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最終章~光の御子と闇の御子~
関わった人達のその後
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キーナがテルディアスの部屋に消え、メリンダは外に散歩に出た。
太陽は山の端に姿を消し、残照がその後を追うように消えて行く。世界は夜が支配し始め、遙かに下に見える街の明かりが昼の明かりを名残惜しんでいるように見える。
山の上からの吹き下ろしてくる風が、メリンダの髪を悪戯にさらう。メリンダは無意識のうちに髪を耳にかけた。
「夜に女の一人歩きは危ないぜ?」
後ろから声を掛けられた。振り向かなくともサーガと分かる。
「こんな所にあんた以外の変態がいるわけないでしょう」
「まあ確かに」
肯定するんかい。
遠くの景色がよく見える。と言ってもほとんど森ばかり。暗くなったら所々に点在する街の明かりが見えるくらいになる。夜はあまり面白い景色ではない。
「姐さんさ、これからどうすんだ?」
今まさに悩んでいたことをサーガが聞いて来た。
キーナの旅はここで終わる。明日、この世界からいなくなってしまう。その後は…。
キーナと共にいたいからと一緒に旅をしてきたが、そのキーナがいなくなってしまう。メリンダは暗い海に放り出されたような気持ちだった。
行きたい場所も特にない。いろいろ世界も見て回った気もする。となれば、答えは1つ。火の村へ帰る。
しかしまだ帰りたいとも思えなかった。だからといって何がしたいとも言えない。いや、1つだけしたいというか、共にいたいと思える者はいるが…。なんだか今更な気もして言い出せない。
「・・・・・・」
サーガの問いに答えられずに黙っていると、
「特にないなら、俺と一緒に行かん?」
サーガの方から声を掛けてきた。
思わず横に並んだサーガの顔を見る。サーガは夜の闇に隠れていく景色を眺めていた。その顔は何を考えているのか読めない。
「な、なんで…」
「いや、姐さんと一緒にいると楽しいし、夜の方も困らんし」
そっちかい! と心の中でツッコみ。
此奴の中で自分はその位置から動く事はないのかもしれない、と溜息。なんだか悲しくなってきた。
「1人で行くより姐さんと一緒の方が面白いかなと思ったんだけど。嫌?」
反射的に「嫌」と答えそうになってぐっと堪える。そうじゃない。ここでそう言ってしまえば多分もうサーガとも終わりになってしまう。そんな確信があった。
夜要員だとしても、一緒にいて楽しいと思って貰えているのだ。一緒に行きたいと思って貰えているのだ。自由気ままな此奴がメリンダと共にいたいと思ってくれているのだ。
「い、良いわよ…」
なんとかその言葉を吐き出した。
「え? まじ? へへ、良かった。断わられるかと思った」
サーガが嬉しそうに笑う。
メリンダの胸がきゅうんと高鳴った。
それぞれが食堂を出て行き、お婆さんも何か用があると部屋に入っていった。なんとなく残ったシアとダンは仲良くお茶をすする。
「ダンは、これからどうしますの?」
シアも旅の終わりを感じ取っていた。これから自分がどうしたいのかもよく分かっていなかった。
ダンはちょっと考え、答えを口にする。
「シア、送る。村、帰る」
「私を水の王国まで送ってくださるのですの?」
ダンが頷く。幼いシアに一人旅などさせられない。テルディアスは光の御子を探しに行くだろうし、メリンダも火の村へ帰るだろう。サーガはきっとメリンダを送るはずだ。自分がシアを送らねばとダンは考えていた。
シアも考えてみれば、水の宝玉を探す為に王国を出たのだ。宝玉はすでにテルディアスから渡されて自分の手元にある。目標は達成されている。あとは王国に帰り、水巫女の試練を受け、姫巫女を目指すだけ、なのではあるが…。何か物足りない気がした。
「私を送り届けたら、そのまま地の村まで帰ってしまいますの?」
