天啓の雲

古寂湧水 こじゃくゆうすい

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対馬の仏像奪還作戦に着手をしました。

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植栽と石組を含めた庭の感じを頭に描いてください、それを画面に表示しながら仕上げていきます。][このワンちゃん、すごい能力を持っているんですね。わかりました。2・3日待ってくれますか構想を練ってみます。]

抹茶茶碗がよく売れている。歴史上の楽家以外の中堅どころの普及品を15,000円、上手の普及品を25,000円で出したところ注文が殺到している。やっぱり千家関係の需要はすごいものがある。卸売りの希望も多く一般陶器をはじめとして、茶道や華道からも多く店には販売価格の6割、教室には7割で卸している。経験が豊富な人もネットの実物写真を見て、目からウロコ状態になっている。

ついに遠州とユリのコンビが造園に成功した。みんなにわかるように、造園小堀遠州と大きめの看板を立てておいたがお茶碗の遠州好みとともに堪能しているようだ。[ユリちゃん、初仕事成功おめでとう。]すずに頭を撫でられて誇らしい顔をしながら嬉しがっている。
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志野の花器仕入チームで面白いものがペアで見つかった。たぶん商時代の青銅製の祭器だと思うが、花器にピッタリで龍の彫刻が施されているので王室のものに間違いない。調べたらC国の重要文化財にも載っていないので、また大使館のお世話になることもない。超能力パソコンで探しているので、現存していなくても出てくるのである。

志野[これは国宝もので間違いないわ、お店の看板になる代物です。][間違いないな、買う人はいないと思うけど一応ペアで500億円をつけておこうか。実質はただだけどな、はっははは。]

[それから海の坊の花器は全部揃えました。作られた時に枝分かれしていますので表面は全くの別物になっています。][これは海の坊で使われていますなんて、表示しない方がいいな。販売員にも徹底させるように。][わかりました。でも手頃な価格で手に入るのでびっくりするとともに、これは間違いなく人気になりますね。]
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ゴン太にユリは犬用トイレで自分で水を流して使うので、手間は全くかからない。屋上の犬用トレーニングコートにも勝手に行けるので、気分転換に2匹でちょくちょく利用している。散歩もしなくていいので、全く手間いらずである。

さてゴンちゃん、今日は大好きなアサード(アルゼンチン焼肉)だぞ。ゴンちゃん、アサードだよ。ワンワンワン。犬たちは食べ物のことは絶対に忘れないし、下手な冗談も許さない。裏庭に半切りのドラム缶が用意してあり網がかぶさっている。

2日前に料理長に言ってあるので4人の料理人はテキパキと牛肉と鶏肉を焼いている。ペルー料理のセビーチェというヒラメの刺身にイカとタコを生で刻んでオニオンとレモン汁を混ぜたものもある。これは日本人の好みに合うのか人気の料理である。ピスコという白ブドウで作った蒸留酒も用意してある。[さあ、みんなどんどんやってくれ、おかげさんで売り上げは快調だ。]
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サスケ[アサードなんて久しぶりですね。四越デパート8階の展示会の打ち上げ以来です。小さな借家でしたけれど。]ワンワンワン。[人数も増えてだいぶ大掛かりになった。みんな思いきっりのんでいいぞ、寝場所は隣だ。]

すず、[私はこの焼酎ですけれど、外で飲むのはおいしいですね。]料理長、[明日香の酒はたくさんありますので、心配はいりませんよ。]福丸デパートの応援要員もガンガン行っている。次郎長、[お前たちもいっぱい食べろ。]茶畑から来た3人も美味そうにしている。

[私は先にひと風呂浴びるのでゆっくりとやってくれ。]さて今日はC国大使館に頼まれたということで2人の調査員が来ることになっている。例の500億円の花器のことである。王様の直感でほんとうの調査員かどうかわからないので、特に注意しろとの指示が出ている。ゴン太にユリも約束の時間に入口で待ち構えていた。若い精悍な顔つきの男と、学者風の年配者がやってきた。
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バリアーは解かれていてすんなりと入れる作戦である。ただゴン太とユリはワンと一声吠えた。調査員はジロリと犬を見たが小政の誘導で奥へ入っていった。私が責任者ですと名刺を渡すと相手も名刺を差し出した。C国の学術員のように書いてある。[これが写真のものですか。][そうです。][これは故宮博物館にあったものです。返却していただくことになると思います。]

[すみませんがあなたの身分証明書を見せていただけますか。][名刺を渡したはずです。][身分証明書です。][疑うのですか、はいこれですよ。][故宮博物館の職員ですか。][身分証明書の通りです。][ウソではありませんね。ゴンちゃんどう。]ワン、1回返事ということは嘘ということである。

