RAIN

蒼き夜のメルさん

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第七話 勇気と切り札

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 アクアマリンは体を液体化させ、レイに突撃した。レイはアクアマリンの槍を左腕で受け止め、剣で先端を破壊した。俺はその瞬間、彼女の冷静さに驚かされた。彼女は一切の迷いもない。次の動きが自然と体から溢れ出しているかのようだった。
 続けて、レイはアクアマリンの腹を蹴り付け、さらに顔を蹴り上げた。

「クソッ!」
 
 アクアマリンは怒りに満ちた表情で叫び、槍の柄を力強く叩いた。すると、彼女の背中から水が流れ、折れた槍の先端に絡まり、槍を再生させた。その異常さに俺は背筋が凍る思いだった。
 レイは剣を手に、軽やかに舞うようにアクアマリンに接近した。剣舞のような美しい動きだ。しかし、アクアマリンは再び体を液体化させ、レイの正面や背後に回り込み、彼女を翻弄しようとした。
 
(動きが変わった……)

 だが、レイは動じなかった。アクアマリンが背後を取ったかと思えば、その動きを予測していたかのように彼女は振り返り、剣をすばやく振ってアクアマリンの腹に深々と刺し込んだ。

「ガハッ!?」

 アクアマリンは苦しげな声を上げながら、腹からデストロイクリスタルを吐き出した。レイはその隙を逃さず、連続で攻撃を加える。剣での一撃、そして強烈な蹴りを浴びせると、アクアマリンは地面に倒れた。それでも立ち上がろうとする彼女に、レイは更に回し蹴りで宙に浮かせ、遠くへと吹き飛ばした。

「はぁ!」
「ウワッ!」

 アクアマリンは一方的に追い詰められ、辺りにはデストロイクリスタルが散らばっていく。レイの華麗な戦いに、俺はただ息を呑むばかりだった。

「すげぇ……あいつは一体何なんだ?」
「今度こそトドメです」

 レイは剣の根元に付いているレバーを引いた。すると、刃の根元から翼が出現し、剣全体が青く輝き出した。それはまるで神秘的な光を放つ聖剣のようだった。

『エクセキューション!』
「ブルーホークエッジ!」
 
 レイが声を上げて剣を振り抜くと、青い風と共に衝撃波が発生し、アクアマリンを完全に拘束した。青い風が彼女を取り囲み、そのまま強烈な衝撃波が彼女の体を貫いた。

「クソォオオ!」

 アクアマリンが悲鳴を上げると、体に亀裂が入り大爆発を起こした。辺り一面が水浸しになり、レイは丁寧に剣をしまった。

「よし、ロイヤーがいないか調べないと……」
「!」

 レイが警戒を解かずに周囲を見渡した瞬間、俺は不穏な動きを察知した。散らばった水が一斉に動き出し、レイの足元に集まり始めていたのだ。

「危ない!」
「!」

 レイはすぐに気付くが遅かった。集まった水はアクアマリンの姿に変わり、彼女の背後から奇襲を仕掛けた。レイは剣を取り出すが、不意打ちを抑えきれず、剣を地面に落としてしまう。

「馬鹿め!」
「しまった……!」

 更に、アクアマリンは二体に分裂して、それぞれが槍で攻撃を仕掛けた。レイは巧みに攻撃を防いでいたが、武器を失ったことで次第に防戦一方になっていく。

「嘘だろ……あんなのどうやって倒すんだよ……!」

 分裂と再生。驚異的な能力を兼ね揃えているアクアマリンに、レイは苦戦する様子を見せていた。見ていることしかできない俺は、足元にレイの剣が落ちているのを見つける。

「!」

 一方で、レイはアクアマリンの分身に挟み撃ちされていた。一体が液体化してレイの上半身を締め上げ、もう一体が槍で突こうとしていた。彼女は必死に体を捩じって避けようとしていたが、次第に動きが鈍くなってきていた。
 
「きつい……!」
 
 後退を繰り返すレイは、背中が建物の壁にぶつかってしまった。そこから逃れるためにバク宙してアクアマリンの背後を取るが、すぐに足を攻撃されて地面に倒れてしまう。
 
「しまっ……!」

 アクアマリンの槍がレイに向かって振り下ろされようとしていた。その瞬間、俺は無我夢中でレイの剣を握り、アクアマリンに突進した。

「死ね!」
「はぁあああ!」

 俺は背中を向けたアクアマリンに、剣で不意打ちを仕掛けた。震える右手を押さえて、アクアマリンの左肩の宝石を狙って剣で斬り付けた。

「クッ!?」
「おらぁ!」

 更に一発攻撃を喰らわせようとするが、腕を押さえつけられ、腹を殴られて地面に倒されてしまう。アクアマリンは俺の首を絞めて、宙に浮かせた。

「がっ……がはっ!」
「あんたもいい加減にしなさいよ……!」

 アクアマリンは俺を睨み付け、氷でできた爪を振り上げた。
 その時、俺はアクアマリンの左肩に目を向けて、あることに気付く。先程剣で攻撃した左肩の近くにある青い宝石がグラついているのだ。
 アクアマリンが爪を振り下ろす直前に、俺は咄嗟に宝石に手を伸ばした。

