BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

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その後 二人の物語

54.【完結】アランと一緒にいつまでもいたい

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  あれから2年後――。

 僕は20歳になる。今もアランのお屋敷に住んでいる。
 英雄騎士 アランのお菓子&喫茶店【猫の舌】と僕のアクセサリー屋【猫の目】も好評だ。

 争いが治まり平和になって、獣人と和平が結ばれた。しかし争いがなくなったと思っていたら魔物……、動物が何らかの影響で、魔物化して人を襲うようになってきた。

 アランは騎士団長として再び剣を握り、人々のために戦っていた。
 僕は特級魔法使いとして、アランに寄り添って戦った。

 今の所は魔物はリヴァイさんと僕の、国を覆う結界のため魔物の侵入は防げている。
 ただ、この魔物の増え方は異常だ。

「アラン、気になるよね?」
お屋敷の部屋でくつろいでいた。
 僕はソファで、アランに後ろから抱っこされて座っていた。ため息が多くなったアランに話しかけた。

「そうだな……。守りばかりじゃ、疲労するだけだ」
ギュッと後ろから、僕に抱きついてきた。
 魔物化した動物は、どのように発生していくのかまだ解明されていない。襲ってきた魔物を迎え撃つのみだった。

「今の所は、ルカとリヴァイが国全体を覆った結界によって守られている」
「うん」
だけど、いつ破られるか分からない。

「どうしたものか……」
また眉間のシワが深くなった。思わず、アランの眉間のシワを指で伸ばした。
アランのお店を開店してから、アランを怖がる人も減った。
『こんな美味しいお菓子を作る、英雄騎士様は素敵』と言われて人気だ。
 ちょっと僕はヤキモチを焼いた。

「うーん。アランを始め、騎士団の騎士さん達が頑張ってくれているから大丈夫とは思うけど……。原因を探さないことには、終わりがない感じがするね」
 本当にどうしたものか。

「あ、明日はアランの休日でしょう? いつも休日はお店に顔を出す予定だけど、どうする?」
 疲れているのかなと思い、聞いてみる。アランはスリ……と頬ずりし、いつものように僕を包むように抱きしめた。

「店には顔を出す」
「そう? 大丈夫?」
 ああ。と返事があった。こんな感じのときのアランは、しばらく僕から離れない。
 耳に触れたり、髪の毛を触ったり、しっぽを撫でたりする。

 変わらず僕の、髪の毛の手入れはアランがしている。お世話好き……という感じじゃないけど。
「ルカの兄……と戦ったあの時、髪の毛を切ってしまっただろう? あの時の事が悔しくて」
 アランが、ボソッっと話してくれた。

「あの時は、切って逃げようとするしかなくて……」
「分かっている。ルカは悪くない」
 ああ……。アランは自分を責めているんだ。僕は後ろを振り向いて、アランの顔を見た。

「髪の毛は伸びたし、アランが手入れをしてくれているおかげで綺麗になったよ。もう自分を責めないで」
 アランにそう言って抱きついた。
この人は地位も力も実力も、何でも持っている人なのに威張らず心優しい。
 
「大好き」
「う、うむ」
そして、未だに照れる所が可愛い。
 
「……明日は早めに、先にお店に行く。ルカはいつもの時間に来い」
「え? あ、分かった」
 注文が入ったのかな? 仕方がない。

「そろそろ眠ろう。ルカ、行こう」
「うん」
 僕とアランは一緒の部屋で眠る。アランが窮屈で眠れないかと思ったけれど、ベッドは広くて余裕があった。

 アランに包まれて眠る。悪夢は見ない。
「ドリームキャッチャーが飾ってあるからな。安心しろ」
 そう言って抱きしめてくれる。
でもアランが抱きしめてくれているから、もう悪夢は見ない。

「お休み」
温かいぬくもり。離したくない。
「お休みなさい」



 次の日。
アランは先にお店に出かけた。僕はいつもの時間に、お店に向かった。アランのお休みの日は、僕と一緒にお店に行くのに珍しいな。ちょっと寂しい。

 移動の魔法陣に乗れば、すぐに僕のお店の寝室に移動できる。
 お店では、以前のようにローブを着る。これが僕の制服みたいなものだから。
 でも、もう前髪で顔を隠したりしない。

 ローブを着て、寝室から移動をする。
「お早う!」
 お店【猫の目】の、僕の代わりに店番してくれているリファ君に挨拶する。
「あっ! ルカさん、お早う御座います」
 ペコリと深く頭を下げる。真面目な人だ。

「店内と、お店の外の掃除は終わってます。足りない商品は補充しておきました」
「ありがとう」
 とても助かっている。店内は、僕より整理整頓されていて綺麗だ。

中で繋がっている、隣のアランのお店に顔を出す。
 
「お早う……、わっ!」
 突然、パーン! とクラッカーが鳴り、僕にめがけて色とりどりのテープや紙吹雪が飛んできた。 

「お誕生日、おめでとう御座います!」
 【猫の舌】の従業員さん達に、クラッカーを鳴らされた。
「誕生日、おめでとう。ルカ」
そう言って、奥から大きなホールケーキを運んできたのはアラン。

 今日早く出かけたのは、このため?
色々忙しくて、すっかり自分の誕生日なんて忘れていた。

「おめでとう御座います~!」
【猫の目】の店番のリファも加わり、皆で祝ってくれた。

「あり、がとう……みんな」
アランを見上げると、頷いた。
 テーブルに置かれた大きなケーキ。アランが作った果物がたくさん乗って、綺麗で美味しそう。

「さあ、ローソクを消して。先に願いを思い浮かべるんだ」
 アランが僕に言う。……何を願おう。

「……」
頭の中で願いを思い浮かべる。
 ふ――っ! 
パチパチパチパチパチパチ!
「おめでとう御座います! ルカさん」

 ローソクの火が消えて、煙が一瞬漂う。
僕は幸せだ。
「ありがとう」

「開店前だから、簡単に済ませてすまん。皆で祝いたかった。帰ってから二人で祝おう」
 皆で祝いたかったと言ってくれたアラン。嬉しい。

 美味しそうなケーキを切り分けて、皆で食べて祝ってもらった。賑やかに皆に祝福され、プレゼントまでもらってしまった。
 ケーキはもちろん、美味しかった。

「ルカ。願いごとは、なんだ?」
アランが聞いてくる。あまりこういうことは、聞いてこないのに。

「それはね……」

 アランの耳にこっそりと伝えた。
感謝と、アランに『愛してる』
 願いごとは……。

               END

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