口下手なお前がオレに向ける愛の大きさ

天霧 ロウ

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 シルブが目を覚ますと、頭がガンガンしていた。

「うう、飲みすぎた……って、ん?」

 見慣れた天井、遮光カーテンで日光が入らない薄暗い部屋――クノと暮らしている部屋だ。ぼーっと天井を見つめた後、隣に感じる熱の塊へ顔を向ければ、ラフな服装をしたクノがいた。

「ク、クノ?! なんで?!」

 シルブは飛び起き、クノを凝視した。ベッドへ腰を下ろしているクノはいつもの無表情でシルブを見つめていた。

「ナリとドルガから連絡来た」

 クノの声は低く、淡々としていた。嫌っていても連絡があったから来てくれた優しさにシルブは胸がポカポカするのを感じた。白い頬を薄紅色に染めてはにかんだ。

「そ、そっか……ありがとな、クノ」

 照れくさくて頭をかく。だが、すぐに昨夜のことを思い出し、目を伏せた。

「でも嫌いなのに迷惑かけてごめん」

 クノの男らしい眉がわずかに動いた。シンと沈黙が再び落ちる。無言の肯定に涙が溢れてくるが、クノがぎこちなくシルブの肩を掴んできた。
 肩に伝わるゴツゴツとした温かい手に顔を上げれば、青灰色の瞳が真正面からシルブを捉えた。あいかわらず感情が読めない瞳だが、いつになく真剣なのだけはわかった。

「魔法薬の話、聞いた。あれは限界がある」
「限界?」

 上目遣いでクノを見つめていると、クノの喉仏が上下に動く。
 クノが細く息を吐いて頷いた。

「ああ。好意が一定値を越えると数字で表せない」
「え、ってことは……クノ、オレのこと……?」

 どんな状況でも変化しないクノの顔色がわずかに赤く染まる。無言で頷き、シルブの肩から手を離すと、そっと手を握った。手に伝わる温度にシルブの核が跳ね上がる。

「シルブが相棒やめたいって突然言うから、なにが起きたかわからなくて……黙ってた」

 いつもは乾いた手がほのかに湿っており、ためらいがちに指を絡めてくる。

「俺はお前を心配することはあっても、嫌ったことはない」
「つまり、これからも一緒にいていいのか……?」

 ドキドキしながら期待を込めて聞き返す。パチッとあった視線は確かな熱を帯びており、ぎこちなくクノが頷いた。
 クノの肯定にシルブは目を潤ませ、勢いよくクノの手を大きく振った。

「やったぁあ! オレもクノとずっと一緒にいたい!」

 パッと手を離すと、クノに思いっきり抱きついた。広い背中に手を回し、逞しい胸板に頬を押しつけながらへへっと上目遣いで笑いかける。クノはやはり無表情だが、いつもはしっかり引き結ばれている口に柔らかな笑みが浮かんでいるのがシルブにはわかった。
 その返しがまた嬉しくて、シルブは勢いのままクノの口へ唇を押し当てた。何度か触れるだけのキスを繰り返した後、満足したシルブはハッとした。

「ご、ごめん! 人間にとって唇を当て合うのは特別なことなんだよな?」

 吸血鬼にとって、キスは親愛の証しとして気軽にするものだ。文化の違いを知らず、クノと同居した初日に故郷のノリでした際、クノに教えてもらったのだ。
 また注意されるかもとシュンと目を伏せると、クノがシルブの体に腕を回し、空いている手でそっとシルブの顎を優しく掴んだ。
 ためらいがちに目蓋を持ち上げれば、クノの精悍な顔がすぐ目の前まできていた。ついでゆっくり唇を押し当てられる。
 自分と同じ行動にもかかわらず、クノからされたキスはまるで別物だ。肉厚な舌がシルブのしっとりとした唇をなぞれば、自然と口を開ける。そうすれば、より深く唇が重なった。