ダンが頷く。真っ直ぐ帰るとまた母親に怒られるかもしれないので、途中いろいろな街に足を伸ばしてみようかとも考えていた。テルディアス達と旅をしたおかげか、ダンの心にも多少余裕が出来ている。
「そうですの…」
シアの顔が暗くなった。
何故シアの顔が暗くなったのか分からずオロオロするダン。
シアも、何故自分が気を落としているのかよく分かっていなかった。
翌朝。
キーナとテルディアスが共にテルディアスの部屋から出て来た。
テルディアスの顔がどこかすっきりしたものになっているのは、きっとメリンダの気のせいだろう。
そして、それに気付いた。2人の耳飾りが入れ替わっていることに。
朝食が済んですぐに出ようとする2人に、メリンダが声を掛ける。
「せめて前髪だけでも整えてから行きなさい」
肌を隠す為に伸びっぱなしになっていたテルディアスの髪。メリンダがちゃちゃっと整えてくれた。さすがメリンダである。
さっぱりした頭になり、顔も良く見えるようになった。キーナとシアがその顔を見て、何故か顔を赤くしていた。ナンデカナー。
「じゃ、行ってきます」
テルディアスが穴を開け、2人の姿が穴の中へ消えて行った。
メリンダ達4人は少し寂しそうにその姿を見送った。帰って来たら、別れの時だ。
2人がやって来たのはあの港町だった所だ。今は何もないまっさらな大地になってしまっている。
キーナは手を合わせて祈った。テルディアスも黙祷を捧げる。
「遠く離れた場所の景色も見られるんだっけ?」
「何処が見たい?」
「う~ん、ミドル王国からかな? お爺さんいる?」
テルディアスが横に手を振ると、目の前にウィンドウのようなものが現われた。お爺さんの部屋の中が見えるが誰もいないようだった。
「あの人は賢者のくせにしょっちゅう何処かに行っているようだから…」
テルディアスが何か集中し始める。
「あ、待って。お爺さんは後でで良いから、次は水の王国、かな?」
ミドル王国を出てサーガと出会い、離ればなれになったテルディアスと再会。その後サーガがくれた情報により、2人は水の王国へ向かったのだ。
「鍵屋のお爺さん元気かな?」
場面が変わり、あの鍵屋が見えた。中へと景色は移り、カウンターで新聞を読んでいるお爺さんが見えた。
「元気そうだね」
お爺さんからもらった泥棒7つ道具は役に立った。向こうの世界へ持って行くことは出来ないので、テルディアスに好きにして貰うように言ってある。
王様の姿も探すと、執務で忙しそうであった。
「ありがとうございます。直接返しには行けないけど、きちんとシアに託しましたから」
聞こえないと分かってはいたが、キーナは王様に向かって軽く頭を下げた。
その時王様が何かに気付いてキョロキョロしたが、場面を移したキーナ達は知らない。
次はキーナが初めてバイトをした、食い逃げしそうになったあのお店。領主の息子はテルディアスの言いつけをしっかり守っていたようで、お店は変わらず建っていた。
中に入ると、お店の奥で腕に赤子を抱いた女将さんの姿。
「生まれたんだ…!」
キーナが食い入るように画面に見入る。赤ん坊は寝ているようで、動かない。女将さんが少しやつれた顔をしているが、その顔は幸せそうだった。
「良かったな」
「うん」
そして場面が切り替わる。
火の村を見るが、特に変わった様子も無さそうだった。大婆様も祭壇に何かを捧げ、祈りを捧げているようだった。
「皆元気そうだね」
地の村も覗いて見る。以前の場所から動いており、稼ぎにでていた男達が戻って来ているらしかった。ちらほらと男性の姿が見える。
ダンのお母さんのテントを覗くと、何か設計図らしき物を見て話し込んでいるようだった。
「新しい村の場所が決まったのかも知れないな」
「さすが開拓一族」
いずれその場所に新しい地の村が出来るのだろう。
「マーサさんは?」
キーナのリクエストでテルディアスの故郷が映し出される。マーサはテルディアスの家で細々とした用事を片付けているようだった。テルディアスの表情が少し柔らかくなる。
「アスティさんは?」
