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第一話 触っちゃダメだよ一宮さん
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「異世界来たああああああああ!! あっケモっ娘だ!! 見てくださいケモっ娘ですよケモッ娘!!」
町を歩く犬と人間の少女のハーフのような獣人の少女を指差して子供のようにはしゃぐ一宮さん。普通なら獣人の存在に驚くところなのだが、今の俺にとっては一宮さんのはしゃぎっぷりの方がよっぽど珍しかった。つい三十分前までこの人の前で胸が張り裂けそうになっていたのが嘘のようである。
「あぁ」
ただ呆然として、気の抜けた返事を返すことしか出来なかった俺を尻目に、彼女は少女の所に猛ダッシュ。
「えっえっ?」
突然目の前に現れた見知らぬ変態に戸惑いを隠せない少女。しかし、変態はそんなことお構いなしと言わんばかりに少々の頭に触れる。
「犬の体毛と人間の髪を足して2で割ったようなこの毛並み。モフモフでいてサラサラ、多すぎず少なすぎずと毛量も申し分ない。こりゃあたまりませんなぁ」
「ひゃあ!? なっ何を!? やめ、あっそこ気持ちいい......アハハハハ!! くすぐったいやめっ、痛っそこはもう少し優しく......」
至福の表情で、その撫で心地を堪能する一宮さんと、撫でられる場所次第で反応がコロコロ変わる少女。町の人たちの危ないモノを見るような視線が、二人に向けられ始める。なんとなくだが、これは放っていたらまずいことになるような気がする。
「ちょっ、一宮さんやめた方g」
「ウチの一人娘になに晒しとるんじゃわれェ」
彼女を止めようとした俺の声を図太い声が遮った。声の方を見ると少女の父親と思わしき見た目のたくましい獣人。その目からは一宮さんに対しての敵意と怒りが溢れんばかりといった感じで、放っておいたら何か大変なことになってしまうのは火を見るよりも明らかである。しかし、俺はどうやら一宮さんのことを侮っていたようだ。
「うーむ。やはり成体、それも性別が男となると毛質は硬くなるようですね」
「おい、聞いてんのか!? やめ、あっそこ気持ちいい......アハハハハ!! くすぐったいやめっ、痛っそこはもう少し優しく......」
とんでもない威圧感を放つ獣人(父)の頭を先程と同じように撫で始める一宮さん。しかも、ただ撫でるだけでは飽き足らずその触り心地に対してケチをつけ始める始末である。
(こ、殺される......)
相手が撫でられていることに怯んでいる隙になんとかしなければ。腹を決めると俺は足に力を入れた。
「た、大変失礼しましたああああああ!!」
少し不満気な顔で頭を撫でる一宮さんを脇で挟み、素早く逃走する。その際、大声での謝罪は忘れない。
「あっそこそこ。痒いからちょうどいい。あーいi……はっ!? 待てやコラァ!!」
我に返った獣人(父)は、ものすごい形相でこちらを追いかけてくる。こんな馬鹿な死に方で二度目の死を迎えたくない。その一心で俺はとにかくダッシュした。そんな俺の足を止めたのは……
「高橋君待って!!」
一宮さんの声だった。俺は焦りもあって少し大きな声でその理由を問う。
「どうしたの!?」
「まだサインもらってない!!」
「ふぇっ……知るかボケええええ!!」
俺は後悔した。俺は絶対に一緒に異世界転生してはいけない人と異世界転生してしまったのだと
町を歩く犬と人間の少女のハーフのような獣人の少女を指差して子供のようにはしゃぐ一宮さん。普通なら獣人の存在に驚くところなのだが、今の俺にとっては一宮さんのはしゃぎっぷりの方がよっぽど珍しかった。つい三十分前までこの人の前で胸が張り裂けそうになっていたのが嘘のようである。
「あぁ」
ただ呆然として、気の抜けた返事を返すことしか出来なかった俺を尻目に、彼女は少女の所に猛ダッシュ。
「えっえっ?」
突然目の前に現れた見知らぬ変態に戸惑いを隠せない少女。しかし、変態はそんなことお構いなしと言わんばかりに少々の頭に触れる。
「犬の体毛と人間の髪を足して2で割ったようなこの毛並み。モフモフでいてサラサラ、多すぎず少なすぎずと毛量も申し分ない。こりゃあたまりませんなぁ」
「ひゃあ!? なっ何を!? やめ、あっそこ気持ちいい......アハハハハ!! くすぐったいやめっ、痛っそこはもう少し優しく......」
至福の表情で、その撫で心地を堪能する一宮さんと、撫でられる場所次第で反応がコロコロ変わる少女。町の人たちの危ないモノを見るような視線が、二人に向けられ始める。なんとなくだが、これは放っていたらまずいことになるような気がする。
「ちょっ、一宮さんやめた方g」
「ウチの一人娘になに晒しとるんじゃわれェ」
彼女を止めようとした俺の声を図太い声が遮った。声の方を見ると少女の父親と思わしき見た目のたくましい獣人。その目からは一宮さんに対しての敵意と怒りが溢れんばかりといった感じで、放っておいたら何か大変なことになってしまうのは火を見るよりも明らかである。しかし、俺はどうやら一宮さんのことを侮っていたようだ。
「うーむ。やはり成体、それも性別が男となると毛質は硬くなるようですね」
「おい、聞いてんのか!? やめ、あっそこ気持ちいい......アハハハハ!! くすぐったいやめっ、痛っそこはもう少し優しく......」
とんでもない威圧感を放つ獣人(父)の頭を先程と同じように撫で始める一宮さん。しかも、ただ撫でるだけでは飽き足らずその触り心地に対してケチをつけ始める始末である。
(こ、殺される......)
相手が撫でられていることに怯んでいる隙になんとかしなければ。腹を決めると俺は足に力を入れた。
「た、大変失礼しましたああああああ!!」
少し不満気な顔で頭を撫でる一宮さんを脇で挟み、素早く逃走する。その際、大声での謝罪は忘れない。
「あっそこそこ。痒いからちょうどいい。あーいi……はっ!? 待てやコラァ!!」
我に返った獣人(父)は、ものすごい形相でこちらを追いかけてくる。こんな馬鹿な死に方で二度目の死を迎えたくない。その一心で俺はとにかくダッシュした。そんな俺の足を止めたのは……
「高橋君待って!!」
一宮さんの声だった。俺は焦りもあって少し大きな声でその理由を問う。
「どうしたの!?」
「まだサインもらってない!!」
「ふぇっ……知るかボケええええ!!」
俺は後悔した。俺は絶対に一緒に異世界転生してはいけない人と異世界転生してしまったのだと
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