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16、いきなり~ 終わり~

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    「やっ…、ジン…触っちゃ…やだ」
ジンが私に優しく触れる。
「大丈夫…。ここ…か?」
指でつつっ…と撫でる。
「ひゃん!だめぇ…」
耐えきれず声が出てしまう。
 「…こっちは?」ジンが顔を近付ける。
息がかかってくすぐったい。
「あ…、そこ…も…!」
「ここも…か」ふーっと息を吐く。

「あぁ…ん!」
少し痛かったので、涙がたまる。
ふるふる震えジンを上目遣いで見る。




ちゅっと、ジンは私の指を舐めた。
「さあ、指に刺さってたトゲは抜けたぞ!」
「ありがとう、ジン!」
私はぎゅっとジンに抱きつく。


椅子に座りその様子を見ていたニトリさんは
「トゲは穴のあいたコインを使うと楽に抜けるって聞いたことあったわよね…」
はーっとため息をはき、
「甘いわ…砂糖吐きそう」と整った顔を歪めて言った。

「お前、邪魔なんだけど」
ジンはニトリさんに容赦なく言った。

「仕事してよ、ジン」
ニトリさんは王様の要請でこちらの国で働く事になった。ここは王様専用の仕事するお部屋。私は結婚式を挙げた後、母国に帰り色々な手続きを行い 済ませて来た。

一ヶ月ぶりにジンと会った。(ニトリさんとも)
部屋に薔薇を飾ろうとしていたら、小さなトゲが刺さってしまった。二ヶ所も。
私は自分で抜くって言ったのだけれど、ジンがピンセットでトゲを抜いてくれた。
優しい(はあと)

「そんな腑抜けてて大丈夫なの?」
ニトリさん…王様になんて口を聞くのだろう。大丈夫かしら。
「リルがいるからな。刺客や暗殺に気を付けるぞ!」
「いやあぁ!ジン死んじゃ駄目!!」
更に抱きつく。
「ちょっとぉ…。私の前でイチャイチャしないでよ!」
ニトリさんが机をバン!と叩いた。

「じゃあ、私は自分の部屋へ行くわね?」
抱きついたままジンを見上げた。
「待っていろ」
ジンが私を見つめて…。
「さっさと行きなさい!」
ニトリさんが邪魔をした。
カチャ!
「ん?ジン駄目!剣を抜いちゃ駄目!」
「邪魔をしやがって…」
「ジン!いけません!仕事をしなさい!」
カチャ。剣をしまった。

「強い…」
「ニトリさんごめんなさい。仕事場にお邪魔した私が悪かったわ。ジンに呼ばれた時か、急用か、何かお手伝いする時にしかここには来ないようにするわ」ペコリと頭を下げた。

「…本当、良い子ね。ジンやめて私を夫にしない?まだ間に合うわ。可愛がってあ・げ・る」
「えっ…ニトリさん?」
にっこり笑うニトリさん。
にっこり黒い笑みを浮かばせるジン。
どちらも怖い…。

「じ、じゃ、またあとでねジン。ニトリさんまた明日!」そう言って部屋を出て行った。


「余計なお世話かもしれないケド、リルちゃんってさあ…」
「お前が思っている通りだと思う」
「まだ、手を出してなかったの?」
「お前は手を出してないだろうな?」
部屋の温度が下がった気がした。
「手を出したかった所だけど、ジンの顔が浮かんじゃって、ねー?」
ニトリさんは立ち上がり
「お茶でも飲む?」
「ああ」

「明日から一週間、休暇を取る」

ブー!ニトリさんが口からお茶をふいた!
「汚ない」ジンがハンカチを投げた。

「またなの!?いきなり!休暇!?」
「拭け」
ぶつぶつ言いながら、
「気持ちはわかるけど…仕事はどうするのよ?」
ポンポン濡れた所をハンカチで拭く。
「助けを呼んだ。入れ!」

カチャ!扉が開く。
ニトリ「ビバ!カインズまで!?」
カインズ「久しぶり~!ジン、ニトリ」
ビバ「来たぞ」
ギルン「私もお手伝い致します」

ジン「紹介したい人がいる。入れ」
謎の女性「初めまして」
謁見の時にジンの側にいた、美女だ。
「母は違うがの俺の実の姉だ」初耳だ。

「マティーアです。この国の宰相をしています。皆さんを歓迎します」
やはり、どことなくジンに似ている。美人だ。
「…と、言う訳でリルとお忍び旅行に行ってくる。あとはよろしく」
さっさと部屋を出て行った。