途端にテルディアスの顔が少し渋くなる。道場の方が映し出されるが、生徒達の姿は見えども師範たるアスティの姿がない。
「あの人は…。またどこかでサボってるのか…」
テルディアスが心当たりの場所を映していく。
「あ、ここ!」
キーナが指を指す。と、道場の屋根に人影がある。近づいてみれば屋根の上で寝転がっているアスティだった。
「ちゃんと後進の指導をしろと先生からも口うるさく言われていたはずなのに…」
テルディアスが苦い顔をする。
と、アスティがふいに目を開け、向こうからは見えなハズなのに、こちらに向かって手を振った。
驚いたテルディアスが咄嗟に場面を切り替えてしまう。
「え、向こうからは見えないはずだよね…?」
「そのはずなんだが…」
2人は背筋が寒くなった。
「えと、次は甘味処のアルバイト!」
気持ちを切り替え、2番目のアルバイト先を映し出す。客の入りはそこそこで、それなりに繁盛しているようだった。見たことのない顔の店員が忙しそうに歩き回っている。
「新しい人入ったんだ」
「そうみたいだな」
レイファ達も元気そうに働いていた。ミラの姿が見えないが、2号店のことで駆けずり回っているのかもしれない。
「風の村…は分かる?」
「そうだな…」
テルディアスが何か考えるようにしていたが、場面を切り替えた。そこには舞台の準備をしている一団の姿が。
「もう一回見たかったなぁ」
今日の演目はなんなのだろう。以前と同じものをやるのだろうか。
キーナも多少手伝ったこともあり、なんというか、手を掛けた子供が巣立ったような少し寂しい気持ちがあった。しかし楽しそうに準備をすすめる姿を見て、良かったとも思う。
「いずれサーガも舞台に立つのかな?」
「想像出来んな」
アドリブばかりで劇をぶち壊しにしそうな感じもする。
「あとは、ナト達のお墓の所に行ける?」
「ああ」
ナトとアディ。救えなかった闇と光の者。空間を繋ぎ、墓の前に来ると2人は手を合わせた。
「闇の宮と、水を抜かした賢者達には直接会いに行こうと思うんだけど」
「ああ。伝えなければならないこともあるしな」
水の賢者は会ったこともないので住処も知らない。
まずは闇の宮へと空間を繋げた。
太陽は山の端に姿を消し、残照がその後を追うように消えて行く。世界は夜が支配し始め、遙かに下に見える街の明かりが昼の明かりを名残惜しんでいるように見える。
山の上からの吹き下ろしてくる風が、メリンダの髪を悪戯にさらう。メリンダは無意識のうちに髪を耳にかけた。
「夜に女の一人歩きは危ないぜ?」
後ろから声を掛けられた。振り向かなくともサーガと分かる。
「こんな所にあんた以外の変態がいるわけないでしょう」
「まあ確かに」
肯定するんかい。
遠くの景色がよく見える。と言ってもほとんど森ばかり。暗くなったら所々に点在する街の明かりが見えるくらいになる。夜はあまり面白い景色ではない。
「姐さんさ、これからどうすんだ?」
今まさに悩んでいたことをサーガが聞いて来た。
キーナの旅はここで終わる。明日、この世界からいなくなってしまう。その後は…。
キーナと共にいたいからと一緒に旅をしてきたが、そのキーナがいなくなってしまう。メリンダは暗い海に放り出されたような気持ちだった。
行きたい場所も特にない。いろいろ世界も見て回った気もする。となれば、答えは1つ。火の村へ帰る。
しかしまだ帰りたいとも思えなかった。だからといって何がしたいとも言えない。いや、1つだけしたいというか、共にいたいと思える者はいるが…。なんだか今更な気もして言い出せない。
「・・・・・・」
サーガの問いに答えられずに黙っていると、
「特にないなら、俺と一緒に行かん?」
サーガの方から声を掛けてきた。
思わず横に並んだサーガの顔を見る。サーガは夜の闇に隠れていく景色を眺めていた。その顔は何を考えているのか読めない。
「な、なんで…」
「いや、姐さんと一緒にいると楽しいし、夜の方も困らんし」
そっちかい! と心の中でツッコみ。
