【完結】混血の狼少女は厳格な騎士団長に溺愛される

宵乃凪

文字の大きさ
30 / 33
四章

新たな出発

 半月程の療養を終えて、アルベルトとユーフォリアは再び共に城砦の門を潜った。
「……よく戻られました。お身体はもう大事ないので?」
 城の入り口で二人を出迎えたレオネルが、酷く疲れ切った顔でそう問うた。世話をかけた、とアルベルトが端的に礼を言い、レオネルは深いため息を吐く。執務室へと向かいながら手短になされた報告によると、件の男は投獄され、やはり一切の立場を剥奪されるとのことだった。屋敷内に飼われていた魔獣が市井へと放たれることはなく、大半は玄関ホールと応接室で骸となり、残った僅かな個体も火に巻かれて命を落としたとレオネルが続ける。話しながら、レオネルはユーフォリアの顔色を伺った。そこに含まれた意図を察して、ユーフォリアは首を横に振る。
「街に被害が出なくて、それからレオネルたちが喰われなくて良かった。レオネルの怪我は? 折れたところ治った?」
「はい、既に完治しております。をして頂いて何よりでした」
 少し棘の含まれた返答に、ユーフォリアが苦笑して小声で謝罪を返した。
 そうしているうちに、三人の足が執務室へと辿り着く。レオネルが開いた扉の先には、あの時燃え盛る屋敷の門のところで見た顔ぶれが並び立っていた。隊士たちは室内へと足を踏み入れたアルベルトに揃って敬礼した後で、続いて入ってきたユーフォリアへと向き直る。彼女の背後で扉を閉めて、レオネルが彼らの先頭へと立ち、ユーフォリアへと一礼した。
「改めて、よくお戻りになられました。アルベルト騎士団長閣下、それからユーフォリア団長補佐。危うく部隊を発足して早々に頭領を失うかと思いました」
 顔を上げながら嘆息混じりに続けられた言葉に、レオネルの背後に立つ男のうち数人が笑い声を漏らす。彼らの顔にもいずれも深い疲労が刻まれており、如何にこの二週間が大変であったのかを物語っていた。
 既に執務机へとついたアルベルトが、机上の書類の山を簡単に確認してから、そのうちの幾つかの束を抜き出す。ユーフォリアを軽く呼びつけると、彼女の足はすぐに机の正面へと立った。
「ユーフォリア騎士団長補佐、既に告げたように、彼らをお前の部隊とする。正式な辞令はここに、今後は個人ではなく隊をもって任へと当たれ」
「はい、承知致しました、アルベルト騎士団長閣下。責任をもって、彼らの命を預からせて頂きます」
 差し出された書束を受け取り、ユーフォリアが一礼する。分厚い束の中には部隊の発足に関するものだけではなく、街の治安維持や先日の件の後処理に関する仕事も含まれていた。内容を一瞥して、ユーフォリアはそれらの束を机で軽く揃えると、背後に並ぶ隊士たちへと振り返る。
「不在の間をどうもありがとう。もうあのようなことはないように尽力するので、引き続き力添えをお願いします」
 そう言って一度頭を下げると、すぐに上がった顔の中央で金の双眸が隊士たちの顔を見渡した。うん、と一つ頷くと、手にした書束を反対の手で軽く叩く。
「見ての通り、仕事が沢山です。まず手始めに、東の湿地帯に現れたという魔獣の討伐に出て、帰りに平原の哨戒、あと街の様子も見て回りたいから……準備をして十五分後に城門に集合。いい?」
「いい訳ないでしょう。何日かかる任務だと思ってるんですか。処理仕事を後回しにしたいからといって無茶言わないでください」
 即座に返されたレオネルの淡々とした返答に、ユーフォリアはぎくりとした表情を浮かべてから肩を落とす。その肩を何人かの馴染みの隊士たちが軽く叩いた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

敵国に嫁いだ姫騎士は王弟の愛に溶かされる

今泉香耶
恋愛
王女エレインは隣国との戦争の最前線にいた。彼女は千人に1人が得られる「天恵」である「ガーディアン」の能力を持っていたが、戦況は劣勢。ところが、突然の休戦条約の条件により、敵国の国王の側室に望まれる。 敵国で彼女を出迎えたのは、マリエン王国王弟のアルフォンス。彼は前線で何度か彼女と戦った勇士。アルフォンスの紳士的な対応にほっとするエレインだったが、彼の兄である国王はそうではなかった。 エレインは王城に到着するとほどなく敵国の臣下たちの前で、国王に「ドレスを脱げ」と下卑たことを強要される。そんなエレインを庇おうとするアルフォンス。互いに気になっていた2人だが、王族をめぐるごたごたの末、結婚をすることになってしまい……。 敵国にたった一人で嫁ぎ、奇異の目で見られるエレインと、そんな彼女を男らしく守ろうとするアルフォンスの恋物語。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜

こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました! ※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)  狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。  突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。  だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。  そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。  共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?  自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。

【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました

ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。 名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。 ええ。私は今非常に困惑しております。 私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。 ...あの腹黒が現れるまでは。 『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。 個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする

葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。 そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった! ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――? 意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話