「ぅ、ん…、ん」

 クノの舌がシルブの口内をなぞり、尖った犬歯をくすぐるように撫でてくる。その度に体が小さく跳ね、頭がふわふわしてくる。
 クノが満足して唇を離す頃には、全身が日光の下にさらされたがごとく熱く、体の奥がうずいてしょうがない。
 青白い肌を薄紅色に染めてふー、ふーっと息を荒げていれば、クノの手がシルブの頬を優しく撫でてくる。それだけで鼻にかかった声が漏れ、中心が緩く持ち上がるのを感じた。

「クノ、オレ…、今、変だから」

 嫌われたくない一心で言うものの、クノは頬を撫でるのを止める気はないようだ。それどころか、木の葉のように先が尖ったシルブの耳をやんわり噛んだり、シルブを抱きしめる腕により力がこもる。
 なにより恥ずかしさはあっても、クノからの行為に不快感はない。それどころか、もっと奥まで触れてほしいとさえ感じた。

「俺とのキスが気持ちよかったか」
「ぅ、ん……」

 蚊の鳴くような声で返す。素直な返しにクノが青灰色の瞳を優しく細めた。それだけでゾクゾクと腰に甘い痺れが走り、シルブの高ぶりはトロッと先走りをもらす。

「どうしてそう思ったんだ」
「クノが好きだから、だけど?」

 あたり前な事を聞かれて不思議に思いつつも返す。しかし、クノはそれだけでは納得できないようだ。

「どういう意味でだ」
「どういうって」

 どこでもいいから早くクノに体を触れてほしくてもどかしい。もじもじと太ももをすりよせ、上目遣いで見上げる。だが、クノはシルブが答えるまで触れる気はないようだ。
 だから、シルブは珍しくしっかり考えた。しかし、誰かを本気で好きになった経験がないシルブにとってはじめてことでわからなかった。
 そんなシルブの様子をじっとクノが眺めた後、おもむろに服を脱ぎだした。風呂で見慣れているはずの逞しい上体が今はまるで別物に見えた。
 目が離せずにいれば、クノがシルブの手をとり、逞しい胸板へ当てさせる。そうすれば、大きな鼓動が手の平に伝わってくる。胸に手をあてなければ、気づかなかった鼓動の強さに、クノも緊張するのだと当たり前なことを今になって理解した。
 それはシルブと同じ状態なのだ。瞬間、ずっとぼやけていたソレの輪郭が鮮明になった。同時にたどり着いた答えに体が燃えるのではないかと錯覚するほど熱くなった。

「オ、オレ」

 口の中に貯まった唾液をごくっと飲み込む。ゆっくり息を吐いて、クノを見つめた。

「オレ、クノが好きだ。ほかの好きとは違うっていうか。えっと、すごく、すーっごく特別! みたいな……」

 いざ言葉として伝えようとすると、なんとも幼稚な表現だ。だが、今のシルブにはそれが精一杯だった。クノに伝わったか不安で桃色の瞳を潤ませて見上げていると、クノがふっと頬を緩めた。

「シルブの気持ちが俺と同じでよかった」

 返ってきた言葉は安堵に満ちていた。いつもはキリッとしている眉がわずかに下がり、頬も緩んでいる。今日だけで色々なクノの表情を見ている気がする。
 同じ気持ちに胸が一段と高鳴る。キラキラと目を輝かせるシルブへクノが「脱がしていいか?」と囁いてくる。
 言葉がとっさにでず、肯定したい気持ちが先走ってコクコクと頷けば、焦らすようにゆっくり脱がされていく。もどかしさに身じろげば、あやすようにクノがこめかみや頬にキスしてくる。
 ようやく一糸まとわぬ姿にされれば、高ぶっている中心から弱々しく精を放ってしまう。服を脱がされただけで達してしまったこらえ性のなさとそんなありさまをしっかり見られた興奮を抑えられず、ふっ、ふっと息が荒れる。