此奴の中で自分はその位置から動く事はないのかもしれない、と溜息。なんだか悲しくなってきた。
「1人で行くより姐さんと一緒の方が面白いかなと思ったんだけど。嫌?」
反射的に「嫌」と答えそうになってぐっと堪える。そうじゃない。ここでそう言ってしまえば多分もうサーガとも終わりになってしまう。そんな確信があった。
夜要員だとしても、一緒にいて楽しいと思って貰えているのだ。一緒に行きたいと思って貰えているのだ。自由気ままな此奴がメリンダと共にいたいと思ってくれているのだ。
「い、良いわよ…」
なんとかその言葉を吐き出した。
「え? まじ? へへ、良かった。断わられるかと思った」
サーガが嬉しそうに笑う。
メリンダの胸がきゅうんと高鳴った。
それぞれが食堂を出て行き、お婆さんも何か用があると部屋に入っていった。なんとなく残ったシアとダンは仲良くお茶をすする。
「ダンは、これからどうしますの?」
シアも旅の終わりを感じ取っていた。これから自分がどうしたいのかもよく分かっていなかった。
ダンはちょっと考え、答えを口にする。
「シア、送る。村、帰る」
「私を水の王国まで送ってくださるのですの?」
ダンが頷く。幼いシアに一人旅などさせられない。テルディアスは光の御子を探しに行くだろうし、メリンダも火の村へ帰るだろう。サーガはきっとメリンダを送るはずだ。自分がシアを送らねばとダンは考えていた。
シアも考えてみれば、水の宝玉を探す為に王国を出たのだ。宝玉はすでにテルディアスから渡されて自分の手元にある。目標は達成されている。あとは王国に帰り、水巫女の試練を受け、姫巫女を目指すだけ、なのではあるが…。何か物足りない気がした。
「私を送り届けたら、そのまま地の村まで帰ってしまいますの?」
ダンが頷く。真っ直ぐ帰るとまた母親に怒られるかもしれないので、途中いろいろな街に足を伸ばしてみようかとも考えていた。テルディアス達と旅をしたおかげか、ダンの心にも多少余裕が出来ている。
「そうですの…」
シアの顔が暗くなった。
何故シアの顔が暗くなったのか分からずオロオロするダン。
シアも、何故自分が気を落としているのかよく分かっていなかった。
翌朝。
キーナとテルディアスが共にテルディアスの部屋から出て来た。
テルディアスの顔がどこかすっきりしたものになっているのは、きっとメリンダの気のせいだろう。
そして、それに気付いた。2人の耳飾りが入れ替わっていることに。
朝食が済んですぐに出ようとする2人に、メリンダが声を掛ける。
「せめて前髪だけでも整えてから行きなさい」
肌を隠す為に伸びっぱなしになっていたテルディアスの髪。メリンダがちゃちゃっと整えてくれた。さすがメリンダである。
さっぱりした頭になり、顔も良く見えるようになった。キーナとシアがその顔を見て、何故か顔を赤くしていた。ナンデカナー。
「じゃ、行ってきます」
テルディアスが穴を開け、2人の姿が穴の中へ消えて行った。
メリンダ達4人は少し寂しそうにその姿を見送った。帰って来たら、別れの時だ。
2人がやって来たのはあの港町だった所だ。今は何もないまっさらな大地になってしまっている。
キーナは手を合わせて祈った。テルディアスも黙祷を捧げる。
「遠く離れた場所の景色も見られるんだっけ?」
「何処が見たい?」
「う~ん、ミドル王国からかな? お爺さんいる?」
テルディアスが横に手を振ると、目の前にウィンドウのようなものが現われた。お爺さんの部屋の中が見えるが誰もいないようだった。
「あの人は賢者のくせにしょっちゅう何処かに行っているようだから…」
テルディアスが何か集中し始める。
「あ、待って。お爺さんは後でで良いから、次は水の王国、かな?」
ミドル王国を出てサーガと出会い、離ればなれになったテルディアスと再会。その後サーガがくれた情報により、2人は水の王国へ向かったのだ。
「鍵屋のお爺さん元気かな?」
場面が変わり、あの鍵屋が見えた。中へと景色は移り、カウンターで新聞を読んでいるお爺さんが見えた。
「元気そうだね」
