ふたりでひとつの冒険記~ガンバる英雄とマイペースな女神

ナガサコ カズホ

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『キジンの復活』編

第3話 ① 雉も鳴かずば撃たれまい

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 ──召喚士のシェルティと共に王都を目指すオレ達は、街道かいどうわきにあった休憩所にて休憩中。地図を見る限り、王都はまだ南の先だ。

「あの、ガウルさん。さっきから独り言がなくなりましたけど、大丈夫ですか?」
「へ!? あ、いや、平気平気!」

 むしろ独り言が多い方が問題だよ。最早もはや独り言を言ってるのが普通と思われてるオレ。泣きたい……
 アスカは今は中断中。「今日はもう眠いからおやすみー」と無責任に消えてからもうすぐ一時間だ。独り言が減るのも当然だ。今は『独り』なのだから。

「あ、行商ぎょうしょうさんがきてますね」

 街道の先からガラガラと音を立てて馬車が近付いてくる。
 ほろには王国認定の行商のマークがある。ああやって移動しながら物を売って回る商人は多い。故郷の村にもよく来てたっけな。

「回復薬がなくなりそうなのですが、売ってますかね」
「そういや足りなくなりそうだったな」
「わたくし、見てくるのでガウルさんは休んでてください」

 と、シェルティは行商の方へ走って行ってしまった。気の利くいい子である。

「……何、見とれてるのよ。警察呼ぶわよ」
「うっわぁっ!」

 いきなり横から響くアスカの声。いつ帰ってきてたのか油断も隙もありゃしない。

「いきなり話しかけるなよ! ったく、ちょうど一時間か。また二日ぶりかよ?」
「ううん。一日よ? あれ、また一時間なんだ」
「は? 二日で一時間じゃないのか。もしかして中断すると、そっちで何日とうがこっちでは一時間なのか?」
「そうかも。再開するのが一年後でも一時間かもね」

 よくわからないシステムだ。とりあえず、アスカに中断されると、オレの無防備時間──自由時間とも言う──が一時間発生するのか。時と場合によっては面倒なことになりそうだけど。

「そうそう、これ見て!」

 と、アスカが何やら楽しそうに一回ターンをすると、キラキラ光りながら着ていた服が別の服に変わっていく。
 今まではウェディングドレスのような白いドレスに鋼の胸当てをつけていて、なんともミスマッチなファッションだった。
 しかし、今はブレザータイプの上着に赤いリボン、チェック柄の短いスカートに紺のハイソックスに黒いローファーという、全く別の服装に一瞬で変わってしまった。これも魔法か?

「あれ? 鋼の胸当てはそのままなのかぁ。残念」
「なんだよ、その服……」

 胸当てだけは変わらずつけているが、とても旅をする服装ではない。
 まあ、元々旅をしている実感がアスカにあるのか不明だけど。

「何って、制服よ」
「いや、なんで着替えたんだよって話だよ」
「さすがにウェディングドレスに鎧はおかしいでしょ。だから、課金して服を買ったのよ。
 制服はベタだなって思ったけど、これ、高校の時の制服にそっくりでさ。なんか懐かしくてつい買っちゃったのよ。あはは」
「あはは、って……」

 またよくわからんことをペラペラとしゃべるアスカだ。話の半分以上理解できてないけど、どうすりゃいいんだ。

「どう? 似合う?」
「え、ああ。ウェディングドレスは冗談も冗談って感じだったし、今の方が似合ってると思うぞ。だがなぁ、ちょっとスカートが短すぎるだろ」
「うわ、真面目。口うるさかった生徒指導のサイトーを思い出したわ」
「いきなり誰だよ、サイトーさん!」

 絶対オレに無関係な人物だろうな。しかし、アスカは服すらも、どこからともなく出せるのか。すごい能力だ。

「ん、ちょっと待て。今、カキンしたって言ったよな? カキンって命を削る儀式じゃなかったのかよ」
「ああ、そういう話もしたっけ? ただの買い物なんだから計画的なら大丈夫よ」
「計画的に買っちゃったのかよ、ホントに大丈夫か……」

 あきれ気味に頭をかいていると、アスカは買い物中のシェルティの方を見て言う。

「シェルティは今、何を買いに行ってるの?」
「ああ、回復薬だよ。サンブセロンでも買ってたんだけど、道中のモンスターと戦ってると、どうしてもすぐに減っちまうからな」
「お金は大丈夫なの? そっちこそ計画的に使っていかないと身の破滅でしょ」
「た、確かに……」

 今はまだ村長やライドがくれた餞別せんべつと、サンブセロンの樵夫きこり救出依頼の達成たっせい報酬ほうしゅうで得たお金があるからいいものの、この調子だとすぐに底をついてしまいそうだ。
 だからといって回復薬をケチって皆では本末転倒ほんまつてんとうだし、難しい問題だな。

「回復魔法を使える仲間が必要ね」
「そうだな、魔法なら時間が経てば何度でも使えるし──」
「回復魔法についての独り言ですか?」
「どわっ!」

 いきなり話しかけてきたのは回復薬を買ってきたシェルティ。どいつもこいつもいきなり話しかけるなよ……

「あ、ああ。毎回こうやって回復薬を補充ほじゅうするのも大変だし、回復魔法使いを仲間にしたいなって思ってたんだ」
「そうですねぇ。わたくしが回復魔法を使えたらよかったのですが……」

 召喚士のシェルティは攻撃魔法は得意のようだが回復魔法は全然使えないと、なぜかアスカが教えてくれた。アスカにはシェルティが使える魔法や能力の数値も一覧で見えている様子。
 神の千里眼せんりがんとでも呼ぶべきか、本当に恐ろしい能力だ。

「オレ、魔法使いなら誰もが当然のように回復魔法も使えるものだと思ってたな」
「そうなんですか? でも、たとえば剣の達人さんが同時に弓の達人さんでもあるとは限りませんよね?」
「まあな。剣と弓じゃ全く扱い方が違う。オレも剣には自信があるけど弓は腕はさっぱりだし」
「攻撃魔法も回復魔法もそれと同じことなんです。同じ魔法のようですが、もしかしたら剣と弓以上に扱い方が全く違うものかもしれませんよ」
「なるほど……」

 回復魔法みたいな便利な魔法が、魔法使いなら誰でも使えるというわけじゃないのは、そんな理由があったのか。

「もちろん剣も弓も上手な人がいるように、攻撃魔法も回復魔法も使える魔法使いさんはいらっしゃると思いますが、少数だと思います。学校ではどちらかに特化させて教育しがちですから」
「ふーむ。器用な奴を探すより、回復魔法特化の魔法使いを探す方がいいか」

 シェルティの時のように都合よく見つかればいいんだがなぁ。アスカの計画性に頼るしかないのか……
 とにかく、今は王都に向かおう。オレ達は再び街道を歩き始めた。
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