「お前はどこまでもかわいいな」

 するっと大きな手が頬を撫で、体の輪郭を確かめるように辿っていく。その度に声が漏れ、体が甘く震える。一通り撫でられた後、ひょいっと抱き上げられたかと思いきや、後ろから抱き込まれた。

「へへ、クノあったかい」
 
 背中に伝わる体温が心地よく、クノを見上げて力なく笑いかける。そうすれば、再びクノが唇を重ねてきた。

「んっ、う」

 舌を絡めながら、ツンと尖っている薄紅色の乳首を優しく指で挟まれる。もう片手がすでに立ち上がっているシルブの高ぶりを包むように掴んだ。

「ふっ、ぅ、ぅう!」

 緩急をつけて擦られれば、クノの手の動き合わせて勝手に腰を揺すってしまう。 乳首を指でしっかり挟まれて固定されてしまえば、無防備になった乳首の先を集中的に掻かれた。

「んぅう゛! ~~っ」

 ぎゅっと乳首の先を潰されながら引っ張られた瞬間、体の奥に貯まった甘やかな刺激が弾けた。腰を突き出し、体がつっぱる。ついでぴゅ、ぴゅっと弱々しく精を吐き出した。
 ちゅっと軽くキスをして唇が離れると、クノの手が先端に残った残滓を丁寧に拭う。顎に力が入らず、舌を突き出して喘いでいると、クノが片手でシルブを抱え直した。汗をかかないためかサラッとした尻を撫でられた後、その間を指がなぞってくる。

「ぁ、あぁ!」

 硬い指の腹の刺激に声が漏れ、ぎゅっと手を握りしめる。興奮を隠しきれないのだろう。クノの声がかすかにうわずった。

「魔物の雄は自分より強い雄を認めると、受け入れる穴ができると聞いていたが、本当なんだな」

 とろっとした粘液を滲ませる秘部を確かめるように何度も撫でられる。そのたびに体の奥に甘くも重い刺激がつもっていくのを感じる。
 なぞるだけで指を一向にいれないもどかしさに腰を押しつけた。そうすれば、ぬぷぷっとクノの男らしい指が入ってくる。シルブの痴態をきっかけに、クノも指をゆっくり沈めてきた。
 そして、シルブのうなじや耳をやんわり甘噛みしてきた。

「くの、指…、動かせよぉ」

 指を付け根まで入れただけで動かされないのがもどかしい。腰をぎこちなく振って、甘えた声で名前を呼ぶ。クノが喉仏を大きく上下させると、ふーっとゆっくり気を吐いた。

「シルブにはかなわないな」

 その言葉を合図に緩急をつけて抜き差しされた。ぬちゅと粘り気のある音とシルブのとろけきった嬌声が室内に響き渡る。すがるものほしさにクノの腕を掴む。

「んぅ、ぅ゛、ぅう!」

 指がいいところをこすりあげるたびシルブは体をのけぞらし精を放った。だが、次第にもっと奥まで深く繋がりたいと体が訴えだす。
 どうすれば伝わるかシルブにはわからず、ボロボロと泣きながら肩越しにクノを見た。

「痛かったのか?」
「ちがう…、くの、おれ……っ」

 もぞもぞと体を動かせば、クノが指を抜いた。ブルッと体を震わし、甘い刺激に耐えた後、ぎこちなく体ごとクノへ振り返った。そうすれば、雄々しい高ぶりが立ち上がっているのが目に入った。
 本能のままにクノの高ぶりを撫で、逞しい胸板に頬を押し当てて見上げる。

「指じゃなくて、こっちがいい」

 先端を手の平で優しくなで回せば、いっそう先走りが溢れてくる。ゴクッとクノが唾を飲み込んだ。

「シルブ、言ってる意味がわかってるか」
「わ、わかってる…つもり……」

 興奮と切ない気持ちを込めて見つめる。暗視魔法を使っているのだろう。青灰色の瞳には魔力の流れている。おかげでクノが目を見開いているのがわかった。
 クノの肩に手を当て、ぎこちなく膝立ちになる。秘部にクノの先端をくっつけると、クノを見下ろす。

