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王都にて
バーバラ 1
困ったことになってしまいました。
私はほうっと溜息をついて辺りを見回しますが、狭い部屋に閉じ込められていますので何もないのはすぐに分かります。
何度部屋の中を見回しても、ここには私とアーカード様と見知らぬ女性しかおりません。
しかもアーカード様は両手を後ろ手で縛られ両足も縛られて寝転がされていて、私と見知らぬ女性は両手をきつく縛られております。
一体何が起こっているのでしょうか。
先日、私とニコル兄様はアルトワイス伯爵領から王都へとやって来たばかりです。
もちろん遊びに来たわけではなく、リカルド様が送ってきた離縁届を提出するためと、リカルド様との結婚が【 白い結婚 】だったと神殿で認めていただくためでした。
ですから、王都に到着後すぐに神殿に赴き、神官様にお話しをしたのですが、【 白い結婚 】を認めてもらうには、魔力を持つ司教様に見ていただかなくてはなりません。
神殿にいらっしゃる魔力持ちの方は冠婚葬祭を取り仕切るだけでなく、治癒を施したり鑑定してくださったりと、様々な分野で力を発揮されています。そのためどうしてもお忙しく、なかなか予約が取れない事もあるのだとか。
けれど私の場合は【 白い結婚 】の判定ですので、鑑定が使える司教様に見ていただかなくてはなりません。そしてその司教様が3日後の昼前なら時間が空くと教えて頂いたので、その時間に予約をさせていただきました。
3日後に私は司教様を尋ねて神殿に行き、【 白い結婚 】の判定をいただくことが出来ました。
なので離縁届共に提出したのです。
これで私はバーバラ・アルトワイス騎士爵夫人ではなくなり、ただのバーバラになったのです。
そんな思いを胸に神殿を後にすれば、なぜかアーカード様が私を待っていらっしゃいました。
聞けば、わざわざニコル兄様の滞在先を調べて、私に会いに来てくれたのだそうです。そして神殿に行っている事を知ったアーカード様は、私を迎えに来てくれたらしいのです。
一体どのようなご用件があるのでしょうか。
私はふとそんな事を思いましたが、アーカード様に再会できたことは少しだけ嬉しくもありました。
アーカード様もお義父様ーーいえ、もう離縁が成立しましたのでアルトワイス伯爵様でございますねーーの代理として、今回の王太子殿下主催の夜会へ参加されるために、王都にいらっしゃるとは聞いておりましたから、まさかアーカード様から会いに来てくださるとは思わなかったのです。
なぜなら離縁ことになってしまいましたから。
それにルーベンス子爵家に戻るつもりのない私は、ただの平民の女性という事になります。
ですから、そんな私が貴族の嫡男様であるアーカード様にお会いする機会はもうないと思っていたのです。
だというのに、どうして私はアーカード様と一緒に人攫いにあったのでしょうか。
先ほどからそれを考えているのですが、どうしてもよく分かりません。
私は今一度、その時の事を思い返してみました。
アーカード様と再会して、女性の一人歩きは危ないからと、お世話になっているバイエル公爵邸まで送って行くと仰っていただいて。
本当なら貴族であるアーカード様にそんな事をして貰ってはいけないのでしょうけれど、一人の女性として扱ってくださるアーカード様に嬉しいと思ってしまったのです。
そして二人で歩きだして。
そうです。あの時、不意にアーカード様が、「つけられている」とそう仰ったのです。
いきなりぐいっと私の肩を抱き寄せて、誰かにつけられていると言われているにも関わらず、ドキドキしたことを覚えております。
いえ、それはいいのです。
私は頭をふるりと振りました。
今はそんな事を考えている場合ではありません、頭の隅に追いやりましょう。
だって今思い返したら、またドキドキしてしまいそうですもの。
そう、それで。
足早に大通りに向けて歩き始めた私たちの前に一台の馬車が停まりました。
何の変哲もない普通の馬車だったはずです。
そして馬車のドアが開いて、そこにいたのは。
「神官様?」
そうです。あの時、馬車から神官様が下りて来て、私は何か不備でもあったのかと、そう思い。
そこで私の意識は途切れておりました。
となると私は神官様に攫われたというのでしょうか。
でもそんな事はあり得ないとも思いました。
だって相手は神官様です。私を攫う理由など思いつきません。
だとしたらアーカード様でしょうか。けれど、やはり貴族の嫡男様を神官様が攫う理由など考えもつかないのです。
本当は神官様は関係がないとか。
私の記憶はそこで途切れておりますから、神官様と人攫いとは別なのかもしれません。
「あ、あのぉ、大丈夫、ですか?」
私が一人でぐるぐると考え込んでおりますと、この部屋に最初から閉じ込められていた女性が、恐る恐る声をかけてきました。
ああ、そうですわ。彼女に聞いてみればいいのです。
私はそう思うと、少し距離を開けて私を見ている女性に視線を向けました。
その人はまるで人参のような鮮やかなオレンジ色の髪に明るい緑色の目をした女性でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
王都編? 開幕です。
謎解きの部分もあるため、視点がこまめに切り替わっていきます。
少し読みづらくなるかもしれませんが、ご了承ください。
