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四章
新たな出発
半月程の療養を終えて、アルベルトとユーフォリアは再び共に城砦の門を潜った。
「……よく戻られました。お身体はもう大事ないので?」
城の入り口で二人を出迎えたレオネルが、酷く疲れ切った顔でそう問うた。世話をかけた、とアルベルトが端的に礼を言い、レオネルは深いため息を吐く。執務室へと向かいながら手短になされた報告によると、件の男は投獄され、やはり一切の立場を剥奪されるとのことだった。屋敷内に飼われていた魔獣が市井へと放たれることはなく、大半は玄関ホールと応接室で骸となり、残った僅かな個体も火に巻かれて命を落としたとレオネルが続ける。話しながら、レオネルはユーフォリアの顔色を伺った。そこに含まれた意図を察して、ユーフォリアは首を横に振る。
「街に被害が出なくて、それからレオネルたちが喰われなくて良かった。レオネルの怪我は? 折れたところ治った?」
「はい、既に完治しております。手加減をして頂いて何よりでした」
少し棘の含まれた返答に、ユーフォリアが苦笑して小声で謝罪を返した。
そうしているうちに、三人の足が執務室へと辿り着く。レオネルが開いた扉の先には、あの時燃え盛る屋敷の門のところで見た顔ぶれが並び立っていた。隊士たちは室内へと足を踏み入れたアルベルトに揃って敬礼した後で、続いて入ってきたユーフォリアへと向き直る。彼女の背後で扉を閉めて、レオネルが彼らの先頭へと立ち、ユーフォリアへと一礼した。
「改めて、よくお戻りになられました。アルベルト騎士団長閣下、それからユーフォリア団長補佐。危うく部隊を発足して早々に頭領を失うかと思いました」
顔を上げながら嘆息混じりに続けられた言葉に、レオネルの背後に立つ男のうち数人が笑い声を漏らす。彼らの顔にもいずれも深い疲労が刻まれており、如何にこの二週間が大変であったのかを物語っていた。
既に執務机へとついたアルベルトが、机上の書類の山を簡単に確認してから、そのうちの幾つかの束を抜き出す。ユーフォリアを軽く呼びつけると、彼女の足はすぐに机の正面へと立った。
「ユーフォリア騎士団長補佐、既に告げたように、彼らをお前の部隊とする。正式な辞令はここに、今後は個人ではなく隊をもって任へと当たれ」
「はい、承知致しました、アルベルト騎士団長閣下。責任をもって、彼らの命を預からせて頂きます」
差し出された書束を受け取り、ユーフォリアが一礼する。分厚い束の中には部隊の発足に関するものだけではなく、街の治安維持や先日の件の後処理に関する仕事も含まれていた。内容を一瞥して、ユーフォリアはそれらの束を机で軽く揃えると、背後に並ぶ隊士たちへと振り返る。
「不在の間をどうもありがとう。もうあのようなことはないように尽力するので、引き続き力添えをお願いします」
そう言って一度頭を下げると、すぐに上がった顔の中央で金の双眸が隊士たちの顔を見渡した。うん、と一つ頷くと、手にした書束を反対の手で軽く叩く。
「見ての通り、仕事が沢山です。まず手始めに、東の湿地帯に現れたという魔獣の討伐に出て、帰りに平原の哨戒、あと街の様子も見て回りたいから……準備をして十五分後に城門に集合。いい?」
「いい訳ないでしょう。何日かかる任務だと思ってるんですか。処理仕事を後回しにしたいからといって無茶言わないでください」
即座に返されたレオネルの淡々とした返答に、ユーフォリアはぎくりとした表情を浮かべてから肩を落とす。その肩を何人かの馴染みの隊士たちが軽く叩いた。
「……よく戻られました。お身体はもう大事ないので?」
城の入り口で二人を出迎えたレオネルが、酷く疲れ切った顔でそう問うた。世話をかけた、とアルベルトが端的に礼を言い、レオネルは深いため息を吐く。執務室へと向かいながら手短になされた報告によると、件の男は投獄され、やはり一切の立場を剥奪されるとのことだった。屋敷内に飼われていた魔獣が市井へと放たれることはなく、大半は玄関ホールと応接室で骸となり、残った僅かな個体も火に巻かれて命を落としたとレオネルが続ける。話しながら、レオネルはユーフォリアの顔色を伺った。そこに含まれた意図を察して、ユーフォリアは首を横に振る。
「街に被害が出なくて、それからレオネルたちが喰われなくて良かった。レオネルの怪我は? 折れたところ治った?」
「はい、既に完治しております。手加減をして頂いて何よりでした」
少し棘の含まれた返答に、ユーフォリアが苦笑して小声で謝罪を返した。
そうしているうちに、三人の足が執務室へと辿り着く。レオネルが開いた扉の先には、あの時燃え盛る屋敷の門のところで見た顔ぶれが並び立っていた。隊士たちは室内へと足を踏み入れたアルベルトに揃って敬礼した後で、続いて入ってきたユーフォリアへと向き直る。彼女の背後で扉を閉めて、レオネルが彼らの先頭へと立ち、ユーフォリアへと一礼した。
「改めて、よくお戻りになられました。アルベルト騎士団長閣下、それからユーフォリア団長補佐。危うく部隊を発足して早々に頭領を失うかと思いました」
顔を上げながら嘆息混じりに続けられた言葉に、レオネルの背後に立つ男のうち数人が笑い声を漏らす。彼らの顔にもいずれも深い疲労が刻まれており、如何にこの二週間が大変であったのかを物語っていた。
既に執務机へとついたアルベルトが、机上の書類の山を簡単に確認してから、そのうちの幾つかの束を抜き出す。ユーフォリアを軽く呼びつけると、彼女の足はすぐに机の正面へと立った。
「ユーフォリア騎士団長補佐、既に告げたように、彼らをお前の部隊とする。正式な辞令はここに、今後は個人ではなく隊をもって任へと当たれ」
「はい、承知致しました、アルベルト騎士団長閣下。責任をもって、彼らの命を預からせて頂きます」
差し出された書束を受け取り、ユーフォリアが一礼する。分厚い束の中には部隊の発足に関するものだけではなく、街の治安維持や先日の件の後処理に関する仕事も含まれていた。内容を一瞥して、ユーフォリアはそれらの束を机で軽く揃えると、背後に並ぶ隊士たちへと振り返る。
「不在の間をどうもありがとう。もうあのようなことはないように尽力するので、引き続き力添えをお願いします」
そう言って一度頭を下げると、すぐに上がった顔の中央で金の双眸が隊士たちの顔を見渡した。うん、と一つ頷くと、手にした書束を反対の手で軽く叩く。
「見ての通り、仕事が沢山です。まず手始めに、東の湿地帯に現れたという魔獣の討伐に出て、帰りに平原の哨戒、あと街の様子も見て回りたいから……準備をして十五分後に城門に集合。いい?」
「いい訳ないでしょう。何日かかる任務だと思ってるんですか。処理仕事を後回しにしたいからといって無茶言わないでください」
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