「大丈夫!?この国!」ニトリが叫んだ。

クスクス…。マティーアさんが笑い
「事務仕事はジンがいない方がはかどる。重要な書類は目を通してもらうから」
やや男っぽい話し方だ。
「私は最近まで命を狙われていて軍で男として潜んでいたの」
「でも、ジンや皆さんが来てくれて自由になったわ。ありがとう」
ペコリと頭を下げる。

「よろしくね」
ニトリがマティーアの手を取る。
続いて皆も。
ニトリ「ジンとリルちゃんに行ってらっしゃいと言うしかないかー」
ビバ「だな」
カインズ「仕方がない」




リルとジンの影武者!をたて(そっくりだった)、お忍び旅行に出かけた。
母国に帰り、リルの両親のお墓に行った。
「連れて来てくれてありがとう、ジン」
「二年ぶりかな?俺は…」
二人で無言でお墓にお花を供える。

「お父さんお母さん、ジンは王様になり私はジンのお嫁さんになりました」
「そう聞くと凄いな」
うふふとリルは笑った。
「そうね…16歳の誕生日からいきなり、色々あったわ」

「幸せにする」
「幸せになるし、ジンを幸せにします」
ふっ…とジンは笑い
「リルらしいな」
「でしょう?」
ふふふ…と可愛らしい笑顔を見せた。

二人で幸せになります。
お父さんお母さん見守っててね。





                                                     
                                         ~おわり~







 
~~~~~



※ここからほんのちょっとだけR18になります。
苦手な方はご遠慮下さい。




高級!な宿をジンのお姉さんが(私にお姉さんを紹介してくれた。美人)手配してくれた。高級宿に泊まるのは初めてなのでドキドキした。
「凄いわ~。ジンは泊まった事ある?」とリルは無邪気に聞いて来た。
「ここは新婚さん専用の宿だから、ない」
「そうなんだ」

リルは部屋を見渡し、お風呂を見ている。

「一緒に入るか?」
ばっ!と振り返り顔が真っ赤になってくる。
「こ、ここにくる前にジンのお姉さんに『良い妻になる為に』というタイトルの本をもらったの。あと、その…、初夜について色々教わったの。だけど、【一緒にお風呂】は書いて無かったわ…」
ジンは『しまった。上級者過ぎたか』と心の中で思った。
「そうか。【一緒にお風呂】はそのうちな」
「は、はい」

その『良い妻になる為に』という本。気になる。とジンは思った。

「先に風呂に入る」とジンが言って風呂に行った。
私は自分の荷物を整理してジンがお風呂から出てくるのを待った。
新婚さん専用の宿かぁ…。
確かに物が二つずつ。
…正直言うと16歳まで一緒に暮らしていたから、結婚して何が変わるのかしら?
一緒に暮らせるのは嬉しいけれど。

「リル、風呂に」
ジンが頭からタオルをかぶって出てきた。
薄手の寝間着を着ている。
「行って来ます」

ん?ベッドの上に置いてあるのは…?
タイトル『良い妻になる為に』本だ。これか…。見よう。
パラパラ…パラパラ。…パタン。
…いつの時代の本だ?ひどい。
肝心な説明が載ってない!
「夫の三歩後ろを歩け?はあ…」
先に姉に教えるべきだったかな…。

「ジン?」
いつの間にかリルが風呂から出てた。
「これは参考にならない。俺が教えてやるから」キリッ!
リルにそう言って振り返った。

「そうなの?」と言ったリルの姿は、少し透けた布の可愛らしいベビードールの寝間着だった。胸元にはリボン。柔らかい布(オーガンジー)で作られたピンクのベビードール。太ももあたりから足が出ている。ギリギリ見えない。

「リ、リル、その寝間着は?いつもその寝間着なのか?」可愛いくてクラクラする。
「ニトリさんからのプレゼントなの。結婚したら着なくちゃ駄目だって…恥ずかしいけど」
恥ずかしがっているリルが…可愛い。

ニトリからのプレゼントと言うのが気に入らないが、奴はセンスが良いからな…。許す。


「おいで」
「ジン」

電気を消した。



「え?」


「ええ?」



「えええ!」






 ………………



チュンチュン!鳥が鳴いている。
朝だ。


い、色々と衝撃的でした…。
お姉さんに聞いたのと全然違う。
隣にいるジンを見ると、まだすーすーと寝息が聞こえてくる。

顔の傷。
私の知らない二年間。大変だったでしょう。
でもこうして再び会えた。

これからはずっと一緒。




         ~おしまい~


 ~~~~~




本当に完結。
ありがとうございました。
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