「!? よせ!」

 それに気付いたアクアマリンは俺を振り解こうとするが、それより早く俺は宝石を掴んだ。すぐに投げ飛ばされたが、その勢いでアクアマリンの肩から宝石が外れてしまう。

「ガァア!?」

 その時、アクアマリンは奇声を上げて地面に倒れた。更に、レイを拘束していた分身がデストロイクリスタルに変わってしまう。

「……一体何が……」
「お、おい。どうしたんだ?」

 思わず俺はアクアマリンに近付いた。その瞬間、アクアマリンの拳が俺の顎にアッパーを打ち込み、俺は吹っ飛ばされて地面に叩きつけられた。

「がっ!」
「やってくれたわね……!」

 アクアマリンは激昂し、俺の腹を踏みつけて地面に押さえつけた。その圧力で息が詰まり、意識が遠のきそうになった。

「うっ……!」
「それを返せ……!」

 アクアマリンは俺に手を伸ばすが、拘束が解けたレイがアクアマリンの首を蹴り付けた。鈍い音が響き、アクアマリンは地面に倒れた。
 レイは俺の体を起こすと、俺が右手に持っている青い宝石に目を落とした。

「助かりました」
「……ふんっ」
「貴様ら!」

 俺はレイから視線を逸らし、彼女に剣を差し出しながら立ち上がった。
 その時、アクアマリンはデストロイクリスタルを再び散らし、次々とロイヤーを生み出している。その数は圧倒的だった。全てを倒すには確実に時間がかかる、そしてその隙に奴は逃げ出すつもりだ。

「おい、あいつまた逃げるつもりだぞ!」
「……心配いりません」
 
 レイは何か覚悟した様子を見せると、懐からオレンジ色の石を取り出した。表面に彫られたランプの印が神秘的に輝いている、何か神秘的な力を感じるものだった。
 その石を見たアクアマリンは表情を一変させた。恐怖の色がはっきりと浮かび上がり、声が震えていた。
 
「まさか、ルインクリスタルを……!?」
「……ルインクリスタル?」

 レイは剣のガード部分にそのオレンジ色の石をセットし、再び剣を構え直した。すると、剣が轟々と燃え上がり、炎が剣身を包み込み始めた。周囲には熱風が広がり、俺は思わず後ずさりして近くの障害物に身を隠した。熱さに目を細めながら、俺は息を呑んでその光景を見つめる。
 一方、アクアマリンはその場から逃げ出そうとしていた。焦りが彼女の動きを鈍らせ、パニックがその冷静さを奪っている。
 
『エクセキューション! ラヴァドラゴンファング!』
「はぁあ!」

 レイが剣を振ると、辺りに烈火が発生した。辺りに火柱が立ち並び、それを受けたロイヤーは全滅。更に、剣を振る際にエネルギー波が発生し、アクアマリンの体を縦に切断した。

「ガッ……アァ……」

 アクアマリンとロイヤーは声を上げる間もなく、炎に包まれて爆発。辺りにはデストロイクリスタルが散らばっていた。レイは熱で赤くなった刃の剣を左手に、落ち着いて息を吐いた。
 熱が冷め、俺はゆっくりとレイに近付いた。

「おい、今のは……」
「くっ……!」

 ところが、レイは地面に倒れてしまった。俺は慌てて受け止めるが、彼女の体はものすごく熱くなっていた。

「おいっ! どうしたんだ!」
「ハァ、ハァ……ちょ、ちょっと無理しすぎました……ハハ……」

 レイは息を切らせながら笑顔を作ったが、どう考えても無理矢理だった。俺はレイに肩を貸し、ゆっくりと立ち上がった。火傷しそうなくらい熱かったが、このくらいの痛みなら大したことなかった。

「とにかく、今はここを離れ……」
「! 誰ですか……」

 レイは視線を下に向けたまま、誰かに向かって尋ねた。
 周囲が静まり返る中、黒い服を身にまとった男がゆっくりとこちらに近づいてきた。男は首に巻いているスカーフを直しながら、俺達をじっと見据えている。彼の目には鋭い光が宿り、警戒を解く様子は無かった。

「お前らこそ、一体何なんだ?」
「えっ……」

 男の左腕には、銀色に輝く腕輪が装着されていた。
 
 
 
 現在使えるルインクリスタル 二個
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