な力のうねり。流石のシアも違和感を感じずにはいられなかった。
三人三様異様なものを感じていた為か、誰も何も話さず時は過ぎた。
広がる熱は一点に凝縮され、キーナの身体に力が凝縮された。力のうねりが落ち着いた事を感じた。
「起こしましょう」
メリンダの言葉にダンが頷く。
メリンダがコップを用意し、シアがそこに水を用意する。ダンは小さじで瓶の中の物を掬い、2人の口に突っ込んだ。
すぐに2人の目がかっと開かれ、体を起こす。
「っぐぅ…!!!」
「っどぅ…!!!」
メリンダとシアが差し出したコップを慌てて口に運ぶ2人。
「「もう一杯!」」
シアが急いで水を入れると、またもや口に運ぶ。
もう一杯と言う前に、ダンが2人の目の前に飴のような物を差し出す。
「口直し」
その一言を聞いて、2人は急いでそれを口に含んだ。そしてほっとした顔になる。
「なんなんだ今のは…」
「想像以上のものだった…」
ぼそりと感想を呟く2人。余程の味なのだろう…。
「2人共、体調は? そろそろ行くわよ」
メリンダが2人に尋ねる。
「ああ、大丈夫だ」
「ばっちし」
2人が立ち上がる。
ダンが荷物を木陰に隠し、なにやらいそいそ準備している。
「おい、何やってんだ」
風の結界を張ろうとしていたサーガがダンを呼ぶ。サーガが全員を宮まで運ぶつもりだったのだが…。
少し開けた場所で、木と木の間に縄のような物が張られている。真ん中辺りは少し編まれて編み目が細かくなっている。
ダンがちょいちょいと手招きをする。皆が何だろうと行くと、真ん中辺りに詰められる。
「押す」
と言うと、ダンが背中でそれを押し始めた。縄がピンと張り、さらに伸びていく。
状況を理解した男達が微妙な顔をしたが、魔力を使わないで行けるのも楽かとサーガも背中で押し始める。テルディアスもそれも早いかもしれないと押し始める。
「え? なにこれ?」
若干理解出来ていないメリンダも、よく分からないが押し始める。
「なんですの?」
これまたよく分かっていないが、皆がやっているので一緒に押し始めるシア。
木がしなり、縄、ただの縄ではなくゴム製の縄が限界まで伸びた。
「行く!」
ダンの声と共に男達が地面から足を離した。
「え? え? ええええええええ!!!」
「え? は? いやああああああ!!!」
しなった木が元に戻る力と、伸ばされたゴムが元に戻る力が合わさり、5人の体は空中へともの凄い勢いで放り出された。
もちろんだが、さりげなくメリンダの体をサーガが、シアの体をダンが支えている。
「・・・・・・!!!」
今までに感じたことのない勢いと風圧で、メリンダも悲鳴にならない悲鳴を上げる。
シアは意識を失いかけている。
空中で上手く体勢を整えながら、男達は女性達を補助しながら(テルディアスはしていないが)綺麗な軌道を描き、宮へと迫る。
ダンは普段からその手段に慣れていたのか、平気な顔。
サーガはもちろんだが空中はお手の物。
テルディアスは崖から落ちたりなどでそこそこ慣れがあったのかもしれない。
つまり男達は慣れていたということで。
神殿が近づいて来る。丁度上部にある窓へと突っ込めそうである。ダンの計算は正しかったようだ。
男2人が風を纏う。もちろん着地する為である。と、蹴破ろうとしていた窓に、あっという間に蔓が生えてきて覆ってしまった。
「まさかあれで着地の衝撃を和らげるのか…」
サーガの呟きにダンが頷いた。
一応風を纏ったまま、窓へと突っ込む。
ガシャーン!!
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「やっぱ、全部受けきれねーじゃん」
男2人は風を纏ったままブレーキをかける。ダンの体はそのまま通り過ぎて行く。
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「なるほど…」
テルディアスとメリンダを抱いたサーガが着地。ダンもシアを抱え、木からするすると伸びてきた枝を滑り台のようにして降りてくる。
「なんだ?!」
神殿の中はもちろん騒然となっていた。突如窓を割って現われた不審人物達。おまけに突然床から木が生えたのだ。
だがしかし、何故かほとんどの者が床に伏せったまま動けないようだった。
なんとか動ける数人が、テルディアス達を取り囲む。
「曲者!」
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「?! なんだ?!」
「何故だ?! 何故応えない?!」
何か慌てている。
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バチイッ!!
その目の前を光の力が迸った。
「く、四大精霊の力は使えなくとも…」
「我らには光の力がある!」
その手に光の力を収束させているようだ。
「通さない」
ダンが呟き、結界を張る。その顔には珍しく怒りの感情が見える。
「しゃーねえ。援護してやるからお前行け」
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「キーナちゃんを無事に取り戻さないと酷いわよ」
メリンダも力を集め出す。
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「お前もこっち」
サーガに襟首を掴まれたシアが、渋々ダンの横に並ぶ。
テルディアスの走りにシアがついていけるわけがないのである。
「任せろ」
テルディアスが床を蹴る。
光の力が迸る。
「させません!」
テルディアスの前に現われた水の壁がその力を散らした。
4人に迫る力もダンの強固な結界の前に阻まれる。
「灰におなり!」
メリンダの特大火球が神殿内に降り注ぐ。
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