「クノははじめてじゃないかもしれないけど、オ、オレのはじめてあげるから…、だから」
「はじめてだ」

 食い気味での返事にぽかんとすると、シルブは眉を下げてくしゃっと笑った。

「そうなんだ。クノ、カッコいいし優しいから経験済みだと思ってた」
「俺は好きな奴じゃなければ、抱く気はない。シルブは違うのか」

 クノの汗ばんだ手がシルブの腰を掴む。逞しい先端が限界まで秘部を押し広げられている状況に息を弾ませながら返した。

「オ、オレも…好きなやつとじゃなきゃ、こんな風に変化っ…、しないし。だから、は、はやくっ」
「早く、なんだ?」

 わかっているのにクノがピタッと動きを止めた。
 ふだんの無口はどこにいったのか。饒舌なクノによるはじめての意地悪にきゅんっと体の奥や胸が甘く疼くのを感じてしまう。シルブの中心は壊れたようにトロトロと先走りが流れ落ち、クノの固そうな茂みを濡らす。
 口の中に貯まった唾液を飲み込むと、シルブはへにゃっと笑った。

「オレをクノのものにして」
「あとで文句は聞かないからな」
「いわな――っ、~~~~っ!」

 力強く腰を引き寄せられれば、ごちゅんっと音が鳴りそうほど一気に奥まで入れられる。そのままベッドへ押し倒されれば、荒々しい腰使いでこれでもかと敏感になっている柔肉を擦り、奥を突き上げられる。
 あまりの激しさにすがるようにシーツを掴んだ。

「くのっ、すき…っ、すき!」
「あぁ、俺も好きだ」

 ズンッ! と深く突き上げられる。そうすれば、敏感になっている奥がクノの先端をしっかり捉え、応えるよう必死に吸い付く。
 それによってより深い痺れが全身を駆け巡る。シーツを握っていた手を離し、クノの汗ばんだ背へ手を回した。しかし、それだけじゃ耐えきれず、クノの腰へ足を絡める。

「~~~~っ!」
「くっ」

 覆い被さるように抱きしめてきたクノの体がぶるっと大きく震える。どぷどぷと奥に注がれる熱の刺激で頭だけでなく体もフワフワする。クノが精を吐き出し終えると細い息を吐いた。
 
「シルブ」
「なんだよ?」

 クノより少し遅れて呼吸を整えたシルブはとろんとした目でクノを見た。たっぷりだしたにもかかわらず、中にあるクノの高ぶりは猛ったままだ。ぎゅっと抱きしめられれば、ずしっと重たい玉が尻に押し当てられる。

「お前と両思いになれたのが幸せすぎて、萎えそうにない」
「じゃあ……」

 クノの背中に回している腕に力を込め、ぎこちなくクノの高ぶりを締め付ける。ピクッとクノの体がかすかに反応し、重そうに顔を上げたクノの瞳はギラギラと興奮に満ちていた。
 隠さなくなったクノの欲情にゾクゾクと甘い痺れを感じながら、シルブは笑った。

「クノが満足するまで付き合うから」
「いいのか」
「うん、オレたちは相棒だし」

 シルブの返答にクノが嬉しさと複雑さを混じり合わせたような顔をした後、ふっと眉を下げて微笑んだ。

「そうだな。今はそういうことにしておくか」
「よーし! それじゃあ、クノが満足するまでいっぱいするぞ!!」

 無邪気に告げたシルブだが、この発言後、七日間セックス漬けになるとは思っていなかった。
 その期間中、今までの無口で無表情であったのを謝罪するかのように饒舌で様々な顔を見せるクノにシルブが惚れ直し、いっそう乱れた。
 そして、魔法薬の数字では表せなかったクノの大きな愛をたっぷり味わったのだった。
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