[わかりました。それでは直接大使館に聞いてみます。]それを聞いた瞬間逃げ出そうとしたが、作戦通り石松他2名と大政に小政5名の次郎長一家の精鋭が手ぐすねを引いて待っていたので足に絡め倒し、ボコボコにして縛り上げてしまった。
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石松[お、お、おうさま、あ、あ、足でも、お、おっちゃいましょうか。][他のお客様に迷惑が掛かるので3階の事務所に、うるさくないように猿轡をかまして転がしておきなさい。][はいわかりました。]

王様は警察でなくC国大使館に連絡をしたら、すぐに担当者が向かうとのことだった。大使館からはこの前の若い男性と警備員風の体格のいい男2人が付き添ってきた。入口でまた足がガクガクするのではないかと身構えたが解除してあるのですんなりと入ってきた。[C国大使館の○○です。ほかの二人は警備員です。]小政が対応した。[3階にいますんでどうぞ。]

2人を見てすぐにどのような相手かわかったようである。[この男2人は学術員を語る詐欺師です。どうぞ警察に渡してください。それとだまそうとしたものを一応確認させていただきます。]王様のいる1階の花器のところに案内してきた。[どうもお疲れ様です。私が責任者です。]
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[こちらが奴らが狙ったものですか、拝見させていただきます。]真剣な顔つきになって2個の青銅器を隅から隅まで確認し、[見事な本物です。これは私見ですが500奥円で売っていただけるのでしたら本物の学術員と稟議決裁を経て買い入れということになります。]

[ありがとうございます。それでは売り止めにして調査と決済をお待ちしております。]迅速に警察は詐欺師を連れて行った。大使館員も確認しているのでとてもやりやすい案件だと言って、最敬礼をして帰っていった。[ご、ご、ごひゃくおくえんですか。][確かに高額だが相場から言ったら妥当なところだ、ものがないからね。]

小堀遠州は顛末をず~っと見ていて笑いをかみ殺している。[サスケさん、王様はかなりやりますね、はははは。][さぁ、元に戻って、500億円の話はもうおしまいだ。志野さんはお手柄でした。][王様が青銅器といったから探してみただです。最初のとっかかりは王様ですよ。]
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朝のミーティング中にいつもの竹中半兵衛重治が風のようにフワリとやってきた。明日香王国の参謀長である。[なかなか派手にやってらっしゃいますね。ご苦労様です。今日は大事な話があるのですがよろしいでしょうか。]

[やあ、しばらく、大体の打ち合わせが済んだところなんで、お話になっても結構ですよ。][実はそろそろ明日香王国の接続ということで目立つことを知らしめたいのですが、小堀遠州さんの復活や国宝の分身ということで世間もなんか普通と違うなと感じていると思うのですが、ここでもう一歩進めてこりゃあなんかあるなと予感するような、強烈なのをお見舞いしたいのですが。]

[ほう、おもしろそうだな、どうぞ話を進めてください。][対馬の仏像が2体盗まれ1体が指を欠損されて返却されましたが、ほかの1体はまだ戻っていません。そこでもう1体を超能力で回収し、ここから本題ですがK国の国宝の仏像20体がお詫びとして100年間こちらにいるということで一緒についてくるというのはいかがでしょうか。
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当然に返せということになりますが、仏像が力ずくでは動かない設定にすればいいのです。万が一に持っていかれてもまた帰ってくるようにすれば問題ないのです。対馬の仏像は半年間こちらで預かり、無料で国宝と一緒に見てもらい半年後に分身をこちらに置いて対馬に帰ってもらいます。

なんとかならないかとしつこく言ってくるでしょうが、これは仏様の意思で私たちではどうしようもないとうそぶくのです。そして仏様が納得するようなことをすれば、あるいは呪縛を解かれるかもしれないとこうもっともらしことを述べれば面白いのです。国民はやんやの喝采を送り、胸がスカッとすると思いますよ。]

[倉庫はまだ上の階に余裕があるので3階のものを移動すれば保管はできる。一般の人達というより特定の人達に見せるという感じかな無料で見せるのが目的でなく保管をしてインパクトを与えるのが目的ということになる。
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それにしても見事で面白いシナリオだがみんなの意見を聞かせてくれるかな。]サスケ、[私はこういう話を待っていましたので、進めるべきだと思います。]次郎長、[遣りたい放題やられていますんで、ここいらへんで一発お見舞いしときませんとなめられっぱなしになります。全面的に賛成です。]

すず[商売に多少影響しますが、どうってことないレベルだと思います。なにしろ原価率がたいへんよろしいもんで。ははは。ゴン太にユリ、ワンワンワン。[ゴンちゃんも賛成か頼もしいな。]王様、[それでは3階の倉庫をかたずけて、仏像が来たら]ショーケースで覆ってその上にバリアーをかぶせればもっていかれない、それと始まったら当然にやかましくなるが全く問題ないので、自分の仕事をするように言ってください。

こんなことでよろしいかな。竹中[期待していますが、何か問題があったら一緒に対策を考えましょう。じゃあ失礼します。][ご苦労様。][はいそれでは持ち場に戻ってください。]
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