お爺さんからもらった泥棒7つ道具は役に立った。向こうの世界へ持って行くことは出来ないので、テルディアスに好きにして貰うように言ってある。
王様の姿も探すと、執務で忙しそうであった。
「ありがとうございます。直接返しには行けないけど、きちんとシアに託しましたから」
聞こえないと分かってはいたが、キーナは王様に向かって軽く頭を下げた。
その時王様が何かに気付いてキョロキョロしたが、場面を移したキーナ達は知らない。
次はキーナが初めてバイトをした、食い逃げしそうになったあのお店。領主の息子はテルディアスの言いつけをしっかり守っていたようで、お店は変わらず建っていた。
中に入ると、お店の奥で腕に赤子を抱いた女将さんの姿。
「生まれたんだ…!」
キーナが食い入るように画面に見入る。赤ん坊は寝ているようで、動かない。女将さんが少しやつれた顔をしているが、その顔は幸せそうだった。
「良かったな」
「うん」
そして場面が切り替わる。
火の村を見るが、特に変わった様子も無さそうだった。大婆様も祭壇に何かを捧げ、祈りを捧げているようだった。
「皆元気そうだね」
地の村も覗いて見る。以前の場所から動いており、稼ぎにでていた男達が戻って来ているらしかった。ちらほらと男性の姿が見える。
ダンのお母さんのテントを覗くと、何か設計図らしき物を見て話し込んでいるようだった。
「新しい村の場所が決まったのかも知れないな」
「さすが開拓一族」
いずれその場所に新しい地の村が出来るのだろう。
「マーサさんは?」
キーナのリクエストでテルディアスの故郷が映し出される。マーサはテルディアスの家で細々とした用事を片付けているようだった。テルディアスの表情が少し柔らかくなる。
「アスティさんは?」
途端にテルディアスの顔が少し渋くなる。道場の方が映し出されるが、生徒達の姿は見えども師範たるアスティの姿がない。
「あの人は…。またどこかでサボってるのか…」
テルディアスが心当たりの場所を映していく。
「あ、ここ!」
キーナが指を指す。と、道場の屋根に人影がある。近づいてみれば屋根の上で寝転がっているアスティだった。
「ちゃんと後進の指導をしろと先生からも口うるさく言われていたはずなのに…」
テルディアスが苦い顔をする。
と、アスティがふいに目を開け、向こうからは見えなハズなのに、こちらに向かって手を振った。
驚いたテルディアスが咄嗟に場面を切り替えてしまう。
「え、向こうからは見えないはずだよね…?」
「そのはずなんだが…」
2人は背筋が寒くなった。
「えと、次は甘味処のアルバイト!」
気持ちを切り替え、2番目のアルバイト先を映し出す。客の入りはそこそこで、それなりに繁盛しているようだった。見たことのない顔の店員が忙しそうに歩き回っている。
「新しい人入ったんだ」
「そうみたいだな」
レイファ達も元気そうに働いていた。ミラの姿が見えないが、2号店のことで駆けずり回っているのかもしれない。
「風の村…は分かる?」
「そうだな…」
テルディアスが何か考えるようにしていたが、場面を切り替えた。そこには舞台の準備をしている一団の姿が。
「もう一回見たかったなぁ」
今日の演目はなんなのだろう。以前と同じものをやるのだろうか。
キーナも多少手伝ったこともあり、なんというか、手を掛けた子供が巣立ったような少し寂しい気持ちがあった。しかし楽しそうに準備をすすめる姿を見て、良かったとも思う。
「いずれサーガも舞台に立つのかな?」
「想像出来んな」
アドリブばかりで劇をぶち壊しにしそうな感じもする。
「あとは、ナト達のお墓の所に行ける?」
「ああ」
ナトとアディ。救えなかった闇と光の者。空間を繋ぎ、墓の前に来ると2人は手を合わせた。
「闇の宮と、水を抜かした賢者達には直接会いに行こうと思うんだけど」
「ああ。伝えなければならないこともあるしな」
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