私はほうっと溜息をついて辺りを見回しますが、狭い部屋に閉じ込められていますので何もないのはすぐに分かります。
何度部屋の中を見回しても、ここには私とアーカード様と見知らぬ女性しかおりません。
しかもアーカード様は両手を後ろ手で縛られ両足も縛られて寝転がされていて、私と見知らぬ女性は両手をきつく縛られております。
一体何が起こっているのでしょうか。
先日、私とニコル兄様はアルトワイス伯爵領から王都へとやって来たばかりです。
もちろん遊びに来たわけではなく、リカルド様が送ってきた離縁届を提出するためと、リカルド様との結婚が【 白い結婚 】だったと神殿で認めていただくためでした。
ですから、王都に到着後すぐに神殿に赴き、神官様にお話しをしたのですが、【 白い結婚 】を認めてもらうには、魔力を持つ司教様に見ていただかなくてはなりません。
神殿にいらっしゃる魔力持ちの方は冠婚葬祭を取り仕切るだけでなく、治癒を施したり鑑定してくださったりと、様々な分野で力を発揮されています。そのためどうしてもお忙しく、なかなか予約が取れない事もあるのだとか。
けれど私の場合は【 白い結婚 】の判定ですので、鑑定が使える司教様に見ていただかなくてはなりません。そしてその司教様が3日後の昼前なら時間が空くと教えて頂いたので、その時間に予約をさせていただきました。
3日後に私は司教様を尋ねて神殿に行き、【 白い結婚 】の判定をいただくことが出来ました。
なので離縁届共に提出したのです。
これで私はバーバラ・アルトワイス騎士爵夫人ではなくなり、ただのバーバラになったのです。
そんな思いを胸に神殿を後にすれば、なぜかアーカード様が私を待っていらっしゃいました。
聞けば、わざわざニコル兄様の滞在先を調べて、私に会いに来てくれたのだそうです。そして神殿に行っている事を知ったアーカード様は、私を迎えに来てくれたらしいのです。
一体どのようなご用件があるのでしょうか。
私はふとそんな事を思いましたが、アーカード様に再会できたことは少しだけ嬉しくもありました。
アーカード様もお義父様ーーいえ、もう離縁が成立しましたのでアルトワイス伯爵様でございますねーーの代理として、今回の王太子殿下主催の夜会へ参加されるために、王都にいらっしゃるとは聞いておりましたから、まさかアーカード様から会いに来てくださるとは思わなかったのです。
なぜなら離縁ことになってしまいましたから。
それにルーベンス子爵家に戻るつもりのない私は、ただの平民の女性という事になります。
ですから、そんな私が貴族の嫡男様であるアーカード様にお会いする機会はもうないと思っていたのです。
だというのに、どうして私はアーカード様と一緒に人攫いにあったのでしょうか。
先ほどからそれを考えているのですが、どうしてもよく分かりません。
私は今一度、その時の事を思い返してみました。
アーカード様と再会して、女性の一人歩きは危ないからと、お世話になっているバイエル公爵邸まで送って行くと仰っていただいて。
本当なら貴族であるアーカード様にそんな事をして貰ってはいけないのでしょうけれど、一人の女性として扱ってくださるアーカード様に嬉しいと思ってしまったのです。
そして二人で歩きだして。
そうです。あの時、不意にアーカード様が、「つけられている」とそう仰ったのです。
いきなりぐいっと私の肩を抱き寄せて、誰かにつけられていると言われているにも関わらず、ドキドキしたことを覚えております。
いえ、それはいいのです。
私は頭をふるりと振りました。
今はそんな事を考えている場合ではありません、頭の隅に追いやりましょう。
だって今思い返したら、またドキドキしてしまいそうですもの。
そう、それで。
足早に大通りに向けて歩き始めた私たちの前に一台の馬車が停まりました。
何の変哲もない普通の馬車だったはずです。
そして馬車のドアが開いて、そこにいたのは。
「神官様?」
そうです。あの時、馬車から神官様が下りて来て、私は何か不備でもあったのかと、そう思い。
そこで私の意識は途切れておりました。
となると私は神官様に攫われたというのでしょうか。
でもそんな事はあり得ないとも思いました。
だって相手は神官様です。私を攫う理由など思いつきません。
だとしたらアーカード様でしょうか。けれど、やはり貴族の嫡男様を神官様が攫う理由など考えもつかないのです。
本当は神官様は関係がないとか。
私の記憶はそこで途切れておりますから、神官様と人攫いとは別なのかもしれません。
「あ、あのぉ、大丈夫、ですか?」
私が一人でぐるぐると考え込んでおりますと、この部屋に最初から閉じ込められていた女性が、恐る恐る声をかけてきました。
ああ、そうですわ。彼女に聞いてみればいいのです。
私はそう思うと、少し距離を開けて私を見ている女性に視線を向けました。
その人はまるで人参のような鮮やかなオレンジ色の髪に明るい緑色の目をした女性でした。
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王都編? 開幕です。
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少し読みづらくなるかもしれませんが、ご了承ください。
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